第61回 「基本的な方針」改定と外国人受け入れ施策の変更|田尻英三

★この記事は、2025年6月24日までの情報を基に書いています。

ウクライナとロシアの戦争、イスラエルのガザ地区への侵攻だけでなく、イランとイスラエルの戦争へのアメリカの参戦など、世界中の政治状況は悪化の一途をたどっています。このような時期こそ、DEI(多様性、公共性、包摂性)の考え方を大事にすべき時だと考えています。
日本語教育でも、大事な会議が開かれ、政府の新たな方針が示されています。政府の「骨太の方針2025」では、外国人受け入れ施策の方向が明確に変わりました。日本語教育関係者は、日々の身近な問題だけに埋没するのではなく、大きな流れにもっと注意を払うべきだと感じています。

1. 第10回日本語教育推進関係者会議の検討事項

第10回日本語教育推進関係者会議は、6月2日に開かれて、視聴者は約300人と聞いています。
議題は日本語教育関係施策の推進状況と、「日本語教育の推進に関する施策を相互的かつ効果的に推進するための基本的な方針(改訂案)」(以下、「基本的な方針」と略称)の二つですが、前者は今年度の日本語教育予算関連の説明ですので、この会議での大事な点は5年毎に見直される「基本的な方針」の検討です。ここでは、「基本的な方針」の改定案について、田尻が考えるポイントについて述べます。
細かな指摘を煩わしいと思うかもしれませんが、どれも大事な点ばかりです。どのように大事なのかを書くとかなりの量になりますので、お読みになる人が自分で判断してください。必ず「基本的な方針」を手許に置いた上で読んでください。
この「基本的な方針」は改めて文部科学省でパブリックコメントを募集するでしょうが、その際に皆さんは田尻の意見にとらわれるころなく、自由にコメントを提出してください。
今年度の日本語教育予算についてよく知らない人は、この会議の資料を見れば、情報が分かりやすくまとめられていますので、必ず参照してください。

「基本的な方針」の全文は、以下のURLで見ることができます。
https://www.mext.go.jp/content/20250530-mxt_nihongo02-000042870_2.pdf
この資料は、元の資料に今回の修正点を赤で書き込んだ「見え消し版」として掲載されています。もう一度言いますが、必ずこの資料を手許に置いた上で、以下の田尻のコメントを読んでください。

この5年間で変わった重要な点は、以下のとおりです。
・「日本語教育機関認定法」の成立
・外国人児童生徒等の増加とこの問題の社会的認知
・育成就労や特定技能などの「就労」分野での外国人労働者受け入れ増大
この重要な点が、今回の「基本的な方針」でどのように書き込まれているかを中心に見ていき、田尻のコメントを付します。

