学術研究書という非常に地味なジャンルで、新しい学術書の売り方をいっしょに考えていこうという方はいないだろうか。 2007年3月20日(火)
2007年3月20日(火)

学術研究書という非常に地味なジャンルで、新しい学術書の売り方をいっしょに考えていこうという方はいないだろうか。

内容が良くて売れる本をきちんと作って行くにはどういう組織の体制がよいのだろうか。出版の理想を言えば、本の売れ筋と価値のバランスを取りながら、出版社にとって利益をもたらす本を出していくことができるということである。編集も製作も営業も財務も顧客サービスもこのことをサポートするためにある。

もし、それぞれのセクションがあるのなら、連携し、連関している必要がある。連携と同時にそれぞれのセクションで何に責任を持つかという職務による分業も必要である。営業と編集は違ったセンスが必要であろうし、顧客サービスと編集は違ったセンスが必要である。問題は、現在、ひつじ書房では、顧客サービスや営業におけるヘッドと呼ぶべき存在がないということである。全くいないわけではなくて、顧客サービスについては中心になって専務がやっている。会社としてはお客様との対応の中で、研究動向の傾向の変化やマーケットの変化なども感じていると思う。このプロセスに関わっていくことで、それぞれなりにどういう本を出したらいいだろうかという魚群探知機を身体にしみこませていくということがあるのではないか。

本作りとしての編集を中心として考えると本作り以外の仕事を業務と呼んでしまうことになるが、それが要するに編集以外ということであって、何をするべきなのか、何が重要なのかということもきちんと区分けされているわけではない。そういう段階で、編集(本作り)と業務を分けるということができるのだろうか。単に編集(本作り)だけに集中していたいから、編集(本作り)以外の仕事に関わりたくないということになるおそれがある。営業・顧客責任者がいて、その判断のもとで改革を行うことができるとよいのだが、もともと判断をする人が存在しないというのが現状だ。

大きい出版社で、自覚しなくてもマーケットセンス抜群というような優秀な人間ばかりであれば、本の売り買いの現場と離れていてもよいかもしれないが、凡人の集団が、現場を離れてしまうと間違った方向に進んでしまうおそれがある。

返品の処理や電話での受注をしたところで、マーケティングのセンスなど得られるはずがないかもしれない。たしかにそうではある。とするとどのようにして編集者がマーケティングのセンスを得るんだろうか。もともとある人間は別にして。そうなるとマーケティングのセンスがあってマーケティングに関わる人とそうではない人での区分けが必要になるだろう。これまでは、編集以外の顧客対応などに関わる中で、プロセスの中でマーケティングのセンスを作っていくというのが思惑であったわけである。このプロセスをカットするとマーケティングセンスを学ぶプロセスがなくなるのではないか。代替はあるのか?学ぶべきプロセスがないのなら、そうすると立場は固定して考えるべきだということになる。コミッションエディターとアシスタントエディターの区別を明確にする。つまり、アシスタントエディターは企画は出さず、コミッションエディターが立てた企画を作る立場と言うことになる。

この部分は、変化したり、成長できると考えているので現時点ではあいまいにしておきたい。その区分けをしてしまう前に21世紀という時代に適合した新しい学術出版にとっても、顧客サービスとはなにか、受注業務とは何かを考えてみたい。これはひつじ書房として次に行うべき大事な過程だ。そのプロセスに可能であれば、学術研究書のプロモーションをする方法を考え出そうという意欲のある人が参加してくれるといい。そうであれば、編集以外の仕事を避けるためではなく、プロダクティブな視点で仕事の構成を組み直すことができるだろう。

学術研究書という非常に地味なジャンルで、新しい学術書の売り方をいっしょに考えていこうという方はいないだろうか。


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