「やさしい日本語」は在留外国人にとって「やさしい」のか?|第10回 在留外国人に対する言語政策1:多言語表示と通訳と機械翻訳|永田高志

1.  生活日本語レベルの「やさしい日本語」には限界がある。

第9回にも述べたように、「やさしい日本語」は生活の基本的な場面に限定し、公共性や専門性が必要とされる分野については、翻訳、通訳、上級日本語教育に任せるべきではないだろうか。生活の基本的な場面とは、災害等の緊急時の情報提供、ゴミ出しや騒音など役所からの注意書きなど、日常生活にとって基本的なそして必須の問題については、初級の日本語能力でも充足できる範囲内で「やさしい日本語」が取り組むべき課題であると思われる。これらは役所から在留外国人に対して一方的な、また、書き言葉による情報提供である場合が多いが、共生社会という問題を考える場合には、相互的な、話し言葉による意思交換が必要となると思われる。私的な場面での話し言葉として「やさしい日本語」が必要とされるようになるように思える。‘foreigner talk’ の役割である。日本人から外国人に対する日本語の ‘foreigner talk’ の研究が必要となるのかもしれない。しかし、そうなると、公共性や専門性が必要とされる分野では、「やさしい日本語」以外の手段で在留外国人の言語問題に対処しなければならないと思う。

2.  在留外国人に対して言語サービスを行う必要がある。

多民族社会においては、少数民族の人権を守るためにそれぞれの使用言語の権利を保障するという意識で、‘linguistic rights’(言語権)という用語が使われているが、日本においては2004年に河原俊昭編著『自治体の言語サービス―多言語社会への扉をひらく』(春風社)という本が出版され、「言語サービス」という用語が提唱された。第一の定義として、在住外国人に対して行う情報サービスを指し、具体的には、

1. 生活情報を掲載したパンフレットやホームページを作成すること。
2. 多言語での掲示、道路標識、案内を充実させること。
3. 相談窓口を充実させること。
4. 日本語教育を提供すること。
5. 母語保持教育を提供すること。

第二の定義として、「多言語社会」・「言語の平等性」・「共生社会」を挙げている。もう20年ほど経っているが、この中に、在住外国人に対して「言語サービス」を提供する言語の一つとして、「やさしい日本語」の可能性を提示している。

3.  在留外国人に対して「やさしい日本語」を含めた多言語対応の問題を場面別に考えていこう。

3.1.  市役所や区役所等の地方公共団体

上記の河原氏編著の著書では、言語サービスについて、「生活情報を掲載したパンフレットやホームページを作成すること」という記述があるが、この問題に関しては、地方公共団体が行う分野が大きいと思われる。私が住んでいる兵庫県や神戸市や須磨区を例に見ていこう。神戸市のHPでは多言語対応は、二本立てになっている。緊急の際に随時に発表する情報が載せられているメイン・ページではGoogleの翻訳ツールを使っている。「やさしい日本語」はなく、日本語については漢字にふりがなを付けたり、音声で示すこともできる。また、パンフレットのように恒久的に使う文書に関しては、それぞれの分野別に人間が翻訳したと思われる外国語対応のページがある。例えば、在留外国人向けには英語・簡体中国語・ハングル・ベトナム語・スペイン語・ポルトガル語・ネパール語・インドネシア語・フィリピン語・タイ語が、観光客向けには英語・簡体中国語・繁体中国語・ハングル・タイ語・ベトナム語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・インドネシア語が、ビジネス向けには日本語・英語・簡体中国語が、留学生向けには日本語・英語・簡体中国語・繁体中国語が対応している。利用者の多いと思われる母語に翻訳している。
神戸市の中でも繁華街三宮のある中央区の住民の約1割が外国籍であり、日本語に問題のある住民が生活している。神戸市中央区役所のHPには、以下の内容が7~8の外国語で書いてあるが、「やさしい日本語」はない。

*総合
*中央区転入時チラシ
*国民健康保険について
*ごみ出しルール
*命を守る防災学習(①子どもと親の防災ガイドブック・②ハザードマップ・③中央区緊急避難場所・避難所一覧 ④火事・救急の時は119番通報!)
*在住外国人支援制度の紹介(国際コミュニティセンター(KICC)のご案内)

神戸市中央区:トップページ (kobe.lg.jp)

