明と暗、明海大学、日本語教育学会参加

2009年5月26日(火)

明と暗、明海大学、日本語教育学会参加

23日と24日に明海大学で開かれた日本語教育学会に参加した。今回は、日本語学会が開催されなくなったので、この春一番重要な学会になった。今回は、日本語教育の分野で言語的というよりも、言語政策に関するもの、多文化多言語共生に関わるものを一挙に刊行したというタイミングでの出店となった。今回の学会は、これらの新しい刊行物たちがどのように受け入れられるのかを試す貴重な機会であり、売上げの面からも、反応を知るという面からも、かなりの期待を持って学会に参加したわけである。

初日の冒頭、人が少ないという印象。インフルエンザの影響で関西の方々が、関東に菌を持ち込まないよう参加を控えたのか、人込み自体を避けたいと思って、参加者が少なくなってしまったのか。凡人社の田中社長は、ダメだね、250人しかきていない、との恐ろしい状況を説明して下さる。確かに、人は少ないようだし、全体を統括するシンポジウムもないので、どうも集客できる目玉がない。日本語教師養成について問題提起する、内容の充実したシンポジウムが、大養協で前日にあったらしい。そういうのは合同でやってほしい。それでも会員が少ないので50名くらいしかこなかったということを、ある先生からお聞きした。もったいない。 言語政策に関するもの、多文化多言語共生に関わるものを一挙に刊行したと述べたけれども、日本語教育の世界でのひつじ書房のこれまでの積み重ねがここに来て実ったということがある。リリアンさんの書籍は、甲南女子大に移られた時から、出そうと言っていた書籍であるし、多文化社会オーストラリアも、数年前から準備して刊行したものであるし、文化間移動をする子どもたちも、数年前にスタートしていた企画である。今回、一時に刊行された書籍もそれぞれ、数年という時間をかけて作り上げていったものである。これらの新刊の売れ行きは悪くなく、受け入れられる素地はあるということだろう。最終的な売上げも、首都大学で開かれた昨年の春の日本語教育学会には及ばなかったものの、おおむね昨年並みであった。昨年は売上げ的によかった年であった。

しかし、一方、懸念すべき点もあって、昨年は教育法についての研究書をかなり刊行したが、それら1年前の本については、今年は、引きがあまりなかったように感じた。昨年刊行した書籍群は、日本語教育というジャンルでは中核的な研究書たちであるはずだから、1年くらいで必要とされなくなってしまうとしたら、問題だ。教授法について啓蒙的な、ガイドブック的な書籍は買われるが、学術的な書籍は売れないのだろうか。そうだとすると科研費の出版助成が日本語教育分野で通りにくい現状では刊行はとても困難になる。研究者自身が、教育研究の存在を尊重しなければ、研究機関も必要がないということになりかねない。必要がないのなら、国立国語研究所の日本語教育部門も残す必要がなかったということになりなかねない。署名活動も大事だが、研究が行われることが重要であり必要だということは、研究を必要としているという研究者自身の日常によるのだから。署名はするが、研究書を買わないのなら、研究が必要がないという、国立国語研究所の独立行政法人を廃止した自民党を辞めた旧渡辺行革大臣の行った数合わせの行政改革を裏付けてしまうのではないだろうか。

さて、今回も新しい企画の話しが生まれた。企画を進めるにあたっての話しもいくつかできた。そういう話しが、数年をかけてだんだんとかたちになっていくだろう。

今回、日本語教育学会の方に大きなテーマが設定されていなかったのはいささか寂しいものを感じた。とともに日本語教育研究は、ひつじ書房が頑張っていくしかないのではないだろうかと思いました。出店しているのも多くは、教材主体の教材出版社で、学術出版と教材出版は目指すものが違うので、学術的な研究についてはわれわれが担っていくしかないだろう。あーあ、日本語学会に行きたかった。研究書主体という孤高の立場、言語政策ウオッチなど言語教育系の出版社が出さなかった新しいジャンル、それらに取り組んでいきます。どうぞお声掛け下さい。

『「大学生」になる日本語1』も着々と進めてもいることを報告しておこう。『「大学生」になる日本語1』の聴解用音源の吹き込みについての打ち合わせを銀座で(喫茶店ルノワールで)行った。音声の吹き込みは難しいものなんだということを遅ればせながら、実感した。その後、移動してパスタも美味なイタリア風居酒屋宝町の「東京バルバリ」へ。沖縄アグー豚のカツレツもおいしく頂いた。イタリアワインもおいしかった。(名前は忘れた)食すること、飲することは元気の源。

ちなみに本年も研究書出版の相談会のオープンオフィスを行います。どうぞご参加下さい。研究書出版相談会、オープンオフィスの詳細


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