三尾砂著作集 第1巻

三尾砂著作集 第1巻  三尾砂著  ひつじ書房刊
2003.5.12 


三尾砂著作集 第1巻

三尾砂著

2800円+消費税

ISBN4-89476-162-9

ひつじ書房


●はしがき
 文章論という表題の本はほとんどない。ふつうは文法書の品詞論のあとに少しく書きそえられているといった程度である。この本は、小冊子でもあり、まだ未解決の部分もあり、まとまった文章論ではない。またふつうに文章論といわれている種類のものとは大分内容もちがっている。が、ふつうの文章論を否定するつもりではないので、それはそういう種類の本で見てもらいたいというつもりなのである。それらの本で、あまりあつかわなかった残された面の一部を、むしろ補足する意味でとりあげたのである。ふつうの文章論の問題である単文、複文の問題や節、句、語句の対応といったような問題はまるで取りあげることができなかった。これまでの文章論の主要部をなしている成文論も、ほんのわずかしかふれることが出来なかった。それらの一歩手前の、もっと根本的な問題と思われる点にふれたいと思ったからである。それで、はじめから、まとまった文章論とは言えなかった上に、執筆をはじめて二年間ぐらいのうちに出来上ったが、戦争中で出版がのびている間に訂正したいと思うこともあって幾度も書きなおしたところもあり、また、最後には新かなづかいによって訂正したりしたために原稿の出来上りもおくれ、全体のていさいは、一そう文章論としてはまとまらないものになってしまった。執筆から出来上りまで四年間たっているので、はじめに書いた部分で、気に入らなくなったまま、手を入れないでそのままのところもある。文章の上でも用語、用字の上でも不統一なところが多い。また昭和20年度の学術研究会議の私の研究がこの本の内容と共通のものであったので、その報告からも取り入れたため、内容的に同じ部分もある。その点読者のおゆるしを得なければならないと思う。
 私がこの本で、特に述べたいと思ったことは、文の分類法の基礎づけの問題と、その内容構造を、これまでの成文論による分析でなく、もっと単位的な科学的な方法があれば、そういう方法によって、明らかにしてみたいということであった。まだ不十分で述べ足りないところが大へん多いが、私の方向はくみとってもらえるかと思う。
昭和22年2月27日 三尾砂


●目次
国語法文章論
1 文脈
文脈
話の場の文脈
結構と文脈
二種の文脈
話し手の「つもり」
2 話の場
3 文
文法上の文(1)
文法上の文(2)
文章論の出発
場と文の相関原理
4 文の類型 その一
(1)場の文
(2)場を含む文
(3)場を指向する文
(4)場と相補う文
5 文の類型 その二
分類原理についての再考
(1)現象文
(2)判断文
(3)未展開文
(4)分節文
6 文の類型 その三
 一般の文法書の分類
(1)文の構造上の種類
(2)文の性質上の種類
諸家の特殊の分類
山田孝雄博士の分類(『日本文法論』『日本文法学概論』『日本口語法講義』)
松下大三郎博士の分類(『改撰標準日本文法』)
湯澤幸吉郎氏の分類(『口語法精説』)
佐久間鼎博士の分類(『日本語の特質』)
三宅武郎氏の分類(『音声口語法』『コトバ』昭和十六年五月号)
7 文の構造
内部構造への手がかり
文節
文節の構造
(1)文節の意味的中核
(2)文節の機能
助詞の種類
8 文の構造的見方
論理的構造
形態的構造
力学的構造
論文・その他著作
9 『基本文型への手がかり』
10 『国語教育と基本文型』
1学習は基本形から/基本連文型/基本文型の指導はどう役にたつか/基本文型の変種
3基本文型と文型/文型の分類
4存在の文型/時所の限定のない存在の文
5時所の限定のある存在の文
6「・・・には・・・がある(がいる)」「・・・には・・・はない(はいない)」の派生文型/「には」がゼロの場合の派生文型/「がある」「がない」のイディオム
7「には」が他の形に変わった派生文型
8「がある」が他の形に変わった派生文型/慣用
11 『主語・総主・題目語・対象語』
1 概観
2 主語と主格
3 提示と主題(題目)
4 主題の特質
5 転移文の主語
6 総主
7 対象語
12 『日本語の文法  -分かち書きの基礎論 -』
1 概観
2 活用形とは何か
3 活用とコンジュゲーション
4 単語認定の問題
5 動詞の語構成
6 基本語幹・語幹・語尾
7 語基の種類
8 活用の3系列
9 未然形・連用形の問題
要約
10 動詞の原形
11 助動詞の改編
12 動詞の活用表
13 『日本語の分離変化』
分離動詞
1 動詞の「する」分離
2 形容詞の分離
語基の重ね
「(く)ない」の変形
他語の挿入
「白うございます」の分離
「白いです」の分離
形容詞「ない」の分離形
3 「て」動詞の分離
4 「する」動詞の分離
14 『名詞の一種の連体形』
名詞の尾部の -a 形
-e 形が先か -a 形が先か
「うなばら」(海原)考
砂 (isago) は isi-ko か iso-ko か
カモとツバクロ
山田博士の格助詞 na
15 『文体と『の』の移りかわり』
文体の移りかわり
助詞「の」の移りかわり
16 『文における陳述作用とは何ぞや』



●著者略歴
三尾砂(みお いさご)

明治36年
香川県大川郡志度町に生まれる
昭和3年
早稲田大学哲学科西洋哲学専攻科卒業
昭和4年
香川県津田高等女学校に奉職
昭和14年
早稲田大学大学院入学、1年間児童言語発達専攻、続いて2年間早大心理学教室研究員として研究す
昭和15年
早稲田大学創立60周年記念事業として早大付属児童研究所創立の企画を委任され企画に当たる
戦争激化のため計画が中止され、ついに実現せず
昭和19年
日本少国民文化協会児童研究所嘱託となる(終戦解散まで)
昭和21年
戦争孤児養育のため青葉学園を、ローマ字教育実験のため付属青葉学園小学校を創立
昭和23年
社団法人日本ローマ字会理事となる(3年間を除き47年まで)
文部省教育研修所ローマ字教育実験調査委員会委員となる(2年間)
平成1年
8月 没


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