講座ドイツ言語学 第2巻 高田博行・新田春夫 編 ひつじ書房 講座ドイツ言語学 第2巻 高田博行・新田春夫 編
2013年2月

講座ドイツ言語学 第2巻

ドイツ語の歴史論


高田博行・新田春夫 編

A5判上製 定価4,000円+税

ISBN978-4-89476-572-6

ひつじ書房



「講座ドイツ言語学」の紹介
ドイツ語に関する言語学的研究は、そのプレゼンスをわが国の言語学の風景のなかに今まであまり示してこなかったように思われる。「ドイツ語研究者よ、奮起せよ」という励ましの声が聞こえてくる。その風景のなかに、ドイツ語を対象とした言語研究の最新成果を積極的に、しかもある程度まとまった形にして発信しようというのが、今回企画した『講座ドイツ言語学』のねらいである。ドイツ語という言語の文法を共時的・通時的に分析したとき、どのような個別性と普遍性が見えてくるであろうか。また、ドイツ語は、時々刻々と変容する現代の社会・コミュニティ・メディアと言語使用者の関わりにおいてどのような相貌を示すのであろうか。さらにまた、とりわけ活版印刷というメディアの大転換期以降、ドイツ語はどのような歴史的進展を遂げてきたのであろうか。本『講座』では、このような問いかけに対する答えを、ドイツ語の知識がない読者にも理解できるように、丁寧にわかりやすく説明・論述する。したがって、本『講座』は単なる学術的論文集ではなく、学術的入門書という性格を持つものである。執筆陣には、ドイツ語学における精力的な研究で知られる言語学者たちをそろえた。

  「講座ドイツ言語学」全3巻責任編集 
   高田博行・岡本順治・渡辺学(学習院大学)


★既刊
『講座ドイツ言語学 第1巻 ドイツ語の文法論』(岡本順治・吉田光演編):2013年4月
★続刊
『講座ドイツ言語学 第3巻 ドイツ語の社会語用論』(渡辺学・山下仁編):2014年2月


第2巻の詳細
初めにドイツ語の歴史に関して概略的説明を行う。そのあと、第I部では完了形、受動構文、使役表現、機能動詞構造、語順、造語といった文法カテゴリーに関して体系的な通時的記述を行う。第II部では、15世紀から19世紀に至るドイツ語の歴史を、印刷工房、宗教改革、文法家、日常語、大衆新聞という切り口から社会とコミュニケーションと関連づけて、過去におけるドイツ語話者の息づかいが聞こえてくるように描く。執筆者は、井出万秀、黒田享、清水誠、高田博行、新田春夫、藤井明彦、細川裕史の7名。



【目次】

「講座ドイツ言語学」の刊行に寄せて 
まえがき 

第1章 ドイツ語の歴史(通史)
1. はじめに―多様な「ドイツ語」
2. ドイツ語の方言区分
3. ドイツ語史の時代区分
4. 文法構造の通史
4.1 古高ドイツ語から中高ドイツ語へ
4.2 中高ドイツ語から初期新高ドイツ語、新高ドイツ語へ
5. 社会語用論の観点から見た通史
5.1 キリスト教の布教(古高ドイツ語)
5.2 騎士・宮廷文化(中高ドイツ語)
5.3 封建社会から市民社会へ(初期新高ドイツ語〜新高ドイツ語)


  〈I 文法構造の歴史〉

第2章 語順の変遷 ゲルマン語類型論の視点から
1. 語順類型をめぐる問題点
2. 古語の語順をめぐる問題点―古高ドイツ語『タツィアーン』を例に
3. 名詞句の語順の変遷(1)―定冠詞と名詞
4. 名詞句の語順の変遷(2)―形容詞/属格と名詞
5. 名詞句の語順の変遷(3)―形容詞語尾と冠飾句
6. 枠構造の特徴と変遷(1)―補文標識の構造
7. 枠構造の特徴と変遷(2)―動詞群の語順
8. 枠構造の特徴と変遷(3)―枠構造の成立と解消

第3章 構文の変遷(1) 完了分詞を伴う構文
1. はじめに
2. 受動構文
2.1 動作受動と状態受動
2.2 その他の受動的機能を持つ表現
3. 完了構文
3.1 2つの完了構文
3.2 過去表現としての現在完了形
4. warth wordhan構文
5. 今後の展望

第4章 構文の変遷(2) 使役構文とその周辺
1. はじめに
2. 定義
2.1 現代ドイツ語での定義
2.2 歴史的定義
3. 中高ドイツ語における使役動詞
3.1 使役動詞派生関係の明確さ
3.2 中高ドイツ語における使役動詞の語彙化
4. 統合的使役動詞と分析的使役表現
4.1 分析的使役表現
4.2 分析的使役表現と統合的使役動詞の差異
4.3 現代ドイツ語における分析的使役表現―lassenの意味用法
4.4 分析的使役表現の統語構造とその歴史的変遷
4.5 中高ドイツ語におけるtuonとmachen
5. おわりに―今日「使役」を区別する意義は

