新刊と電子的コンテンツ
2021年3月1日(月)

新刊と電子的コンテンツ

(2月10日にメール通信で配信した内容がもとになっています。)

年が明けてから、新刊を次々と刊行しています。新型コロナ禍の影響もありまして、刊行が遅れた書籍もまとまって出ているということもありますし、年度末ということで2月中に刊行しないといけない後ろが決まっているのでこの時期に刊行しているということもあります。

出版社ですので、刊行して、読んでもらってはじめてビジネスが進められるわけですので、この年度末の書籍が売れてくれることを祈っています。どうぞよろしくお願いします。

今年度は、コロナのこともあり、電子化している書籍も増えてきています。『蚕と戦争と日本語--欧米の日本理解はこうして始まった』(小川誉子美)は紙の本を2020年2月に、2021年1月にkindle版に刊行しましたし、『使える日本語文法ガイドブック--やさしい日本語で教室と文法をつなぐ』(中西久実子・坂口昌子・大谷つかさ・寺田友子)は、2020年の1月に紙版を刊行し、8月にkindle版を出しています。日本語教科書も、海外からでも使えるようにamazon.comで購入できるようにkindle版を出しています。先日は、ある書店から、大学が教科書の電子化を推進しているということで、来年の授業に合わせて電子化できるかについての打診を受けました。書店からの電子化の打診というのは珍しいことでしたが、大学が主体になって、授業で使われる教材の電子化を進めるということもありそうです。たくさんの大学があるわけですが、それぞれの大学はどのように判断するのでしょう。

授業自体の電子化への対応の進化の中で大学の教科書の扱い方も変わっていくでしょう。大学に登校できなくなることを考えて、オンラインでもアクセスできる教科書へのシフトは起こりそうですし、授業のあり方もリモートオンリーということではなくても、デジタルやネットワークを活用したものになっていくでしょう。そのような時代の要請に応えていくことが求められていると思います。大学のLMS(学習管理システム)に、授業のサポートの機能があるわけですが、副教材やワークシートのようなものだけでなく、本体としての教科書を提供するということを進めるということがあると著者が書き、出版社が教科書を作って、複数の大学で使用するというこれまでのやり方が立ちゆかなくなるかもしれません。

話しは関連しつつも、ずれますが、国語研のコーパスのサービス「少納言」が休止するということです。こういうサービスは、小学校や中学校で授業で、または宿題を自宅や図書館で解こうとした時に必要なサービスだろうと思います。継続する予算が付かなかったということだとするとたいへん残念です。教育にとっても重要なサービスだからです。デジタルやネットのサービスやコンテンツは無料というのが当然と思われている傾向がありますが、きちんと経済的に回していく必要があります。子どもたちが、ネットで日本語の力を付けるのに有効なサービスには運営費が充分に回るような仕組みを作る必要があります。研究のためには中納言があればよくて、一般向け的な少納言は、研究所の機能としては支持して公開していくのは優先順位が低いということなのかもしれませんが、入口的なサービスは広く知ってもらうためにも維持されてほしいものです。

何だか、少納言サービスにかこつけて、自分たちのことをいうようですが、電子化する大学向け教科書も教科書として充分に維持していくことができる経済の回り方が重要だと思います。

教科書の電子化についてご採用の際に現状を知りたい方はぜひお問い合わせ下さい。さらに電子版を作ってほしいということがあれば、どうぞリクエストをお願いします。

追記 3月1日

日本電子出版協会の Webセミナー「大修館書店はなぜ“eTextbooks.jp”を始めるのか?」が開催されるということを知りました。大修館書店が、「大修館書店では、この春から「eTextbooks.jp」のサービスを開始し、大学へ電 子教科書の配信を進めていきます。一出版社に過ぎない大修館書店がなぜ電子教科書の配信を始めるのか、どんなサービスであり、またどんな未来を描いているのか、今お伝えできるすべてを語ります。/「eTextbooks.jp」では、大修館書店の電子教科書だけでなく、様々な出版社の電子化された教科書も提供していきたいと考えています。大学教科書の電子化を検討している皆様のご参加をお待ちしています。」ということですので、これも一つの動きとして注目したいと考えています。

----------

執筆要綱・執筆要項こちらをご覧下さい。



「本の出し方」「学術書の刊行の仕方」「研究書」スタッフ募集について日誌の目次番外編 ホットケーキ巡礼の旅

日誌の目次へ
ホームページに戻る

ご意見、ご感想をお寄せ下さい。
房主
i-matumoto@hituzi.co.jp