句読法、テンマルルール わかりやすさのきほん|第1回  句読点の規則|岩崎拓也

 みなさんは、どの句読点の組み合わせを使っていますか。

 そう言われても、何のことだかわからない人もいるかもしれません。実は、日本語の句読点には「、」(テン)と「,」(コンマまたはカンマ)、「。」(マル)と「.」(ピリオド)が存在します。ですので、可能性としては「、。」「,。」「,.」「、.」の4種類の組み合わせが考えられます。実際、パソコンでも「キーボード」の「入力ソース」設定からこれらの句読点の各組み合わせを選ぶことができます。

図 Macの句読点の種類の設定画面

 おそらくですが、横書きと縦書きのどちらにしても、日本語の場合は「、」と「。」の組み合わせが一般的だと思います。『平成29年度国語に関する世論調査〔平成30年3月調査〕』によると、横書きの場合に使う句読点は、「、。」が81.3%で最も多く、次に多いのが「,。」で9.5%、残りの「、.」が2.7%、「,.」が2.3%となっています。この調査では、縦書きの場合の句読点については調べられていませんが、おそらく「、。」がほとんどだと思います。

 このように、一般的に句読点といえば「、。」の組み合わせのようですが、研究者にとって、句読点は面倒くさいことこの上ない問題です。論文を書いて投稿するさい、学会誌によって、「,」と「。」を使って書くのか、「,」と「.」の組み合わせで書くのか、バラバラなのです。ですので、研究者のTwitterなんかを見ていると、あるときは読点、あるときはコンマでつぶやかれていて、「あー、なんか論文書いているんだなあ」と分かったりもします。

 最近では、Twitterで「,.」の組み合わせが怖く見えると漫画で取りあげられたりするなど、良くも悪くも句読点が注目されているようです(https://twitter.com/DEATHcotori/status/1375981992664125442?s=20

 つまり、一般的には、「、。」が使われることが多いようですが、教科書や公文書といった少し硬い文章では、「,。」が使われることがあります。「,.」は、理系の論文などで使われています。なお、私は「、.」はほとんど見たことがありません。

 なぜ、日本語の句読点はこのようなややこしいことになっているのでしょうか。この連載では、日本語を使う人ならほぼ毎日使うといっても過言でもない、句読点について焦点を当てます。第一回は、現代の日本語における句読点についての規則がどのようになっているのかを、見ていきたいと思います。

 まずは、この一連の連載にあたって、以下のように用語を定義しておきます。

       テン……「、」
       コンマ……「,」
       読点……「、」と「,」(場合によっては「・」(ナカテン)も含む)
       マル……「。」
       ピリオド……「.」
       句点……「。」と「.」
       句読点……句点と読点をあわせたもの

句読点の使い方にかんする規則(基準)について

 一応、句読点の打ち方には一定のルールが存在します。

 1946年(昭和21年)に文部省(現在の文部科学省)教科書局調査課国語調査室によって作成された『くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)』(以下、『くぎり符号の使い方』)と1952年(昭和27年)4月4日付けで内閣閣甲第16号依命通知として作成された『公用文作成の要領〔公用文改善の趣旨徹底について〕』(以下、「公用文作成の要領」)というものです。これらについて、それぞれ見ていきます。

1)1946年(昭和21年)に文部省教科書局調査課国語調査室によって作成された『くぎり符号の使い方』

 『くぎり符号の使い方』は、1906年(明治39年)に文部大臣官房図書課によって示された『句読法案・分別書キ方案』(以下、『句読法案』)をもとに現代口語文に適するように調整された基準です。

 名前を見るとわかるように、あくまで「案」であるため、強制力はありません。まえがきを読むと、「二、くぎり符号は、文脈をあきらかにして文の読解を正しくかつ容易ならしめようとする」(p60)とあります。しかしながら、これに続けて、「四、くぎり符号の適用は一種の修辞でもあるから、文の論理的なすぢみちを乱さない範囲内で自由に加減し、あるひはこの案を参考として更に他の符号を使つてもよい。なほ、読者の年齡や知識の程度に応じて、その適用について手心を加へるべきである。」(p61)と書かれています。これは、くぎり符号(句読点)の使い方は、書き手がどのような読み手を想定するかによって自由に使いわけていいということであり、書き手に句読法を委ねていると解釈できます。そのため、現在においても、日本語の句読法に正確かつ厳密なルールは存在しないと言えるのです。

