ひつじ書房 現代日本語の程度表現の研究 川端元子著 ひつじ書房 現代日本語の程度表現の研究 川端元子著
2026年2月刊行予定

ひつじ研究叢書(言語編) 第217巻

現代日本語の程度表現の研究

川端元子著

定価7,600円+税 A5判上製函入 336頁

ISBN978-4-8234-1332-2

ブックデザイン 白井敬尚形成事務所

A Study of Degree Expressions in Contemporary Japanese
Kawabata Motoko

ひつじ書房

【内容】

現代日本語の程度表現には、副詞を含むさまざまな言語形式がある。本書は、従来の研究をふまえつつ、程度副詞をはじめとする比較構文を含む多様な程度表現形式の特性を探る。程度評価のあり方がその表現が設定する程度スケールの異なりに起因することに注目し、程度スケール上に設定される基準や発話の前提をもとに、程度表現がどのような意味の違いを持つのかを整理する。そして、程度表現が多様化する要因を解き明かす。


【目次】

序 章 本書の目的とこれまでの程度表現に関する研究
1. 本書で取り上げる程度表現
2. 程度副詞というカテゴリーに関する議論
2.1 品詞の分類における副詞の位置
2.2 程度副詞の位置づけに関する研究
2.3 副詞研究の新しい視角
3. 程度副詞の二面性
3.1 ことがら的か陳述的か
3.2 程度副詞と他の副詞の接近
3.2.1 情態副詞と程度副詞の近接性
3.2.2 程度副詞と陳述副詞の近接性
3.2.3 程度副詞が持つ主観性
4. 程度副詞研究のながれ
4.1 程度副詞の意味論的研究
4.2 構文的条件として指摘されること
4.3 比較構文におけるふるまいの相違に関する研究
4.3.1 意味に関与する潜在的な比較と顕在的な比較
4.3.2 評価系と非評価系
4.4 文末形式との共起制限に注目した研究
4.4.1 未実現、未確認の事態との共起
4.4.2 程度や量を計れない形式との共起
4.5 程度副詞の周辺的語句が獲得した程度修飾機能について
5. 程度副詞の作る体系的意味の序列に関する研究
5.1 尺度用語としての程度副詞
5.2 程度スケール上の序列を表す語句の持つ問題
6. 程度表現研究の課題と今後の視点
6.1 これまでの研究における課題
6.2 求められる研究視点
7. むすび 本書の目的と構成


I 程度副詞とその周辺の表現における程度限定のあり方

第1章 程度副詞を分類する視点の考察
1. 程度修飾の持つ問題点
2. 程度性述語の種類と特徴
2.1 程度修飾を受けることのできる語句 段階語
2.2 サピア(Sapir 1944)の提示するgradingの種類
2.2.1 Logical grading
2.2.2 Psychological grading
2.2.3 Linguistic grading
2.2.4 形式が持つ主観性
2.3 程度評価スケールの種類
2.3.1 一方向性スケールと双方向性スケール
2.3.2 クルース(Crues 1986)の程度スケール
2.3.3 日本語の程度副詞の程度スケール
3. 程度副詞分類への視角
3.1 程度副詞分類の難しさ
3.2 程度副詞の程度評価
3.2.1 尺度表現としての適格性
3.2.2 程度評価と程度スケールの関係 3.2.3 程度副詞分類における程度スケールの意味
4. 程度副詞の意味の構造とメカニズム
4.1 程度限定のための基準と前提
4.2 程度限定における「前提」
4.3 程度表現が伝えるもの
4.3.1 程度スケール上の位置関係の含意
4.3.2 程度副詞の序列における矛盾
4.4 程度表現の程度評価の方法別分類
5. むすび

