知的社会を構築するということに学術出版社としては関わっていきたい

2011年4月15日(金)

知的社会を構築するということに学術出版社としては関わっていきたい

未発の房主よりの文章を少し手直ししたものです。

東日本大震災に罹災された方、福島原発大事故による被害を被っている方のことを思いますと悲しみにつつまれます。亡くなられた方に哀悼の念を表しますとともに現在、被災されて苦しい生活を余儀なくされている方の生活の復旧を心からお祈り申し上げます。家を失われ、働く場所を失われた方々の今後の人生を思いますと安楽な気持ちになることができません。

ひつじ書房は大きな被害はなく、社員も皆無事でした。たいへんありがたいことと存じます。

昨年は、20周年の記念行事についてお知らせいたしました。これまでを振り返る年でした。今年は、これからのことを考えているところです。これからどうしていくのかをきちんと考えていきたいと思っています。必ずしもポジティブで、調子のいいことを考えているということではなくて、学術出版社として、どうこの時代を生きていくのかということを精一杯考えて、出版活動を行っていきたいと決意を新たにしています。

原発事故について考えますとこれまで危険性については、いろいろなメディアで語られていたことです。私が学生のころは、市川定夫という埼玉大学教授が、危険性について語っていました。私自身、耳で聞いて危険性を知っていたのに、そのままにしていたということを情けないことと思います。また、テレビの放射線量についての説明も、最初は1時間あたりの放射線量をレントゲンの放射線量と比べているなど、小学生でも分かるかけ算をしないことばが、話されていたことに驚きました。日本国民は算数もできないと想定されているということは、一体どういうことなのか。大津波についての危険性は、想定外ではなく、審議会でも話されていました※。そういう学問成果を無視して平気である社会とは何なのか。知的社会というものがなりたっていないのではないか。消費生活を維持するために、算数レベルからすっとばしてしまっていいという社会なら、知的な営みというのはどういう位置づけになるのでしょう。

言語学の成果の公開という個別の学問の問題に留まらず、知的社会として成り立つのかという日本国全体の問題が問われていると思います。その中に学問の公開と公共化という問題も関わっています。悲観せず、知的社会を構築するということに学術出版社としては関わっていきたいと考えています。

※宍倉氏の上司で活断層・地震研究センター長の岡村行信博士は09年、福島原発の安全性を討議する公式委員会の席上、この研究結果に言及していた。岡村博士によれば、津波対策強化の考え方は実行に移されなかったという。(「巨大津波を予測していた男?活断層・地震研究センターの宍倉博士」http://jp.wsj.com/Japan/node_219865)


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