私の住んでいる神戸市須磨区役所を例に出すと、窓口では、「やさしい日本語」で対応する所員はおらず、タブレット端末で音声を使って在留外国人との意思交流を行っている。また、電話通訳を利用できるが、対応言語が英語・中国語・朝鮮語・ベトナム語・スペイン語・ポルトガル語・フィリピノ語である。区役所の窓口担当者が通訳に連絡を取ることになっている。「通訳者不在のため、対応できないことがあります」と案内には書かれている。後の回で詳しく述べるが、「財団法人神戸国際コミュニティセンター」(KICC)に電話通訳を依頼しており、市役所には無料の通訳のボランティアの派遣を行っている。近畿大学在職中、大学所在地東大阪市の文化国際課では「国際情報プラザ」事業を進めており、日本語・英語・ハングル・中国語で外国籍住民のために電話によるサービスを行っていたが、2007年に調査したときには電話は2本だけであった。
ゴミ出しについては、神戸市環境局が英語で書いた一枚裏表のチラシが須磨区役所に置いてある。
神戸市は公文書を在留外国人の全ての母語に対応するように人間によって翻訳することが困難なので、機械翻訳を2020年より実施を検討し始めた。

神戸市とNTTドコモなど、AI翻訳で外国人住民に対応の実証実験

神戸市とNTTドコモと、ドコモの子会社であるみらい翻訳の3者は(2020年6月)29日、AI(人工知能)を活用した翻訳アプリを使った外国人住民への対応で実証実験すると発表した。これまでは常駐の通訳職員か小型翻訳機で対応してきたが、常駐の通訳職員は簡単に増やせず、小型翻訳機では行政用語が正しく翻訳できないといった弱点があった。正しい翻訳を学習することで、より精度の高い翻訳ができるようになるAI翻訳で、外国人住民との円滑なコミュニケーションをめざす。
神戸市では外国人住民が年々増えており、外国人が最も多い中央区は住民の約1割が外国人だ。手続き時などの円滑なコミュニケーションが課題になっているほか、災害時など通訳が手配できない緊急時に外国人住民に正確な情報を迅速に提供する手段も確保する必要があった。今回の実証実験は中央区役所のほか、留学生が多い灘区役所、ベトナム人住民が多い兵庫区役所の3区役所などを中心に(2020年)7月1日~10月31日に実施する。効果を検証のうえで今後の対応を検討する。

神戸経済ニュース (kobekeizai.jp)

HPをしらべると、機械翻訳を使っている役所が結構ある。パソコンとハンディな翻訳機を利用している。横浜市港南区・札幌市・大津市・甲賀市・和歌山市・甲府市・名古屋市千種区・上田市・滋賀県甲賀市・神奈川県綾部市等で、近年機械翻訳が在留外国人との意思交流に使われ出した。
(cf. 綾部市企画課 瀧川泉「自治体窓口業務における多言語対応の現状と課題」『多文化共生地域会議資料』2019年)

3.2.  災害情報

災害情報の在留外国人に対する手段として以下の方法を用いている。

「兵庫県災害対策センター」の「ひょうご防災ネット」は、防災行政無線、広報車等既存の情報伝達手段に加えて、携帯電話のメール機能やホームページ機能を利用して、災害発生時等の緊急時に、緊急気象情報(地震、津波、気象警報、特別警報、土砂災害警戒情報、河川洪水予報、竜巻注意情報等)や避難情報等をいち早く県民・市民の方々に発信するシステムです。平常時には、防災の心得、防災訓練の案内等の緊急時に備えた防災情報を掲載しています。
また、外国の方向けに気象警報や各市町が発信する緊急情報等の内容を、12言語(中国語(簡体字)、中国語(繁体字)、英語、フランス語、ドイツ語、インドネシア語、イタリア語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、タイ語、ベトナム語)に自動翻訳してホームページ上に公開する「ひょうごEネット(Hyogo Emergency Net)」も併せて運用しています。緊急情報等が発信されると、更新通知メール(英語)を送付し、12言語の翻訳ページへリンクで誘導します。

アプリの主な機能
1.自らの逃げ時や避難場所を登録しておく「マイ避難カード」機能を搭載
2.「マイ避難カード」の「逃げ時」として、避難情報(避難勧告等)や防災気象情報を登録した場合、発令時にはプッシュ通知され、利用者の避難行動を喚起
3.防災情報のポータルサイトとして、CGハザードマップや河川水位情報など、災害時に役立つ防災リンク集を装備
4.GPS機能を活用し、最寄りの避難場所を地図に表示して避難行動を支援
5.12外国語対応や音声読上げ機能(日本語+12外国語)、ピクトグラム(絵文字・絵単語)を使用して、外国人や高齢者などを含め、多くの方にわかりやすく防災情報を提供

兵庫県/ひょうご防災ネット・ひょうごEネット(Hyogo Emergency Net)

しかし、外国語版については以下の条件を前提づけている。私の翻訳を後に示した。

Terms of use (required reading)

You can translate the Hyogo Emergency Net and Hyogo Prefecture Disaster Prevention (Weather) information websites with a private automatic translation service.
Contents are translated by an automatic translation system. Therefore, translation may not be always correct.
Before using this service, fully understand that the translated version may be different from the original Japanese website.

