日本語学会のリモート開催
2020年10月29日(木)

日本語学会のリモート開催

(10月28日発信のメール通信の文章が元になっています。)

日本語学会が、土日に開催されました。フルオンラインの学会開催でした。主催者の先生の1人に、出店の提案をしてくれていたらと言われてしまいました。今回は、出店ができていません。学会のサイトから、宣伝チラシへのリンクを貼っていただいています。出店の提案ということも考えたのですが、リアルな学会の開催の時は、学会発表と並行して、発表時間に店を出していまして、発表を聞かずにお店に来ていただくことがリアルな学会の場合にはあったわけですが、そのことが、学会の存在理由が研究発表をすることと考えているとある意味で邪魔をしているということにもなりますので、躊躇していたところがあります。しかし、今回、日本語学会は学会発表と並行して談話室を設けていて、学会発表の時間でも談話室にいることができるという設定でしたので、そういう仕組みであれば、書店が時間的に並行して出店していてもよいことになります。そうであれば、書籍の展示を学会発表と並行して行うこともできますので、積極的に提案するべきだったかとも思います。来春以降、学会の開催方法が対面なのかオンラインなのか、それともハイブリッドなのか、分かりませんので、もし、これからはずっとオンラインを含めたものになるのであれば、オンラインの出店を強く主張するべきであったと思いますが、定まらない中では決断ができなかったということです。

ただ、日本語学会の今回の参加者数がリアルと変わらない人数であったこと、オンラインであるから、遠方であったり、時間的な制限がなかったために参加できた方が多かったということを考えるとオンラインを捨て去ることはできないと思います。ある方によるとレモートで学会を開いて成功させることができないのなら、学会の将来はないと考えていたとまでおっしゃいました。とするとリモートの要素は、学会開催にとって重要なものとなり、結果として将来的にも継続され、ハイブリッドの方に行くのではないでしょうか。たしかに、出張費をかけることが難しい中高の先生たち、大学に勤めていない勤め人の方々などは、リモートであれば、参加することができるでしょう。ハイブリッドの実現のために複雑なことをきちんとやろうとすると極端に運営者側に負担が過剰に生じてしまうと思いますが、会場で発表して、それをリアルタイムでもネットに流す程度で、質問はスカイプでするくらいのところにしておく。それでも、ハイブリッドな開催はそんなに簡単じゃないということかもしれないですが、オンラインが全くなしでの開催というのはないのではないでしょうか。

ZOOMで参加しました開催された内容についてコメントします。ワークショップとシンポジウムについてコメントします。

ワークショップ「言語習熟論へ向けて--日本語研究と国語教育・初年次教育など--」について。私は、言語獲得と言語習熟では、言語に対する見方が違うということをもっと打ち出した方がよかったと思いました。言語のより上手な使い方、より分かりやすい使い方という言語運用能力の差を議論するのは、従来の言語観による狭い意味での言語研究ではできないと思います。熟達ということを議論するための土台について議論できるとよかったのではないでしょうか。子供の言語の習熟という時、社会に参加していくということと関わります。参加の議論は、題目はともかく日本語教育でも行われているように思えません。そんな中で言語人類学の「言語社会化」の議論は大いに参考になると思います。日本語学からも言語学からも日本語教育学からも国語教育学からもほとんど言及されないと思いますが、現在、ひつじ書房では『言語社会化ハンドブック(仮)』を編集中です。年度内には刊行されると思います。

シンポジウム「データから見る日本語と「性差」」というものがありまして、参加者数からして盛況だったと思います。この内容のシンポジウムが国語学会を含めてはじめてということは、驚きます。はじめて、とはなんたることでしょう。「性差」(括弧付きの性差)の問題は、もう何度もやっていてもよかったのではないでしょうか。現実の話しではないですが、20年前くらいに1回目をやって、10年前に2回目をやって、今回3回目くらいでもと良かったはずだと思います。それについては、他人ごと的に批判することはできません。ひつじ書房の非力さもあります。シンポジウムの指定討論者でもあった遠藤先生たちによる『女性のことば 職場編』を出した時(1997年です)に、そういうシンポジウムを開催してもらえるような企画力および政治力をもっているべきだったのではないかと思います。その時に1回目。さらには、中村桃子先生の『「女ことば」はつくられる』とクレア マリィ先生の『発話者の言語ストラテジーとしてのネゴシエーション行為の研究』の2冊を2007年に刊行しております。この時に2回目。本当はこのようにあ1997年と2007年にそれぞれシンポジウムを開催するように働きかけるべきであったのです。今回のシンポジウムにもマリィ先生がオンラインで参加されるとよかったのではないでしょうか。

『合本 女性のことば・男性のことば(職場編)』
現代日本語研究会編
http://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-89476-579-5.htm →在庫あります。

『「女ことば」はつくられる』
中村桃子著
http://www.hituzi.co.jp/books/352.html
→在庫あります。

『発話者の言語ストラテジーとしてのネゴシエーション行為の研究』
クレア マリィ著
http://www.hituzi.co.jp/books/325.html
→在庫はありません。

つきまして、重版を検討したいと思います。googleフォームで、重版についてのアンケートを行います。重版の希望が多ければ、重版することができます。ぜひ、以下↓のアンケートにお答え下さい。

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfKbD181BnV2NT352EbNYo2h9HySotR9-dlpUn3HFO5UhdNxg/viewform

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執筆要綱・執筆要項こちらをご覧下さい。



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