第69回 在留資格審査に日本語能力が使われ始めている|田尻英三

★この記事は、2026年4月10日までの情報を基に書いています。

京都では桜が満開で、琵琶湖疎水では花びらが散って花筏となって流れています。そのような季節でも、アメリカとイスラエルによるイラン侵攻で世界中が石油不足による不安定な状況になっています。日本の経済状況が悪化すれば、外国人の受け入れも止まってしまいます。そのような不安を抱えながら、この原稿を書いています。

高市政権成立後、在留外国人への規制が進んでいますが、最近は在留審査の判定に日本語能力要件が重要視されてきています。結果的に、在留審査が厳しくなっていく傾向が見られます。

今や在留外国人の人権問題に、日本語能力が大きく関わってきています。今回は、帰化と日本語能力などのテーマを扱います。

1. 在留外国人規制化の流れが分かる資料

第68回の『未草』の記事で扱いましたが、高市政権の外国人施策を考える時の大事な資料は、第2回の「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」の資料です。その中の「総合的対応策」については、すでに説明をしています。この会議は、それ以降開かれていませんが、施策立案は進んでいます。その方向性が分かる資料は、「資料1-3 国民の安全・安心のための取組の概要―現状の取組の方向性―」(以下、「取組の概要」と略称)です。

https://www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/kakuryokaigi/dai2/shiryo1-3.pdf

ここには、「〇実施中又は速やかに実施する施策」と「★着手すべき課題」が示されています。田尻は、これらの施策は今後国会で審議されて検討されるものだと思っていました。しかし、実際には政令として閣議決定だけで実行に移されて来ています。したがって、今後さらに厳しい施策が講じられる可能性があるものが、ここに列挙されているということが言えます。以下、「取組の概要」の日本語教育に関わる項目に沿って説明します。

各項目の主要事項を原文に沿って引用し、それについての田尻のコメントは「←」から後の箇所に書いています。

在留管理DXの推進等・・・入管庁が関係機関から国民健康保険料及び国民年金保険料などの情報提供を受けて在留審査に活用する。←留学生のアルバイト時間の制限(3月6日の衆議院予算委員会での小野田大臣の発言では、留学生のアルバイト時間の超過対策のためという)と拡大化(後で詳しく述べるが、特定技能の外食産業での受け入れ数が上限に達する可能性があり、その分を留学生のアルバイトで埋める)に役立たせるため。

在留資格「経営・管理」に係る適正化・・・実態調査を強化し、公租公課の履行状況を踏まえて事業実態把握に努める。←すでに更新時に日本語能力をチェックすることが決まっています。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」に係る適正化・・・資格該当性のない業務を行なっていないか調査し、審査の厳格な運用等を行う。←派遣先で専門的な業務に就くことを確約する誓約書の提出することだけでなく、産経新聞によると、新規入国者については日本語能力の証明(CEFRレベルでB2レベル「日本語能力試験N2相当」が求められる予定です(田尻注:「日本語教育の参照枠」ではありません。日本語能力試験とCEFRの対照表は発表されているからでしょうか。)。この在留資格で入国する際に、「資格外の業務も可能」と誤った説明が行なわれ、この資格で入国した外国人を単純作業(田尻注:産経新聞の記事のまま)に従事させるケースが問題視されていたためと書かれています。

在留資格「留学」に係る適正化・・・外国人雇用状況届出を活用し、実態把握・指導を行う。←上記のアルバイトの時間のチェックです。留学生については、2月17日に文部科学省は3大学11学部に2026年度から定員枠を拡大する新たな特例を発表しました。東北大学理学部、広島大学の3学部、筑波大学の7学部です。いずれも、文部科学省が求めていた留学生の授業料値上げに応じた大学です。

在留資格「永住者」の在り方の検討・・・審査の厳格な運用と許可の在り方の検討を行う。←在留許可取り消しのガイドライン策定の予定です。

帰化の厳格化の検討・・・帰化の審査において、永住許可の審査との整合性の観点から、原則として10年以上在籍することなど、帰化の厳格化のための審査の在り方の検討の推進。←次の「2」で詳しく扱います。