  • 第2章 1 (1)「 ア 外国人等である幼児、児童、生徒等に対する日本語教育」で「特定の地域への集住化」には触れていますが、同時に多くの地域での少人数の幼児、児童。生徒等の「散在化」にも触れてほしいと思います。
  • 6ページの「具体的施策例」
    「外国人児童生徒等に対する・・・措置を講ずる」は書き込まれた上で消されていますが、田尻は大事だと考えるので、復活させてほしいと思います。その際には、「特別免許での登録日本語教員の活用を検討する」を加えてほしいと思います。
    「中学校・高等学校・・・図られるよう促す。」の段落に2か所「外国人生徒」とあるところを「外国人児童生徒等」に代えてください。
  • 6ページの数か所で「外国人の子供」という表現が見られますが、「外国人児童生徒等」で統一すべきと考えます。
  • 7ページの夜間中学の外国籍の割合は、「約6割」ではなく、「約7割」だと思います。田尻の計算では67%です。また、「夜間中学の日本語指導の調査研究における日本語教育指導のカリキュラム作成には、日本語教育の専門家を加えた有識者会議を創設する」を加えてください。
  • 9ページの「ウ 外国人等である被用者等に対する日本語教育」の「事業主が育成就労・・・開発等の支援を行う」の段落で「教材やモデルカリキュラム」とある箇所へのコメントです。田尻は「モデルカリキュラム」の開発も大事ですが、資料を雇用主に渡しただけではどのように使われるか分かりませんので、「向上の機会が提供されることができるよう」を「向上の機会を提供し」と変え、その前に、「認定日本語教育機関あるいは登録日本語教員による」を加えて、確実に被用者への日本語教育の機会を確保する表現にすべきだと考えます。
  • 10ページの「エ 難民等に対する日本語教育」の「具体的施策例」の最初の段落に「基礎日本語能力」とありますが、どのようなものが「基礎日本語能力」であるかは関係者の間で共通理解があるとは思えないので、「基礎的な日本語能力」としたほうがいいと思います。
  • 11ページの「オ 地域における日本語教育」の下から4行目に「日本語教育機関等の偏り」の「偏り」の前に「地域的な」を加えてください。
  • 13ページの同じ「オ」の「具体的施策例」に「地方公共団体においては・・・普及を図る」という段落は、どのような施策を構想しているのか分かりませんでした。
  • 15ページ「(2)海外における日本語教育の充実 ア 海外における外国人等に対する日本語教育」に「JFを通じ、特に中等教育機関・・・現地の日本語教育振興に協力する。」の後に、「高等教育機関への指導者派遣や教材提供については、長期の支援プランを作成する必要がある」を加えてください。日本の大学院への進学者がいるような海外の高等教育機関への支援は、これからの日本外交においても重要な視点だと考えます。
  • 23ページ「5 日本語能力の評価」の「具体的施策例」の最初の段落に「『就労』分野での日本語能力に日本語能力試験の評価の枠組みを使うのではなく、全て「日本語教育の参照枠」を使うべきです。また、「育成就労のA1(150時間)の日本語教育カリキュラムを作成しなければいけない。」を加えてください。
  • 25ページ第3章 1 (1)「日本語教育推進会議」の段落に「日本語教育推進関係者会議を年複数回開催し」を加えてください。2024年度は3回開催予定でしたが、実際には2回しか開かれませんでした。また、6月2日の会議の最後の事務局からの連絡に、次回のお知らせもありませんでした。日本語教育推進関係者会議は、政府の日本語教育施策について、有識者が直接意見を言える唯一の会議です。今後、日本語教育課が「就労」分野について厚生労働省や出入国在留管理庁と話し合う際に、日本語教育課を支援することができる会議となります。そのためにも、年複数回開催する必要があります。

2. 「骨太の方針2025」の気になる点

正式には「経済財政運営と改革の基本方針2025」ですが、ここでは通称に従って「骨太の方針2025」とします。
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2025/2025_basicpolicies_ja.pdf

これに関する資料は、いったん6月6日の令和7年度第7回経済財政諮問会議に「原案」として提出されましたが、現在はサイトから削除されています。ここでは、上にURLを示した6月13日の経済財政諮問会議に出された「経済財政運営と改革の基本方針2025~『今日より明日はよくなる』と実感できる社会へ~」を扱い、必要に応じて「原案」を扱います。

(1)「骨太の方針2025」について

この「骨太の方針2025」を昨年度の「骨太の方針2024」と比較すると、「日本語教育」は「外国人材の受入れ」の項(「認定日本語教育機関」と「地域の日本語教育」)でまとめて扱われました。しかし、「骨太の方針2025」では「認定日本語教育機関」は「外国人との秩序ある共生社会の実現」の項で扱われましたが、「地域の日本語教育」は「公教育の再生・研究活動の活性化」の項で扱われています。また、「外国人」という語は9回掲出から21回掲出と大幅に増えています。この「骨太の方針2025」は、外国人受け入れ施策の方向性の明らかな変更となります。

「骨太の方針2025」の第2章「賃上げを起点とした成長型経済の実現」の「4 国民の安心・安全の確保」(「骨太の方針2024」では「幸せを実感できる包摂社会の実現」となっていて、項目名でも変化が分かります)の「(5)外国人との秩序ある共生社会の実現」とあり、2024年に無かった項目が立てられています。ここでは、「秩序ある」がキーワードです。

以下では、「外国人」が集中的に掲出する「(4)外国人との秩序ある共生社会の実現」から、田尻が気になる点を列挙します。

  • 前文では、「海外活力の取り込みを進めつつ、国民の安心・安全を確保するため、外国人との秩序ある共生社会の実現に向けて、外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議など政府横断的な司令塔体制を更に強化し、実態把握や国・自治体の情勢基盤整備を行うとともに、法令順守の徹底、制度の適正利用、透明性の観点から、国内社会のグローバル化を前提としていない制度・運用全般を見直すなど、総合的・施策横断的取組を進める」と書かれています。ここでは、「更に強化し」、「法令順守の徹底」、「制度・運用全般を見直す」などのように、従来の取り組みへの厳格化を目指しているように見えます。

