ひつじ書房 「語り論」がひらく文学の授業 中村龍一著 「語り論」がひらく文学の授業 中村龍一著
2012年11月

「語り論」がひらく文学の授業

中村龍一著

A5判並製 定価2,400円+税

ISBN 978-4-89476-636-5

ひつじ書房





国語科教育における文学作品の受容論は、読解論、視点論、読者論から、読書行為論、語り論へとひらかれてきた。「語り論」は、これまでの受容論を抱え込み新たな〈読み〉の世界を切りひらいた。物語と語り手の相克からの〈読み〉の世界である。この「語り論」を国語科教育の基礎的な実践理論とするため、著者のこれまでの考察と提案、実践報告をまとめた。一人で読む以上に、教室でみんなで文学作品を読むのは面白い。そのような授業を目指して。

目次

まえがき
本書の用語の解説

序章 物語批評から深層批評へ
 二つの愛の位相 「未確認飛行物体」(入沢康夫)と「永訣の朝」(宮澤賢治)
  1 読書行為の「〈読み〉の原理」
  2 詩「未確認飛行物体」の作者・出典・教科書掲載のこと
  3 詩「未確認飛行物体」の愛の位相
  4 入沢康夫の《零度の詩句》からの《聖化》と再構成
  5 詩「永訣の朝」の愛の位相
  6 「修羅の世界と語り手」の相克

第一章 物語と格闘する語り手
 一 物語と語り手の相克 〈金色の獅子〉はなぜ語られたか(宮沢賢治「猫の事務所」)
  1 日本語の「私」を問う
  2 「猫の事務所」結末の物語
  3 「猫の事務所」の結末はどう読まれてきたか
  4 物語と語り手の相克
 二 愛に目覚めたのらねこの物語 「のらねこ」(三木卓)の面白さを引き出す
  1 連作短編集『ぽたぽた』と教科書版「のらねこ」
  2 「のらねこ」のストーリー
  3 「のらねこ」の語り
  4 愛の覚醒、物語の深層
  5 授業への展望

第二章 文学教育の課題と授業を愉しむ〈読み〉の原理
 一 「学習指導要領」改訂と〈読む〉ということ 「白いぼうし」(あまん きみこ)を例に
  1 子どもとことばの問題
  2 「学習指導要領」改訂が抱える諸問題
  3 「文学の〈読み〉の授業」に追い風は吹いていない
  4 これまでの「文学教育」の何が問題か?
  5 これまでの文学教育の何を、どう転回するのか?
 二 「私」を問うこと、それは思い入れの〈読み〉から始まる 「おにたのぼうし」(あまん きみこ)を例に
  1 田中実「〈読み〉の原理」が授業に生きるために
  2 文学の〈読み〉とは何であったか(己を読む)
  3 教室で文学作品を読むことの根拠
  4 子どもの〈読み〉を授業でどう方向づけるか

第三章 ことばに《いのち》を読む文学の授業
 一 文学作品の「問い」と向き合う子どもたち 六年生が絵本『しばてん』(たしま せいぞう)を読む
  1 国語教室での再読の〈読み〉とは何か 物語が終わった後に、世界の「問い」が見えてくる
  2 「しばてん」について
 二 〈読み〉の手がかりは何か 中学一年生が「空中ブランコ乗りのキキ」(別役実)を読む
  1 文学作品を教室で〈読む〉ことは面白い│読書行為としての〈読み〉
  2 「空中ブランコ乗りのキキ」(別役実)の教材価値とは何か
  3 再読の〈手がかり〉は何か
  4 学習指導過程と実践例
 三 〈子どものことば〉の自立と共生を求めて 中学二年生が「少年の日の思い出」(ヘルマン・ヘッセ、高橋健二訳)を読む
  1 「〈外国語〉としての日本語」を問うことの意味
  2 〈学校ことば〉・〈友だちことば〉の向こうに〈私のことば〉を
  3 〈私のことば〉の自立と共生を求めて
  4 〈私のことば〉をつくりかえる力 中学生が「少年の日の思い出」(ヘルマン・ヘッセ、高橋健二訳)を読む
  5 ことばの発見が〈私のことば〉をつくりかえる

第四章 言語技術教育批判 詩「ライオン」(工藤直子)をめぐる鶴田・中村論争
 一 詩「ライオン」(工藤直子)と子どもの思想
  1 主義の思想から個の思想へ
  2 読解の彼方へ
  3 文学教育に求める個の思想
  4 詩「ライオン」(工藤直子)の全授業記録
  5 詩「ライオン」と康夫の思想
 二 鶴田「言語技術教育」批判│「心情主義」批判に答える
  1 鶴田清司「中村龍一実践批判Ⅰ」 「「心の教育」の前に「読み方指導」を」(要点)
  2 学習課題についての異論
  3 教材分析と授業に対する反論
  4 鶴田「言語技術教育」批判
  5 鶴田清司「中村龍一実践批判Ⅱ」 「言語技術教育は思い入れの読みを排す」(要点)

終章 物語と格闘する読者
 子どものことばの深層に《いのち》の声を聴く
  1 意味世界の無化を潜って 詩「ライオン」(工藤直子)を読み直す
  2 私の〈個の思想〉の原点
  3 堀祐嗣の文学教育実践論による中村批判
  4 康夫のことばの深層に《いのち》の声を聴く

初出一覧
あとがき
索引



【著者紹介】

〈略歴〉
一九四六年北海道小樽市生まれ。明治大学二部文学部(文芸学)に在学中「劇団角笛」(影絵劇児童劇団)に入社。卒業後、千葉県立桜ヶ丘養護学校教諭をスタートに習志野市立第三中学校教諭等、習志野市中学校国語教師を経験し、国語科指導主事、第五中学校教頭等を経て、袖ヶ浦西小学校校長。二〇〇七年に定年退職。現在は都留文科大学国文学科非常勤講師。
日本文学協会、日本国語教育学会、全国大学国語教育学会に所属。

〈主な著書・論文〉
[単著]『文芸研 教材研究ハンドブック 故郷』(明治図書)。[共著]『子どもと創る 国語科基礎・基本の授業 小5』(国土社(編著))、『国語教室宣言』(国土社)、『文学の力×教材の力(中学校2年)』(教育出版)、『新しい作品論へ、新しい教材論へ(高校評論編2)』(右文書院)等。


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