在留許可手数料・査証手数料の見直し・・・入管法についての所要の改正を行った上で、2026年中に在留許可手数料を実施し、外国人に関わる各種施策・出入国在留管理の体制の強化・拡大。←3月10日に閣議決定された入管法改正案では、永住許可の手数料が1万円から30万円に値上げされる予定です。他の在留許可の更新や変更の手数料も1万円から10万円に値上げされる予定です。大幅な値上げです。

https://www.moj.go.jp/isa/content/001457911.pdf

日本語教育の充実・・・「大人(労働者)に対する日本語教育」では、育成就労制度におけるモデルカリキュラムの開発・普及・促進。←育成就労制度では、新しい試験を開発せず、従来の日本語基礎テストの一部を使うことが決まっています。

「大人(生活者)に対する日本語教育」では、オンライン日本語学習教材の充実、地方公共団体による地域日本語教育の総合的な体制作りへの財政支援の拡充。←2026年3月に、文部科学省令和7年度「生活者としての外国人」のための日本語教室空白地域解消推進事業として「地域日本語教育スタートアッププログラム報告書 日本語教室立ち上げハンドブック8」と、令和6年度外国人材の受入れ・共生のための地域日本語教育推進事業として「地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業 事例報告書」が刊行されています。

「子供に対する日本語教育」では、「プレスクール(仮称)」(初期支援)の方策の検討、ICTや生成AIの活用も含めた指導内容・方法等のガイドラインの提示、日本語指導補助者への支援の拡充、地方公共団体への財政支援等の拡充。←ここでは、日本語教育研究の世界ではまだその成果が出ていない分野に対して施策の方向が示されたと田尻は考えます。

「日本語教師の養成・研修及び社会的地位の向上」では、登録日本語教員等の研修の充実や特色ある養成課程の展開。←前者は、今後行われる施策で実行されることを期待します。後者は、すでに文部科学省 日本語教師養成・研修推進拠点整備事業で行われています。ただ、この記事の執筆時点では近畿ブロックしか報告書が公開されていないので、この事業の評価はここでは行いません。2025年度はこの事業の中間評価の年ですので、報告書の内容が注目されます。近畿ブロックの報告書は、調査結果が具体的な実数で示されずに、0~10のような枠の範囲で示されているので、田尻としては日本語教師養成の実態を知るのは不十分だと考えています。

日本語教育に直接関係しませんが、外国人の土地所得ルールの在り方についても項目が挙げられています。ここでは、外国籍の人が日本の土地を取得することの問題点を扱っていますが、すでに内閣官房に「外国人による土地所得等のルールの在り方検討会」が設けられ、3月4日に第1回が開かれています。ただ、この検討会では、日本国籍を取得した外国人などは検討の対象になっていません。後で扱う「帰化」の問題とも関わりますが、日本人とは何かということを日本人が考えてこなかったことが、この問題のベースにあると思います。今頃になって、安全保障上の観点から外国人の土地取得を問題視することが外国人受け入れ上の問題点になること自体が、日本の現状とはズレているのではないかと考えています。

2. 帰化と日本語能力要件

皆さんは、難民認定された人が日本国籍を取ろうとした時に、裁判所で日本語能力の試験が行われ、その結果によって日本国籍取得の可否が決まっていることをご存じでしょうか。

田尻は、4月5日のTBS NEWS DIGでの記事を見るまで知りませんでした。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2576942

この記事を理解するためには、その前提となる知識が必要となります。かなりやっかいな説明が必要となりますが。お付き合いください。

以下は、田尻がこの記事を見つけるまでの経過に沿って述べていきます。

(1)法務大臣の記者会見

3月27日の法務大臣閣議後の記者会見概要から説明を始めます。

https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00706.html

記者会見で「帰化の審査の厳格化」として説明された内容では、1月23日にまとめられた「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」で、永住要件の審査との整合性の観点から、帰化の厳格化の審査の在り方を検討してきた。その結果、2026年4月1日から、帰化の審査において『日本社会に融和していること』の要件として、原則10年以上在留し、日本社会に融和していることを必要として、素行の善良性・生計条件につき、税金や社会保険料の納付状況を確認する期間を延ばす旨の厳格化を実施することにしたというものでした。

