スタディスキル研究 2006年4月10日(月)
2006年4月10日(月)

スタディスキル研究

スタディスキル研究ということばでgoogleで検索しても、2006年4月10日現在で、でてこなかった。日本ではこの名称で研究している方はまだいないということだろうか。検索するキーワードとして適切でなかったのかもしれない。(注 このページを作ってから2日後の12日にgoogleで検索するとこのページがでてくるようになりました。)

イギリスの出版社のpalgraveから刊行されているTeaching Study Skills and Supporting Learingを読み始めているが、この著者のStella Cottrellによると1990年代前後から、スタディスキルの議論が大学ではじまったと書いてある。また、学生は大学に入る前には、問題についての答えはあるのだと思ってくると書いてある。日本でも同様であることが面白い。つまり、そんなに欧米でも昔からやっていたわけではないし、日本の大学で嘆かれている、高校まででは「自分の頭で考える」というものが教えられてないという声は、欧米でも同じであるということだ。欧米は少しばかり先に課題化したということだろう。せいぜい10年くらいの差なのだろう。

Stella Cottrellの学生向きの実際のテキスト、The Study Skills Handbookも見てみたが、項目が網羅的に挙げられているのはすごいと思うが、逆に少々細かすぎるような気がする。もう少しシンプルなものの方が使いやすいのではないだろうか。

まだ、Teaching Study Skills and Supporting Learingの最初しか読んでいないけれども、面白いと思った点がたくさんある。専門課程の授業もスタディスキルを教える要素を持っていた方がよいということと、教授者は、スタディスキルを身をもって示す必要があるということが書いてあったこと。つまり、たとえば、日本文学の漱石研究の授業でも、スタディスキルを教える要素を入れるということと、スタディスキルの授業でも自分の研究について、どうやって研究しているのか、たとえば、漱石の研究者であれば、その研究をも示すということ。スタディスキルでこんなふうに研究ができるよということを身をもって示すとのこと。研究分野を持っている研究者であるべきということだろう。スタディスキル専門の教師ということはありえないということなのかもしれない。とすると言語教育者ではだめで、言語教育学者ではないとだめだということかもしれない。教えるだけの専門家ではだめなのだ。

Teaching Study Skills and Supporting Learingは、面白いトピックをたくさん提示してくれているけれども、具体的にどうするのかという点は、まだまだ、項目羅列主義で、精神論的なものになってしまっているように感じる。具体的な裏付けやプロセスについてはまだ弱いと思う。たとえば、私が、社員教育に使おうと思っても、企画書を書くための本の読み方を教えたいと思っても、参考になる部分がない。別に細分化されたトピックに対応してほしいということではなく、読み方の向上のためとして上げられているものが、少し月並みだと感じたということ。認知心理学や学習理論やピアラーニングなどの研究がもう少し進むといいのだろうか。まだまだなのだろう。スタディスキル研究は、支援をしたいと思う。

少し前、ある先生と話しをしていたときに、参考文献に挙げた書籍を学生が入手できなかったという話しがあった。図書館にいけない、書店にいったことがない。書店というもの自体を雑誌をかうところとしてしかしらない。スタディスキルというのは、資料を読んだり、レポートを書いたり、クラスで議論しあう前に、本にふれるところからはじめるものとなるだろう。書籍の文化の基礎的な部分を再構築するということも含まれている。

ひつじでは、スタディスキルに関連したものとして『広げる知の世界』や表現法に焦点をあてた『ピアで学ぶ大学生の日本語表現法』、『書くトレーニング』『話すトレーニング』を出している。これからも、出していく。できるだけ、使いやすく、役に立つものを作りたい。対象となる学生の傾向も多岐にわたっているに違いない。だから、たとえば、「女子大学生のための大学生活入門」のようなものも作りたい。これは冗談ではなく、アメリカではそういう教科書もでているのである。


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