なお、以下で扱われるテーマは、後で扱う自由民主党の特命委員会の提言を受けて選ばれたように見えます。

  • (出入国在留管理の一層の適正化)では、「査証や入国在留関係手数料の設定・見直しを検討する」、「出入国在留関係審査・管理の強化・高度化」、「不法就労対策及び被仮放免者の動静監視の強化、不法滞在者ゼロを理念に摘発・送還を行う」というように、ここでも施策の厳格な適応を求めています。また、「育成就労制度及び特定技能制度について、分野・受入れ見込数の設定、監理支援機関の要件厳格化等を行うほか、外国人育成就労機構を含め必要な体制を整備する。」とあるように、後で触れるような新しい体制を作ることが目指されています。この箇所の後に「認定日本語教育機関の体制整備・活用を進める。」が出て来ます。
  • (外免切替手続・社会保険制度の適正化)、(国土の適切な利用及び整理)、(観光・短期滞在者への対応の強化)などの項は、特命委員会の提言に出て来るものです。
  • 第3章の「2」の「(3)公教育の再生・研究活動の活性化」では、「地域の日本語教育の体制整備、外国人児童生徒等への支援対英の強化」や「外国人留学生受入れ年間40万人目標実現に向け、官民一体での支援策の戦略的活用に取り組む」とあるように、地域の日本語教育や外国人児童生徒等への日本語教育は外国人受け入れ施策から公教育が扱う範疇へと位置づけが変わっています。外国人受け入れ施策の厳格化とは別の扱いになっています。

(2)「外国人との秩序ある共生社会実現に関する特命委員会」の提言

自由民主党のホームページに、6月6日官邸で政策調査会外国人との秩序ある共生社会の実現に関する特命委員会が「国民の安心と安全のための外国人政策第一次提言―違法外国人ゼロを目指してー」(以下、「提言」と略称)を石破総理大臣に手渡した記事が出ています。この提言自体は、6月5日にまとめられています。この委員会の委員は、小野寺五典議員・新藤義孝議員・松本洋平議員・大野敬太郎議員です。提言は、以下のURLで見ることができます。
https://storage2.jimin.jp/pdf/news/policy/210802_1.pdf
この「提言」はニュースに出て来る最近の外国人問題を受けて検討されたことは、「はじめに」の中で「昨今の国民の不安の声の高まりを踏まえれば」という表現で示されています。また、「統治に対する国民の信頼を堅持し、国際社会から公正な国であるとの信頼を維持する観点にも留意が必要である」、「これまでの我が国の制度は、多数の外国人を受け入れるグローバル化した社会を前提とした設計になっておらず、国籍等の情報や土地所有等の実態の把握を制度的に行うことができていない。こうした制度の現状のままに外国人の受け入れを進めていく政策から、秩序ある共生を前提とした外国人の受け入れを進める政策に転換することが必要である」などの表現もあります。
その上で、以下の「3つの原則」を立てています。
① 法令順守の徹底
② 制度の適正利用
③ 透明性の確保
以下に要点だけを列挙します。

  • 国・都道府県・市区町村・受入機関・使用者(田尻注:「雇用主」とすべきです。「使用」という語は、外国人労働者への人権意識が感じられません)などの関係者がそれぞれの役割に応じて責任を果たす必要がある。
  • 在留資格に該当しない就労活動などの実態調査を図るべきであり、こうした適正な出入国在留管理のための人的・物的体制を強化すること。
  • 退去強制が画定した外国人が多い国に対して、入管庁と外務省が協力して、不法滞在者の発生を防止するための取組などに関する働き掛けを強化するとともに、誤用・濫用的な難民認定を抑制するため、(中略)在留の制限を実施する
  • 在留資格「経営・管理」の現行の許可基準が他国に比べて緩く、事業実態のない申請につながっている
  • 留学生の資格外活動の管理の徹底や資格外活動許可の見直し、アプリの活用などによる偽造在留カード利用の防止対策の強化
  • SNS投稿等の資料収集を強化しつつ不法滞在者等の縮減に計画的に取り組むこと。(中略)送還停止効の例外として送還が可能になった者や重大犯罪者などを中心に、計画的かつ確実に護送官付き国費送還を実施する
  • 被仮放免者の動静監視に注力し、不法就労の抑止を図るとともに、入管庁と警察が協力して、被仮放免者の不法数労及び雇用主の不法就労助長を積極的に摘発すること。
  • 入管DXの推進
  • 「特定技能制度及び育成就労制度の円滑な運用に向けた取組」として、日本語能力を測る試験等の受験機会の拡大
  • 外免切替手続の見直し
  • 税・社会保険料の未納防止、国保加入時に保険料前納、医療機関が診察を拒否できる正当な理由の更なる周知
  • 児童手当・就学援助の適正利用、高校無償化は引き続き議論
  • 外国人を含めた全国の土地等の透明性の向上
  • 観光・短期滞在者の迷惑行為等への対応強化
  • 政府の司令塔体制の整備(6月6日の「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」での石破総理の発言に「内閣府の事務局組織を設立する」とありました)