まず、この施策の着眼点が問題だと田尻は考えています。高市政権になって在留外国人への規制が強くなった原因として、在留外国人の増加がありました。その場合、増えた在留資格では、永住者と技術・人文知識・国際業務が目立っていました。後者については、上に述べたように規制が厳しくなっています。前者については、2026年2月24日に「永住許可に関するガイドライン」が改訂されていて、「申請時点において納税(納付)済みであったとしても、当初の納税(納付)期間内に履行されていない場合は、原則として消極的に評価されます」や、「現に有している在留資格について、法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること」(田尻注:技術・人文知識・国際業務の在留資格で非熟練労働に就いている事例を排除する意図がある)などが付け加えられ、こちらも規制が厳しくなっているのです。

法務大臣の説明では、一見帰化の審査要件は永住許可の審査に比べて緩やかだから今後は厳格化するというように聞こえますが、永住許可の要件はすでに厳しくなっているのですから、帰化の審査要件は一層厳しいものになるということになります。在留外国人増加の一つの要因である永住者の増加に対する施策を先に厳しくしておいて、在留資格永住に比べて審査が緩やかだった帰化の要件をより厳しくするという説明には、田尻は納得がいきません。帰化という在留許可を取得する外国人を増やしたくない、と高市政権は考えているとしか思えません。

(2)帰化と日本語能力

「帰化」という語は法律用語ですので使っていますが、「帰」が元居た場所に戻ってくるという意味があり、日本がその場所であるという意味合いを帯びてくるので使いたくありません。朝日新聞の記事では「日本国籍取得」としていますので、ここでもそれに従います。「ニューカマー」は、本来「ニュービジター」とすべきであったという考えと同じ発想です。

「国籍法」第5条では、次の条件を備える外国人でなければ、日本国籍取得を許可することができないとなっています。

  • 引き続き5年以上日本に住所を有すること。
  • 18歳以上で本国法によって行為能力を有すること(田尻注:「法的に単独で有効に法律行為をなし得る能力を有している」とされています)。
  • 素行が善良であること。
  • 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技術によって生計をいとなむことができること。
  • 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと。(田尻注:日本国籍を取得することで二重国籍になる場合は、許可されません)
  • 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、もしくは主張し、又はこれを企て。もしくは主張する政党その他の団体を結成し、もしくはこれに加入したことがないこと。

日本国籍取得の条件は、これだけです。日本語能力の要件はありません。
ところが、法務省民事局の「帰化による日本国籍の取得」の中の「帰化の一般的な条件」の中に次のような条件が出ています。

 日常生活を営むのに十分な日本語能力(会話及び読み書き)を有することや10年以上在留していることなど、日本社会に融和していること。

法務省の「国政Q&A」の「Q9」にも同じことが書かれています。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji78.html – a09

ここでの日本語能力は、実務家の間では「小学校低学年(または小学校3年生)程度の国語力とされています。

最近アフリカの難民と認められた人で、早稲田大学の博士号を授与された人が、日本国籍を取得しようした際に日本語能力の不足で許可されなかった事例が出てきました。この事例を考えるための基礎的な知識を得るために、次の論文を読んでください。大変大事な論文だと考えています。

近藤敦「国籍の原則と帰化の裁量に関する憲法上の要請違反:難民帰化訴訟に寄せて」(2025年9月、『名城法学』75巻1号、名城大学法学部)

https://law.meijo-u.ac.jp/staff/contents/75-1/750101_kondo.pdf

この論文は、難民が日本国籍取得の際に被る不条理な処遇、特に日本語能力について詳しく書かれていますので、ぜひ読んでください。

この論文によると、日本国籍取得の際に裁判所で行われる日本語能力試験は、小学校低学年の国語の教科書を参考に各法務局が作成しているということです。当日、裁判所で裁判官が日本語の漢字の読み方を聞くということも行われていると、多くの行政書士のサイトに書かれています。

