2021年の終わりに
2021年12月28日(火)g

2021年の終わりに

(12月22日にメール通信で配信した内容がもとになっています。)

年の瀬で慌ただしい毎日を送っていらっしゃることと存じます。ひつじ書房は、27日が仕事の最後の日で、28日に大掃除をして、昼から近所のおそば屋さんにいって、社員とパートさんで大晦日ではありませんが、年越しそばを食べて、終わりにします。片付けなどが残っているものはそのあとも戻ってきて何かしらやっています。社長である私はその後も、自宅の掃除・整理の合間に出てくることになるかと思いますが、電話が鳴っても電話に出ることもなく、残務整理的なことと掃除の続きをしているかと思います。

今年は、コロナ禍の下、ひつじ書房の31周年と私自身が60歳の年でありました。30周年の年にできなかったので、今年には何とかとも思っていましたが、5月に腎臓の手術をするという個人的な大きなことがあったりしまして、結局のところ、お祝い事的なイベントをやるという雰囲気も作れませんでしたので、淡々と積もっている仕事をかたづけていた年ということになります。片付けきれませんでしたのは、私の能力不足です。毎年のことですが、反省しています。房主の日誌も10月からの分をまとめてアップしている体たらくです。

今年、私が担当した書籍は、14冊です。ここ数年の中では一番多いのではないでしょうか。ひいひい、いいながら作っています。刊行までかなり掛かってしまった本もあります。著者のみなさまにだいぶん、助けてもらっています。EEにだいぶん手伝ってもらっています。MYさんにも...

  • テキスト計量の最前線 データ時代の社会知を拓く 左古輝人編
  • ベーシック語彙意味論 岸本秀樹・于一楽 著
  • ネット時代の中国語 張婧禕・玉岡賀津雄・王莉莎 著
  • ひつじ研究叢書(言語編) 第162巻 日本語文法史の視界 継承と発展をめざして 高山善行 著
  • ひつじ研究叢書(言語編) 第175巻 テクスト語彙論 テクストの中でみることばのふるまいの実際 髙﨑みどり 著
  • シリーズ言語学と言語教育 40 日本語教育の新しい地図 専門知識を書き換える 青木直子、バーデルスキー・マシュー 編
  • 「中納言」を活用したコーパス日本語研究入門 中俣尚己 著
  • 場面とコミュニケーションでわかる日本語文法ハンドブック 中西久実子 編 中西久実子・坂口昌子・中俣尚己・大谷つかさ・寺田友子 著
  • 連濁の規則性をもとめて 平野尊識 著
  • 質的言語教育研究を考えよう リフレクシブに他者と自己を理解するために 八木真奈美・中山亜紀子・中井好男 編
  • ちょっとまじめに英語を学ぶシリーズ 3 接辞から見た英語 語彙力向上をめざして 西川盛雄 著
  • 早稲田大学日本語学会設立60周年記念論文集 第2冊 言葉のはたらき 早稲田大学日本語学会編
  • 早稲田大学日本語学会設立60周年記念論文集 第1冊 言葉のしくみ 早稲田大学日本語学会編
  • 国語問題と日本語文法研究史 仁田義雄 著

私が作っていませんが、琉球のシマコトバの絵本を刊行できたこと。クラウドファウンディングという方法を使って、たくさんの方の支援をいただいて作れたこと。あともう2冊ありますが、うれしく存じました。ディラブディの唄を三線で弾く練習をこの正月休みにしようかと考えています。与那国の唄「ディラブディ」【字幕付き】

さて、私は老年に入っていますが、社内でも若い人は育ってきていますし、世の中を見れば、新婚の人や出産して人生の新しい段階に進んでいる人もいます。(話しは飛びますが、今年は円丈、川柳川柳という新作落語を作った偉大な落語家が亡くなるいっぽうで、柳家わさびのような新しい人が活躍していることを知る年でした。新しい旗手は現れてきているのです。)出版という仕事は、私が出版業界に入った1980年代にはバブリーな時代が終わって、老成した産業になりつつあり、経済的な数字は右肩下がりという方向になっていました。研究書を刊行することを生業にしていることからすると大学という存在を経済活動的に見ることがありますが、大学進学率は増えた一方で、文化系の学問については規模が大きくなってはおりません。ひつじ書房は言語学が中心ですが、言語学部というのは一箇所もなく、外国語学部と文学部と教育学部がお客さんとしてはコアでしょう。文学部でも、英文科や仏文科などの外国文学系はあまり縁がなく、日本文学・国文学というジャンルが中心です。そう考えると「国際日本学」という名前の学部や学科は新しく生まれてきています。

学術出版社は、大学のアカデミックな部分とともにそれに関わる経済的な点と関わっていますし、関わるジャンルがアカデミック業界の中でどのくらいの存在を占めるかということは重要です。言語学、日本語学、日本語教育、英語教育などなどの関連深い研究がきちんとプレゼンスして、活発であることが重要です。言語研究も、純粋な意味での言語だけではなく、相互行為などとの関連もあるということからするとそれをどのような学問領域として生み出されていくかということは重要です。相互行為研究と言語研究はどういう関係をこれから生み出していくでしょうか。縄張り意識になってしまうかもしれませんが、相互行為の研究が、もっぱら社会学の中に位置づけれられると言語研究は、狭いものになってしまうように思います。哲学の研究で、言語ゲームという考えがありますが、そこでの言語を相互行為も含んだものにするのなら、言語ゲームというものも従来とは違った考えが必要になるかもしれません。

他人ごと的に聞こえるかも知れませんが、そうではありません。言語というものも新しい見方で捉え直す必要があり、そうすることで研究自体が活性化すると思います。そういう研究は、大学の制度でいうと心理学部、教育学部、社会学部、政治学部、経済学部、理学部、看護学部、医学部などなどの中にも存在していくべきでしょう。そういう総合的な場所にプレゼンスしていくこと。言語学の出版社であるゆえの言語研究中心主義と思われるかもしれないですが、強引にどんどん奪っていくということではなく、自然に存在してほしいと思います。コロナ禍の中、さまざまな立場で議論をすることができることの重要性は認識されてきていると思います。専門家という存在も、絶対的な権威を持つということではなく、専門家の言説を勘案する必要もあることも分かってきていると思います。やはり、そこにはコトバが重要であり、レトリックを馬鹿にしてはいけないことをあらためて気付かされたと思います。

そういう気持ちで言語研究に制限を求めずに、広げていくという方向で来年も前向きに行きたいと思います。従来の研究の枠に収まらない研究であると思っている研究者の方、特に若い研究者の方にはぜひぜひどんどんと企画の提案をしていただきたいとも思っています。良い年をお迎え下さい。

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執筆要綱・執筆要項こちらをご覧下さい。



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