Agree

使用条件(必読のこと)

「ひょうごEネット」や兵庫県防災(天気)情報websiteを個人用自動翻訳サービスで翻訳できます。
内容は自動翻訳システムで翻訳されており、従って、翻訳が常に正しいとは限りません。
このサービスを使用する前に、翻訳版は本来の日本語websiteと異なっている可能性があることを十分理解してください。

同意する

「同意する」をクリックしないと見られないことになっている。

3.3.  避難所 

公益財団法人兵庫県国際交流協会HIAでは、避難所で使う多言語指さしボードを作成した。英語、中国語(簡体/繁体)、韓国語、タガログ語、ポルトガル語、スペイン語、フランス語、ロシア語、ベトナム語、タイ語、ミャンマー語、インドネシア語、ネパール語に対応しており、それ以外の外国語は機械翻訳ソフトを使っている。避難所のスタッフと被災外国人の間で情報交換に必須の事項を、日本語と外国語で対照して翻訳したボードを使って、指さしで意思伝達を行う。例えば、「欲しいものがありますか?」を日本人スタッフが被災者に質問する場合は、ピクトグラムと14言語で翻訳したボードを指さし、被災者が水を欲しい場合は、水のピクトグラムと対応外国語から日本語の「水」に翻訳したボードを指さすように作られている。
(cf.避難所で使う多言語指さしボードの作成について/HIA (hyogo-ip.or.jp)

3.4.  警察

兵庫県警のHPでは、英語と簡体の中国語のGoogle翻訳版がある。外国人住民で検索すると、外国人住民に必要な情報には日本語の読みのルビが付いている。
(cf.兵庫県警察-特殊詐欺激増中トップページ (hyogo.lg.jp)
1月14日のNHKニュースで、「東大阪警察は警察署への緊急電話連絡の方法をベトナム語で書いたチラシを作成し、そのチラシを署員が持って会社を訪問してベトナム人技能研修生に配った」というニュースがあった。東大阪全体で約2000人の技能研修生が働いているそうである。しかし、緊急電話連絡があった時、警察署にベトナム語通訳が電話口に待機しているのであろうか、それとも、ベトナム人技能研修生が「やさしい日本語」で話すことが期待されているのであろうか。「話し言葉の中でも一番苦手だったのが電話での会話であった。対面の会話であれば、相手の顔の表情が見られる、ジェスチャーが使える等の手段があるが、電話ではなかった。」と、第1回で書いたようにアメリカ留学中、私にとって電話は最も困難な話し言葉の英語であった。テレビに映っていたベトナム人技能研修生の日本語能力では対応が難しいのではないかと考えさせられた。反対に、大阪府警は、「ビジネスにおいて、意思疎通や打ち合わせを支障なくこなすことができるベトナム語での会話能力を有する20歳以上の日本人と、日本語検定1級程度の日本語能力を有する、就労資格のある20歳以上のベトナム語が分かる外国人を募集している。大阪府警察の規定に基づいた謝礼金を支払う」と2021年4月9日付けのHPで募集していた。正式に雇用された警察職員「通訳吏員」ではなく、民間通訳人に業務を任せている。正規警察職員「通訳吏員」にしても専門の外国語があり、一体何人が雇用されているのだろうか。
(cf.2021年4月9日 ベトナム語民間通訳人を募集しています。/大阪府警本部 (osaka.lg.jp)

3.5.  神戸市消防局

消防署に外国語での通報があった場合の対処については次のように示している。

神戸市内から119番に通報される場合、日本語以外の5ヶ国語が通訳サービスに対応しています。 ○対応言語(5ヶ国語) 英語、中国語、韓国語、 スペイン語、ポルトガル語
この度、119番受信及び災害現場での対応を更に円滑に行うため、民間通訳業者による電話同時通訳サービスを用いた5ヶ国語通訳体制の運用を開始しました。

神戸市:119番通報における外国語同時通訳サービス (kobe.lg.jp)

日本語が通じないと分かったときには、電話によって民間通訳業者に中間に立ってもらう。365日24時間体制とあるが、しかし、英語、中国語、韓国・朝鮮語、スペイン語、ポルトガル語の5言語しか対応していない。

4.  NHKの多言語放送(NHK WORLD-JAPAN )

NHKのテレビやラジオを通じての放送は日本の公共放送が海外に向けての広報活動が主な目的であるが、国内でも一部の放送は英語と日本語で見ることが出来る。そして、NHKの国際放送「NHK WORLD-JAPAN」では、世界に向けて24時間英語で放送しているテレビ国際放送を、2020年4月1日より、インターネットでもライブストリーミング配信している。その中で、機械翻訳機能を用いて 多言語字幕を作成し、6月より一部の番組で実験的に付与してきた。 新年度からの本格展開にあたり、原則としてインドネシア語、タイ語、中国語(簡体字・繁体字) スペイン語、フランス語、ベトナム語の6言語 7 種類で全ての番組に字幕を付与している。
(cf.インターネットで視聴する | NHK WORLD-JAPAN – NHKの国際サービス