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自動的に生成された説明
文部大臣官房図書課(1906)に『くぎり符号の使い方』(国立国会図書館デジタルコレクション)

 なお、『くぎり符号の使い方』は文部省(1963)『国語シリーズ56 国語表記の問題』の付録にも掲載されていて、こちらのほうが少し読みやすいです。(以下のURLから読むことができます(https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/series/56/56.html

 句読点の具体的な記述について見ていきましょう。この『くぎり符号の使い方』を見てみると、「主として縦書きに用いるもの」としてテンとマルが、「もっぱら横書きに用いるもの」にコンマとピリオドが挙げられています。

マルについては以下のようにまとめられています(原文は縦書き)。

一、  マルは文の終止にうつ。(例1、2、3)
二、  「 」(カギ)の中でも文の終止にはうつ。(例4)
三、  引用語にはうたない。(例5)
四、  引用語の内容が文の形式をなしていても簡単なものにはうたない。(例6)
五、  文の終止で、カッコをへだててうつことがある。(例7)
六、  附記的な一節を全部カッコでかこむ場合には、もちろんその中にマルが入る。(例8)
(1) 春が来た。
(2) 出た、出た、月が。
(3) どうぞ、こちらへ。
(4) 「どちらへ。」「上野まで。」
(5) これが有名な「月光の曲」です。
(6) 「気をつけ」の姿勢でジーッと注目する。
(7) このことは、すでに第3章で説明した(五七頁参照)。
(8) それには応永三年云々の識語がある。(この識語のことについては後に詳しく述べる。)

 特に問題ないように見えますが、(4)の場合はかぎカッコの直前に句点を打たなくてもいいのではないか、また、(7)と(8)のように丸カッコの前にマルをつけるのか、後につけるのかについてもゆれが存在しています。

 次に、テンの記述について見ていきます(面倒な人は読み飛ばしてもらっても結構です)。

一、テンは、第一の原則として文の中止にうつ(例1)。
二、終止の形をとっていても、その文意が続く場合にはテンをうつ(例23)。ただし、他のテンとのつり合い上、この場合にマルをうつこともある(例4)。
〔附記〕 この項のテンは、言わば半終止符ともいうべきものであるから、将来、特別の符号(例えば「﹆シロテン」のごときもの)が広く行われるやうになることは望ましい。
 用例の〔参照一〕は本則によるもの。また〔参照二〕は「﹆シロテン」」を使ってみたもの。

三、テンは、第二の原則として、副詞的語句の前後にうつ(例5 6 7)。       その上で、口調の上から不必要のものを消すのである(例5における(、)のごときもの)。
〔附記〕 この項の趣旨は、テンではさんだ語句を飛ばして読んでみても、一応、文脈が通るようにうつのである。これがテンの打ち方における最も重要な、一ばん多く使われる原則であって、この原則の範囲内で、それぞれの文に従い適当に調節するのである(例8 9 10 11)。
 なお、接続詞、感嘆詞、また、呼びかけや返事の「はい」「いゝえ」など、すべて副詞的語句の中に入る(例12 13 14 15 16 17 18)