この変更は、法務大臣の裁量の範囲内で行われる運用として扱われると新聞記事に書かれています。国会では審議しないということです。

日本語教育で評価法の専門家という人は、難民の日本国籍取得の審査の際に、法務局内で小学校低学年の国語の教科書を参考にして作られた試験で国籍取得の可否が決められていることをどう思いますか。疑問に思ったら行動に移してください。

3. この時期だからこそ読んでほしい本

〇濱口桂一郎著『外国人労働政策』(2026年1月、中央公論新社)

技能実習、特定技能、技術・人文知識・国際業務、高度専門職等々の労働政策の施行での旧労働省と法務省との権限争いを描き、その流れの根底には日本型雇用システム偏重イデオロギーが無意識にあるということを描いた書籍です。

前半は濱口さんも言っていますが、資料としては新聞記事を使って書かれています。記述の客観性という意味では問題かと考えますが、長くその問題に関わってきた著者の記述を興味深く読みました。これまでの日本政府の外国人労働者施策をかねてより不審に思っていた田尻には、納得できる箇所が多くありました。

高市政権になって一層見通しがきかない現在にこそ、これまでの外国人労働者施策の基礎知識として読んでほしい書籍として推薦します。

3月6日のALL REVIEWSに東京大学名誉教授の松原隆一郎さんの、2026年4月号の『公明』に国立社会保障・人口問題研究所の是川夕さんの書評が掲載されています。

〇朴沙羅著『日本社会と外国人 入管政策が照らす80年』(2026年3月、中公新書)

1945年から現在までの入管政策を説明した書籍で、特に1990年体制、人種差別と出入国管理政策、労働力の受け入れの章は、在留外国人の置かれた環境に興味がないまま日本語教育学を研究している専門家と、留学生や日ごろ生活者として日本に住んでいる外国人と接している日本語教師には、ぜひ基礎知識として知っておいてほしい情報が掲載されています。また、それぞれの問題についての研究論文も丹念に掲載されています。

特に、著者の思いのこもった「あとがき」は必読です。

4. 気になった著書と論文

〇川上尚恵著『戦後日本語教育はどう実践されてきたか』(2026年2月、ひつじ書房)

主に、「戦後」から1970年代までの日本語教育史を記述した労作です。

田尻は、第3章の留学生施策、第4章の技術研修生制度と第5章の日本語教師養成でのAOTSの役割は興味深く読みました。その当時の事象に関する研究論文も詳しく掲載されています。

ただ、この著作を通史として読むと、留学生施策での日本語教育振興協会の役割や、AOTS以外の日本語教師養成はどうであったかについても、最低限の記述は必要でなかったかと考えます。

また、「戦後」とは、アジア・太平洋戦争での敗戦後いつまでを「戦後」と呼ぶのか、何をもって「戦後」が終わったのかという説明も必要であったと思います。

また、現在は、川上さんが扱った時代に日本語教育に関わった人たちに直接インタビューできる最後の機会だと思っているので、今後はそれらの資料も加えた大部の日本語教育史が書かれることを期待しています。

〇牲川波都季さんの「留学生受入れ政策により日本語教師の需要は増えたのかー文化庁等による『日本語教育実態調査』の分析―」(2026年3月、『言語政策』第22号、日本言語政策学会)

このテーマは、大変大事なテーマですが、そのための資料集めに難しいものがあります。その点で、この論文は、資料面、分析方法、先行研究の見落としなど、多くの問題がある論文だと考えます。

牲川さん自身も言っているように、このような研究をするための「その必要・不足数を正確に把握するためのデータは存在しない」(2ページ)のです。この論文では文化庁の調査資料を使っていますが、その資料を使う限り研究は不十分なものとなります。