第2章 程度副詞の表す情報の特性 聞き手への行為要求表現との共起制限の再考
1. どのような共起制限があるのか
2. これまでの説明と新たに生じる問題点
2.1 共起制限には多様性があるという実態
2.2 従来の研究で主な理由とされてきた「主観性」「評価性」
3. 共起を阻害する要因 行為要求文の情報としての適格性
3.1 聞き手への行為要求文の表す情報の特性
3.2 程度副詞の「評価性」 語の背景に存在するスケール
3.3 程度副詞はなぜ確定的な指示情報になれないのか
4. 許容度に差が生じる理由
4.1 スケール情報から脱却できるかどうか
4.2 見込み値を前提として判断に持ち込むタイプかどうか
4.3 程度副詞以外の程度表現の場合
4.4 共起を阻害する個人差
5. 共起しやすくなる発話環境
5.1 文脈から得られる共有情報 スケール全体を示す
5.2 ことがら成分に近づける 被修飾の語句を体言に
5.3 許容度を左右する要因 情報の性質の相違点
6. むすび 程度表現を行為要求表現で用いる意味と効果

第3章 程度を抑制して伝える程度副詞の特性
1. 程度が小さいことを表すとは
2. 程度副詞「ちょっと」の意味と表現性
2.1 「ちょっと」の意味は「程度や量が小さいこと」とはかぎらない
2.2 程度副詞は体系的な意味のグループの一員である
2.3 程度が小さいことを表す程度副詞は共起制限が少ない
2.4 「反期待」の判断構造を持つ
2.5 英語の程度修飾との類似点
3. 程度副詞「ちょっと」を用いた文の意味
3.1 「反期待」ではなく「反前提」
3.2 反前提が生み出すマイナス評価
3.3 反前提の表現効果 基準を浮き彫りにする補助的役割
4. 消極的に程度を伝える表現の効果
4.1 表現を抑制しようとする意識の表れ
4.2 消極的な程度表現の対人的機能
4.2.1 聞き手の心理的負担を軽減する配慮の表現
4.2.2 発話主体の遠慮がちで控えめな態度を表現
4.3 「ちょっと」の多様な用法に共通する性質
5. むすび

第4章 比較構文に出現する程度副詞 スケールの相違という観点から
1. 比較のための「前提」の有無で説明できないこと
2. これまでの研究とその課題
2.1 これまでの研究の概観
2.2 これまでの研究をふまえた課題
3. 「YもPである」という前提の有無はスケールの違いとして説明できる
3.1 「ずっと」は双方向性のスケールを用いる
3.2 「もっと」は一方向性のスケールを用いる
4. スケール変更が可能な「もっと」と変更不可能な「いっそう」
4.1 一方向性スケールの下位類の性質
4.2 認定したことと比較したいこと (比較のスケールの向き) の関係
4.3 スケール設定に関する相違点
5. 「もっと」の否定的用法の生じるメカニズム
5.1 スケール上で基準からプラス方向への移動を指向する「もっと」
5.2 スケール上のプラス方向に価値をおく「もっと」
5.3 「もっと」が表す話し手の心のあり方
6. 基準のあり方を増幅させる「いっそう」グループ
6.1 進行性の状態を増幅させる
6.2 追加・更新可能な「さらに」
7. 程度差を実感的に表示する「ずっと」グループ
7.1 一定期間の継続や一定距離の移動によって生じた位置差
7.2 位置差は量や値に読み替えられない
8. 各グループの基本的意味 まとめ
9. むすび 「比較」に含まれる消極性

第5章 「広義程度副詞」の程度修飾機能 「本当に」「実に」を例に
1. 「本当に」「実に」 広義程度副詞の設定
2. 従来の研究
2.1 程度副詞として過渡的段階にあるとはどういうことか
2.2 他の副詞から程度副詞への接近のカギとなるもの
3. 「本当に」「実に」の程度修飾機能
3.1 意味を規定する環境条件 真偽判断を必要としない
3.2 文末表現の形式との共起に関する制約 直接体験性
3.3 程度限定のあり方の相違点
4. 程度修飾に移行する心的過程
4.1 「本当に」の場合 認定の実感的保証
4.2 「実に」の場合 最適なあり方の取り出し
4.3 程度修飾「本当に」「実に」の心的過程
5. 広義程度副詞グループの特徴
5.1 広義程度副詞グループ
5.2 広義程度副詞グループの特性
6. むすび 「広義程度副詞」の位置づけ

