オノマトペハンター おのはん!|第17回 今回のオノマトペ:「チョリンチョリン♪」|平田佐智子

 

皆様こんにちは。まだ寒い日々が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。そろそろ花粉が飛び始めているので、過ごしにくい季節になりますね(過ごしやすい季節というものが果たして存在するのかどうか)。2月は年明けの清々しさも薄れつつ、年度末の慌ただしさが目の前に現れつつある、なんとも落ち着かない時期かと思います。春に向けて、残り少ない冬を楽しんでおきたいものです。

さて、来年度開始に向けて、様々な書類が飛び交う時期でもあります。私もとある単年契約のお仕事の依頼が来ましたので、書類を読んでは記名押印をしておりました。その書類の中に、見慣れないオノマトペがありましたので、こちらを今回は取り上げたいと思います。

同じ音を、言葉で表現する

見慣れないオノマトペはこちらです。

「チョリンチョリン♪ ×2回」です。文脈を見るとわかるのですが、地震速報の音を指しています。ただ、この表現で私は元の音が全く思い当たらなくて、少し調べてみることにしました。そして、おそらくこれは「NHKの緊急地震速報」の音だということがわかりました。

 


(上記動画は緊急地震速報の音が流れます。周りの環境にご注意下さい)

もし危険を知らせる音が1種類しかなければ、チョリンチョリンのようにオノマトペで区別する必要は無いのかもしれませんが、危険を知らせる報知音は危険の種類によっていくつか存在します。

(上記動画も様々な警告音が流れます。周りの環境にはご配慮ください。また苦手な方はご注意下さい)

地震の速報だけでもNHKチャイム音、REICサイン音(ポワポワポワ)、緊急速報メール(ギュイッギュイッ)など、さまざまなものがあります。これだけあると、どれを指しているのかわからなくなってしまうので、オノマトペで示しておこうというのは理にかなっていることだと思われます。

こちらのチョリンチョリンの元となった緊急地震速報のチャイム音は、NHKが独自に作成した物で、その後さまざまなところで使用されているようです。端末などに組み込んでも良いそうなので、防犯アプリなどにも採用されていることが多いようです。

https://www.nhk.or.jp/sonae/bousai/howtochaim.html

音の表現のバリエーション

ちなみに、こちらのNHKチャイム音、チョリンチョリン以外の表現は無いのかと少し調べてみたのですが、「緊急地震速報」という名称がかなり定着しているのか、あまり見当たりませんでした。こちらの文書内に「チャランチャラン」という表現があったので、中を読んでみると、このチャイム音がどのように作られたかを説明する記事でした。

「緊急地震速報チャイムの誕生秘話」

https://www.jas-audio.or.jp/jas-cms/wp-content/uploads/2013/03/004-010.pdf

こちらの記事を書かれた伊福部先生がNHKに依頼され、あのチャイム音を作成されたのだそうです。きちんと聴取実験も行われており、緻密に計算されて完成した物なのだな、と感じました。緊急地震速報の音は、緊急性を示しつつ、過度な不安感を与えない、という二つの側面から評価が行われており、その結果として「上昇型・2回目は半音上がる・速い」パターンが選ばれたようです。ただ、残念ながらこのパターンはオノマトペにしやすいかどうか、という側面からはあまり適切ではなかったようです(もちろん、する必要は全く無いのですが)。

まず、「速い」音である、言い換えると短時間に複数の音が詰め込まれていると、言語音にそのまま置き換えるのが少し難しくなります。緊急地震速報の音は、実は5つの音をアルペジオという形で素早く鳴らす、かつ形を変えてもう1回鳴らす、という構成になっています。通常チャイムの音は「キンコン」などのように、金属質な音が当てられますが、速く細かい音になると「チャラチャラ」という表現になり、音の数もつぶれて厳密ではなくなってくると考えられます。そうなると、5つのチャイム音が連打されることで「チャラン」になってしまうのですね。

また、「2回目は半音上がる」部分に関しては、過去のコラムで度々取り上げているとおり、音の上げ下げに対応が難しいオノマトペの特性上、表現を変えることが難しくなってきます。音の上げ下げはオノマトペの場合、母音の音の高さを利用して相対的に表現しうるのですが、半音という微妙な差を表現するだけの機能を持たせるのは非常に難しいと言えます(口頭であれば実際の発音を工夫して表現することが可能だと思われます)。

 

以上の点から、緊急地震速報は「チョリンチョリン」「チャランチャラン」のような表現になるのだと考えます。前者の方が、全体的に音程が高いことを適切に表現しているのかもしれません(少し見慣れませんが)。

 

そんなことを考えながら来年度からの書類を投函してきました。緊急地震速報は最近あまり聞く機会がありませんが、もうすぐ3月11日になりますし、今一度防災意識を高めておくのもよいかと思います。春に向けて新居を探されている方は、ぜひ災害に向けてきちんと対策しているところを選ぶようにしてくださいね(と、やけにまじめに締めてみます)。

 

 

 

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