5.  厚生労働省の「外国人労働者向け外国語電話」

厚生労働省は「外国人労働者向け外国語電話」を開設して、相談を引き受けている。英語・中国語・スペイン語・タガログ語・ベトナム語・ミャンマー語・ネパール語・ハングル・タイ語・インドネシア語・カンボジア語・モンゴル語に対応している。原則10:00~15:00まで主要言語では平日すべての日で受け付けているが、週一日だけの言語もある。電話が何本開設されているかが不明である。さらに、

「労働条件相談ほっとライン」は、厚生労働省が委託事業として実施している事業です。都道府県労働局及び労働基準監督署の閉庁後又は土日・祝日の相談に対応し、全国どこからでも、無料で労働条件等について、外国語で電話相談いただけます。

とあり、ちなみに兵庫労働局では、中国語とベトナム語に週2日ずつ対応している。
(cf.相談機関のご紹介(Advisor for Foreign Workers Section)|確かめよう労働条件:労働条件に関する総合情報サイト|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

6.1.  医療滞在ビザ

治療や健診目的で訪日する外国人患者や医療機関からの要望に応えるために、2011 年1月に医療を目的として訪日する外国人向けの医療滞在ビザが導入された。多言語対応の問題が残されている。
(cf. www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/medical/
また、「医は仁術なり」という慣用句があるように、国民保険に加入していない在留外国人の患者も引き受ける必要があり、在留外国人の治療費の支払いの問題も起っている。

6.2.  院内の案内図や問診票や指さしツール

院内の案内図や問診票や指さしツールでの多言語対応を考慮している医療機関が多い。

外国人患者を受入れていくためには、医療機関名をはじめ 診療時間や診察科目、院内表示などを、英語や受入対象国の言語表示に整備しましょう。実際に、患者の立場にたって、 病院に到着してから受付を済ませ、会計を終え薬を受け取るまでの、一連の動きに沿って検証してみるといいでしょう。 院内表示を多言語化すると同時に、院内案内図シートを多言語で用意しておくことも有効です。こうした事前の準備は、スタッフへの問合せや、診療以外にかかる現場の負担を軽減することにもつながります。 また、病院の概要や、診療内容などを多言語化したものは、 ホームページにも掲載することで、外国人患者への情報提供の場になります。診療分野や提供している専門的な医療、施 設のクオリティなど、さまざまな情報を付加していきましょう。 海外に向けた広報活動の一助にもなるはずです(P.31)。
次に行いたいのは、問診票など日本人向けの各種書類を、英語や患者受入対象国の言語に翻訳したものを作成することです。すでに “外国人患者の受入経験がある” または “受入経験はないが受入意向がある” 医療機関を対象にしたアンケートでも、「重要だと考えている体制・取組」の1位は、各種文書の多言語対応でした。治療同意書や検査説明書など重要度の高いものや使用頻度の高いものから、順次、多言語対応に準備していきましょう。 
●● 外国人患者向けに項目を追加する  例えば問診票なら、外国人患者に向けて次頁のような項目を追加したりすることも必要です。また、アルコール量の質問では、ビール大びん1本→㎖表記に変更するなど、生活習慣に配慮した翻訳をしたいものです。これらの書類は、日本語と外国語を併記して、外国人患者だけでなく、現場のスタッフも利用しやすいものにするための工夫をしましょう。 
●● 説明用ツールや会話用ボードを用意する  「仰向けになってください」「息を止めてください」など、 部門ごとに必ず使うフレーズは、日本語、外国語、外国語の読みなどを併記したものを用意してあると、コミュニケーションがとりやすくなります。 

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/iryou/downloadfiles/pdf/
26fy_sankousyo_all.pdf

院内の案内図や問診票や指さしツールの対応外国語を見てみると、英語、中国語、ロシア語、その他の言語とリストで示しているが、数が少ないのが気にかかる。

6.3.  院内文書の多言語化

厚生労働省では、一般財団法人日本医療教育財団により2013年度に作成された、外国人向け多言語説明についての資料を改訂して医療機関に公表している。

外国人患者の受入れを円滑に行うためには、通訳体制の整備に加え、院内文書の多言語化も必要となります。しかし、総合病院などになると院内の文書は数百から数千種類に及ぶため、それらをすべて多言語化しておくのは容易ではありません。そのため、まずは初診患者用の問診票や会計時の請求書等、どこの医療機関でも使用頻度が高い文書の多言語化を目指し、次に、外国人患者の入院や手術も多い医療機関なら入院案内や麻酔の同意書というように、自院で使用頻度が高い文書など、自院の状況に応じて文書の多言語化を進めることが推奨されます。なお、厚生労働省では、医療機関の文書の多言語化をサポートするため、院内文書について、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語の5 か国語の資料を提供しています。自院の資料の多言語化を進める上で参考にしてください。

