格助詞「ガ」の通時的研究 山田昌裕 著 格助詞「ガ」の通時的研究 山田昌裕 著
2010年2月

ひつじ研究叢書(言語編)第76巻

格助詞「ガ」の通時的研究

山田昌裕 著

A5判上製 定価6,800円+税

ISBN 978-4-89476-455-2

ひつじ書房



本書では、これまで断片的に捉えられてきた格助詞「ガ」の発達拡大に関して、新しい知見を交えつつ総合的に捉え直すことによって、主語表示機能の発達史を中心に描写した。言語類型的観点や方言資料なども取り入れ、主語表示機能発達の一要因として、異種方言話者間の言語接触による主語表示システムの変化があったことを指摘した。本書の内容は、日本語文法史研究や他言語の研究・分析にも役立つものと言えるだろう。


【目次】

第1章 主語の定義

 1. 1 研究史概観
  1. 1. 1 主語廃止論までの流れ
  1. 1. 2 三上説に対する反論と擁護論
  1. 1. 3 新たな展開
  1. 1. 4 認知的観点からの規定
 1. 2 本稿で扱う主語の定義

第2章 格助詞「ガ」の文法化

 2. 1 原初格助詞「ガ」の分化と多機能性(Polyfunctionality)
 2. 2 主語表示「ガ」の変化と一般化(Generalization)
  2. 2. 1 一体化から主語表示へ
  2. 2. 2 変化1:構文的制約からの解放
  2. 2. 3 変化2:上接語の拡大
  2. 2. 4 「一般化」(Generalization)
 2. 3 「一般化」(Generalization)の背景

第3章 主語表示「ガ」の拡がりー各種表現におけるー

 3. 1 強調表現における「ガ」ー「ゾ」から「ガ」へー
  3. 1. 1 先行研究
  3. 1. 2 用例について
  3. 1. 3 強調表現における「主語ガ」「主語ゾ」の分布
  3. 1. 4 「主語ガ」の強調表現における拡がり
   3. 1. 4. 1 「有情+ガ」ー平安期ー
   3. 1. 4. 2 「有情+ガ」ー鎌倉期ー
   3. 1. 4. 3 「有情+ガ」と「有情+ゾ」との関係
   3. 1. 4. 4 「非情+ガ」
   3. 1. 4. 5 「非情+ガ」と「非情+ゾ」との関係
  3. 1. 5 まとめ
 3. 2 名詞述語文における「ガ」ー「ゾ」「コソ」から「ガ」へー
  3. 2. 1 先行研究と分析の枠組み
  3. 2. 2 「AガBダ」型の発生
  3. 2. 3 主語表示の推移
  3. 2. 4 第汪
   3. 2. 4. 1 記述用法における拡がり
   3. 2. 4. 2 「AゾBダ」型との関わり
  3. 2. 5 第期
   3. 2. 5. 1 前項焦点用法における拡がり
   3. 2. 5. 2 前項焦点用法における「AコソBダ」型との関わり
   3. 2. 5. 3 記述用法における「AコソBダ」型との関わり
  3. 2. 6 第。期
   3. 2. 6. 1 主語名詞句
   3. 2. 6. 2 述語名詞句における解答提示
   3. 2. 6. 3 前項焦点的記述用法
   3. 2. 6. 4 後項特立用法
  3. 2. 7 まとめ
 3. 3 疑問表現における「ガ」ー「ヤ」「カ」から「ガ」へー
  3. 3. 1 本節の目的と用例
  3. 3. 2 第一期 奈良期から平安期
  3. 3. 3 第二期 鎌倉期から南北朝期
  3. 3. 4 第三期 室町末期以降
  3. 3. 5 主語表示「ガ」拡大の位置づけ
 3. 4 「ガー連体形終止」の表現効果
  3. 4. 1 先行研究と問題点
   3. 4. 1. 1 連体形終止法に表現効果を認めるもの
   3. 4. 1. 2 連体形終止法に表現効果を認めないもの
   3. 4. 1. 3 先行研究の問題点
  3. 4. 2 喚体か述体かー平安期ー    3. 4. 2. 1 「ハー連体形終止」
   3. 4. 2. 2 「連体形ガー形容詞連体形」
   3. 4. 2. 3 述体としての連体形終止
  3. 4. 3 連体形終止の機能
  3. 4. 4 位相的観点の問題点
   3. 4. 4. 1 韻文における連体形終止
   3. 4. 4. 2 地の文に見られる連体形終止
   3. 4. 4. 3 会話文に見られる終止形終止
  3. 4. 5 「ガー連体形終止」と表現効果

第4章 「ガ」の変質と主節における拡がり

 4. 1 「ガ」の連体性の後退ー平安期から鎌倉期ー
  4. 1. 1 主語表示と連体表示
  4. 1. 2 「体言1+ガ」と「体言2」の意味的関係
  4. 1. 3 「体言1+ガ」と「体言2」の構文的関係
  4. 1. 4 まとめ 144  4. 2 「ガ」の連体性の後退ー鎌倉期から江戸期ー
  4. 2. 1 「AガBダ」型運用上の問題点
  4. 2. 2 格助詞「ガ」の機能の推移
  4. 2. 3 語列と格助詞「ガ」の機能
  4. 2. 4 初期の「AガBダ」型の特徴
  4. 2. 5 他の統語構造における格助詞「ガ」の機能と語列
  4. 2. 6 まとめ
 4. 3 「ガ」の主語表示の拡がりー鎌倉期から室町末期ー
  4. 3. 1 無助詞主語と助詞の付加
  4. 3. 2 主節における「ガ」の拡がり
   4. 3. 2. 1 非対格自動詞述語文における「ガ」
   4. 3. 2. 2 非対格自動詞述語文における「ガ」付加の意味
   4. 3. 2. 3 形容詞述語文における「ガ」
   4. 3. 2. 4 他動詞述語文. 非能格自動詞述語文における「ガ」
  4. 3. 3 疑問の係助詞と「ガ」
  4. 3. 4 「ノ」と「ガ」
  4. 3. 5 まとめ
 4. 4 「ガ」の主語表示の拡がりー室町末期から江戸初期ー
  4. 4. 1 主語表示の史的変化
  4. 4. 2 「ガ」の無助詞主語への拡がり
  4. 4. 3 「ヤ」「カ」への拡がり
  4. 4. 4 「コソ」への拡がり
   4. 4. 4. 1 強調
   4. 4. 4. 2 前項焦点用法における拡がり
  4. 4. 5 現代語には見られない「ガ」の用法
  4. 4. 6 まとめ

