句読法、テンマルルール わかりやすさのきほん|第4回 読点を打つかどうか迷うところ|岩崎拓也

 

前回は、事典の記述をもとに、どういった意識から読点が打たれるのかということを六つの意識からまとめてみました(第3回 読点の打ち方:構造、長さ、意味、リズム、ジャンル)。このように、読点はさまざまな意識から打たれます。この意識の有無や強弱は、書き手によって差があると考えられます。前回の連載では「一人ひとりが持つ読点の打ち方の規範には、共通するものがある」と書きました。ですが、一人ひとりが読点の打ち方についての規範を持っていたと仮定しても、「ここに読点を打つべきか……。」と悩む人は多いのではないでしょうか。

 そこで、今回は、打つかどうか迷いやすい読点を三つ取りあげて、検討していきたいと思います。 先に結論を言いますが、明確な答えはありません。なぜ読点を打つか迷うのか、ということを考えることで皆さんの持つ悩みを共有できたらと考えています。みなさんが迷う読点をTwitterのハッシュタグ「#わたしのテンマルルール」と一緒につぶやいてくれたらうれしいです。

1)接続詞の後に読点を打つかどうか

 まず、悩む読点として考えられるのは、接続詞の直後の読点です。みなさんは、以下の例文の「しかし」の直後に読点を打ちますか?打ちませんか?

 しかし世間もうるさくなるだろうな。
 しかし、世間もうるさくなるだろうな。

 第一回の連載でも紹介した、1946年(昭和21年)に文部省教科書局調査課国語調査室によって作成された『くぎり符号の使い方』では次のように書いてあり、例も載っています。

三、テンは、第二の原則として、副詞的語句の前後にうつ。その上で、口調の上から不必要のものを消すのである。
 〔附記〕この項の趣旨は、テンではさんだ語句を飛ばして読んでみても、一応、文脈が通るようにうつのである。これがテンの打ち方における最も重要な、一ばん多く使われる原則であって、この原則の範囲内で、それぞれの文に従い適当に調節するのである。
 なお、接続詞、感嘆詞、また、呼びかけや返事の「はい」「いゝえ」など、すべて副詞的語句の中に入る。
 (10) しかし私は、
 (11) しかし、私は……


 『くぎり符号の使い方』に書かれている(10)と(11)の例を見ると、読点がある例とない例がどちらも載っています。違いとしては、(10)は接続詞「しかし」の直後に読点がない代わりに「私は」の直後に読点があること、(11)は接続詞「しかし」の直後に読点があるものの、「私は」の直後には読点がなく、「……」(三点リーダー)が使用されている、という違いがあります。三点リーダーが示すことが文の長さだとすれば、文が長い場合には接続詞の直後に読点を打つ、という考えになります。しかし、書き手に委ねられていることは〔附記〕の「適当に調節するのである」という説明からわかると思います。

 私は、この「接続詞直後に読点を打つかどうか問題」について、これまで調べてきました(岩崎2018、2021)。その結果を簡単に(ざっくばらんに)言うと、接続詞を使った文の長さではなく、接続詞自体の文字数と接続詞の種類によって、接続詞の直後に読点を打つかどうかが決まります。

 詳しいことは、論文を読んでもらうとわかるのですが、分析と考察の結果から大きく次のことが明らかになりました。

・文頭の接続詞は基本的に読点が打たれやすい。
  例)そして、人生は続いていく。

・「で」や「が」、「なお」といったような短い接続詞の直後には読点が打たれやすい。
  例)で、結局今日の飲み会に参加するの?
    なお、本日は在宅勤務のため、メールでのご連絡をお願いいたします。

・「または」「および」「もしくは」といった、要素を並び立てたり比較したりする接続詞(同列型と対比型)が文中にあるときは直後に読点が打たれにくい。
  例)調査データについて:研究発表の場、およびウェブ上で公開してよい。
    合間をぬって、もしくは週明けにでも連絡してみたいと思います。

・接続詞とその次の単語の文字種の組み合わせによって読点の打たれやすさが異なる。
 ・「ひらがな&ひらがな」だと読点が打たれやすい。
    例)そのため、どんなに時間がかかったとしても問題を解決しなければならない。

 ・「ひらがな&カタカナ」「ひらがな&記号」だと読点が打たれにくい。
    例)お酒はあまり強くない。けれどもビールだったらいくらでも飲める。
      したがって「確認」のボタンは絶対に押さないようにしてください。

