PETER TAYLOR'S SOUTH

PETER TAYLOR'S SOUTH YOSHIKO KAYANO ひつじ書房 2004年3月9日★



PETER TAYLOR'S SOUTH

YOSHIKO KAYANO

6000円+消費税
ISBN4-89476-218-8
ひつじ書房


 
CONTENTS
List of Illustrations
Preface
Acknowledgements
Introduction
1 ENCOUNTERING "OTHERS"
Peter Taylor's Childhood
2 MAKING THE INVISIBLE VISIBLE
Children in a Changing Environment
3 LIVING IN A "LITTLE SOUTH OF OUR OWN"
Race Relations in a "Big Happy Family"
4 CROSSING BOUNDARIES
Region, Generation, Class, and Gender
5 A ROAD NOT TAKEN
The Haunted Mind and Its Quest
Notes
Appendix 1: Abbreviated Chronology of Peter Taylor
Appendix 2: A Conversation with Mrs. Eleanor Taylor One Spring
Afternoon in Charlottesville, Virginia
Bibliography
Index

日本ではあまり知られていない米国テネシー州出身のピュリツァー賞受賞作家ピーター・テイラー(Peter Taylor 1917~1994)の、生涯(特に幼少年期の体験)と全作品に関する総合的研究。大恐慌を背景に、アメリカの南部の人口が北部へ、そして農村の人口が都市へと大移動した時代に、人種分離政策の続く南部(テネシー州)の名家に生まれたテイラーは、幼少年期に大きな環境の変化を何度も体験した。その後60年近くに及ぶ執筆活動を通じて、記憶をたどりながら語る独自のナラティヴ・スタイルを確立し、「動く視点」で当時の南部の人種関係、階級意識、ジェンダーの役割、ジェネレーション・ギャップの実態、地域間の相違等を描き続けた。

本書では、まず第一章で、テイラー自身のエッセイ、インタビュー、手紙等を詳細に検討し、さらにテイラーをよく知る人たちへのインタビューを行ない、自伝を残さなかった作家の幼少年期の体験を再構築している。そして、テイラー自身が「テネシー・キャラバン」と呼んでいる三回に渡る大規模な引っ越し、それに伴うカルチャー・ショックと適応の過程、家庭内で守られ続けた故郷の伝統への関心と反発、常に身近に存在したアフリカ系アメリカ人の使用人との間のパラドクシカルな関係等が、テイラーの作家としての視点に多大なる影響を与えていることを検証するために、第二章以降で、初期の作品から晩年の作品に至るまでを詳細に分析している。

第二章では、明らかにテイラーの分身と思われる子どもが登場する作品、第三章では、アフリカ系アメリカ人の使用人との間の様々な交流や関係が読み取れる作品、そして第四章では、地域間・世代間・ジェンダー間・階層間の問題を扱った作品、第五章では、社会における「文化化」(enculturation)を経た「自分」と「本来」の「自分」とのギャップや、「文化」の縛りとそこからの逃亡を主なテーマとした作品に焦点を当てて論じている。その結果、テイラーは「文化」の人を拘束する力を執拗に描きながら、「異文化」間の接触とインターアクションによって「文化」の引いた境界線がぼやけたり、動いたり、崩れたりする瞬間を提示し、その恣意性・流動性を示し続けたことがわかる。自分の生まれ育った社会を内と外から同時に見ることのできる視点には、小さい頃の移動体験・異文化体験が大きく影響しており、様々な人間関係を描いた作品全体からは、タペストリーのようにテイラーの生きた「南部」が浮き彫りになる。


●著者紹介
茅野佳子(かやのよしこ)
早稲田大学教育学部英語英米文学科卒業。ポートランド州立大学においてM.A.(英語教授法/TESOL)ミシシッピ大学においてPh.D.(英文学)を取得。都立高校教諭。リンフィールド大学講師などを経て、現在明星大学人文学部助教授。



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