編者の仕事のガイドライン

2017.1.12作成

2020.10.16修正

ひつじ書房

 ここで「編者」といいますのは、出版社の「編集者」という意味ではなく、論文集や教科書などの複数の人が執筆する書籍において中心となってとりまとめの役割を果たす人、「編(あ)む人」という意味の「編者」です。以前に、編者を初めてつとめるが何をしたらいいのかわからないという声がありましたため、作成しました。編者の経験も何度もおありになる方でも、振り返りの意味でご覧下さい。

書籍をつくる際に編者の方にお願いしたいことについて、取り上げます。

ここで述べるのはあくまでひつじ書房の進め方と希望です。ほかの出版社では方針が違うこともあるかもしれません。

■1、企画の段階 企画主旨書から企画を進める

企画のきっかけ 

 企画のきっかけは様々です。例えば、既に進めている研究について、ほかの研究者を募って書籍化を企画するという場合があります。あるいは、研究会がありそこでの成果を1冊にしたいと参加者が考えて、企画にするという場合もあります。本をつくることを前提として、新たに研究会を組織することもあります。

 編者からひつじ書房へ企画を提案していただくこともありますが、ひつじ書房のほうから「こういう本を出しませんか」と提案することもあります研究会を発足する段階から関わることもあります。

企画主旨書の作成

 上記の通り、様々な形で本の企画の芽が生まれますが、それを編者・執筆者・編集者でイメージを共有するためのものが企画主旨書です。

 さらに、企画主旨に合わせて、構成案(目次案)や執筆者案を作っていただくこともあります。その企画主旨書をもとに、企画をひつじ書房にご提案いただいて、ひつじ書房はお引き受けするかしないか検討します。あるいは、ひつじ書房から先生方に企画を提案して、進めようとなるかならないかを決めるということになります。

 進めようということになれば、編者とひつじ書房とで相談して、企画の主旨や、誰に執筆して頂くかを相談することになります。スケジュールや体裁や、経済的な条件についても相談することになります。

・本の主旨をA4で1頁くらいにまとめてください。

・この主旨は、執筆者に執筆依頼を出すときに渡します。執筆予定者と相談して、決めることもあると思いますが、最初に執筆者に共通認識としてまとまった文章があったほうが、本の軸がぶれません。原稿が出来上がったら、編者は研究内容についてのチェックをしますが、この主旨があれば、主旨と齟齬がないかも確認することができます。届けていただいた原稿が、主旨と違っている場合には、出し直していただくということもあります。

・後日、本の「まえがき」などの元になることもあります。

■2、執筆要項の作成

 複数の人が執筆する本の場合、執筆要項がないと、本文の表記や用語、参考文献の書き方や見出し番号の付け方など、様々なところにばらつきが出てしまいます。1冊の本になりますので、書き方はできるだけ統一したいところです(書籍によっては、本文の表記や用語などは、各論文ごとで統一されていれば許容するとする場合もあります)。

 そのために、書籍の方針として作成するのが、執筆要項です。編者には、この執筆要項の作成をお願いしています。

ひつじ書房ウェブサイトで、ベーシックな執筆要項案を公開しています。

 http://www.hituzi.co.jp/sippitu/

上記の執筆要項では、複数の案(B案・C案)を出しているところがあります。これは、書籍の専門分野によって、決まりごとに違いがあるからです。 編者は、この執筆要項を、その書籍用に調整してください。

