SATYがアピタに負けたわけ 2006年7月29日(日)
2006年7月29日(日)

SATYがアピタに負けたわけ

実家が埼玉県の春日部にあって、久しぶりに帰った時に、手見上げを買っていこうと実家の近くのアピタに入った。その時に、アピタは単なる地方のスーパーではないなあと感心させれてしまった。私も出版という商売をしているので、お店の人のサービスについて関心があって、みごとな対応があると感動したり、おののいたりしてしまう。

私は娘が幼稚園だった時に、せんげん台のSATYによくいっていて、少しきれいな気さくなデパート兼スーパーの感じの良い店だと好感を持っていたから、私の両親が近くにアピタができて、SATYにいかなくなり、そのころ、アピタがSATYの売り上げを食って、SATYの売り上げが落ちてきたのか、気に入っていたメーカーものの子供服売り場が縮小されたり、使いにくくなってきたので、アピタにあまりよい感情を持っていなかった。値段の安いサービスによって、質の高いサービスが駆逐されるのは私は好きではない。

ところが、先日、アピタに行って驚いた。サービスがよく考えられていて、店のサービスレベルがとても高いのである。その日は雨だったが、入り口で驚かされた。入り口にベビーカステラを売っている店員がいて、コドモが通ると次々に試食のために渡している。これだと普通かも知れない。しかし、この店員はたぶん、単なるベビーカステラのためのバイトではなく、ちゃんとしたスタッフなのだろう、コドモにカステラを渡すときに、「傘をしまってね」とお願いをしているのである。これはうまい。「カステラ一箱300円ですよ〜、おいしいよ。一口食べてね〜。傘つぼめておいてね〜」という感じでさりげない。単に傘をしまいましょう、などといわれてしまったら、何でよけいなことをと思わせるだろう。また、子どもたちは親より先になって入ってくる。お店にくるのが楽しみなのだろう。ベビーカステラを渡されて言われるのであれば、その気持ちを損なわないのだ。その結果、素直に傘をきちんとすぼめたり、閉じたりする。結果、他のお客さんに雨水を垂らすこともないし、たったそのベビーカステラといっしょの一言だけで、気持ちよく買い物ができることになる。

もうひとつ。私が実家へのお土産に桃を買った。店頭に並べて箱に入っていた桃を買ったのだが、その並べてあったものが見本なのか買えるものなのかが分からなかったので、近くにいた店員に「持って帰れるの?」と聞いたところ、その箱にフタをしてくれた。ここまでは普通だろう。その店員は「さっき並べたばかりですからあたらしいですよ」と一声添えたのだ。これには驚いた。陳列されている贈答品用のお菓子や果物は、いったいいつからそれが陳列されているのか、気になることがある。少し高価であったりするから、なかなか買われないで長い期間おいてあることもあるだろう。買う人もそれを少し気にして買うということがあるだろう。でも、そういうことを聞ける人はいいだろう、でも多くの人は聞かないで疑問を持ったまま、買ってしまうことが多い。その疑問にあらかじめ答えるということ。

たまたま、ほんの5分以内に経験したことだったが、アピタが地元で受け入れられているのが単に安いからではないということに思い知らされた。安いだけではなく、サービスもかなり高度だということである。本を作るわれわれが、そのようなリーズナブル値段でものを売り、クオリティの高いサービスを提供するということはどういうことなのだろう?

出版社とっては、本を書いてくれる著者と買ってくれる読者の両方とも大事である。特に学術出版社にとっては著者と読者は比較的近いところにいるともいえる。書き手として不安に思っていること、疑問に思っていることに丁寧にお答えしていく。質問してくださればよいが多くは疑問を持ったまま聞いてくださらない方も多いに違いない。疑問にはあらかじめお答えできるような方法を考えよう。


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