 なお、補足をするために使われる接続詞「ちなみに」は、文頭に使われやすい接続詞ですが、直後に読点が打たれにくい傾向がありました。少し詳しく調べてみたところ、他の補足型の接続詞の文の長さと比べて一文が短い傾向があることがわかりました。同じ補足型である「なお」は、読点が打たれやすい接続詞に分類されていますが、これは「なお」が2文字の接続詞であるためだと考えられます。つまり、文の長さによる影響は、全ての接続詞に対して生じる強い影響というよりは、ある特定の接続詞に限った現象である可能性があります。

2)かぎカッコの直前に読点を打つかどうか

 次に問題となるのはかぎカッコの直前に読点を打つかどうか、という問題です。下の例を見てみてください。

 私は彼に「利用規則をご確認の上、ご利用ください。」と言われた。
 私は彼に「利用規則をご確認の上、ご利用ください。」と言われた。

 正直に言って、この例の下線部の読点はあってもなくてもいい、どちらでもいいと思う人がいるのではないでしょうか。一応の規範である『くぎり符号の使い方』では、次のように示してあります。

 十、対話または引用文のカギの前にうつ(例32)。
 (32)さつきの槍ヶ岳が、「こゝまでおいで。」といふやうに、

 『くぎり符号の使い方』では、対話または引用文のかぎカッコの前に読点を打つと示しています。ですが、101人にたいして読点の打ち方の調査を行った高木(1974)では、このかぎカッコの前に読点を打った人は38%にすぎず、2/3近くの人が読点を打たなかったと報告しています。では、現在の実態はどうなっているのでしょうか。コーパス検索アプリケーション「中納言」(ver.2.4.5)を用いて、『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ:データバージョン 2021.03)を検索してみました。

 手続きとしては、コアデータを対象として、書字形に「「 」を入れて検索しました(検索結果10,143件)。その後、直前の一文字に読点が打たれているかを調べ、かぎカッコの直前に読点が打たれている例(1,270件)と打たれていなかった例(8,872件)の中からランダムにそれぞれ100件ずつ抜き出しました。そのうえで、かぎカッコの中の内容が対話または引用文かどうかを確認しました。その結果得られた例文は77件でした。

 以下は、その結果です。表1は、かぎカッコの前の読点ありと読点なしの数がレジスターと呼ばれる文章のジャンルにおいてどのくらいの割合だったかを示したものです。この表を見ると、読点なしは雑誌や書籍に多く、新聞では読点が打たれることが多いようです(ただし、一般社団法人共同通信社(編著)(2016)の『記者ハンドブック』では、『「 』の前の助詞や動詞の後には原則として読点を打たないと示されています)。

 図1は、レジスターごとに見た場合における読点の有無の割合を示したものです。レジスターごとに見た場合、雑誌と書籍では読点が打たれない傾向があり、新聞とブログと知恵袋と白書は読点が打たれる傾向があるようです。

表1 かぎカッコの前における読点の有無(頻度と割合)

図1 かぎカッコの前の読点の有無の調査結果(レジスター別の割合)

 次に、実例を確認してみたところ、どうやら基本的には文中に出現する対話または引用文のかぎカッコの前には読点が打たれるようです。逆に、かぎカッコが続く場合は、読点が打たれないことが多いようです。

【基本的には読点が打たれる】
自民党の鈴木宗男総務局長は十五日夜、橋本派選対の幹部会議から、急きょ党本部に戻り、「選挙前の極めて厳しい予想からすると、次に展望の開ける戦いだった」と苦し紛れのコメントを出した。
 PN1b_00018毎日新聞朝刊(2001/4/16)
第一印象は「山が見えない」。
 PN2a_00014朝日新聞朝刊(2002/3/31)

【かぎカッコが連続するときは読点が打たれない】
「ここいらには鯨がいるの?」「秋から冬にかけて、この近くのラグーンで鯨たちが子育てをするんです。だから、世界中から観光客やダイバーが来ますよ」
 PM12_00014『小説宝石』2001年3月号(第34巻第3号)光文社

とはいえ、以下の例のように例外もあるので、絶対ではありません。

【例外:読点が打たれない例】
ひとみさんは「えー」と言いながらも「そうかー」と耳を傾けた。
 PN4g_00003西日本新聞朝刊(2004/2/15)

【例外:かぎカッコが連続するときに読点が打たれる例】
「いまだ」、「この人だ」と思ったら、ためらわず動いて。
 PM31_00254『Hanako』2003年2月19日号(No.725、第16巻7号)マガジンハウス