外国人向け多言語説明資料 一覧 (mhlw.go.jp) 2018年

2018年時点においては、対応外国語数は5言語と数が少ないのが気になる。

6.4.  病院内での「やさしい日本語」の導入

順天堂大学医学部では「やさしい日本語」の導入を考えている。

順天堂大学医学部(学部長:服部信孝)は、2020年9月28日、4年生の学生(137名)を対象に外国人診療の際に役立つ「やさしい日本語」の実習授業を実施しました。医学部生たちが将来、医療現場において活用することを想定し、医学教育の一環として「やさしい日本語」を授業として取り入れるのは、国内の医学部において初めての試み※となります。 ※本学調べ

順天堂大学が外国人診療に役立つ「やさしい日本語」を医学部の授業で初実施|順天堂 (juntendo.ac.jp)

6.5.  外国人患者受け入れ医療機関認証制度

しかし、以上のような院内の案内や受付窓口での対応以外に、高度な医療となると外国語対応に問題が起ることが予測される。厚生労働省によって2011年に基盤が策定されて、一般財団法人日本医療教育財団が運用している「外国人患者受け入れ医療機関認証制度」では、兵庫県においては神戸大学病院だけが登録され、英語のみ対応している。一般的には専門的な医療通訳や機械翻訳に外国人対応を依存している。以下のような研究が報告されている。

(2)医療通訳の認定制度
また、厚生労働省では、2016 年度より、厚生労働科学研究において医療通訳の認定制度の検討を行っており、2019 年度には、その検討結果も踏まえ、国際臨床医学会による医療通訳認定制度(「国際臨床医学会(ICM)認定 医療通訳士®」認定制度)が開始されています。本認定制度には、①医療通訳試験合格者認定と ②実務者認定の2つの方法があり、通訳する対象言語により、言語毎の審査、登録がおこなわれます。また、いずれの認定にも、「ICM 認定医療通訳士講習会(ICM 指定)」の受講が必要となっています。

(3)医療通訳費用の取扱い
なお、今後、医療通訳者の数が増えるに伴い、医療機関においては、院内あるいは外部の医療通訳者を活用しながら医療サービスを提供する機会が増えてくるものと考えられます。日本の公的医療保険に加入している在留外国人患者等の場合には、医療通訳は「療養の給付と直接関係ないサービス等」と位置づけられており、その費用については、保険医療機関が患者に対して通訳サービスの内容を明確に説明し、患者の同意を得た上で、保険診療分とは別に徴収することができることとなっています。

     (中略)

(2)通訳手法の種類と特徴 通訳手法には、「対面通訳(院内雇用)」、「対面通訳(外部派遣)」、「電話通訳」・「映像通訳」、「翻訳デバイス」 等、様々なものがあります。医療安全の観点から言えば、院内雇用・外部派遣を問わず、医療通訳のトレーニングを受けた医療通訳者による対面通訳が最も望ましいことは言うまでもありません。しかし、医療通訳のスキルを持った職員を雇用できる医療機関は非常に限られ、医療通訳の派遣を行っている地域も限られているため、多くの医療機関にとって対面の通訳者を確保することは容易ではありません。また最近では在留外国人や訪日外国人旅行者の多国籍化に伴い、英語や中国語などだけではなく、それ以外の様々な言語にも対応しなければならない場合もあります。 以上の状況を踏まえると医療機関は、様々な通訳手法を上手に使い分け、自院にとって実現可能なそして最適な通訳体制を整備する必要があります。

(3)翻訳ツールを利用する際の注意 現在、医療機関で最も使われている通訳手法として挙げられるのが、インターネットの翻訳サイトや翻訳機器等の翻訳ツールです。費用がほとんどかからず、簡単に利用できるため近年利用している医療従事者が増えていますが、翻訳ツールを使用して診療を行った場合には、たとえ誤訳があったとしてもそれを確認できない場合もあるため、診療上のトラブルにつながるリスクがあることは十分理解しておく必要があります。そのため、翻訳ツールを利用する場合には、日常会話に使用を限定するなど、院内で十分なリスク管理を行いながら利用することが推奨されます。 なお、医療機関の中には、院内外の医療通訳者がまったくいない地域や電話・映像通訳が利用できない地域も少なくありません。これらの地域では、翻訳ツールしか利用する術がない可能性がありますが、翻訳ツールは上記のようなリスクを内包していますから、特に侵襲性のある医療行為を行う前のインフォームド・コンセントのような場面でも翻訳ツールを利用している医療機関では、院内外の医療通訳者の利用や電話・映像通訳の導入等に向けて検討することが必要です。