この特命委員会より前の5月27日に、自民党の「外国人材等に関する特別委員会」が「外国人材等に関する特別委員会提言―国民と外国人が安全・安心に暮らせる共生社会に向けて―」を作成し、5月28日に石破総理に手交しています。その内容も上述の特命員会の提言とかなり重なるものがありますが、石破総理の言及と「秩序ある共生社会」という表現を使っている点で、ここでは特命委員会の説明に重きを置きました。

現在、政府は特定技能制度や今後利用される育成就労制度などにより、多くの外国人労働者を受け入れようとしています。この時点で、一方では外国人の在留に関わる要件を厳格に執行しようとしています。もちろん法令遵守は当たり前ですが、受け入れ体制が十分に出来上がっていない状態で、マスコミなどで取り上げられている外国人問題について詳しい調査などがないまま厳しい規制をかけるということに問題を感じています。そして、その規制などを統括的に扱う事務局組織が内閣府に設置された場合、どの程度DEIを考慮した体制が取れるかは、現時点では未定です。
今後、この「骨太の方針2025」がどのように来年度予算に反映していくかを注目しましょう。

3. 日本語教育推進議連総会について

6月12日に参議院議員会館で、第22回総会が開かれました。
司会進行は、事務局長の里見隆治議員、開会挨拶は会長の柴山昌彦議員、閉会の挨拶は副会長の浮島とも子議員でした。議事については、日本語教育学会の「学会からのお知らせ」や日本語教育機関団体連絡協議会の「お知らせ」で見ることができます。以下には、日本語教育学会のサイトを掲げます。
https://www.nkg.or.jp/news/.assets/20250612_giren22.pdf
出席者は、文部科学省・総務省・法務省・外務省・厚生労働省・経済産業省・金融庁の担当者と上記連絡協議会メンバー13人と日本語教育学会副会長の小澤伊久美さんです。
田尻は出席していませんので、この総会のやり取りについては書けませんが、資料は全部入手しています。この総会には、上記連絡協議会からの「要望書」が出されていますが、その資料は上記2機関のどちらのサイトにも出ていません。田尻は、どのような現場の声が上がっているかを知らせたほうがいいと考えますが、連絡協議会のサイトでは公開していませんので、ここでは書けません。
この議連のメンバーは、4月8日現在64人となっており、強い発言力を持った議連となっています。今後の活動にも期待しましょう。

4. 田尻の日本語教員国家資格化の論文

『公明』2025年7月号に「日本語教師国家資格化1年 外国人受け入れの第一歩に寄せる期待と注文」という論文が公刊されました。ここでは、日本語教師が国家資格を取得する過程や現状の問題点を書いています。『公明』は商業誌なので、ここにその本文を引用することはできません。どうか同誌をご購入ください。購入のご案内は、次のURLにあります。定価は、税込み314円です。
https://komeiss.jp/products/detail.php?product_id=417

5. 日本語学会の他の学会との連携に思うこと

日本語学会創立80周年として、日本語学会が国語教育との連携を始めました。日本語学会のシンポジウムや『日本語探求のすすめ―日本語学と国語教育の連携に向けて―』(2024年12月、日本語学会編、大修館書店)という書籍も出版されています。田尻は、この日本語学会の動きはいかがかと感じています。どうして日本語学が日本語教育学と距離を置くような動きになったのかについて、田尻なりに考えてみました。

2018年 東京堂出版から『日本語学大辞典』が出版された。ここでは、関連領域として日本語教育が挙げられています。
2019年 日本教育推進法が成立しました。
2023年6月2日 日本語教育機関認定法が公布されました。
2023年10月29日 日本語学会創立80周年記念大会プレ企画「日本語学と国語教育の接点」(田尻注:この企画は明治期における国語教育における文法教育を扱っているので、国語教育と当時の国語学との関係の深さは理解できる)が開催されました。
2024年6月1日 日本語学会春季大会シンポジウム「世界の日本語学」での近藤泰弘さんの「日本語学の80年」でも、日本語学と日本語教育との結びつきの強さに言及しています。
2024年12月30日 『日本語探求のすすめ』発刊、本書所収の近藤泰弘さんの「日本語学から見た国語教育との連携」では、1968年以降の機関誌『国語学』で国語教育を扱わなくなった経緯が書かれています。

