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2025年12月31日(水)
今年の振り返りと書籍の可能性を信じること
本年は、5冊の刊行でした。昨年は10冊でしたので、刊行点数は昨年の半分になります。(昨年はかなり本を作っていたのですね。)それで仕事が余裕だったかというとそういうわけでもないです。その5冊は次の通りです。 『言語教育のための質的研究の方法論--質的研究デザインを問い直す』 『小説史の十七世紀論』 シリーズ言語学と言語教育 50 『オートポイエティックな言語学習による変容--学びが楽しくなる日本語教育をめざして』 『言語教育とコメニウス』 『言語行動論考』 言語学ではない文学研究書ですが、中嶋隆先生の『小説史の十七世紀論』は、西洋主義的な近代とは違う近代を問い直す小説史の研究であり、さらには近代について問い返してもいます。問いかけているものはとても大きいと思います。 言語と言語教育という方の研究書の4冊は、ことしは言語と言語教育の地盤を問い直すものだったと思います。八木先生の『言語教育のための質的研究の方法論』は、質的な言語教育研究を問い直すものですし、『オートポイエティックな言語学習による変容』は、比較的現代的な潮流として存在するCan Do 主義的な言語教育観を批判しつつ、学びが楽しくなる、楽しい学びというものにあらためて光をあてる内容です、言語教育観の中のエポックといえると思います。日本語能力が、外国人受け入れの中で、参照枠というかたちで、評価の物差しとして使われようとしている中でとても重要な指摘だと思います。それと言語教育の分野でルーマンという存在が受け入れられてくれるように願いします。(さらにいうとハーバーマス批判も必要です。)松岡先生の『言語教育とコメニウス』は、学校教育という枠組みが、批判され、教員になろうという人も減少する中で、学校教育というものを作ったといわれているコメニウスに焦点をあてて議論している本で、学校教育というものが批判されるのは批判される理由があるとしても、全てを葬り去っていいのかという議論を呼ぶ問題提起の書籍になっていると思います。言語教育研究をされている人に読んでもらいたいです。『言語行動論考』は、言語学・言語研究はそれなりに盛況ですし、世の中ではゆる言語学ラジオのように多くの人々の関心を読む学術的コンテンツでありますが、「言語行動」という視点は、後景化してしまっているという現状があると私は思います。会話分析などが隆盛し、動画を用いた言語研究は行われてきていますが、「言語行動」という視点に思いにあまり寄せられなくなっている中で、再び、注目されるべきであるという私の思いもありまして、刊行させていただきました。それぞれの著作は、著者の思いの込められたものではありますが、送り出す方の気持ちもあります。 著者の思いを受け止めつつ、本は出していきたいと思っています。その点では、本年はとても楽しく、ありがたかったと思います。それはまた、反省点につながる点でもあり、著者の思いを受け止めることができずに刊行できないということもあります。百パーセントできているわけではありませんので、自戒したいところです。また、刊行できた場合も、願っていた程には影響力をもつことが果たせないということもあります。非力さも自覚しつつ、最大限の努力はしていきたいです。できることは限られていますが、もうひとつ超えられるように努めます。 いろいろな問題提起、新しい問題提起、研究潮流の総括的反省、忘れられようとしている視点の復活、再評価の提案、オーソドックス過ぎるくらいのまともな視点の提案などなど、提案するということは書籍というものが持ちうる可能性だと思います。論文も提案でありえますが、書籍は一つの作品として提案する塊になっていると思います。書籍の可能性を信じつつ、可能性を広げていきたいです。 以下、私の担当以外のものも含めたリンク付き(書影もついています)の本年の新刊のご紹介です。どうぞご覧下さい。 https://www.hituzi.co.jp/books/sinkan.html 執筆要綱・執筆要項こちらをご覧下さい。 「本の出し方」・「学術書の刊行の仕方」・「研究書」・スタッフ募集について・日誌の目次・番外編 ホットケーキ巡礼の旅 日誌の目次へ
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