ひつじ書房 認知社会言語学への招待 認知言語学の新しいアプローチ 渋谷良方著
2026年1月刊行

認知社会言語学への招待

認知言語学の新しいアプローチ

渋谷良方著

定価4000円+税 A5判並製カバー装 340頁

ISBN978-4-8234-1306-3

装丁:中野豪雄

An Introduction to Cognitive Sociolinguistics: A New Approach in Cognitive Linguistics
Shibuya Yoshikata

ひつじ書房



【内容】
実際の言語使用には、常に変異が伴う。この側面は、認知言語学では長らく十分に論じられてこなかった。しかし、変異を無視して、言語使用を十全に理解することは不可能である。本書は、認知言語学の社会的転回を象徴する認知社会言語学について、多様な研究成果を紹介しながら、この新しいアプローチの理念、分析に用いられる方法論、そして得られた結果の解釈のなされ方を詳しく解説する、国内初の包括的な概説書である。

【目次】

まえがき 

第1章 認知言語学の社会的転回と言語変異研究
1 はじめに
2 認知言語学の歩み
2.1 1970年代中頃から2000年代中頃までの研究
2.2 21世紀の認知言語学における1つ目の転換点:量的転回
2.3 21世紀の認知言語学における2つ目の転換点:社会的転回
3 認知言語学における社会的転回の意義と必要性
3.1 意味の社会性
3.2 社会的視点を取り入れることの重要性
4 認知社会言語学による言語変異研究
4.1 言語変異と認知社会言語学
4.2 認知社会言語学とは何か
4.3 用法基盤の仮説と変異研究の関連性
4.4 変異研究に適した言語のレベルとは
5 おわりに

  Ⅰ 語彙とその意味の変異性
  
第2章 類義語を巡る語彙変異研究
1 はじめに
2 語彙変異研究とは何か
2.1 社会言語学的変項としての語彙選択
2.2 語義論と名義論
2.3 意味の考察に伴う2つの課題
3 制限的アプローチによる語彙変異研究
3.1 制限的アプローチ
3.2 オランダ語の変種間における語彙の収束と分岐:Geeraerts, Grondelaers, and Speelman(1999)
3.3 ポルトガル語の変種間における語彙の収束と分岐:Soares da Silva(2010)
3.4 語彙的収束・分岐研究の今後の展望
4 包括的アプローチによる語彙変異研究
4.1 包括的アプローチ
4.2 成分分析に基づく研究:Geeraerts, Grondelaers, and Bakema(1994)
4.3 多重対応分析による類義語研究: Glynn(2007)
4.4 回帰分析を用いた類義語研究:Geeraerts and Speelman(2010)
4.5 包括的アプローチの今後の展望
4.6 制限的アプローチと包括的アプローチの相補的な関係
5 おわりに

第3章 多義性、メタファー、借用を巡る語彙研究
1 はじめに
2 多義性の認知社会言語学的研究
2.1 認知言語学における多義性研究
2.2 多義性の社会的側面
2.3 英語形容詞awesomeの多義性と意味変化:Robinson(2010)
2.4 多義性研究の今後の展望
3 メタファーの認知社会言語学的研究
3.1 認知言語学における初期のメタファー研究
3.2 メタファー研究における文化的転回
3.3 英語名詞homeのメタファー的用法の研究: Glynn(2015)
3.4 メタファー研究の今後の展望
4 借用に関する認知社会言語学的研究
4.1 借用語研究に求められる新たな視点
4.2 中核的語彙の借用に対する抵抗力
4.3 オランダ語における英語借用語の定量分析:Zenner, Speelman, and Geeraerts(2014)
4.4 借用語研究の今後の展望
5 おわりに

  Ⅱ 文法の変異性
  
第4章 コロストラクション分析に基づく文法変異研究
1 はじめに
2 コロストラクション分析とは
2.1 背景と特徴
2.2 3つの代表的な分析手法
2.3 分析手法の拡張
3 構文と地域的変異性
3.1 言語使用における地域差
3.2 英語into使役構文の変種間比較: Wulff, Stefanowitsch, and Gries(2007)
3.3 地域的変異性研究の今後の展開
4 構文とチャネル変異性
4.1 チャネルとコロストラクション分析
4.2 チャネルと構文: Stefanowitsch and Gries(2008)
4.3 チャネル研究の今後の展望
5 構文とレジスター変異性
5.1 レジスター研究
5.2 英語のgo un-V-en構文とgo形容詞構文:Schönefeld(2013)
5.3 レジスター変異研究の今後の展望
6 おわりに