第6章 程度強調表現としての「うんと」
1. 程度副詞に見える「うんと」について
2. 情態副詞から程度副詞へ 「誰もがそう思う程度」の創出
2.1 サマに対する評価
2.2 イメージできるスケールの設定
3. 「うんと」の多様な意味用法
3.1 オノマトペ「うんと」
3.2 動作の様態を表す「うんと」
3.3 力んだ行為の結果
3.4 「うんと」の表す量的程度
4. 「うんと」の表す用法の性質
4.1 「うんと」の表す量的程度の特徴
4.2 程度副詞との相違点
4.2.1 否定形式との共起
4.2.2 命令・依頼・勧誘文と共起するか
4.2.3 その場における話し手の心情の修飾
4.2.4 比較構文に用いた場合の許容度
5. 「うんと」の表す程度とは
5.1 「うんと」が表す程度とは 基準との程度差の大きさ
5.2 「うんと」はなぜ程度修飾機能を持ったのか
6. むすび 状態修飾の読み替え


II 発話の前提・比較基準から捉える程度表現

第7章 副詞「よく」の意味を規定する基準のあり方
1. 多義的な「よく」のあり方
2. 「よく」の各用法の特徴
2.1 「よく」の各用法の概観
2.1.1 程度の「よく」
2.1.2 頻度の「よく」
2.1.3 評価の「よく」
2.2 「よく」の意味の解釈と文脈情報
2.3 「よく」の共起制限について
3. 程度や頻度を表す他の副詞と「よく」の相違点
3.1 形容詞由来の副詞「すごく」「ひどく」との相違
3.2 程度副詞との相違
3.3 様態の副詞や量の多さを表す副詞との相違点
4. 「よく」の程度修飾のあり方
4.1 「よく」の基準とする到達目標
4.2 「よく」の程度修飾の特徴
5. 評価の「よく」の意味を規定する要因
5.1 程度の「よく」に存在する前提
5.2 評価の「よく」が修飾するもの
5.3 評価の「よく」が基準とするもの
6. むすび

第8章 程度修飾をする「ほど」句の構造と機能
1. 「ほど」のさまざまな用法
2. 「ほど」句の主な用法
2.1 「ほど」の語誌
2.2 「形式副詞」という枠組み
2.3 現代の「ほど」の主な用法(整理)
3. 「XはPほどQ」構文の「Pほど」
4. 「XはPほどQない」構文の「Pほど」
5. 「PほどQものはない」構文の「Pほど」
6. 比例の「PほどQ」構文の「Pほど」
7. 句の主要部となる名詞の「ほど」
8. 名詞句の副詞化を進めたもの 「Pほど」の場合
9. むすび 「Pほど」の性質と「ほど」の形式化との関係

第9章 「PどころかQ」における反期待の構造
1. 「PどころかQ」の構文の意味
2. 従来の説明を逸脱する個性的な「PどころかQ」
3. 「PどころかQ」構文の構造
3.1 前件Pの特徴
3.2 後件Qの特徴
3.3 前件P、その否定p、後件Q間の序列は必要か
4. 「PどころかQ」の比較構文としての性質
4.1 前件と後件の関係
4.1.1 PとQが累加関係にある構文との比較
4.1.2 PとQが序列を作らない構文との比較
4.1.3 前件を否定する構文との比較
4.1.4 前件を排除する構文との比較
4.2 比較構文としての「PどころかQ」の位置
5. 「Pどころではない」の意味
5.1 「PどころかQ」の「どころ」とは何か
5.2 接辞の「どころ」
5.3 「…どころか」の表す「どころ」
5.4 「…どころではない」の意味
6. むすび 「PどころかQ」構文と程度スケール

