2001年5月24日(水)

トーハンと日販の口座には意味がなかった

5年前、トーハンと日販の口座を開設して、それまで地方小出版流通センター経由からであったのを、出版業界でいう通常のルートで本を書店に届けることができるようにした。ちょっとまあ、嬉しくなかったわけではない。一人前のような気がしたことを覚えている。1980年代に出版社をつくった人には分からないだろうが、トーハン・日販に口座をもつと言うことはそれなりに大変なことであった。そのあとで、ある人から、ひつじ書房のような出版社の場合、地方小で充分だし、トーハン・日販の口座をつくる意味がないだろうといわれた、そのとおりなのだが、いくつかの口座を開きたいと思わせる理由があった。

  1. 再販制が崩壊したあとでは、書店さんごとに掛け値が変わるであろうが、そうであるならば、書店さんごとの売り上げのデータがほしかった(地方小では、どこの書店からの注文であるのかわからないから)
  2. 地方小経由の場合、書店さんへの入り正味が高くなってしまい、利幅が20パーセントを切ってしまう。これでは買い切りで、利幅が少ないというのは合理的ではないし、本屋さんに売ってもらいにくいのではないかということ
  3. たまに一般性の高い本を出したときに、委託もしたい。

この3つであった。

しかし、トーハン・日販で『読むということ』を委託した時に、返品率が90パーセントを超えており、委託の意味が無くなった。委託していると返品を受け取らないといけない場合が多いので、最近は委託はしていない。

書店の把握であるが、書店の把握をするために、ファイルメーカーで出荷台帳を付け、日々入力をおこなってきたが、そのようなことを多くの出版社はやっていないということ。店売から、本を出す場合、書店さんが抜き取っていくのであり、そもそも中堅の出版社はほとんど、書店を把握しようとすらしていないようだということに気がついたこと。重要なのは、再販制度はそのまま維持することに決まったということである。数年間にわたって、個別にデータを採集し、入力してきたことの、経済的な出費と学生のアルバイトくんたちを教育するという手間はいったいなんであったのだろうか?個別の書店の売り上げがわからないまま、時代の激変を生きていけると出版社は思っているのだろうか。がっかりである。

そればかりではなく、取り次ぎ業はこのところ混乱をきたしているようだ。「日販の王子は混乱しているらしいですよ」と書店さんは電話で言う。これは恐るべきことである。取り次ぎはインフラだ。仮に水道の蛇口をひねって、水が出てこないで、「水道が混乱しているみたいですよ」というような情景を創造してみてほしい。注文してきた書籍が入ってこないとなると、問い合わせが来て、それの原因を調査して、電話しているだけで、一件で1時間とか軽くかかってしまう。私と妻の二人でやっている零細出版社でこれは、仕事を阻害する。本来の仕事が出来なくなってしまう。

多くの出版社は、「仕方がありませんから、もう一度出します。重複して来たら、返品して下さい。」という。私たちはこのやり方については許さない。冗談ではない。本が汚れて戻ってくるし、商品をそんなかたちで気安く扱うことは許されないと思っているからだ。しかも、われわれは、返品手数料を取られるのだ。

トーハンも相変わらず汚れており、さらに、こちらで見てから判断するから、いったん預かりますと言っているのに、アルバイトの女性だと思って、今すぐ見てくれなどという、冗談ではない。

私たちは、このようなことに時間をとられたくない。このような取り次ぎの現状の中で、書店さんへのきちんとフォローするのは残念ながら、無理である。そこまでできない。本当に欲しい人には直接売る方がいい。したがって、近日中に、地方小に戻し、鈴木書店と八木書店以外の取り次ぎの口座を閉鎖する。

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