また、この論文では留学生10万人計画と30万人計画を比較していますが、その二つの計画は全く違う性格を持っていますので、日本語教師の需要の説明には使えません。この論文でも触れられていますが、10万人計画では「日本語教師の増加総定数が詳細に示され」(17ページ)ていて、当時の文部省を挙げて10万人計画を達成しようとしていました。日本語教師の数を増やすことは、政府の方針だったのです。当時は新しい学科・課程を増設することは難しかったのですが、大学の日本語教師養成課程も現状のままでは不足しているとして、学科や課程の新設が認められました。ところが、30万人計画では「日本語教師の人数の見込みが示されることはなかった」(17ページ)のです。留学生の数を増やすという点だけに注力した施策でした。したがって、結論にある日本語教師は「10万人計画によっては増えたが、30万人計画では増えなかった」ということは当然のことです。資料を分析する必要はなく、結論は自明のことです。

また、「大学等機関で雇用される要件の一つは大学院の修了であり」(16ページ)は、実態に合っていません。大学で留学生のための「日本語」担当教員は、その大学が認めれば資格は問われていません。当時、留学生の「日本語」は、教員に海外経験があれば担当できました。現在でも大学に「日本語」担当の教員の学歴を問い合わせたとしても、まともに答えてくれるかどうかは分からないと思います。大学での日本語教育は、高等教育局の担当です。。

日本語教師の数を比較するなら、まずは日本語教育機関の教師数を比較するのが必要です。

過去の実態を示す資料がなくても、参考にすべき資料として重要なものがあります。

「日本語教員等の養成・研修に関する調査結果について」(2012年、日本語教員等の養成・研修に関する調査研究協力者会議、文化庁)がそれです、牲川さんは、この大事な資料を見落としています。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_kyoin/pdf/hokokusyo.pdf

この会議は、田尻も参加しましたが、文化庁が初めて日本語教員の資格を検討した会議です。ぜひ参考にしてください。

日本語教育振興協会の「日本語教育実態調査」も、全ての日本語教育機関の調査ではありませんが、長期間の調査としては貴重なものだと思っています。

牲川さんは、かつて研究方法や先行研究の見落としについて、ましこ・ひでのりさんから厳しい指摘を受け、それに対する弁解を述べたことがありました。

書評/書評への応答 「職業としての日本語教師」という問題設定から (『社会言語学』ⅩⅨ、2019,「社会言語学」刊行会)

この書評は、牲川さん編著の『日本語教育はどこへ向かうのか』を扱ったもので、ましこさんの書評の後に、庵功雄さん・有田佳代子さん・牲川さんの弁解の文章が掲載されています。

ここでの牲川さんの弁解は、この論文でも活かされていないと田尻は考えます。

5. その他の大事な情報

〇2025年末現在の在留外国人数について

2026年3月27日出入国在留管理庁が公表した在留外国人数は、412万5,395人で前年比9.5%増の過去最高でした。

国籍・地域の順で多いのは、中国、ベトナム、韓国、フィリピン、ネパール、インドネシアなどですが、韓国だけ前年度に比べて減っています。逆に、ミャンマーは大きく増えています。

在留資格で多い順は、永住者、技術・人文知識・国際業務、留学で、これらの在留資格については上に述べたように、これから規制が厳しくなります。

ここでは、特に特定技能の資格取得者の増が目立っています。

在留外国人数が多い都道府県は、従来どおり東京都、大阪府、愛知県、神奈川県、埼玉県となっています。

在留管理については、同じ3月27日に出入国在留管理庁から「令和7年の出入国在留管理業務の状況」が公表され、「不法滞在者ゼロプラン」関係で「本邦における不法残留者数について」も公表されていて、1993年以降大幅に減っています。