第10章 「離脱」から「転換」へ 話題転換機能を獲得した「それより」について
1. 話題転換機能を持つ「それより」の存在
2. これまでの研究とその課題
2.1 接続表現「それより」についての記述
2.2 「より」の出現する構文の意味に関する研究
3. 「それより」の意味
3.1 「より」の本質的な意味
3.2 出発点と比較基準との相違 Xが属性概念かどうか
3.3 接続表現の「それより」 「それから」との相違点
4. 比較基準の「より」が話題転換へと意味拡張する要因
4.1 比較構文「XよりY」に内在する否定の意味
4.1.1 後件を望ましいとする話し手の価値判断を提示する
4.1.2 「XというよりY」:相対的に適切なYを提示することに特化した形式
4.1.3 「XではなくY」との相違:相対的に適切であるとはどういうことか
4.2 前件を「それ」でうける「X。それよりY」の特性
4.3 「それより」が話題転換機能を持つためには
5. 「それより」の話題転換的用法
5.1 「それより」による話題の誘導テクニック
5.2 場当たり的な話題転換
5.3 意図的な論点のはぐらかし
6. むすび 「離脱」から「転換」へ

第11章 序列から優先性の提示へ 接続表現に移行した「だいいち」を例に
1. 序列の背景にある比較
2. 談話・テクスト研究における接続詞研究と副詞研究
2.1 文の連接の研究
2.2 談話の展開への副詞の関わり
2.3 接続表現の意味とテクスト
3. テクストの構成にかわる「だいいち」の意味機能
3.1 副詞としての「だいいち」
3.2 「第一に」と「だいいち」の相違点
3.3 「だいいち」の出現環境からみた意味
3.3.1 「証拠」の性質:事実が必ずしも証拠ではない
3.3.2 証拠や理由の正当性を保証する
3.3.3 「だいいち」が出現する環境条件
3.4 「だいいち」を用いることの疑似譲歩文的効果
3.5 運用の前提を内在した「だいいち」
4. むすび 副詞の実質的意味とコミュニケーションに関わって獲得される意味

第12章 程度表現の意味に影響する発話の前提
1. 程度スケールを規定する発話の前提
2. 程度段階評価をする程度副詞の意味
2.1 「程度」から「傾向」へ
2.2 DESIRABILITYの仮説
2.3 「程度」から「緩和」へ
2.4 「多少」の意味を規定する要因
2.5 「多少」の意味を規定するもの
3. 目標となるあり方を表す程度表現「PほどQ」と「PくらいQ」の意味
3.1 「PほどQ」と「PくらいQ」の相違点
3.2 対象の複数性や前提との関わり
3.3 「ほど」「くらい」が作る句(節)の意味と環境要因
4. 慣用的な比較表現の主観的な意味の現れ方
4.1 「P以上でも以下でもない」の意味
4.2 意味に影響する前提とは何か
4.3 反前提というあり方
5. 「よい」という評価と前提
5.1 「適当」が表す意味の広がり
5.2 「適当」の意味の柔軟性は何に由来するのか
5.3 「よい」という評価に伴う同様の現象
6. 程度副詞的に機能する他の副詞や言語形式の場合
6.1 程度強調に働く真情強調や状態修飾
6.2 基準への接近度と遠ざかり度を表す副詞
6.3 前提に到達した現状を肯定的に評価する「ている」
7. むすび

終 章 程度表現を捉える視点としての程度スケール
1. 程度表現の生成
2. 程度表現の情報のあり方と特性
3. 「実質的な概念性」がない「体系としての概念」の特性
4. 程度副詞の主観的側面と客観的側面
5. 程度副詞の「二重的性格」の実像
5.1 程度副詞とその周辺語句の特性
5.2 「わがこと」系と「ひとごと」系
6. 新たに生まれ定着する程度表現とは
6.1 「実質的な概念性」の拡張的運用
6.2 程度表現を分類する程度限定のあり方
7. むすび 「程度表現のようなもの」の増殖


参考文献
あとがき
索引




【著者紹介】
川端元子(かわばた もとこ)
〈略歴〉
1960年滋賀県出身。名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。名古屋大学COE研究員を経て、愛知工業大学基礎教育センター、愛知工業大学名誉教授。
〈主な著書・論文〉
『日本語の乱れか変化か―これまでの日本語、これからの日本語―』(ひつじ書房、編著、2021)、「比較構文に出現する程度副詞―スケールの相違という観点から―」(『日本語科学』12、2002)、「程度修飾をする「ほど」句の構造と機能」『日本語の構造変化と文法化』(ひつじ書房、2007)など。


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