2001年1月10日(水)朝は小雨。

身銭をきって買ってくれる人よ、ありがとう

私は情けないことだと思うのだが、こっちこそかっこいいと思う人も多いだろう。多数派は支持してくれないではないか。みなさんは、どう思われるだろうか?

INAXというのは、陶器の会社であり、住宅や事務用品の重要な部分をとてもセンスよく作っている会社である。そこが、10+1という雑誌を出しており、また、単行本の出版物も出している。建築、住環境についての知的な叢書を出している。奥付けと著者の後書きを見ると萩原富雄さんへの謝辞があり、彼の経営するデザイン事務所の名が記されていた。彼は知る人ぞ知るラツワン編集者であり、1980代に一世を風靡しかけたニューアカデミズムの人々の「GS」という雑誌を編集していた人である。実は私はそのころ、大学生で、GSを出していた冬樹社で出荷のアルバイトをしていたのである。その時に、お顔を拝していた。それはさておき、メディア論的な本、都市の垢抜けた研究書やカタログの後書きに彼の名を見てきた。はっきり申し上げて、よくデザイナーの特集が組まれるが、そんなものはくだらないと私は思う。本を最初の作ろうと決めるのは編集者だからだ。編集者特集がどこかの雑誌で企画されれば、彼は、かならず登場すべき人の10本の指に入るだろう。(でもでもでも、どうして、編集者の特集というのはないのだろう?年間、何冊も手がけていながら、この本には力を込めました、といえないということがあるのだろうか?)

しかしである、INAXというスポンサーの保障を得て、自分の好きなように編集しているというのは、私はずるいのではないか、と思うのだ。私が発行人であることからくる、やっかみであることは先に認めておこう。資金繰りと売り上げに一喜一憂しているせこい男だからと言っておこう。しかし、INAXというスポンサーを得て、本を出して行くと言うことは、読者に判断をゆだねていないと言うことである。4000円かかるはずの本を2000円でだすのはずるいことだ、と思う。その差額は、スポンサーから、編集費というより、組版・デザイン料としてもらっている。これはオバーヘッド(必要経費)として、INAXに請求できる。これは正直に申し上げて、かなり正しい戦略である。読者が、価値と値段を判断できないでいる現状では、技能のある編集者が食って行くためには、他に方法のない、必然だといってもよい。がんばってきちんとした仕事をしようと思って、そのコストを値段に反映させたら、多くの人が買ってくれない値段になってしまうからだ。

でも、あえて思うことにしよう。10+1にある研究者・評論家の文章が載っていた。かなり誠実な人であると言っておこう。しかし、彼の文章は、ポストモダン崩れで、わかりにくい独り善がりな文章だと私は思った。このことには二つの意味がある。

だから、身銭を切って読んでもらうことは光栄なことである!そういう立場に身を置いていることは光栄なことである!


午前、デジブックジャパンのTさん来社。午後は、日本自然保護協会の森本さんとJCAFEの浜田さんと朝日新聞の記者の方の投げ銭についての取材を受ける。 大門先生の本の目次を作る。夜はニンニクの利いた辛い焼きそば。

明けまして!

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