四、形容詞的語句が重なる場合にも、前項の原則に準じてテンをうつ(例19 20)。
五、右の場合、第一の形容詞的語句の下だけにうってよいことがある(例21 22)。
六、語なり、意味なりが附著して、読み誤る恐れがある場合にうつ(例23 24 25 26)。
七、テンは読みの間(ま)をあらはす(例26 参照27)。
八、提示した語の下にうつ(例28 29)。
九、ナカテンと同じ役目に用いるが(例30)、特にテンでなくては、かえって読み誤り易い場合がある(例31)。
十、対話または引用文のカギの前にうつ(例32)。
十一、対話または引用文の後を「と」で受けて、その下にテンをうつのに二つの場合がある(例33 34 35)。
 「といつて、」「と思つて、」などの「と」にはうたない。
 「と、花子さんは」というやうに、その「と」の下に主格や、または他の語が来る場合にはうつのである。
十二、並列の「と」「も」をともなって主語が重なる場合には原則としてうつが、必要でない限りは省略する(例36 37 38 39)。
十三、数字の位取りにうつ(例40 41 42)。
〔附記〕 現行の簿記法では例40 41のごとくうつが、わが国の計数法によれば、例41は42のごとくうつのが自然である。
(1) 父も喜び、母も喜んだ。
(2)父も喜んだ、母も喜んだ。
(3)クリモキマシタ、ハチモキマシタ,ウスモキマシタ。
(4)この真心が天に通じ、人の心をも動かしたのであらう。彼の事業はやうやく村人の間に理解されはじめた。
〔参照一〕この真心が天に通じ、人の心をも動かしたのであらう。彼の事業は……
〔参照二〕この真心が天に通じ、人の心をも動かしたのであらう﹆彼の事業は……
(5)昨夜、帰宅以来、お尋ねの件について(、)当時の日誌を調べて見ましたところ、やはり(、)そのとき申し上げた通りでありました。
(6)お寺の小僧になつて間もない頃、ある日、をしやうさんから大そうしかられました。
(7)ワタクシハ、オニガシマヘ、オニタイジニ、イキマスカラ、
(8)私は反対です。
(9)私は、反対です。
(10)しかし私は、
(11)しかし、私は……
(12)今、一例として、次の事実を報告する。
(13)また、私は……
(14)たゞ、例外として、
(15)たゞし、汽車区間を除く。
(16)おや、いらつしゃい。
(17)坊や、お出で。
(18)はい、さうです。
(19)くじやくは、長い、美しい尾をあふぎのようにひろげました。
(20)静かな、明るい、高原の春です。
(21)まだ火のよく通らない、生のでんぷん粒のあるくず湯を飲んで、
(22)村はづれにある、うち雜木山を開墾しはじめてから、
(23)弾き終わつて、ベートーベンは、つと立ちあがつた。
(24)よく晴れた夜、空を仰ぐと、
(25)実はその、外でもありませんが、
(26)「かん、かん、かん。」
(27)「かん(繰り返し符号)。」
(28)秋祭、それは村人にとつて最も楽しい日です。
(29)香具山・畝火山・耳梨山、これを大和の三山といふ。
(30)まつ、すぎ、ひのき、けやきなど
(31)天地の公道、人倫の常経
(32)さつきの槍ヶ岳が、「こゝまでおいで。」といふやうに、
(33)「なんといふ貝だらう。」といつて、みんなで、いろ(繰り返し符号)字貝の名前を思ひ出してみましたが、
(34)「先生に聞きに行きませう。」と、花子さんは、その貝をもつて、先生のところへ走って行きました。
(35)「おめでたう。」「おめでたう。」と、互に言葉をかはしながら……
(36)父と、母と、兄と、姉と、私との五人で、
(37)父と母と兄と姉と私との五人で、
(38)父も、母も、兄も、姉も、
(39)父も母も兄も姉も、
(40)一、二三五
(41)一、二三四、五六七、八九〇
(42)一二、三四五六、七八九〇

 『くぎり符号の使い方』では、テンは、文の中止と副詞的語句の前後に打つという二つの原則(一と三)があるとまとめられています。とはいえ、文の中止全てに読点を打つと読みにくくなるため、加減というものが必要になります。副詞的語句の前後に打つテンも同じで、この点については〔附記〕にまとめられてはいるものの、「適当に調節する」という説明には、曖昧さが残ります。また、「二、」の「終止の形をとっていても、その文意が続く場合にはテンをうつ(例23)。ただし、他のテンとのつり合い上、この場合にマルをうつこともある(例4)。」という記述も、曖昧です。(2)の「父も喜んだ、母も喜んだ。」のテンはマルでもかまわないという人も多いと思います。