 こうしてみると、かぎカッコが、読点の代わりを担っているように考えられます。かぎカッコは、「地の文」と「対話または引用文」を区切る働きがあるため、読点が持つ区切る働きと重なる点があります。実際、『くぎり符号の使い方』のかぎカッコの用例を見てみると、かぎカッコが連続して使われるさいには、その間に読点が打たれていません。

 (4)この類の語には「牛耳る」「テクる」「サボる」などがある。

 上に挙げた【例外:読点が打たれない例】の書き手は、そうした意識のもとで読点を打つと冗長だと考えたために読点を打たなかったことが推察されます(同様の指摘は芝原2010にもあります)。

 今回は扱ったデータの数が少ないため、これ以上の検討はしませんが、今後は文の長さなどのそのほかの影響も考えつつ、詳細に検討する必要がありそうです。

3)引用の「と」の前後

 最後に検討するのは、引用の「と」とともに使われる読点です。まずは、『くぎり符号の使い方』における記述を見てみましょう。

十一、対話または引用文の後を「と」で受けて、その下にテンをうつのに二つの場合がある(例33 34 35)。
 「といつて、」「と思つて、」などの「と」にはうたない。
 「と、花子さんは」というやうに、その「と」の下に主格や、または他の語が来る場合にはうつのである。
(33)「なんといふ貝だらう。」といつて、みんなで、いろ(繰り返し符号)字貝の名前を思ひ出してみましたが、
(34)「先生に聞きに行きませう。」と、花子さんは、その貝をもつて、先生のところへ走って行きました。
(35)「おめでたう。」「おめでたう。」と、互に言葉をかはしながら……

 つまり、「〜と言った」のようなものの直後には読点を打たないが、そうでない場合は「と」の直後に読点を打つ、ということが示されています。しかし、上述した高木(1974)の報告では、次の例文のように「かぎカッコを引用の「と」でうけ、直後に叙述のことばがない場合は読点を打つ」人が26%しかいなかったと述べられています。

 「学校に行こうよ。」と、次郎が言った。

 また、この「と」の前に読点を打つことがある、という現状が報告されています(島村(1988)、佐竹(1990)など)(この文がまさにその例です)。

 では、作文において、日本語母語話者はこの引用の「と」と読点をどのように組み合わせて使っているのでしょうか。今回はJCK作文コーパス(http://nihongosakubun.sakura.ne.jp/corpus/)における日本語母語話者が書いた作文に出てきた引用の「と」とともに使用される読点を調べてみた結果を紹介します。表2は引用の「と」の前後で使用されていた読点の有無の頻度とその割合です。

表2 引用の「と」の前後の読点(頻度と割合)

 今回の調査の結果では、日本語母語話者は「と」の前後には読点を打つことが少なく、直前の読点と直後の読点の割合ほぼほぼ同じという結果でした。

 実際の例文を見てみましょう。『くぎり符号の使い方』では、「「といつて、」「と思つて、」などの「と」にはうたない。」とありました。実際、今回の18例には「と、思って」のような例はなく、直後に読点がある例は全て、以下の例のように「と」の次に主格や他の語が来る場合でした。つまり、『くぎり符号の使い方』における「「といつて、」「と思つて、」などの「と」にはうたない。」という記述と実態が一致した結果になりました。

また、薩摩切子は色に厚みがあり、また実際に製品を使ってみた感想としては、製品が厚く、また凹凸もあるために滑りにくいと、私自身は思いました。
 (j20-1)

 「と」の次に主格や他の語が来る例は今回54例あったのですが、そのうち18例が「と」の直後に読点を打っていました。つまり、読点が打たれる割合は33.34%だということになります。さらに、さきほどの高木(1974)で書かれていた「かぎカッコを引用の「と」でうけ、直後に叙述のことばがない場合」の例を調べてみたところ、4例が見つかりました。そのうち、「と」の直後に読点を打っている例は1例だけでした。書き手の数を見ると、3人であり、そのなかの1人が読点を打っていたため、割合としてはこちらも33.34%となりました。実数が少ないので、正確とは言えませんが、高木(1974)で示された26%という数字と近似したものとなっています。

