方言で芝居をやること|第4回 宮崎弁で芝居|山田百次

ボクは現在、5月中旬に三鷹の星のホールという劇場で行われる公演に出演するため、稽古をしています。

その劇団の名前は小松台東(こまつだいひがし)といいます。劇団といっても作・演出家で主宰の松本哲也さんが一人でやっています。全編宮崎弁のお芝居を作って上演している団体です。この松本さんが宮崎出身で、団体名の小松台東も宮崎に実際にある地名からとったものです。

作風は、宮崎のある家族の話や、電気工事店の一日など。日常の一コマを繊細に丁寧に切り取って描いています。重苦しく気まずいなかにも、どこか可笑しみの漂う会話のやりとりは、やがて心温まるラストに向かいます。ふだん演劇を観ていない方にも自信を持っておすすめできる劇団です。ボクは今回で3度目の出演になりますが、松本さんの人間に対する眼差しや愛情あふれる作劇に毎回、感心してしまいます。

松本さん自身もとっても愛情あふれる方です。劇場に向かう途中、売ってた花がキレイだったからと一輪のガーベラを買ってきて飾るような方です。そんな行為をしたことがないボクは本当に驚きました。その細やかな心遣いが、公演に関わっている人々の心にさわやかな風を吹かせている、それが作品の質の向上にもつながる。そして作品の細部に宿るんだなと感心してしまいます。美術館などで一流の作品を見ると本当に細かい所まで微細な施しがしてある。「神は細部に宿る」ということですが、それと同じだなと思いました。細かいこだわりを持ち続けなければ作品作りなんてできない。そういった事を、花を飾る行為から思い知らされました。

そんな松本さんと初めて出会ったのは5年ぐらい前だと思うのですが、共通の友人が出演している公演を観にいった後の飲み屋でした。お互いに方言の芝居を作っているということで挨拶をしましたが、松本さんはとてもシャイな方でした。ボクも話しが上手じゃなかったので、その場ではお互い方言芝居頑張りましょう的な雰囲気で終わりました。その後、お互いの作品を見合うようになり、作品に出演するようになりました。

津軽弁で芝居をしてた自分が宮崎弁で芝居をするなんて、東京に出た時は思ってもいませんでした。いざ宮崎弁で芝居をしてみるとなかなか面白い。イントネーションは津軽弁より平坦な感じで発話しやすいです。慣れてくると、平坦な文章のなかにだいたい2カ所ほどアクセントがつくのが分かってきます。そしてアクセントのつく箇所は、文章の長さで決まってきます。これに慣れると方言指導が入らなくてもだいたい分かってきます。もちろんそれで全てをマスターできるわけではないのですが。

「方言は文化的中心地から同心円状に広がっている」という柳田國男の説もうなずけるくらい宮崎弁には津軽弁に似た単語もあります。宮崎弁で「てげ」という単語があります。これは「とても」とか「すごい」の意味です。「てげかっこいい」→「スゲえかっこいい」。「てげマズい」→「とてもマズい」です。津軽弁も「とても」とか「すごい」の意味で「たげ」「たんげ」という言葉です。「たげカッコいい」「たげマズい」といいます。ほぼ同じです、非常に親近感がわきます。
激しい津軽弁とは違って、のんびりと訥々とした響きの味わいがある宮崎弁、小松台東の作風にとてもよく合っています。

松本さんは今では外部団体への書き下ろしだけでなくテレビにラジオにと、どんどん活動がひろがっております。テレビドラマの脚本は常に書いているようです。

そんな松本哲也の小松台東。今回の演目のタイトルは『消す』です。
誰かを言い訳にして生きる人々のお話です。言い訳を武器にして生きてきた人。だけどそれがいつまでも通用しないことも本当は分かっていて武器を手放そうとする人と、何とか守ろうとする人の嘆きや憂いを、やるせないほどの苦笑いとともにお届けします。

お時間ある方はぜひ、5月下旬に三鷹芸術文化センター星のホールへお越しください。

小松台東『消す』
2018年5月18日(金)~27日(日)
三鷹市芸術文化センター 星のホール
公演の詳細はこちらからどうぞ
http://komatsudai.com/

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