『モビリティとことばをめぐる挑戦』刊行記念 オンライン・シンポジウム

ひつじ書房、ひと・ことばフォーラム共催

『モビリティとことばをめぐる挑戦』
刊行記念 オンライン・シンポジウム
開催のお知らせ




このたび、『モビリティとことばをめぐる挑戦:社会言語学の新たな「移動」』(三宅和子・新井保裕編)が刊行されました。
https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1128-1.htm
本書の刊行を記念して、オンライン・シンポジウムを開催いたします。

「モビリティ」はなぜ、社会とことばの関係を追究する学問にとって重要な視点なのか。本シンポジウムでは、移動が常態となった現代を生きる人々・家族・コミュニティ・民族の現実(リアリティ)とことばの関係を様々な研究視点と研究方法で描きだした『モビリティとことばをめぐる挑戦』の執筆者が登壇し、多彩なトークを繰り広げます。このきわめて現代的な問題は、「近代的科学主義」に根差した世界把握の方法や視点、研究方法を越えて捉える必要があり、「モビリティ」というヒト・モノ・社会の移動性を捉える概念がその把握に不可欠かつ有益であることを明らかにします。シンポジウムの最後は執筆者と会場を巻き込んでのディスカッションにつなげます。


▼開催日時:2022年2月26日(土)16:00-18:00
▼会場:オンライン(Zoom)
▼参加費:無料
▼参加申し込み方法:
ご参加を希望される方は、2022年2月24日(木)までに下記Googleフォームよりお申し込みください。
https://onl.la/sq3ne4f
*参加申込をされた方に、2月25日(金)にURL及びパスコードをお送りします。

▼シンポジウム内容:
〈挨拶〉ひつじ書房 松本功
〈登壇〉16:05-17:25
三宅和子(東洋大学)「モビリティ: 現代の社会とことばを読み解く鍵概念」
フロリアン・クルマス(デュイスブルク・エッセン大学)「ワンダーワードとは何か:「モビリティ」をめぐって」(英語+日本語)
新井保裕(文京学院大学)「中国朝鮮族のことばの研究:「モビリティ」が照らす社会言語学に必要な学際性」
吉田真悟(上智大学)「モビリティの視点から見た台湾語研究: 台湾語の何が「移動」しているのか」
〈ディスカッション〉17:25-17:55 執筆者・会場参加者
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ハッピーアワー懇親会(18:15-19:00)
*閉会後、懇親会を開く予定です。飲み物、スナックを片手に、くつろいだ雰囲気で登壇者・執筆者・参加者が懇談する機会です。ぜひご参加ください。
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▼シンポジウム要旨
〈登壇者順〉
三宅和子(東洋大学)「モビリティ: 現代の社会とことばを読み解く鍵概念」
グローバル化、デジタル化が進むポストモダン時代の現在、従来の社会言語学が想定していた特定の共同体や地域と結びついた人や言語という前提が揺らいでいる。ヒトもモノも情報も移動する世界で、固定的な性別、年齢、階層、地域、職業で切り分けてどれほどのリアリティを炙り出せるだろうかとの疑問も湧く。社会言語学には新しい視点や方法が求められている。「モビリティ」という概念は新しい研究方法ではない。しかし、多様性、流動性、複雑性を孕んだ21世紀の人とことばと社会の関係を究明するに必要不可欠な視点である。ここでは、モビリティを提唱した社会学者Urry(2007)、社会言語学者Blommaert(2010,2013)の考え方の検討を出発点に、モビリティという概念が照射する現象と研究領域を示し、本書の内容と関連づけながら、新たな研究の地平が切り拓かれることを示す。

フロリアン・クルマス(デュイスブルク・エッセン大学)「ワンダーワードとは何か:「モビリティ」をめぐって」(英語+日本語)
言語は空間と時間の中にあるーー物理学者のアルバート・アインシュタインが教えてくれたように、空間と時間は全体として概念化することができる。ここでは、ある有名な名前の一般化を例にとりながら、言語も時空に存在し、機動性(mobility)なくしてあり得ないと私は主張する。

新井保裕(文京学院大学)「中国朝鮮族のことばの研究:「モビリティ」が照らす社会言語学に必要な学際性」
中国朝鮮族は国内外移動と中朝二言語使用で知られるが、朝鮮族のモビリティとことばの関係は社会言語学では十分に注目されていない。朝鮮族を始めとする「移動する人びと」のモビリティとことばの関係を明らかにするために、社会言語学は何が必要なのだろうか。本発表では朝鮮族のことばの研究を出発点にし、本編著作成作業(論文・コラム執筆者、編者)を通じて発表者が感じた発展方向性について述べる。研究視点については、異なる研究分野との対話、交流が必要であり、研究方法も社会の変化に応じて変えることも検討すべきである。こうした研究視点、研究方法の「モビリティ」が社会言語学に必要であることを主張したうえで、今後の研究展望を報告する。そして「モビリティ」によって社会言語学に必要な学際性が改めて照らされることを示す。

吉田真悟(上智大学)「モビリティの視点から見た台湾語研究: 台湾語の何が「移動」しているのか」
本発表ではまず対象言語である台湾語と、発表者のこれまでの研究について簡単に紹介した後に、台湾語研究と「モビリティ」の関わりについて考えたい。台湾は日本と歴史的・地理的に繋がりの深い地域であり、近年は関心の高まりが見られるものの、台湾語という言語についてはまだあまり知られていない。発表の前半では台湾語の概要とともに、発表者がそれを①言語復興運動、②文字使用という側面から研究してきたことについて述べる。そしてモビリティという観点からそれらを捉え直すと、物理的な「人の移動」と言うよりも、「アイデンティティの流動」と関係が深いこと、また今回扱った文字使用というテーマが、社会言語学・モビリティ研究にとって可能性を秘めた領域であることを論じる。

▼問い合わせ先:ひつじ書房 丹野(メールアドレス:toiawase@hituzi.co.jp)

▼主催:ひつじ書房、ひと・ことばフォーラム