第5章 主語表示「ガ」と「ノ」

 5. 1 主語表示「ガ」の拡がりと「ノ」ー鎌倉期から室町末期ー
  5. 1. 1 原拠本「平家物語」と『天草版平家物語』の比較
  5. 1. 2 付加された「ガ」「ノ」
   5. 1. 2. 1 人主語の場合
   5. 1. 2. 2 非人主語(構文的相違)
   5. 1. 2. 3 主節. 従属節において付加された「ノ」
   5. 1. 2. 4 連体節において付加された「ガ」
  5. 1. 3 「ノ」から「ガ」への移行
   5. 1. 3. 1 尊敬対象表示
   5. 1. 3. 2 詠嘆表現
   5. 1. 3. 3 「ノ」から「ガ」へー従属節における「ガ」の拡がりー
   5. 1. 3. 4 「ノ」から「ガ」へー連体節における「ガ」の拡がりー
  5. 1. 4 まとめ 217  5. 2 主語表示「ガ」の拡がりと「ノ」ー江戸期ー
  5. 2. 1 『狂言記』の資料性
  5. 2. 2 「ガ」「ノ」と待遇性
   5. 2. 2. 1 「ガ」の待遇性の変化
   5. 2. 2. 2 「ノ」の待遇性の変化
   5. 2. 2. 3 (表6)が示すこと
   5. 2. 2. 4 「ガ」の進出した領域
  5. 2. 3 「ガ」「ノ」と構文
   5. 2. 3. 1 連体節内の「ガ」と「ノ」
   5. 2. 3. 2 「ガ」の拡がりの偏り
  5. 2. 4 まとめ
 5. 3 「ガ」「ノ」の表現価値
  5. 3. 1 共時態としての「ガ」と「ノ」
  5. 3. 2 「ガ」と「ノ」の共存
  5. 3. 3 「ガ」と「ノ」の実態
  5. 3. 4 「ガ」と「ノ」の表現効果
  5. 3. 5 ことばの新局面

第6章 主語表示システムの変化と「ガ」の発達

 6. 1 中央語における主語目的語の表示システム
 6. 2 方言における主語目的語の表示システム
  6. 2. 1 『おもろさうし』
  6. 2. 2 現代沖縄方言
  6. 2. 3 喜界島方言
  6. 2. 4 水海道方言
 6. 3 中央語における主語表示システムの変化
  6. 3. 1 周圏論的考察について
  6. 3. 2 主語目的語表示の多様性
  6. 3. 3 中央語の表示システムの特徴
  6. 3. 4 言語接触による表示システムの変化
 6. 4 まとめ

第7章 「ガ」の周辺の問題

 7. 1 現代語には見られない「ガ」
  7. 1. 1 『捷解新語』の「変」な「ガ」
  7. 1. 2 狂言資料との比較
   7. 1. 2. 1 既出語. 既知情報
   7. 1. 2. 2 状況成分
   7. 1. 2. 3 構文的特徴
  7. 1. 3 『捷解新語』の「変」な「ガ」の位置づけと資料性
 7. 2 『あゆひ抄』における「ガ」と「ハ」の使い分け意識
  7. 2. 1 「ぞ」の「里言」
  7. 2. 2 「なむ」における使い分け
  7. 2. 3 「や(やは)」「か(かは)」における使い分け
  7. 2. 4 まとめ
 7. 3 「コソガ」の発生
  7. 3. 1 先行研究
  7. 3. 2 「コソガ」の用例
  7. 3. 3 「コソガ」の発生過程
   7. 3. 3. 1 「コソ」の変容
   7. 3. 3. 2 「コソガ」発生の因子
  7. 3. 4 「コソガ」の用法と変容
   7. 3. 4. 1 名詞述語文における「コソ」と「ガ」
   7. 3. 4. 2 「コソ」と「ガ」の相補分布
   7. 3. 4. 3 「コソガ」の用法
   7. 3. 4. 4 「コソガ」の拡がりー述語の多様化ー
  7. 3. 5 まとめ 299  7. 4 「ガコソ」の発生
  7. 4. 1 用例について
  7. 4. 2 「ガコソ」形式の許容度
  7. 4. 3 許容度アンケート調査と結果
  7. 4. 4 「カガコソ」形式の許容度の高さ
  7. 4. 5 「ガコソ」発生のメカニズム
   7. 4. 5. 1 格助詞と「コソ」の承接の推移
   7. 4. 5. 2 言語運用上の効率を求めて
   7. 4. 5. 3 「ガコソ」形式によるさらなる効率
  7. 4. 6 まとめ
第8章 まとめと課題
【参考文献】
【主要資料一覧】



【執筆者紹介】

山田 昌裕(やまだ まさひろ) 恵泉女学園大学人文学部准教授


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