(4)外部の通訳者・団体を利用する場合 通訳体制を整備する際には、通訳派遣団体や電話・映像通訳事業者等、外部の通訳者・団体を利用する場合もあります。最近では、医療機関に対し医療通訳者を派遣したり、電話・映像通訳サービスを提供したりする会社や団体も増加していますが、その質は様々です。また、外部の通訳者・団体の中には、(医療)通訳のスキル自体は高くても、医療現場や医療機関内の診療の流れ等については詳しくない人もいます。そのため、医療機関として外部の通訳者・団体を利用する場合には、安心・安全で適切な通訳が行われるように監督し、場合によっては必要な研修等を実施することが推奨されます。

「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」(厚生労働省政策科学推進研究事業「外国人患者の受入環境整備に関する研究」研究班 主任研究者:慶應義塾大学 北川 雄光)2020年

以上の内容を熟読すると医療通訳の技能や費用、機械翻訳の不備等、まだ色々な問題が残されていることが想像される。医療通訳を依頼するとき、医療通訳制度の充実の必要があるように思える。

7.  司法通訳(法廷通訳・警察通訳)

最高裁判所は次のように示している。

法律上,裁判所では日本語を用いることになっています(裁判所法第74条)が,一方では,社会活動や経済活動の国際化とともに日本語が分からない外国人が日本の裁判に関係することが増えています。このような場合には,その外国人がきちんと裁判に関与できるように法廷等での発言を通訳する通訳人が必要になります。通訳人は,例えば被告人が外国人である刑事裁判においては,被告人の発言を日本語に通訳し,裁判官,検察官,弁護人,証人などの発言を外国語に通訳して,日本語が分からない被告人と裁判官,検察官,弁護人などとの間の橋渡し役になります。こうしたことを通じて,通訳人は,被告人の人権を保障し,適正な裁判を実現する上で非常に重要な役割を果たしています。裁判においては,中立・公正な立場で,法廷での発言を忠実かつ正確に通訳することが必要になります。このような通訳人は,それぞれの裁判において,通訳が必要となった場合に裁判所が最高裁判所が取りまとめている通訳人候補者名簿を参考にするなどして選任しています。通訳人も通訳人候補者も,裁判所の職員ではありません。
通訳人として選任されることを希望する人に対しては,各地方裁判所において裁判官が面接を行います。面接の結果,通訳人としての適性を備えていると認められた人に対しては,刑事手続の概要や法律用語,通訳を行うに当たっての一般的な注意事項を説明し,これらの手続を経た人が通訳人候補者名簿に登載されます。日本国内でその言語を理解する人の数が少ない言語については,裁判手続や法律用語を理解してもらうための法廷通訳セミナーという研修も実施しています。
また,以上のような日本語が分からない場合の言葉の通訳だけでなく,聴覚や言語に障害のある人との通訳を行う場合も通訳人に通訳してもらいます。
なお,通訳人については,裁判所の職員ではないため給与等は支給されませんが,法廷等で通訳を行った場合には,通訳料と旅費等が支給されることになっています(民事訴訟費用等に関する法律第18条,刑事訴訟法第178条)。

通訳人 | 裁判所 (courts.go.jp)

実際の状況についてHPで調べても、意見を示す人の立場によって賛否両論があり、比較的中立的客観的なものを示すと、「毎日新聞」は静岡県立大学国際関係学部の高畑幸教授のインタビューの結果として、2019年に以下のような記事を載せている。

外国人労働者の受け入れ拡大に向けた新制度の導入が進む中、日本語が通じない外国人が被告となる事件が増える一方で、裁判で欠かせない「法廷通訳」の登録者数が減っていることが最高裁などへの取材で明らかになった。通訳は公開の法廷で難解な法律用語を正確に翻訳しなければならず、裁判資料を読み込むなど事前の準備も必要で、専門家は「過重な負担と報酬が見合っていないことが原因の一つではないか」と指摘する。【古川幸奈】

検証:減る法廷通訳 進む外国人材受け入れ、一方で… 過重な負担、報酬見合わず | 毎日新聞 (mainichi.jp)

また、一般社団法人「日本司法通訳士連合会」によると、以下のように問題点を述べている。

司法通訳をめぐる問題 

第1は「通訳人の質」つまり、技能レベルの問題です。
裁判所、検察庁、弁護士会などは、司法通訳人の質を十分に見極めているのか、という問題です。
それは、司法通訳は、被疑者、被告人をはじめとする事件関係者の人権の保障にも深く関わる重要な役割を果たすものであるかかわらず、現状において、司法通訳人につき、十分な質の確保ができていないのではないか。このような指摘が、各方面からなされるようになりました。
第2は「通訳人の地位」つまり、待遇の問題です。
司法通訳は、国家・社会にとって重要な役割を果たすものでありながら、実際には、多くの司法通訳人が、司法通訳としての収入だけでは安定した生活を送ることができない、というのが現実です。

日本司法通訳士連合会とは – JLIA 一般社団法人 日本司法通訳士連合会 (japanlawinterpreter.org)

