2004年2月26日(木)の日誌 専門・学術出版協会の必要性

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2004年2月26日(木)

専門・学術出版協会の必要性

アメリカには「専門・学術出版協会」というのある。

http://www.sspnet.org/
(専門・学術出版におけるキャリア形成http://www.sspnet.org/public/articles/careers.pdf

その中で学術と公共と結びつけるものであるとの宣言があり、それは私にとってはなかなか感動的な内容である。出版・編集は、専門的・学術的な内容と人々を結びつける役割を果たしてきた。多くの場合、助成金や補助金もなく、非営利に限りなく近いことを事業を通して実現してきた。このことは誇って良いことである。

日本の場合、専門・学術出版の位置がうまく理解されていない…

専門・学術出版は、事業として成り立つように苦闘を続けているわけで、商業出版としてなりたっているかというと残念ながらあやしい。本というかたちは、時代を超え、空間を超え、メディアを超えて、共有化できる方法である。専門性も蓄積されているので、経済的にも効率がよいものである。文部省の政策だろうか、助成金をつかって研究をシンポジウムなどのかたちで公開するということがこのところ多いのは残念である。COEと呼ばれる研究拠点による研究支援の場合、公開シンポジウムの開催が行われることが多いが、出版助成がセットになっていない。

シンポジウムの開催にも、かなりの経費がかかることだろうが、その日限りのイベントであるが、数百万単位でかかるのではないだろうか、その経費を出版することに回せば、半永久的に公開されることになるわけだが、どうしてそういう発想にならないのだろう。出版がビジネスのかたちをとって運営されているために、どうも私利私欲のものであるかのように誤解されているのではないだろうか。

報告書を考えても、たとえば、いろいろな助成金で海外への視察が行われているが、報告書が作られることもあっても、それは知り合いに配られるだけで、おしまいになってしまう。これも出版すれば、知り合いでない人もその情報にアクセスできるようになるし、時代を超えてアクセスできるようになる。

専門・学術出版社はセミプロであり、専門家と専門家以外の人をつなぐ橋になるものである。「つなぐもの」としての専門技能があるし、作られた書籍も時代や空間や業界を超えて「つなぐもの」になる。

「つなぐ」ということの意味を伝えていくことの重要性。多くの人は、単なる公開と「つなぐ」出版ということの意味の違いがわからないだろう。今までの出版人は判ってもらう必要がなかったから、いいのだろう。現代的な課題だ。

専門・学術出版協会のような組織が必要な時代になったということだろう。ただ、実際にどこが、専門・学術出版協会のリーダーになるのか。多くの「専門・学術出版社」と思われている出版社は、出版の中身は「専門・学術出版」が中心ではないことが多い。「専門・学術出版」についていっしょに問題提起をしようと提案しても、もともと「専門・学術出版」は不採算部門でどっちかというと広報部門であるから、現状以上の労力をさくということの提案には賛成も協力もしてくれないだろう。零細な学術専門書の出版社が連携するしかないのかもしれない。

学術誌・専門誌協会
http://www.alpsp.org/default.htm
アメリカ出版協会、学術・専門書出版部会
http://www.pspcentral.org/ 専門・学術出版におけるキャリア形成
http://www.sspnet.org/public/articles/careers.pdf


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