〇日本語能力と賃金についての調査結果

3月18日の厚生労働省第13回「外国人雇用対策の在り方に関する検討会」の会議資料に、「令和6年外国人雇用実態調査を用いた日本語能力と賃金に関する分析について」があります。

https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001676598.pdf

ここでは、会話と読解能力の調査を行ったと書かれています。ただ、ここで使われた調査表は、次のようなものでした。以下に引用します。

このような試験を使って、「日本語能力の上位回答群(例、母語レベル)ほど賃金が高い傾向がみられた」と結論づけています。

日本語教師なら、このような試験で会話力と読解力が測られていると聞くと驚くに違いありません。

この試験は、いくら振り仮名を付けても日本語能力によっては質問文の意味が分からない、在留外国人に日本語能力試験のレベルを聞いても意味がない、( )内の説明は読解力のレベルの説明ではない、自己申告でどの程度その人の会話力や読解力が測れるのか分からない等々、およそ日本語能力を測る試験とは言えないものです。

日本政府の公式な調査で、このような試験とも言えないものを使い、賃金との関連を推測していること自体がありえません。

日本語教育関係者は、この調査について黙っているのですか。

〇会議福祉士国家試験の結果

「介護ニュース」に、在留資格別の介護福祉士国家試験の合格者数が出ています。

https://www.joint-kaigo.com/articles/44902/

なお、2025年10月14日の介養協の「お知らせ」に介護福祉士養成施設に入学した留学生数と卒業後の進路の結果が出ています。

https://kaiyokyo.net/news/r7_nyuugakusha_ryuugakusei.pdf

外国人が日本の介護福祉士を目指す四つのコース毎の試験結果は興味がありますが、ここではコメントしません。

〇日本語教育機関の申請での教育課程の不認定事例を公表

https://www.mext.go.jp/content/20260305-mxt_nihongo01-000039408_01.pdf

2026年3月に文部科学省総合教育政策局日本語教育課から、「これまでの申請における教育課程に関する主な不認定相当事例」が公表されました。

この不認定事例を見ると、日本語教育機関の申請内容についての基本的な項目についての理解不足が目につきます。いまだに認定申請件数が少ない理由の一つにこのようなことがあるとしたら、問題です。日本語教育機関は、もういいかげん従来の文法積み上げ方式の暗記力を基礎にしたカリキュラム作成をやめませんか。

〇特定技能1号「外食業」分野での受け入れ停止が決定

3月27日に、4月13日から、特定技能1号の外食業の受け入れを原則停止すると出入国在留管理庁が発表しました。

https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/03_00001.html

外食業での人材不足の影響が心配されます。

〇「就労のための日本語教育機関連絡協議会」が設立された

JICEの「事業ニュース」に出ています。

https://jice.org/news/2026/03/post-377.html

この連絡協議会は、日本国際協力センター(JICE)、海外産業人材育成協会(AOTS)、国際日本普及協会(AJALT)、日本語教育研究所で構成されています。

日本語教育研究所以外は、「就労」分野で認定を受けています。

日本語教育振興協会も、全国日本語学校連合会・日本語学校ネットワーク・全国各種学校日本語教育協会と共に、一般社団法人日本語教育機関団体連合会を設立します。

〇地方では外国人との共生事業が拡充

3月28日の共同通信の記事によると、都道府県の2026年度当初予算では、35都道府県が外国人との共生に向けた新規事業や、既存事業の拡充を盛り込んだことが共同通信の調査で分かったと報じられました。

高市政権の外国人規制の方針とは逆に、地方では共生の動きが広まっていることは喜ばしいことです。

まだ他に大事な情報がありますが、触れる余裕はありません。

 

※アメリカ・イスラエルによるイラン侵攻の情勢次第で、日本の置かれている状況は大きく変わります。

日本語教育の世界でも、大きな動きが出ています。しかし、『現代日本語教育ハンドブック』の記述を見ていると、この書籍を監修している日本語教育学会の中に、行政と距離を置こうと言っている人やその人を支持する人が一定数いることが分かります。しかし、今回の『未草』の記事で扱ったような事例について、学会として沈黙を守ったままでよいのでしょうか。学会は、行政と連携しながら施策を進めることができます。日本語教育の世界では、日本語教育学会は大きな存在です。学会が、何らかの動きをすることを期待します。

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