2019年以降、日本語教育は関係する法律が成立し、文化庁国語課の中にあった日本語教育が文部科学省総合教育政策職の中の課として独立したように、日本語教育が目立った動きをしてきました。
またかつて、1968年当時の国語学会では、国語教育とは距離を置くという態度を取ってきたことがありました。その後、至文堂の『国文学 解釈と鑑賞』や明治書院の『日本語学』に定期的に国語教育のテーマが取り上げられることはありましたが、日本語学と国語教育が連携した企画があったような記憶は、田尻にはありません。
国語学会の会員は1418人、全国大学日本語教育学会の会員は1340人であるのに対して、日本語教育学会の会員は3246人です。
日本語学会は、国語教育との連携を図るのも結構ですが、むしろ日本語学・国語教育学・日本語教育学を束ねる存在になってほしいと田尻は考えています。

※この時期に取り上げなければいけないテーマがいくつもありますが、それらを全て書いても、長すぎると言って読もうとしなくなる人もいますので、ここで終わります。
ただ、次の2点だけはふれておきます。
① 「留学生新聞」6月18日の「インフォメーション」の記事に、登録日本語教員の試験に合格しても登録申請をしない人が803人いると書かれています。
② NPO法人AHPネットワークス編『受け入れ現場から考える外国人労働問題と介護の取り組み』(2024年、ひつじ書房)に、多くの現場の問題が書かれています。

気が重いお知らせばかりですので、以下に龍谷大学留学生別科を修了して国際文化学部へ進学し、卒業後は出身のミャンマーで有機農業を営んでいる人と20年ぶりに再会した時のメールを紹介します。その頃の日本の正月は留学生にとっては寂しいものでしたので、少人数の別科生・交換留学生を10人ほど拙宅に呼んでおせち料理を食べさせていました。その時の思い出を書いたものです。奥様は、ヤンゴンで日本語学校を経営しています。

2005年、龍谷大学の日本語別科で当時日本語の先生だった田尻先生と出会ってから、もう20年が経ちました。
日本語がもっと上手になるようにと、新聞を読むことやニュース番組を見ることを勧めてくださった先生のアドバイスが、今でも心に残っています。
2010年、龍谷大学の卒業式でお会いして以来ずっとお会いできていませんでしたが、今年、思い切って「先生にお会いしたいです」とメッセージを送ったところ、「ぜひ来てください」と言っていただき、龍谷大学の深草キャンパスで再会することができました。
先生の奥様もご一緒で、本当に嬉しいひとときでした。2006年1月のお正月、先生のお宅に招いていただき、お節料理やお雑煮をご馳走になったことを今でもはっきりと覚えています。新年をひとり寂しく過ごしていた私にとって、先生の奥様の手料理は心が温まるもので、あのときの温もりは今でも忘れられません。
日本語を教えていた先生だからこそ、日本語教育についてもさまざまなアドバイスをいただき、とても勉強になりました。
先生が書かれたご本までいただき、本当にありがたかったです。
田尻先生と出会えて、本当に良かったと心から思います。
私も学生たちに「出会えて良かった」と思ってもらえるような教師になれるよう、これからも頑張ろうと思いました。
田尻先生、本当にありがとうございます。

関連記事

  1. 田尻英三

    第49回 外国人労働者受け入れの政府の新たな方針|田尻英三

    この記事は、2024年2月25日までの情報を基に書いています。…

  2. 連載別

    第37回 日本語教育施策の枠組みが変わる(2)|田尻英三

    ★この記事は、2022年12月20日までの記事を基に書いています。…

  3. 連載別

    第58回 外国人受け入れについて読むべき資料と気になる日本語教育の論文集|田尻英三

    ★この記事は、2025年2月25日までの情報に基づいて書いていま…

  4. 連載別

    第55回 2025年度の日本語教育関連予算の概況|田尻英三

    ★この記事は、2024年10月1日までの情報を基に書いています…

ひつじ書房ウェブマガジン「未草」(ひつじぐさ)

連載中

ひつじ書房ウェブサイト

https://www.hituzi.co.jp/

  1. 古代エジプト語のヒエログリフ入門:ロゼッタストーン読解|第10回 ヒエログリフの…
  2. 今、実践の記録から、熟議という話し方をふりかえってみる|第3回 対話や熟議のあり…
  3. 古代エジプト語のヒエログリフ入門:ロゼッタストーン読解|第11回 ヒエログリフの…
  4. 認知文法の思考法|第8回 意味は話者の中にある|町田章
  5. 日本語表記のアーキテクチャ:第10回:Base Text /The Archit…
PAGE TOP