引用の「と」の直前に読点が打たれる例を見てみましょう。

体重を少しだけ右にかけてごらん、と言われてその通りにすると、すっと右に曲がる。
 (j07-3)
特筆すべきは、近所に住んでいる芸能人は、と質問されたときにさっと10人くらいは有名な人を挙げられることくらいだろうか。
 (j06-1)
まず第一の理由として、女性の社会進出が増えた、ということが挙げられる。
 (j06-2)
私はどちらかというと他人の影響を受けやすいタイプであり、他人の口癖などを無意識に使ってしまうことが多いのだが、ことアイドルやアニメ、漫画などのサブカルチャー的な面ではあまり周りに左右されず、そのうちアイドルに関しては全く熱中したこともない、とその友人には伝えていた。
 (j19-3)

「と言われて」「と質問された」「ということ」のような直後に叙述の言葉がくる場合でも、「その友人には伝えていた」のように「と」の下に主格や、または他の語が来る場合でも、直前に読点が打たれることがわかります。この「と」の直前に読点を打っていた人を数えてみたところ、20人中9人(45%)という結果になりました。半数弱の人がこの読点を打つという結果を多いと見るか、少ないと見るかは難しいところがあります。

 ただ、このような「と」の直前の読点は、閉じかぎのようにどこまでが発話なのか、どこまでが引用なのか、ということが視覚的にもわかりやすいと言えます。

 体重を少しだけ右にかけてごらんと言われて…
 「体重を少しだけ右にかけてごらん」と言われて…

 佐竹(1990)では、この「と」の前後の読点を読点が持つ特殊な機能として挙げています。この「と」の読点は、読点の原則から外れてはいるものの、引用部分をひとまとまりにして示すという、いわばかぎカッコと同じ機能であるとしています。とはいえ、この特殊な機能も結局のところは文のまとまりと切れ目を示すという点では共通しています。

 「と」の直前が閉じかぎの例は36例あったのですが、そのうち、「と」の直後に読点が打たれていた例は真ん中の1例だけでした。三つ目の例のように直後に叙述の言葉が来ない例でも読点は打たれていませんでした。このことから、かぎカッコが使われた場合、読点が使われることが少ないと言えそうです。

今、豊洲というと「へえ、都会だね!」と言われることが多い。
 (j07-1)
これまで感じたことのないほど激しい読後感に襲われ、「こんな本がまた読みたい!」と、書店の「どんでん返し」とか「絶対騙されます!」のような宣伝文句を頼りにそれらしい本を何冊か恣意的に選んで読みました。
 (j09-3)
日本海沿いを走る山陰本線のディーゼル車の色が明るい黄色であることから、「山陰線の汽車は夏みかんの色」と地元の小学生らは皆口にするそうだ。
 (j17-1)

4)まとめ

 以上、今回は打つかどうか迷う三つの読点を取りあげてみました。そのうえで、現状がどうなっているのかを簡単に分析してまとめてみました。最初に述べたように、これらの読点の打ち方にたいして、明確な答えというのは存在しません。ですが、なんらかの傾向が見られたりするなど、みやすい、わかりやすい読点の存在が窺えました。

 次回は、つけるか迷う句点について、取りあげてみたいと思います。

参考文献

  • 岩崎拓也(2018)「読点が接続詞の直後に打たれる要因 ―Elastic Netを使用したモデル構築と評価―」『計量国語学』31(6) pp.426-442、計量国語学会(DOI: https://doi.org/10.24701/mathling.31.6_426)
  • 岩崎拓也(2021)「接続詞の直後の読点をどう指導すべきか」『データ科学×日本語教育』pp.268-287、ひつじ書房
  • 一般社団法人共同通信社(編著)(2016)『記者ハンドブック 第13版 新聞用字用語集』
  • 佐竹秀雄(1990)「特集・文章作法便覧――<Ⅱ 技法の焦点> 読点の打ち方 実例分析」『国文学 解釈と教材の研究』35-15、pp.73-77、学灯社
  • 芝原宏治(2010)「日本語の句読法」芝原宏治(編)『日中韓英の句読法と言語表現 知の対流3』pp.23-66、清文堂出版
  • 島村直己(1988)「特集・ワードプロセッサー〈4 ワープロのための日本語学〉――句読点の打ち方」『日本語学』7-12、pp.159-162、明治書院
  • 高木翠(1974)「句読点をどう打つか― 101人に対する調査結果―」『言語生活』277、pp.70-76、筑摩書房
  • 三上章(1956)「句読法私案」『IZUMI』18-27、いずみ会(三上章(2011)『三上章論文集』くろしお出版に再録(pp.175-143))
  • 文部省教科書局調査課国語調査室1946年(昭和21年)『くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)』(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1126388/1)

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