複数の案を示している場所ではどの案を採用するのか指定してください。そのほか、追加や修正がありましたら指示してください。

出来上がった執筆要項を、編者以外の執筆者へ送ります。

ひつじ書房では、原稿を頂いてから、あるいは校正作業の際に、この執筆要項にのっとっているかを確認します。

書籍全体を通して校正をするのは、編者と編集者だけで、各執筆者はそれぞれの執筆部分のみを見る場合が大半です。全体の統一性について、編者も気を配ってください。

■3、原稿提出の仕方について

 編者による原稿の確認・改稿ととりまとめが終わり、完成原稿をひつじ書房に送っていただく段階での話です。

 まず、必要なものは2つあります。1つは原稿のプリントアウトしたもの。もう1つは原稿のデータです。この送付には、

(1)編者がとりまとめて送る

(2)執筆者からひつじ書房に直接送る

の2種類の方法があります。

 プリントアウトは必ず執筆者自身で行って文字化けがないかなど問題がないかをご確認下さい。(1)の方法の場合でもです。

【プリントアウトについて】

ハードコピー、打ち出し原稿などと呼ぶこともあります。

データがあればプリントアウトは不要ではないかと思うかもしれませんが、パソコンの環境によって見え方が違ってしまったり、文字化けしてしまったりすることが多々あります。そのため、確認用に、原稿のプリントアウト提出をお願いしています。

提出の際には、必ず1度全体を見て、文字化けや図表のずれなどがないかを確認してください。もし、意図通りに表示されていない場所がある場合は、手書きで修正・指示を書き入れてください。

【データについて】

原稿データは、原則としてWordでお送りください。一太郎でも結構ですが、Wordに変換したデータも添えてください。

PDFの原稿は入稿用にはなりません。テキストに書き出した際に、各行ごとの改行など、よけいな情報が入ってしまうためです。

画像は、Wordなどに貼付けた状態のものだけでなく、その元となった写真・画像のデータも別にフォルダに入れるなどしてお送りください。複数あるばあいは、章ごとの通し番号など打って下さい。

グラフなどについては、作図をされた際に使われた数値のデータ(Excelファイルなどで保存されているもの)もお送りください。多くはこちらで作図をすることになろうかと思いますので、いただいた数値の情報を使って作図をします。

画像データの詳細については、末尾の「付録」をご覧下さい。

お送りいただく手段は、メールでも、CDやUSBメモリなどに入れていただいても、どちらでも大丈夫です。ただし、メールでお送り頂く場合で、ファイルの数が多くなってしまうようでしたら、1つのフォルダに入れてzipファイルにしてください。1つずつお送りいただくと、受け取りの際に漏れが出てしまう危険性があります。

■4、校正の手順について

 まず、論文集ではない、単著の場合の校正の流れを前提として説明します。

 

    組版所  ひつじ書房  著者  ひつじ書房  組版所

    初校ゲラ出校        校正・著者へ送付   著者校正・ひつじへ戻し   確認・組版所へ戻し     修正・再校出校作業

 この手順を、初校・再校・三校と繰り返します。ひつじ書房では単著の場合、通常は三校まで著者校正を行っています。

 論文集(執筆者が複数の本)の場合ですが、方式は一定ではありません。編者による校正をほかの執筆者と並行して行うか、それとも執筆者→編者の順に見てもらうかで変わってきます。

 【パターン1】

ひつじ書房  執筆者  編者  ひつじ書房

校正・執筆者へ送付     執筆者校正・編者へ送付   編者校正・ひつじへ戻し       確認

(組版所は省略)

 【パターン2】

            執筆者 

      ひつじ書房   執筆者校正・ひつじへ戻し   ひつじ書房

       校正・送付  編者   確認

              編者校正・ひつじへ戻し

(組版所は省略)

 パターン2の場合は、執筆者と編者が同時並行で校正をしますので、稀に赤字が競合することがあります。その場合はひつじの編集者が編者に問い合わせをすることになりますので、できればパターン1のように、編者が全ての赤字を取りまとめることが出来る方法の方が効率的です(ちなみに、論文集の場合では執筆者は再校の校正まで、編者は三校の校正までとすることが多いです)。

パターン1と2、どちらの方法でも、編者に見てほしいのは、全体の統一が取れているか、です。

執筆者の先生方はほかの執筆者の先生方のゲラを通常は見る機会がありませんので、全体を見通すことができるのは編者(と編集者)だけです。

基本的な統一の方針は、執筆要項をつくる段階で決めます。原稿提出時に、その点については編者もご確認ください。校正時は、執筆要項がきちんと守られているかの再確認となります。また、執筆要項ではカバーしきれない事例も、多々発生します。

 例えば・・・・・・

 参考文献の形式は違っていませんか?

