1996年8月3日 9月にイギリス言語学会出店


編集長の但野が、9月にイギリスのウェールズの首都カーディフで開かれるイギリス言語学会(正式には、Linguistics Association of Great Britain)に赴き、本を展示して販売もすることになった。昨日、正式に出店料金を振り込んだのである。200ポンドだから、30000円以上である。安いとは言えない額である。
学会ではたぶん、学会特価割引で販売することになるだろうから、近在の方はどうか書店ブースに寄ってほしい。
ウェールズは、英語でなくて、ケルト語の1種のウェールズ語をもともと話しているところ。朝日新聞に大学書林のウェールズ語の本の広告が出ていたので購入した。但野がウェールズ語で挨拶ぐらいできれば(英語もしゃべれないのに感心)ということだったからだ。たぶん、毎年、但野が行くことになる。今年はとりあえず顔見せといったところで、仕方ないだろう。2000年はロンドンだそうだから、スタッフ全員で行こう。
海外での出店は、房主である松本が2年前にコペンハーゲンでの日本学会に行ってからだから、久しぶりのことだ。来年はじめのアメリカ言語学会には、また、出かける。こちらは、編集新人の杉浦の予定。
海外に行くのは、べつに遊びでなくて、「世界的な出版社になる」という将来的な計画があるからだが、はじめは顔見せ、様子見でも仕方があるまい。もちろん、行くからには何らかの成果を見つけたいものだ。
イギリス言語学会への問い合わせにしても、e-mailなしには不可能だった。大したことではないかもしれないが、やはり実務的なレベルでインターネットに助けられていることが多いと言える。利用しない手はないということだ。

1996年8月5日 中村三春さん来社


『フィクションの機構』の著者の中村三春さんが、事務所を訪問された。ホームページや房主の日誌を読んでいてくれているとのことだ。ありがたい読者のお一人。最近、房主の日誌が内輪話になっているとのご指摘。悪いともおっしゃられなかったが、反省する。『新文化』で、植村さんに勉強になると言っていただいたが、たしかに最近は低調だったと言わざるをえない。
前から考えていたことではあるが、だらだら日誌然と書くのではなくて、出版の問題に沿って書いていくべきかもしれない。「学術出版とインターネット」といった内容に絞って続けて書いていこうか。案を練っているところである。

1996年8月6日 『マックで中国語』今のところ、好評


神田の内山書店と東方書店から、お陰様でかなり注文をいただいた。やはり、待っていらっしゃった方が、いたということだろう。マック関係の雑誌、インターネット関係の出版社などかなりあちこちに献本したけれども、書評、あるいは紹介してくれるだろうか。今までとちょっと毛色の違う本だけに、いろいろ気にかかる。

ホームページでの注文の受け方をもう少し工夫しようか、と思い始めた。書店さんへの若干の遠慮から、あまり具体的にしないできたが、「電子お金」の実現を視野に入れて、もう少し商売として成り立つようなスタンスを取ろう。と言ってもクレジットカードは使えないので、郵便振替が中心になるが、会員には割引にするとか、後払いでよいことにするとか、検討しても良いだろう。再販制の問題があって、一応直接取り次ぎさんと契約するときには再版契約を行っている都合上、あまりおおっぴらには割引販売などは出来ない訳だが、定価と書いてある部分を消すなりすれば、いいという解釈もあるようだし、良いことか悪いことか分からないが書店さんの多くはインターネットにつながっていないようだから、必要以上の遠慮はいらないのかも知れないと思い始めている。あるいはおまけ販売でもするか。一方、きちんと書店さんでの在庫情報も流せるようにしよう。これも今まで不十分だった。

8日から祥ちゃんこと、桑原祥子さんが、ほぼ8カ月ぶりに復帰する。これで、但野、杉浦、桑原、房主と4人で仕事を動かしていくことになる。事務的に滞っていたことも改善されるだろう。血液型B型3人娘の活躍に期待して欲しい。


