研究会の趣旨][過去の研究会の活動][ホームページ

2005.9.10更新

第10回メディアとことば研究会
場所: 東洋大学
日時: 2005年6月25日(土)

発表者:
岡本能里子(東京国際大学)・織田絵里(松戸国際学院)
布尾勝一郎(大阪大学大学院言語文化研究科博士前期課程)



発表者: 岡本能里子(東京国際大学)・織田絵里(松戸国際学院)
タイトル:
日本語における電子メールの談話構造と言語的特徴
―友人と仕事関係(大学、研究者間)の電子メールの比較を通して―
キーワード:
談話構造、話し言葉性、書き言葉性、エモティコン、メディアの場面性

概要:
近年の電子メディアの発達は、通信技術の急速な進歩に伴い、人間の情報伝達様式を変化させているだけではなく、人間関係や自己の捉え方、および文字やことばの機能そのもの自体にも変化をもたらすものだと言われている。
 本発表では、今や日々のコミュニケーション伝達に欠かせないメディアとなっている電子メールを取り上げる。今回は、まず、友人関係と仕事関係(大学関係)の間でやりとりされたメールのメッセージを比較し、2つの異なる関係性がどのようにメッセージの談話構造や言語形式に現れているかを考察する。次に、電子メールの場面性を手紙、電話、留守番電話、パソコンでのチャットとの比較の上で整理し、電子メールが実際には文字による一方方向の伝達形態であるため、それを反映した手紙の要素を残している一方で、文字使用や言語形式、エモティコンや記号、スぺースの取り方などで、音声伝達や双方向の対話に見られる強い話し言葉性をも表す言語的特性が混在していることを示す。
 当初は企業や特定個人が情報伝達を目的としてスタートした電子メールのやりとりが、「おしゃべり」そのものを目的としたコミュニケーションにも分化してきて久しい。新しいメディアが作られる度に、人々がメディアのもつ場面性に対処しつつ、新たな文字やことばの機能を生み出し発展させているという人間のもつコミュニケーション能力の柔軟性とダイナミックな変化の過程の一端を示してみたい。




発表者: 布尾勝一郎(大阪大学大学院言語文化研究科博士前期課程)
タイトル:
自社および系列テレビ局の不祥事報道における新聞の隠蔽ストラテジーについて
―第三者名義株式保有問題を題材に―
キーワード:
新聞、公正さ、「身内」の不祥事報道、隠蔽ストラテジー、第三者名義株保有問題

概要:
 「中正公平」「不偏不党」「公正」−日本の新聞社の紙面編集方針は、多少の表現の差こそあれ、「公正」を標榜しているものが多い。だが、利害関係のない他者について語るときには「公正」な態度をとり得たとしても、「身内」に対してはどうであろうか。とりわけ、都合の悪い内容、すなわち自社やグループ企業の不祥事について報道する場合に、その真価が問われることになる。
 本研究では、2004年11月に明らかになった、新聞各社の第三者名義株保有問題に関する報道を題材に、新聞による自社および系列テレビ局(=身内)の不祥事報道を批判的に分析することで、その「隠蔽ストラテジー」を明らかにしていきたい。