第5章 初期新高ドイツ語の造語 名詞句と複合名詞のはざま
1. はじめに
2. 書記慣用
3. 初期新高ドイツ語の統語領域における変化
3.1 名詞句における属格名詞の前置/後置
3.2 名詞の格表示
4. 複合名詞と名詞句の区別
4.1 前置属格名詞に冠詞[類]と格語尾が付いている場合
4.2 前置属格名詞に冠詞[類]があるが、格語尾がない場合
4.3 前置属格名詞に冠詞[類]がないが、格語尾が付いている場合
4.4 前置属格名詞に冠詞[類]がなく、格語尾も付いていない場合
5. まとめ


  〈II 社会と人の営みから見たドイツ語史〉

第6章 初期印刷工房のドイツ語(15世紀) 手書き写本から活版印刷本へ
1. はじめに
2. 初期印刷本の植字と印刷
3. 言語現象の選択
4. ギュンター・ツァイナー工房のドイツ語刊本
5. 2つの分析例
5.1 『アポロニウス』
5.2 『イソップ』
6. 同時代のアウクスブルクの手書き写本のことば
7. ギュンター・ツァイナー工房の印刷語の歩み
7.1 揺りかごの中で(『小祈祷書』、『アポロニウス』、『グリゼルディス』)
7.2 最初の一歩(『聖人たちの生涯(夏の部)』、『ベリアル裁判』、『黄金遊戯』、『婚姻の書』)
7.3 二歩目、三歩目(『プレナーリウム』)
7.4 ひとつのモニュメント(『ドイツ語聖書(1475/76年頃)』)
7.5 最後の研磨(『シュヴァーベン法鑑』、『ドイツ語聖書(1477年)』、『チェス盤の書』)
7.6 「その印刷業者は落ちぶれて死んだ」(『聖墳墓への道』、『罪人の鑑』、『イソップ』、『医学の書』)
8. 1480年代から16世紀初頭のアウクスブルクの印刷語

第7章 戦いの手段としてのドイツ語(16世紀) 近世宗教改革運動におけるドイツ語文書
1. はじめに
2. ドイツ語文書
2.1 Flugschrift(ビラ、パンフレット)
2.2 Flugschrift(ビラ、パンフレット)の具体例
3. 戦いの手段としてのドイツ語
3.1 ことばによる直接的攻撃
3.2 文章構成
3.3 修辞的技巧(文彩)
3.4 読者/聴衆への働きかけ
4. まとめ

第8章 「正しい」ドイツ語の探求(17世紀) 文法家と標準文章語の形成
1. 「ルターのドイツ語」の相対化
1.1 古典修辞学の要請
1.2 「ドイツのキケロ」
2. ショッテルの文典
2.1 「ドイツのワロ」
2.2 「根本的規則性」
2.3 語分析原理に基づく規範化
3. 正書法の規則
3.1 語幹の不変性
3.2 17世紀のルター聖書における正書法
4. e音をめぐる「正しさ」
4.1 2人称単数の命令形
4.2 名詞と冠詞類におけるeの指定
4.3 17世紀のルター聖書におけるeの復旧
5. 性・数・格の明確化
5.1 定冠詞の拡張形
5.2 多重屈折
5.3 形容詞の強変化
6. 「高地」ドイツ語から「標準」ドイツ語へ

第9章 書きことばと話しことばの混交(18世紀) 「日常交際語」という概念をめぐって
1. 「遠いことば」と「近いことば」
2. 私的場面での日常交際語
2.1 手紙に書かれる日常交際語
2.2 文章語の対立概念としての日常交際語
3. 公的場面での日常交際語
3.1 標準文章語と方言の混交形としての日常交際語
3.2 「近い」日常交際語と「遠い」日常交際語の区別
3.3 文字による日常交際語
4. カンペによる日常交際語の理解
4.1 「近い」日常交際語と「遠い」日常交際語
4.2 文字による日常交際語
5. 結び―「近さ」と「遠さ」を調整する日常交際語

第10章 大衆紙のドイツ語(19世紀) 三月革命は書きことばを大衆に届けたのか?
1. はじめに
2. 新聞をめぐる言語使用史
2.1 新聞の書き手
2.2 新聞の読み手
3. 三月革命直後の新聞のドイツ語
3.1 形態的特徴
3.2 語彙的特徴
3.3 統語的特徴
4. まとめ

索引 
参考文献 
執筆者紹介 






ご注文は、最寄りの書店さんでお願いします。
お店に在庫が無くても、お取り寄せができます。

書店が最寄りにない場合は、オンライン書店でご注文ください。

 

 



お急ぎの場合は、小社あてにご注文いただくこともできます。
郵便番号、ご住所、お名前、お電話番号をメールか、FAXでお知らせください。
送料420円でお送りします。
新刊案内へ
ひつじ書房ホームページトップへ