1996年8月10日 目録部分的にホームページ化

未発2号の目録の部分の一部をホームページにつけ加えた。


1996年8月13日 書店さんでひとこえお願いします


小社の本が、本屋さんに並んでいないという声を聞く。また、せっかく書店さんで聞いてくれても、「そのような出版社はない」とかひどいところだと「つぶれました」とか、答えてくれるところもあるらしい。「つぶれました」と言われたというのは、電話してきて注文してきた方がそう言っていたので、実話だと思う。
本が並んでいないことや無名であることは、本当に申し訳ないことで、何とも申し上げようがない。我々の非力、ふがいのなさの極みである。読者の方、著者の方に、本当にすまないと思っています。ホームページを作った実利的な側面として、「ひつじ書房を有名にする広告塔」、「注文をオンラインで受けられるようにする受注センター」というのもあったのだが、一部では知られてきているけれども、本当の少しであり、とりわけ書店さんに対してはまったくといっていいほどホームページの効果は無かったといっていいだろう。
ここで、全く勝手なことで、恐縮だが、ぜひ書店さんで、ひつじ書房の本のことを聞いていただくことをお願い申し上げたい。書店さんへの読者の方の問い合わせが、一番有効だと思われるからである。「ひつじ書房の○○という本はありませんか」とか書店員さんのいるところで、「ひつじの本はなかなかいい」とか言っていただくとありがたい。うまく行くと次にその本屋さんに行ったときには、ひつじの本が増えているかもしれない。
我々の出している本の多くが、研究書であり、一般的な本であってもそれでも少々ニッチな内容である。カルトと言っていいかも知れない。別の言い方で言うと「文化の基礎科学」であったりもするのだが、書店員さんの頭の中の枠組みに全く入ってこないので、彼らには一見、売れなさそうに見えるのは致し方ないところである。ただ、あれば一定の数でるものもあるわけで、店先に置いてないというのが、本当に残念に思うときがある。
人数が少ないなかで運営しているので、なかなか書店さん回りまで出来ないのが、残念だ。今月末には400軒弱の書店さん向けに葉書通信をだすことにしている。これは毎月出す。少しづつ本が置いてもらえるようになれたらという願いからである。
どうか今後ともご支援をお願いします。ひつじ書房がつぶれていると言われたら、強く否定して置いて下されば幸いです。

また、新刊で紹介している本の表紙の絵はコピーしてご自分のホームページなどにくっつけていただければ幸いである。ひつじ書房に飛んでくるようにしていただければなおありがたいと思います。

8日と言っていた桑原祥子さんは、本日からの復帰となった。

1996年8月18日 吉田司VSスティーブ・ウオズニアック


特にお盆休みは取らなかった。先週は電車が空いていて、幸せだった。東京もいつもあのくらいすいているといいのに。

『ビル・ゲイツに会った日』(吉田司 講談社 2000円)この本はおすすめである。タイトルのビル・ゲイツというのはあんまり気にしないでいい。電脳化というものが、文明的にどんなものであるのか、辛辣に事実を指摘してくれる。著者の意見にほとんど賛成だ。ベトナムから水俣、テレクラやヴァーチュアルリアリティなどまで、電脳お遍路という感じであり、本人の目から見た寸評が的をついている。パソコンが、個人個人の能力を解放するというアップル神話は、現実的には存在しない、幻想だというふうに思った方がいいということがわかる。電脳は最後のフロンティアでもなんでもなく、ただのテクノロジーだ。このことは正しく認識しているべきだろう。(ただ、全体としてはそうだが、個人としてのスティーブ・ウォズニアックのことばは、かすかな可能性としてこころに止めておきたい。彼は電脳エリートではないことに注意。)

ホームページは「注文の方法」が見やすいようにほんの少し改造した。

1996年8月23日 取り次ぎの柳原書店口座開設交渉中


われわれは、21世紀に生き残る出版社をめざして新しいこともやっているわけだが、その前に、出版社として現在をまっとうしなければ、ならないわけだ。要するにつぶれてしまうわけには行かない。当然営業の努力が必要となる。営業の努力を実らせるためには、流通をきちんとしなければならない。インターネットを利用しているのも、現実的な流通の問題を解決する一助であるが、なにしろ今をきちんとしなければならないことは歴然としている。
というわけで、関西での販売が特に弱いということで、大阪・京都に強い柳原書店に口座開設の申請中である。鈴木書店のような規模のようだ。東京営業所も自転車で5・6分のところなので、納入もそんなに大変ではない。これが、埼玉や板橋ではなあ。専門の運送屋さんに委託しなければならなくなって、経費も馬鹿にならないからね。板橋というのは栗田書店という取次店で交渉すべきか、悩んでいる。(新規開設の出版社は、自前で納入しなければならないという大きな参入障壁がある。某N書房によれば、一カ所5000円だそうだ。トーハン・日販・大阪屋・太洋社・日教販の5カ所だから25000円だそうだ。月に5回とすると125000円である。)
柳原さんで、初年で1月平均50万円くらいの売り上げがあれば、だいぶ助かるのだけれども。今年の後期の新刊を売っていかなければならない。『ネチケット』『動かないどうにかしてくれ』『プラグマティックス』『書籍文明の終焉』に期待しよう!

1996年8月25日 本の値段のこと(1) 救世主が2400円で高いか!?