 このように、ざっと目を通しただけでも、煩雑かつ曖昧なまとめ方になっているのがわかると思います。実際に、例文に目を向けてみると、(8)と(9)のようにとりたて助詞の「は」のあとにテンを打つかどうか、という問題や、(10)と(11)のように、接続詞「しかし」の直後にテンを打つかどうかという問題があります。これらの問題やそのほかの問題については、今後の連載の中で取りあげていきたいと思います。

 次に、コンマとピリオドの記述を見ていきます(原文では、用例部分のみ横書き)。

一、ピリオドは、ローマ字文では終止符として用いるが、横書きの漢字交じりかな文では、普通には、ピリオドの代りにマルをうつ(例1 2)。
二、テン又はナカテンの代りに、コンマ又はセミコロンを適当に用いる(例3 4 5 6)。
三、引用符・ハイフンの用例は略す。半ガッコの用例は下欄で実地に示した。
1)      春が来た。
2)      出た,出た,月が。
3)      まつ・すぎ・ひのき・けやきなど,
4)      まつ,すぎ,ひのき,けやきなど,
5)      明日,東京を立つて,静岡,浜松,名古屋,大阪・京都・神戸,岡山,広島を六日の予定で見て来ます。
6)      静岡;浜松;名古屋;大阪,京都,神戸;岡山;広島を

 『くぎり符号の使ひ方』では、ローマ字文の場合はピリオドを、漢字まじり仮名文ではマルを使用するのが普通であると示しています。横書きの例では、テンやナカテン以外にもセミコロンが使用された例も見られます。この表記法は、現在ではあまり見られないような例だと思います。

 いずれにせよ、この基準を採用した場合、「,.」と「、.」は日本語の文では普通ではない、ということになりそうです。しかし、実際には理系の論文などでは「,.」の組み合わせが使われていることから、やはりこの基準が絶対ではないということがわかります

2)1952年(昭和27年)に内閣総理大臣官房総務課によって示された「公用文作成の要領」

 「公用文作成の要領」は、公用文をよりわかりやすく示すための基準です。用語の使い方や左横書きといった書字方向、文体についてなどさまざまなことについて書かれており、今現在でもこの「公用文作成の要領」が一般的な基準として考えられることが多いです。句読点については、「第3 書き方について」の注2において「句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる。事物を列挙するときには「・」(なかてん)を用いることができる。」(p.8)と書かれています。

 先程の世論調査の結果では、横書きの句読点で最も多く使われる組み合わせは「、。」でしたが、この「公用文作成の要領」では、「,。」を使うように明確に示されています。現在の日本語で書かれた文章には、コンマが使用されている文章もあれば、テンが使われている文章もあります。つまり、一概にこの基準が守られているとは言いがたい状況にあるのです。

 現在、この「公用文作成の要領」は、改訂が進められています。令和3年3月12日には、「新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)」が第76回文化審議会国語分科会において取りまとめられ、公開されています。

 今後の連載では、句読点の成立を概観したあと、読点がどのように打たれるのか四つの観点から見ていきます。その後、句読点の問題点を列挙し、これらの問題点にたいして句読点研究はどのように行われてきたのかをまとめます。その上で、国語教育と日本語教育ではどのように句読点が扱われているのかを分析します。その後、マスメディアやSNSなどのインターネットにおいて句読点がどのように使用されているのかをみていきます。最後に、句読点以外の記号・符号についてまとめていきたいと思います。

今後の連載の予定
01:句読点の規則
02:句読点の成立:戦前・戦後、現代
03:読点の打ち方:構造、長さ、意味、リズム
04:読点の使い方の問題点
05:句点の使い方の問題点
06:句読点研究史
07:国語教育における句読点
08:日本語教育における句読点
09:マスメディアにおける句読点
10:インターネットにおける句読点
11:句読点以外の記号の使い方について

【参考文献】

内閣閣甲第16号依命通知(1952)『公用文作成の要領〔公用文改善の趣旨徹底について〕』(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/kento/kento_03/pdf/sanko_2.pdf

文化庁(2018)『平成29年度国語に関する世論調査〔平成30年3月調査〕』(https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/92701201_02.pdf

文部省教科書局調査課国語調査室1946年(昭和21年)『くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)』(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1126388/1)

文部大臣官房図書課(1906年)『句読法案・分別書キ方案』(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/903921


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