第5章 統計的モデリングに基づく文法変異研究
1 はじめに
2 構文の交替現象におけるレクト変異性
2.1 交替現象に対する多変量的アプローチ
2.2 英語不変化詞の配置に関する研究: Gries(2003b)
2.3 言語内的要因と言語外的要因の相互作用を考察する必要性
3 認知能力と言語構造の関係
3.1 従来の認知言語学における前提
3.2 オランダ語提示文におけるerの分布の国別変異性: Grondelaers, Speelman, and Geeraerts(2008)
3.3 文法研究における社会歴史的視点の重要性
4 混合効果モデルを用いた文法変異研究
4.1 混合効果モデルとは
4.2 オランダ語使役構文におけるdoenとlatenの選択: Levshina, Geeraerts, and Speelman(2013)
4.3 より包括的な研究に向けて
5 確率文法による文法変異研究
5.1 確率文法のアプローチ
5.2 文法知識とレジスター:Szmrecsanyi and Engel(2021)
5.3 確率文法による文法変異研究の今後の展望
6 おわりに

  Ⅲ ‌言語態度とアイデンティティから見た言語変異研究
  
第6章 レクトの習得と識別と評価
1 はじめに
2 社会的ステレオタイプと言語態度の研究
3 レクトの習得と言語的ステレオタイプの形成
3.1 母語話者が持つアクセント識別能力とその習得
3.2 アクセント識別能力の発達と社会的要因の関係: Kristiansen(2010)
3.3 子どものレクト認識の発達と今後の研究課題
4 ヨーロッパにおけるリンガ・フランカとしての英語の捉えられ方
4.1 英語のリンガ・フランカとしての役割とその認識
4.2 成人の言語使用者が持つ話者の出身地識別能力:Kristiansen, Zenner, and Geeraerts(2018)
4.3 外国語訛りの認識に関する今後の研究課題と展望
5 言語変種の評価
5.1 言語態度と固有価値仮説
5.2 固有価値仮説の実証的検証:Berthele(2010)
5.3 言語態度研究における固有価値仮説の再評価に向けて
6 おわりに

第7章 アイデンティティと変異の社会的意味
1 はじめに
2 アイデンティティと言語使用の関係
3 発音とアイデンティティ
3.1 発音と社会的意味
3.2 ランカシャー地方におけるDARの使用とアイデンティティ:Hollmann and Siewierska(2011)
3.3 中部スコットランドにおける歯音前進の使用とアイデンティティ:Clark and Trousdale(2010)
3.4 発音変異とアイデンティティの関係性の解明に向けて
4 構文とアイデンティティ
4.1 用法基盤アプローチにおける構文と社会の関係
4.2 構文文法に基づくサッカー応援歌の研究:Hoffmann(2015)
4.3 構文文法における社会的アイデンティティ研究を目指して
5 スタイルシフトとアイデンティティ
5.1 認知言語学におけるスタイルシフト研究
5.2 スタイルシフトの戦略的動機付け: Soukup(2013)
5.3 認知言語学での方言およびスタイルシフト研究の今後の展望
6 おわりに

第8章 認知言語学の社会的転回と言語理論構築への道筋
1 はじめに
2 生成文法と社会言語学の理論的枠組み
2.1 生成文法の発展とその理論的前提
2.2 社会言語学のアプローチとその特徴
2.3 生成文法と社会言語学における変異の捉え方
3 生成文法と社会言語学の方法論
3.1 使用される方法論の違い
3.2 内省に依拠する分析と標準文法バイアス
3.3 コーパスの活用と言語変異研究
3.4 言語使用から見る言語類型と変異の研究
4 認知言語学の社会的転回と言語理論の構築における役割
4.1 言語行動における共同行為、調整、慣習の役割
4.2 Croft(2010)の言語変化モデル
4.3 認知言語学と社会言語学と言語類型論の収束
4.4 言語理論の構築に向けて
4.5 社会的視点を取り入れた言語研究の今後の課題
5 おわりに

参考文献
索引

著者紹介
渋谷良方(しぶや よしかた)
〈略歴〉1975年生まれ、富山県出身。2005年、マンチェスター大学大学院博士課程修了(言語学、Ph.D.)。金沢大学人文学系准教授。
〈主な著書〉『ラディカル構文文法―類型論的視点から見た統語理論』(研究社、2018、共訳)、『新しい認知言語学—言語の理想化からの脱却を目指して』(ひつじ書房、2024、共編)


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