読者カードが入れてある本もあり、何人かのひとが感想を寄せてくれている。切手を貼らなくてはいけないので、送って下さるだけで大感激である。みなさん、ありがとう!
でも、複雑な気持ちになる時もある。『マックで中国語』には読者カードが入れてあり、感想は非常な感激ものであった。Chinese Language Kitを使っていたが、なかなかうまく行かなかったり、また、使っている人が少人数ではないかと、心配しているところに本書に出会って、「救世主」に会った気持ちだというのだ。おーうれしいなーそんなことまで書いてくれるなんて! と思ったが、次の瞬間青ざめた。値段が高いというところにチェックが入っているのだ。
救世主が現れて、今まで困っていたことが分かって、2400円で高いのだろうか?????????????????????????????
どういうこと? 救世主の価値は、1200円くらいなのだろうか????????????????ひつじ書房では、2400円は激安の方なのである。「値段が高い」というコメントは、「もっと安い値段で刊行してほしい」という意味になる。本書は2500部だが、出版業界の人に聞いてもらえば分かるが、2400円で2500部というのは、採算割れの値段なのである。2400円クラスの本は最低でも3000部通常ならば5000部以上刊行している値段だ。我々は、著者にパソコンで執筆してもらい、編集者自らDTPで編集・レイアウトし、コストを通常より下げているから、余所の出版社では出せないニッチな分野の本を必要な人があるだろうという信念の元に出せているのである。もっと値段を下げるということは4000部や5000部刷るということになるが、これは大幅なリスク増加となり、実質、刊行不可能を意味する。必死の思いと労働で値段を下げて出している本にもっと値段を下げろと言うことは、「本を出すな」という意味になる。
私は非常に怒っているのだ。
あまり役に立たなかったというのならば、仕方ないし、すまないと思うのだが、救世主で高いというのは、本がどういうものか、全く分かっていないのだろう。我々は小学館や集英社のようなマンガの利益や、雑誌の利益を単行本に投入しているような出版社ではないのである。大手出版社の本の値段ははっきり言ってダンピングである。単行本の部門は赤字なのだから。(赤字でも出していること自体は尊敬に値する。日本国語大辞典のような国家的なプロジェクトをマンガの利益でやっていることは賞賛に値する!)
(この項続く)


1996年8月27日 取次店 日教販に口座開設!


日教販という取次店は、名の通りもともとは教科書、参考書の類を主に扱っていた取次店だが、最近、パソコンショップ関係の流通に力を入れている。N書房さんの話によると、パソコンショップの書店さんが、口座を作ろうと思ってもトーハンや日販は口座を開いてくれないそうなのだが、逆に日教販は精力的に、ショップの流通を手がけているとのことだ。来年の3月には100軒になろうとしている。7月に口座開設の申請に行って今までかかっていたので、もしやと心配してたが、なんとか了解された。明日、契約書をもらいに行く!
電脳社会のリテラシーについて考えいきたいし、そういった内容の本を刊行したいと思っているわれわれとしては、本当にありがたいことである。『マックで中国語』も委託を受け付けてくれるそうなので、さっそく第一弾となる。ネチケットの道は開けてきた!


1996年8月30日 取次店 柳原書店に口座開設!


関西方面の取次店である柳原書店と取引を開始した。今まで特に大阪以西の流通が弱かったが、これで今までよりスムーズに本を送ることが出来るようになるはずだ。本屋さんの話によると人文書に比較的強いということで、鈴木書店と性格が似ているそうである。読者の方に、よりたやすく届くことが出来れば本当にありがたい。
日教販と柳原書店さんの二つの口座開設がいっそうの発展に結びつきますように!

1996年8月31日 留学生新聞で『マックで中国語』取り上げられる


留学生新聞にはいい感じで取り上げてもらえた。一面の印刷も綺麗な感じの良い紙面であった。東方書店と内山書店には常備してあると書いてもらった。影響はどうだろうか?また、日教販さんが、『マックで中国語』100冊委託で引き受けてくれた。来週、パソコンショップ関係で配本されることだろう。追加の注文が来ますことを!

『マックで中国語』の著者の野原さんからメールで、『マックで中国語』の目次が、UNIXでEUCコードで見ている人には見えないとの連絡が入った。野原さんによるとFetchでApple SingleとしてPUTすると化けた文字が最初に入って読めなくなるとのことです。あわてていくつか見た所数カ所でそういう状態のところが見付かった。まだ気づいてないところも多いだろう。気が付き次第直していくつもりである。お気づきの箇所があればお教え下さい。

これらを直そうと思ったのだが、MMJP ぼメンテナンス用のサーバーに混み過ぎでか8時以降入れない。ホームページは見られるのだから、メンテナンス用のサーバーの処理能力が足りないのか? 困ったものである。私は、事務所から帰って夜の深夜にメンテナンスするのだが、実際には全くできない状態だ。仕方なく、朝事務所に行く前に直したりする。土日も今日のように悲惨で、本当に困ってしまう。せっかくISDNにしたのにねえ。アップされている日付と書いている日付が違うのには、こういった原因もあるのです。



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