8. 通訳制度や翻訳人制度の問題点

日本では、医療通訳人・司法通訳人はともに資格ではなく認定・検定試験にとどまっている。プロとして職業として生計が成り立つのかは不明である。質の向上を求めるのなら、職業として生計を立てられる制度を確立しなければならないと思われる。ボランティアの問題と関連して次の回で述べたい。古いが、2003年時点では移民を受け入れているオーストラリアに関しては、次のようになっている。

通訳・翻訳を管轄しているのがNAATI (National Accreditation Authority for Translators and Interpreters)である。NAATIは「オーストラリア通訳翻訳国家認定資格」として、1977年に設立され、1983年7月1日に、オーストラリア連邦政府および州政府により共同出資を受けて、独立組織として再設立された。現在オーストラリアでは、移民省を始めとする政府に提出する公的な翻訳や、国際的な会議における通訳は、NAATIの公認翻訳家または通訳者でないとできないことになっている。通訳・翻訳はかつて公共的・非営利的な業務として扱われていたが、官公庁がNAATIに業務を委譲し、現在では営利的な専門職種として発展しつつある。
NAATI認定の非営利団体が有償のサービスが行われている。外国語、アボリジニーの言語、手話言語AUSLANと英語の通訳も行われているが、料金が高い。永住権や市民権保持者に対して病院、警察等の公的機関が必要と認めた場合には、その非営利団体への料金を肩代わりして電話通訳サービス、文書翻訳サービスを行っている。実際問題として、それぞれの機関が限られた予算の中で通訳サービスを依頼するので、利用者の側では通訳が必要と思っても、常に受けられるとは限らない。電話通訳サービスを行っているが、実際には57言語に対して電話が一本しか設置されていない。州政府単位でも医療関係の公文書が翻訳されてインターネットで検索できるようになっているが、全文書9,377の内、日本語に訳されているのは、74文書のみであり、また、英語の説明が読めないと日本語の文書にたどり着くことができない。

(cf. 永田高志「オーストラリアの言語政策の現在」近畿大学文芸学部紀要『文学・芸術・文化』 16-1、2005年)

現在では、Department of Home Affairs において、移民対象に医療関係や公文書の翻訳も無償で行っている。また、通訳を現地に派遣したり、電話での通訳を有償・無償で行っている。
(cf.Interpreters | Translating and Interpreting Service (TIS National)
非営利団体によって有償のサービスが行われているのは、現在の日本と同様である。しかし、日本では医療通訳認定制度は2019年から始まったばかりで、法廷通訳人は職業として確立していない。私は2003年9月からオーストラリアの Australian National Universityと Monash Universityに半年ずつ客員研究員として滞在していたとき、翻訳や通訳ではないが、英語で論文を書いて発表する際に母語話者の‘proof reading’ といって校正をしてもらう必要があった。外国人留学生のために大学が費用を負担し母語話者を斡旋して校正していた。日本の大学では、私の知っている限りでは留学生が独自に校正を頼むか、指導教員が校正をするかどちらかであろうと思う。留学生に対する国際化も日本は遅れているように思う。

9.  機械翻訳の問題点

出入国在留管理庁編の『生活・就労ガイドブック』(2019年)では、専門用語は「やさしい日本語」で書き換えることは困難なことが分かり、English(英語)・中文(中国語)・코리언(韓国語)・Español(スペイン語)・Português(ポルトガル語)・Tiếng Việt(ベトナム語)・नेपाली भाषा(ネパール語)・ภาษาไทย(タイ語)・Bahasa Indonesia(インドネシア語)・မြန်မာဘာသာစကား(ミャンマー語)・ភាសាខ្មែរ(クメール(カンボジア)語)・Pilipino(フィリピノ語)・Монгол(モンゴル語)の13言語の人間による翻訳に依存している姿勢だと第4回で述べた。ガイドブックのように時間や費用をかけて作れる恒久的な文書は人間による翻訳に頼れるが、一時的な文書、今ではコロナについての緊急の文書に関しては、時間をかけることができないので、機械翻訳に依存せざるを得ないのが現状であろう。機械翻訳の問題点について考えたい。

朝日新聞、withnews 記者の松川希実氏は以下のような記事を2019年に載せている。

浜松市からのお知らせです。今、大きくて、非常に強い、台風19号が近づいています。高塚川周辺に避難勧告が出ました。対象地域、○○地区、○○地区。

浜松市には80以上の国籍の人が暮らしています。
急いで翻訳しようとこの日本語を自動翻訳ソフトにかけました。すべての言語は網羅できないため、まず英語に。そして特に多い日系ブラジル人のために、その英語の文をポルトガル語に訳しました。市の担当者によると、使ったのはGoogle翻訳でした。また、日本語を勉強した人が分かりやすい「やさしい日本語」でも文を急いで作り、流したそうです。

