2009年 日本学術振興会の研究成果公開促進費の採択の結果

2009年4月20日(月)

2009年 日本学術振興会の研究成果公開促進費の採択の結果

今年も4月の第1週に日本学術振興会の研究成果公開促進費の採択の結果がでました。今年の結果をご報告します。(ひつじメール通信で発信しました、内容に基づいています。ひつじメール通信にどうぞご登録下さい。)

ひつじ書房では、昨年秋に23件の申請をお手伝いいたしまして、7件の採択という結果になりました。採択されました先生方には、心からお祝い申し上げますとともに、採択されなかった先生方には、たいへん残念に思いますが、結果にあまりがっかりされませんようにお願いします。一度、採択されなくても、再度申請することも可能ですし、可能性を探ってみることが大事です。

数字を計算してみますと、ひつじ書房では採択率が31パーセントとなります。日本学術振興会の公開しています数字ですと34パーセントということですので、全体の採択率よりは少ないということになりますが、ほぼ平均と同じということになるでしょう。一昨年は40件以上申請しまして、8件の採択でしたので20パーセント未満でした。今年7件の採択ということは、たいへんありがたいことと考えています。

以下が採択されました著者名とタイトルです。

山田昌裕先生『格助詞「ガ」の通時的研究』
岡崎友子先生『日本語指示詞の歴史的研究』
大島資生先生『日本語連体修飾節構造の研究』
井元秀剛先生『メンタルスペース理論による日仏英時制研究』
柳沢民雄先生『Analytic Dictionary of Abkhaz』
加瀬佳代子先生『M.K.ガンディーの真理と非暴力をめぐる言説史』
中島泰貴先生『中世王朝物語の引用と話型』

言語以外の分野の研究書もありますし、アブハズ語の辞書というこれまでなら、大学書林のような出版社が出していたと思われる個別言語の辞書も出します。

長年、申請しているのですが、学振に採択されるテーマにも時代の流れや傾向があるようです。2007年は日本語教育に関するものが、5件採択されました。それに対して2008年は、英文の言語学書の採択が多く5件でした。今年は、アブハズ語の辞書をのぞけば、英文学術書は1冊もなく、日本語学の研究書が通っています。逆に日本語教育・英語教育の分野がこの2年間通っていません。明らかに傾向の変化が見られます。

日本学術振興会の採択に影響を及ぼすような、この期間に何か、言語教育研究を評価しにくいという風潮が存在したのでしょうか。国立国語研究所の移管、さらには国立国語研究所の日本語教育部門の廃止が予定されるというようなことも、関係があったのではないか。日本語教育というジャンルの研究は、日本国政府は、支援する必要がないという判断で進んでいた期間に、日本学術振興会として日本語教育研究を後押しする根拠がないので研究成果公開促進費の交付ということにも消極的になるということがあったのではないでしょうか。

国立国語研究所の日本語教育部門の廃止ということも言われていたわけです。本来は言語教育についての研究所が別にあるべきかもしれませんが、ひとまず国立国語研究所の中に残るという決議が国会で下されました。このことに安心してはいけないと思います。学術機関の中での言語教育研究の位置づけについては厳しい捉え直しと訴えかけが必要ではないでしょうか。日本学術振興会の学術助成政策も、もしかしたら、国立国語研究所の中に残るという判断によって言語教育研究分野にこれまでよりも多くの助成が通るということがあるかもしれません。この2年間の不遇的な状態は変わって欲しいと願っています。

また、オーソドックスな言語研究の方が通りやすいということも無いと思います。ある方の話によると同じ学科の同僚から、文科系の研究は申請してもどうせ通らないよと言われたとのことです。その方は通ったわけですが、きちんと多くの方が申請することによって、経済的な枠もできるわけですから、トライしてみることは必要なことです。申請することは、その方本人のためだけではなくて、後輩のためでもあるのです。

状況は変化しますので、今年の学術振興会の研究成果公開促進費の申請に採択されなかった方も、がっかりされすぎずに再度挑戦されること、または新たに申請されたい方も、もう少し可能性があると思って挑戦してみることをおすすめしたいと思います。

もちろん、言語研究のジャンルの研究者の方にも積極的に申請することをおすすめします。今回、日本語学の研究書が、採択されたことは、ひつじ書房にとってたいへんありがたいことでひつじ書房の本道を大事にしたいと思います。ひつじ書房は随時相談を受け入れています。具体的なテーマがまだ決まっていないという方でもオープンオフィスでは相談を受け付けていますので、どうぞこの機会をご利用下さい。


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