学会がリモート開催の中でも本は出しています。推しの本
2022年5月11日(水)

学会がリモート開催の中でも本は出しています。推しの本

(5月11日にメール通信で配信した内容がもとになっています。日付けもその日付けにしています。)

5月になって学会がはじまりました。対面での開催は独文学会くらいで、文化人類学会はハイブリッドとなっています。言語系はほとんどがリモート開催で、言語政策学会が、対面開催くらいでしょう。日本フランス語フランス文学会も対面とのことです。

この春も沢山の新刊を出しています。対面だと強く押し出せたり、その学会のメインなテーマと離れていても、その本自体がユニークであれば、実際に実物を見ていただいてどうですかと宣伝したりすることもできるのですが、そういうことができないのが、残念ですね。

いくつか推しの本を紹介します。

シリーズ ドイツ語が拓く地平 3『ノモスとしての言語』(大宮勘一郎・田中愼 編)

ノモスには規範というような意味もあります。言語学はずっと規範文法から記述文法へと向かってきているわけですが、その潮流の中で一方、規範というもののあり方が問い直されています。用例主義的な感覚からすると記述的な言語研究を推し進めることになるわけですが、では構造とか機能とかがないのかというとそうでもないわけで、規範をどう捉えるかはその点で、注目に値するテーマです。学会なら、手に取って見てみて下さいというところです。

『デュルケーム世俗道徳論の中のユダヤ教---ユダヤの伝統とライシテの狭間で---』(平田文子著)

ひつじ書房で何で社会学の祖のデュルケームかと思われるかもしれませんが、デュルケームがユダヤ教を棄教したということになっていますが、墓碑からユダヤ教徒として死んだということを平田先生は主張します。もし、そうだとすると社会科学的な考え方の中にユダヤ教の世俗道徳論が入っている可能性があり、普遍的な人間の権利なども宗教的な見方に基づいているのではないか、大きな問い返しが生まれます。社会科学の根底を揺るがす可能性のある重要な書籍です。

『国語科における「話し合い」学習の理論と実践』(内田剛 著)

日本人は議論が上手にできないとか、会議で上手くものごとを決めることができないといわれることがあります。そういう批判は、多くありますが、国語教育の中でもそういう問題を打開しないといけないといわれることも多くありますが、実際にそういう教育は行われてきていたということはほとんど忘れられているように感じます。これまでに行われてきたことを反省しないで、常に新しく問題提起されつづけているということは、そのこと自体に議論の蓄積がないことを振り返る必要があるように思います。そういう点で、本書は非常に貴重だと思います。

学会がリアルに開催されていれば、目を通して下さいとおすすめすることができたのではないかと思いまして、今回は多くある中から3冊に焦点を当ててみました。他にも注目すべき本を出していますので、メール通信の新刊の書目などをどうぞご覧下さいましたら、幸いです。

追記

この文章を書いている時に日本語学会の大会のウェブページを見ましたら、日本語学会は2023年の春は対面で開催(開催地未定)、秋はまたリモートでの開催ということです。2年後までです。3年後に対面というのは先です。そのような期間、学会で研究者の方に会えないということは、出会いの機会の損失ということになります。日本語学会の規模が独文学会や仏語仏文学会より大きくて、開催の労力がたいへんということかもしれないですが、その期間に若い研究者の方とも会えないというのは非常に困ったことです。新しい著者候補の人と出会うことがなくなってしまうことだからです。学会に頼らずに、若い研究者の方との接点を作らないといけないということでしょう。そのため、大学院生と出会うために<修士論文どんどん発表会>というのをやろうかと考えています。修士論文の概要をA4二枚くらいにまとめて送って下さらないでしょうか。それを冊子か電子書籍にして公開します。内容的に不完全であっても、充分に熟していなくてもいいので、面白い!、意義がある!と感じたら、冊子か電子書籍に掲載して載せていきます。あるいは、グループの研究雑誌の企画の紹介でもよいです。

さらに今週末の日本語学会でひつじ書房の展示コーナーの前のoViceのテーブルに在席していますので、お寄り下さい。土曜日の11時40分から14時40分まで長野が、15時から16時30分まで松本が在席しています。懇親会もはじめの方には出ていると思います。日曜日は11時から14時まで席にいます。どうぞお立ち寄り下さい。

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執筆要綱・執筆要項こちらをご覧下さい。



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