HOMEへ過去の日誌8月の日誌スタッフ紹介



2025.9.29(月)

百面相は本当に「百」か?



百面相、という言葉があります。コロコロと表情を変えることを意味しますが、手ぬぐいなどの小道具を用いた寄席芸に由来しているそうです。「百」という数字は、「数が多い」ことの比喩だと思いますが、四字熟語では「千」や「万」といった数字を使うことのほうが多い気がします。「百」に比べると、「千」や「万」は途方もなく大きい数字のように思えるからでしょうか。

百面相の話を持ち出したのは、まさに私がしばしば百面相だと言われるからです。表情がかなり豊かなほうで、喜怒哀楽が顔にとても出やすい自覚があります。はたして、私の表情は本当に「百」個でしょうか。喜怒哀楽にもグラデーションがあり、とても百では足りないように思います。人間の細胞は絶えず生まれ変わりますから、今日の表情筋は昨日の表情筋ではないということになりますし、再現性はないのかもしれません。

ひつじ書房で働き始めて3週間が経ちました。まだまだ「慣れる」という言葉にはほど遠い状況です。経験不足がゆえに、質問に対して即座に答えられないことも多くあります。先日、どう返答したらよいか迷った際に、その迷いがすべて顔に出てしまい、「いかにも迷っている顔」をしてしまいました。「ええと……」「あの……」といったフィラーの代わりに、表情で返事(にもならない返事)をしてしまうという失態でして、実に恥じ入りました。

ひとつずつ、気持ちを落ち着けて対応し、どんな質問にもキリっとした表情でハキハキと返答できるようになりたいものです。覚える仕事が大変多いという事実には抗えません。焦らず着実に成長してゆけるように、日々の業務に誠心誠意向き合うべく、決意を新たにしております。






2025.9.24(水)

「シリーズ認知と言語」来月刊行!



来月、ひつじ書房より新シリーズ「シリーズ認知と言語」の刊行が始まります。
本シリーズでは、認知言語学の発展を3つの段階に整理し、現在進行中の「第三期」に焦点を当てています。 草創期には、概念メタファー、フレーム意味論、構文文法、スペース理論などの革新的な理論が提唱され、 続く第二期では、量的な実証研究が進展し、関連分野との接点が積極的に探られました。 そして現在、認知科学が暗黙の前提としてきた西洋的合理主義を脱却し、新たな人間像に基づく言語研究が模索されています。
本シリーズでは、以下の3つの方向性に注目した研究を刊行していきます。
・ 生態心理学の実在論に基づくエコロジカルな言語研究
・ ことばの感性的側面に着目するマルチモーダルな言語研究
・ インタラクションを重視する言語コミュニケーション研究

第1弾として、以下の2冊を同時刊行いたします!

第1巻『環境を語る言葉――生態心理学から見た語彙意味論』仲本康一郎 著
言語を環境との相互作用の中で捉える立場から、語彙・文法・数量表現・アスペクト表現を再考。 生態心理学に基づく実在論的アプローチを通じて、言語のカテゴリー化が環境に埋め込まれた活動を通して生じることを示し、認知言語学に新たな展開をもたらします。
https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-89476-622-8.htm

第2巻『日英語の可能表現の本質――アフォーダンスと原因帰属から見た英語中間構文と日本語無標識可能表現』本多啓 著
英語の中間構文と日本語の無標識可能表現を対象に、可能表現の成立条件を理論的に解明。 アフォーダンスや社会心理学の概念である原因帰属という枠組みを導入することで、従来の分析では捉えきれなかった多様な現象を整理し、新たな視座を提供します。
https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-89476-623-5.htm

両書は、異なる焦点を持ちながらも、いずれも認知言語学の枠組みを拡張し、今後の理論的・実証的研究に資する知見を提示しています。 現在、印刷工程に入っております。ぜひご注目ください!






