オンライン時代の学会出店
2020年12月18日(金)

オンライン時代の学会出店

2020年秋の日本語文法学会が開催される数日前のメール通信で配信した内容がもとになっています。

新型コロナ禍で学会がオンライン開催になるまでは、学会が開催される時には、学会会場に出向きまして、書籍展示用に用意していただいた場所に出店する各社がテーブルをいくつか並べて、その上に書籍を広げて展示して、対面で販売してきました。実際にお客さんにお目に掛かってお話しをすることができました。学会の開会の前日に段ボールに入れて五箱から十数箱を事前に宅急便で送っておいて、開催前の時間に段ボール箱を開いて、本を並べて展示してきました。本を並べるのは結構大変です。何百冊とありますから。それは一苦労ですが、著者の方、研究者の方々、読者の方々に会うのは楽しみでもありました。それが、この春からなくなりました。秋からは、学会は開催されますが、オンラインで開催されているわけです。そんな中で出版社の展示はなくなりました。学会に行きますとそのように書籍を並べて、見に来て下さったお客さんに本を見ていただくことにくわえて、雑談をしたり、新刊を紹介したりさらには、教科書などを採用して下さった先生にはお礼を申し上げたり、著者の方と親交を深めたり、若い方であれば企画の話しをしたり、逆にこんな研究を出版したいと思うが、可能なのかとかそういう交渉、交流の場があったということです。

私は、学会は研究者の方が研究成果を発表して、議論をするということはもちろん重要ですが、それに加えて、研究発表の合間に起こること、起こっていることも大切だと思っています。その中でも、研究者の方が、出版社の人間と話しをすることも学会の機能にとって重要なことと思ってきました。ただ、最近の一部の学会では、学会発表の業績を作ることだけが重要と考えているのかもしれないのですが、発表の間の休みの時間も少なく、また、個別の発表とシンポジウムの間の時間がほとんどなかったり、時には開催する建物が別で移動するには出版社の展示場所に立ち寄る時間がそもそも想定されていなかったりと学会運営の中で、スキマの時間、ここで申していますのは、出版社の存在が考慮されていないということもありました。開催場所の建物の配置の問題もあって、なかなか、人の動きが作られるようなタイムスケジュールが組みにくいということもあると思いますが、行きたいと思っていたが、時間がなかったと言われるとつらいものです。そのこともあり、オンライン学会での開催の際に出版社の存在は、研究者の学会発表の時間と重なると発表の妨げになってしまうと思われているのではないか、とネガティブな感情を持っていました。

実際、この秋の学会シーズンでも、オンラインでの学会開催でほとんど手一杯で、出版社のオンライン参加について、たぶん考える余裕がないのだなと思われる学会もありました。発表することは、若い研究者の業績を作ることにとって重要ですから、そこは存在させますが、出版社の展示というものは、研究活動に関係ないものとして後回しということになったのかもしれません。オンラインでの開催の際に出版社の場所を作ってほしいと出版社側から提案するべきでもありましたが、学会の方の意向も分からなかったということで、提案せずに様子を見ているという感じでした。日本語学会はオンラインでの談話室というのを設けていて、それが発表時間とかぶっていましたので、発表する時間と必ずしも発表を聞かずに、他の参加者と話しをすることも学会参加のひとつとして認めていると思われました。日本語学会のオンライン開催の際には、どんな感じかなと様子見もあってオンラインの談話室に参加しました。その時に、先生と話しをしましたら、学会に出版社が参加して、オンラインであれ、そこにいることは当然のことのはずだというようなこと(私が受け取ったところでは)をおっしゃってくださり、学会の開催がオンラインで行われることが続くのであれば、ちゃんとオンラインの学会でも、出版社がそこにプレゼンスしないといけないと改めて思いました。

そのことがあって、日本語用論学会と日本語文法学会の2つの学会には、オンラインでの参加をしたいと申し出ました。言語学会は規模が大きいので、日にちも迫っていましたし、突然提案しても対応できないと思われましたので、打診はいたしませんでした。学会という催しは、ひとつにはお祭りのようなところがあって、「神事」ではあるので厳かな行事でもあるわけですが、人が集まり、がやがやと議論をしたり、人と出会ったり、人とつながったりするということも重要です。その中で「出店」というものもたぶん重要なのではないかと思います。

オンラインでの学会開催というものが続くことになりますので、リアルな時には起きていた人との出会いとか議論とかそういうものをオンラインの世界でも起こすことが重要です。リアルな学会では、発表者と休み時間や次の発表が行われている時間に廊下で話し合ったりすることがあります。発表者の名前を見て、話し掛けたり、そのことで議論が進むということもあります。また、懇親会で話し掛けたりということもあるわけです。そんな中に出版社との出会いということもあります。

日本語学会ではオンラインの談話室をRemoというソフトで運営していました。引き続き、日本語用論学会でもRemoでの開催でした。かなり面白くいろいろと使えると感じましたが、まだまだ、集客、人が集まるという点では課題があります。課題は努力と工夫で乗り越えていくことができるものなのか。オンラインでの学会ですと自分の聞きたい発表の時だけ接続して聴講、参加し、発表を聞かない時間は接続を切るということができます。無駄な時間というか余った時間がそもそもないということになるかもしれません。そうなると談話室、書籍展示室に行こうと思うこともないということになります。そういう時間を無駄ではなく、余裕の時間として、うまく活用できるような時間にできるといいと思いますが、自宅からのアクセスに課題は少なくありません。実際に人に来てもらうにはどのようにしたらいいでしょうか。試行錯誤というのが実状ですが、学会に参加する方々にとって面白いハプニングというかイベントが起こるように工夫していく必要があるでしょう。

週末にも日本語文法学会がありますが、ぜひとものぞいてみて下さい。youtuberのようなパフォーマンスはできませんが、何か工夫をしたいと思っています。芸があるといいのですが、どこかにネタはないかと悩んでいます 。結局、ただ、いるだけになるかもしれません。

追記 remoとzoomの連携の課題

一つのマシンでremoを立ち上げていて、zoomを同時に動かしている時に、zoomの音を消せないという問題があります。zoomの音を消せないとマシン1台でアクセスして、zoomで発表を聞いている空き時間にremoをのぞくのが難しくなる。zoomの音声を切れないのは困る。zoomとremoが連携して使えるとよい。それぞれのソフトを作っている会社が違うから仕方がないのだろうか。

----------

執筆要綱・執筆要項こちらをご覧下さい。



「本の出し方」「学術書の刊行の仕方」「研究書」スタッフ募集について日誌の目次番外編 ホットケーキ巡礼の旅

日誌の目次へ
ホームページに戻る

ご意見、ご感想をお寄せ下さい。
房主
i-matumoto@hituzi.co.jp