本の装丁 2006年3月7日(火)
2006年3月7日(火)

本の装丁

ひつじ書房は創業の時、デザイナーの石原亮さんにロゴのひつじと日本語研究叢書のパンフレットのデザインをしてもらった。ひつじのロゴはなかなか評判がよく、ずっと使い続けてあきない。とてもよいロゴを作っていただいた。

昨年の秋から、本文の組版のフォーマットを少しずつ変えている。私よりちょっと年上のデザイナーの向井裕一さんに研究書の本文の組み方について相談にのってもらっている。今まで、印刷所さんに組んでもらって、気に入らなかったところ、句読点が詰まってしまうところなど文字組の設定の基本的なところについて、きちんとしたフォーマットを作ってもらい、かつ、何冊かは向井さん自身に組んでもらっている。今組んでいる『様式とメタファー』(仮題)では、著者の中村三春先生に今まで見た中で一番きれいだと言っていただいた。3月に刊行する中園篤典先生の『発話行為的引用論の試み−引用されたダイクシスの考察』と青柳宏先生の『日本語の助詞と機能範疇』もそうだ。本文は原則的に遊明朝という書体を使い、欧文はCaslonを使うことに決めた。Caslonは、欧文書体の本によると欧文書体としてオーソドックスなものだそうだ。そして、直接組んでもらってはいないが、現在進行しているものはそのフォーマットを何らかの下地にして作業を進めている。

本文だけでなく、英語の研究書 Hituzi Linguistics in English のカバーなどのデザイン、ひつじ研究叢書(言語編)の新しい41巻以降のものなどの箱などもそうである。クロスの色も、41巻から今までのアートカンブリックの紺から黒に変える。ちなみに、クロスというのは、上製の本の表紙で、通常は布でできている。特にアートカンブリックは研究書のクロスとして定評のあるもの。箔押しの色はシルバーになる。Hituzi Linguistics in English のカバーは逆に印刷のインクに大日本インキの「フランスの色」のシリーズを使った春らしい、花のような色合いのものになる。こっちはデザインは同じなのだが、色が巻ごとに違っていて複数冊ならぶと花園のようにきれい。

この春から、ひつじの本はがらっと変わる。試行錯誤もあるので、完璧に決まり!ということではなく、この1年かけて変わっていくことになる。たぶん、かなり読みやすく、きりっとした組版で研究書をお届けできることになる。完璧とは言えないかもしれないが、本を作るという点でも進化し続けている。ご期待下さい。

本を作るというのは、ただ適当に文字を並べて、かたちを整えているだけではなく、いろいろな知恵を結集して作っている。書体にも歴史があり、それをきちんと行としてページとして組んでいくプロ、組む指定をするプロ、そして編集という作業。それらのものが積み重なって、広く読まれ、古書になっても読まれる息の長い書籍になっていく…。


執筆要綱・執筆要項こちらをご覧下さい。



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