2025.9.24(水)

元気に挨拶、いい日になるはず



スタッフ日誌をご覧のみなさま、はじめまして。新入社員の杉浦です。よろしくお願いいたします。大学時代は日本語学を専攻し、卒論では短歌の破調について扱いました。短歌は読むことも好きですが、作ることも好きです。卒論で破調を取り上げた割に自作は定型が多く、ごくまれに字余りの歌を作る程度で句またがりも少なめの作風です。

入社してから2週間が経ちましたが、毎日覚えることがたくさんあり、あたふたとしてしまうことが多いです。私はおっちょこちょいなところがありますので、日々大小さまざまな失敗をしてしまうのですが、社内外のみなさまにあたたかく見守っていただきながら過ごしています。本当にありがとうございます。

大学時代にサークルの仲間と日めくりカレンダーを製作しまして、自宅に置いて毎日めくっているのですが、入社した日のキャプションには、「元気に挨拶、いい日になるはず」と書いてありました。新人の私にできることはまだとても少ないですが、毎日笑顔で元気に挨拶をすることで、みなさまに少しでも明るい気持ちになっていただけたらと思っています。

日めくりカレンダーを1日に1枚ずつめくるように、ひつじ書房の一員として、一歩ずつ着実に成長してけたらと意気込んでおります。これからどうぞよろしくお願いいたします。





2025.9.9(火)

刊行! 『AIを外国語教育で使わない選択肢はもうない』



今までSFの世界のガジェットだと思っていたAIですが、この数年で一気に身近なものに様変わりしましたね。私も便利なので、海外の本を読む際に翻訳AIを活用しています。
AIを使う気がなくても、Googleで検索しますと検索結果の冒頭に「AIによる概要」が自動的に表示されるなど、「AIがあって当たり前」というような環境が出来つつある気がします。一方で前述のAIの概要は明らかに誤りを述べていることもありまして、油断なりません。
私と同じように「便利だけど不安な点もある」という方がたくさんいらっしゃるのではないかなと思います。中でも、外国語教員の方は「学生がAIを使ってしまったら学習者の外国語能力をちゃんと測れないのではないか」「そもそもAIがあると学習者は外国語を学ばなくなるのではないか」と、AIに対して懐疑的な方もいらっしゃると思いますし、すでに現場ではAIを使う学生とどう向き合うか試行錯誤されていることかと思います。
そんな方々に手に取っていただきたい書籍を刊行いたしました。本日は『AIを外国語教育で使わない選択肢はもうない』(大木充・小田登志子・岩根久編)を紹介いたします。

タイトルだけ見ますと、「AIを外国語教育でどんどん活用していこうという趣旨の本なんだな」という印象を受けますよね。たしかに本書はAIの外国語教育への活用を薦める本ではあるのですが、「なんでもかんでもAIありき」といった、AIを盲信するようなことはせず、「外国語教育・学習にAIありきではなくて、指導者は自分が担当している科目で学習者がAIを用いる必然性があるのかどうか」を問う必要があると「はじめに」で主張しているように、本書は「なぜAIを外国語教育に使う必要があるのか」を、第二言語習得の理論や近年の外国語教育の潮流などを踏まえて徹底的に考察し、AIを外国語教育に活用することに二の足を踏んでいる方のために、AIに対する不安点や疑問に答えるような1冊になっています。 そうした検討を踏まえた上で、どうして著者の先生方は「使わない選択肢はもうない」という結論に至ったのか、確かめていただければと思います。

まずは本書の詳細ページ(以下のURL参照)で編者の大木充先生による「はじめに」を公開していますので、こちらをお読みいただければ、本書のスタンスがよくわかるかと思います。

https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1308-7.htm

また、本書は上記のような理論的な部分だけでなく、実際に教育現場で行われている実践例も豊富に紹介しています。さまざまな授業で応用可能なものばかりですので、AIを使う必要を感じたその日から実践できるかと思います。
また、第8章では特別企画として、鳥飼玖美子先生へのインタビューを収録しています。さまざまな場でご活躍されている鳥飼先生はAI時代の英語教育をどのように考えていらっしゃるのか、必読です。

ここまでAIが普及すると、どうしたって誰もが向き合わざるを得ないと思います。「何でもAIにお任せ」という盲目的な全肯定でも「絶対にAIは使わない」という教条的な全否定でもない、さまざまに検討を重ねた上でAIとの共生・協働を図っていく必要があるかと思います。本書はそうしたこれからの時代に必要なAIに対する向き合い方を実践している1冊です。ぜひご一読ください。





HOMEへ

過去の日誌

8月の日誌

スタッフ紹介