この配信をフェイスブックに引用して掲載した浜松国際交流協会が、数日後、文が正しくないことに気づいて、指摘しました。一見すると「川に避難するように呼び掛けているとも読める」として、問題になりました。
ポルトガル語の文を無理やり日本語にすると以下のようになっていたそうです。

発信されました。お知らせが。あなたが避難するために。高塚川。○○地区、○○地区。

(withnews.jp)

神戸市はHPで在留外国人のために、Googleを使った機械翻訳で情報を流している。対象言語は、英語、中国語(簡体・繁体)、ハングル、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語である。私自身も新型コロナウイルス感染症に関する市長メッセージ(11月19日)でハングルと中国語に機械翻訳されたものについて、日本語に堪能な知り合いの母語話者二人に機械翻訳の正確さを聞いた。二人とも、大体の意味はわかるが、詳しくはよく理解できない。一人は、理解しようとすると分かりづらくて頭が痛くなるというような返事であった。英語に関しては私も調べた。

本市においては、「神戸市新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置し、拡大期に対応した医療・検査・相談体制を確保してきたところですが、感染拡大に伴う医療提供体制への負荷を過大にしないためにも、改めて、本市における感染拡大防止に向けた体制の確保及び市民・事業者への基本的な感染予防対策の徹底を呼びかけてまいります。

を以下のように、機械翻訳している。

In Motoichi, we have set up the “Kobe City New Coronavirus Infection Control Headquarters” and have secured a medical, inspection, and consultation system for the expansion period, but the burden on the medical provision system due to the spread of infection has been increased. In order not to make it excessive, we will once again call on the city to secure a system to prevent the spread of infection and to thoroughly implement basic infection prevention measures for citizens and businesses.

英文では、Motoichiとなっているので固有名詞かと思っていたが、「本市」で「ほんし=神戸」の誤訳であった。もう一度「本市」が出てくるが、ここではうまく翻訳できている。そして、“but the burden on the medical provision system due to the spread of infection has been increased. In order not to make it excessive” を見ると逐語訳や直訳でなく、内容を読んで意訳していることが分かる。 
(cf.神戸市:新型コロナウイルス感染症に関する市長メッセージ(11月19日) (kobe.lg.jp)
私自身も大学院生時代、IPA(情報処理推進機構)やIBMで始まったばかりの機械翻訳のアルバイトをしていたが、当時は実用には耐えられなかった。人が言語規則を作成し、辞書を使って翻訳する規則ベース方式をとっていた。35年ぐらいの間に試行錯誤の結果であろう英語機械翻訳版に関してはいくつかの問題点はあるが、理解できる程度には進歩したと聞いている。それでも、英語で書かれた専門書を機械翻訳された日本語で読めるほどではなく、研究者が機械翻訳によって概略でつかみ、必要な情報が書かれている部分は英語の原典を読むという程度であると聞いたのは10年ほど前であろうか。35年ぐらい前は変形生成文法の全盛期であり、全言語共通の普遍文法を仲介に翻訳を行うという構想も練られた。しかし、現在は原言語と目的言語間の法則の推定確率に基礎を置くコーパスベース方式という手法が主流になっているというが、データーの多い言語と少ない言語との違いや研究期間の短い言語もあり、まだ、機械翻訳は完全には理解できるほど進歩しているとは言えないような状況であると思われる。言語別に機械翻訳の正確さを検証する必要があるだろう。

NHK WORLD-JAPAN でも、英語で24時間放送しているテレビ国際放送に機械翻訳機能を用いて6言語の字幕を2020年から実験的に付与している。「自動翻訳にともなう注意事項をご理解のうえ、ご活用ください。」とあり、信頼性については問題があるが、活用せざるを得ないというのが現状であろう。機械翻訳の内容を信頼して被害や損害が起った場合には、「問題性を注意したのに、利用したのが悪い」という言い訳はきくのであろうか。機械翻訳の技術の将来の進歩と絡んで、責任問題を考えるべき時であろう。人間による翻訳や通訳では、在留外国人の出身地は多岐にわたるので全ての母語に対応できない、また、緊急の場合には翻訳や通訳に頼ると時間的な制約がある等の欠点があった。それを補うために、「やさしい日本語」が提唱され始めたと思われる。しかし、最近では機械翻訳による翻訳と通訳が急速に普及し、「やさしい日本語」に替わって用いられるようになり始めたと考えられないであろうか。
現時点の問題として、言語別に機械翻訳の正確さを検証する必要があるであろう。日本語を外国語に機械翻訳し、さらに、その翻訳を再度日本語に機械翻訳し、原文と翻訳の日本語を比べることによって、そのソフトの正確さを検定する方法がある。また、機械翻訳の内容を信頼して被害や損害が起った場合の責任問題を考えるべき時であろう。

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