 相互参照をするときの言い回しは揃っていますか? 「第1章を参照」「山田論文を参照」など、意外とパターンがあります。

 自論文を示す時のことば、「本章」「本論」「本稿」なども、統一したほうが望ましいです。

 同じような図表なのに章ごとに組み方が違う、キャプションが違う、出典の示し方が違う……というようなこともあります。

☆通常の内容についての校正だけでなく、書籍全体を通して矛盾がないか、統一がとれているか、全体を見通す俯瞰的視座から、編者には校正をしていただきたいと思っています。もちろんひつじの編集者も確認します。

☆1本の論文としてではなく、1冊の本として世に送り出す以上、1つのものとして、気持ちのよいつくりの本にしたいと思います。論文を見る目だけではなく、本を見る目で、校正を行ってください。

■5、刊行後 献本について

 書籍の刊行後、献本をされる方は多いと思います。ひつじ書房では、刊行時に献本の発送作業代行を承ります。ただし、本の著者が複数いる場合、献本先が重複する場合がありますので、できれば編者にはそのとりまとめをお願いしたいと思っています。

次の情報をエクセルでリストにしてください。

 献本先の名前/敬称(様、先生、御中など)/郵便番号/住所/冊数/謹呈短冊に入れる名前

「謹呈短冊に入れる名前」は、通常は書籍代を負担される方の名前を入れます(複数の場合は連名)が、「執筆者一同」でも、結構です。ご指定に従います。

全員に共通の内容の挨拶状でしたら、データをいただければひつじ書房でプリントアウトして挟み込みます。発送作業の都合上、個別に内容が違うものや個別の宛名が入っているものはご遠慮ください。

■付録 画像入稿時の注意点■

1)画像の解像度は出来るだけ高い状態にして下さい。300dpiほどあれば、大きく引き延ばして印刷しない限り問題無いと思います。

2)画面上、または手元のプリンターで打ち出した段階で、画像がモワッとしていたら、印刷所の印刷機では家庭用の何倍も高精細で印刷されますので、確実に綺麗に出ません。ネットやデジカメが世に広まり出した頃は、印刷物でも解像度の足りないモワッとしたものが印刷されていることがしばしばありましたが、デジタルデータの扱いが普通になった現状では、解像度の足りない画像の印刷は仕方がない場合を除き、格好悪いです。

3)画像の作成ソフトにもよりますが、epsファイルやbmpファイルは無圧縮なので、保存時に劣化しません。といっても、jpgでも圧縮率を極端に高めなければ問題はありません。その他、PhotshopやIllustratorのネイティブファイルでも入稿頂けます(要アウトライン化)。

4)画像ファイルをMicrosoft Wordに貼り付けると、少し画像が荒くなるということがあります。画像ファイルは、文書中に貼り付けた物の他に、別途画像ファイル自体も入稿して下さい。

5)画像を自分で作ることが困難な場合、こちらで作図をすることができますが、極度に複雑なものや、スペクトログラムのようなものの場合作ることができませんので、画像保存時に高解像で保存されることを日頃から気にしておいていただければと思います。

6)作図を希望する場合、印刷した原稿にどのような図が必要なのか、完成図の見本または指示書きを入れて下さい。見本通りに作業者は作りますので、不十分な見本ですとまた後からやり直しということになります。線の太さや長さ、支点や終点が隣合う線についているのか離れているかなど、後からの微妙な調整が案外大変です。

7)本文中に画像が入る場合、画像はモノクロになります。そのことを前提に画像を作成して下さい。

8)パソコンのモニタ上からキャプチャする場合。モニタ上の解像度は72dpiなので、印刷用には厳しいです。根本的な解決策はありませんが、キャプチャしたい箇所をできるだけ画面サイズいっぱいに拡大して、キャプチャして下さい。それを縮小することで、少しでも綺麗に見えるようにします。

初出 2011.11.29(火) 森脇のスタッフ日誌より

http://www.hituzi.co.jp/staff/staff-nisshi201111.html