ひつじ書房という存在は、英文学会では見えない存在 2007年5月21日(月)

2007年5月21日(月)

【学術】ひつじ書房という存在は、英文学会では見えない存在

昨年に続き、日本英文学会に出店しました。日本英文学会は、文学研究が中心なので、言語研究者は多くありません。ひつじ書房は、言語学の出版社なので、英文学会に出店するのは意味があるだろうかと悩んだ末の出店でした。予想した通り、売上げは多くはありませんでした。むしろ、金曜日しか出店せず、参加者も50人程度であった近代英語協会の方が多かったくらいです。

このことは、書こうか書くまいか迷ったのですが、学会運営に問題があると思います。シンポジウムと分科会を2日目の午前中に同時に行うというのは非常識です。分科会は個別の研究であり、シンポジウムは包括的なテーマについて議論する場所です。であるのなら、個別と包括の両方に参加できるようにすることが普通であり、意義があるのではないでしょうか。研究というのは全体的な状況を見ながら、個別の事象の研究をするものだと思うからです。

さて、ひつじ書房で刊行している文学研究書は、『フィクションの機構』や『読むということ』などがあります。日本近代文学の研究書としてはずば抜けている内容のものです。英文学研究者でも目に留めてくれれば、関心を持ってくれるのではないかと期待しましたが、結果は、なかなか難しいものでした。日本文学や英文学を超える「文学研究」という抽象的な分野の存在はとても難しい、ということが言えそうです。一方、これが言語研究の場合、日本語を研究しているひとが、英語の研究に興味を持つと言うことは少ないことではありません。文学研究の現状の問題がここに現れていると私は思っています。視野が狭いと批判したくなってしまいますが、これは英文学研究だけではなく、文学研究全体の問題でしょう。

このことに加えて、ひつじ書房が、盲点の位置に立っているということも問題です。ひつじ書房という存在自体が、英文学研究者には「見えない存在」なのだと感じました。ひつじ書房という存在を認識していないので、目の前にひつじ書房が出店していても、ひつじ書房の新刊と書いてあっても、目に入らないのです。見えるようにするためにはどうするのか? これはとても難しい課題です。ある程度、関心を持ってもらうことができているのであれば、その関心を強めることができます。しかし、関心がゼロであるのなら、強化することは不可能です。


見えるようになるためには、何をすればいいのか?このことは、広告・広報の基礎の問題であり、もっとも難しい問題です。いわゆるAIDOMAの法則の問題です。「Attention(注意)」が、出発点になるわけです。では、具体的に注意を得るには最初に何をすればよいのでしょうか?まじめにプレスリリースを送り続ける?『英語青年』に広告を出し続ける?ダイレクトメールを出す?これらも大事ですが、決定的ではないと思います。よいアイディアがありましたら、よろしければぜひ教えてください。

今回の学会参加で、文学研究のジャンルでもやれることはあるという気持ちがしました。というのも、南雲堂と松柏社をのぞいて、文学研究の内容は旧態依然の作家研究ばかりで、現代の文学研究からはそうとう古いと感じたからです。できることはありそうです。家入葉子先生の『ベーシック英語史』は好評で、もっと早く刊行されていれば、使ったのにと言って下さる方が、何人もいらっしゃいました。まったく売れなかったというわけではありません。それともう一つ重要なことがあります。今回、4月末に入社した三井が学会初参加したことです。初回としては、忙しくなかったのは良かったのかも知れないとも思います。いつもはこんなにヒマではありませんので、覚悟しておいて下さい。

もう一つ、シンポジウムの一つが竹村和子先生も登場するジェンダー(生まない性イコール魔女というテーマは、駒尺喜美先生が22日にお亡くなりになることを予感していたのでしょうか?)がらみのものであったので、クレアマリイさんの著書『 発話者の言語ストラテジーとしてのネゴシエーション行為の研究』もプッシュしましたが、反応は全くありませんでした。マリイさんは、今年の女性学会でのパネラーになります。本も並べる予定ですので、どうぞお越し下さい。


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