ひつじ書房 場所の言語学 岡智之著
2013年2月
ひつじ研究叢書(言語編) 第103巻
場所の言語学
岡智之 著
ブックデザイン 白井敬尚形成事務所
A5判上製 定価6,200円+税
ISBN 978-4-89476-626-6
ひつじ書房
主体や主語、個物(モノ)を中心にして考える従来の言語学に対し、場所や述語(コト)を重視した言語学の構築を主張した書。第1部理論編では、西田幾多郎の提起した場所の哲学を基礎として、主語論、日本語の論理をめぐる論争に対する見解を述べる。また、認知言語学を場所論の観点から位置づけ、発展させる方途を模索する。第2部は事例研究として、場所論に基づく「ハ」と「ガ」の規定、格助詞「ニ」「ヲ」「デ」のスキーマとネットワークの提示などを行う。
目次
はじめに
I 理論編―「場所の哲学」から「場所の言語学」へ―
第1章 場所の哲学
1. 「場所」とはなにか
2. 中村雄二郎の「述語的世界としての場所」
3. 城戸雪照の「場所の哲学」
3.1 場所の開示
3.2 主客構成関係論
3.3 場所的存在論
3.4 場所の論理学
第2章 言語学における「場所論」の受容
1. 日本語研究における「場の理論」の系譜
2. 語用論研究における「場所論」の系譜
2.1 メイナード(2000)の「場交渉論」
2.2 井出(2006)の「わきまえの語用論」
3. 言語学における「場所理論」の受容 池上(1981)
第3章 「主語不要論」と「主語必要論」
1. 言語類型論から見た主語について
2. 最近の主語不要論
3. 尾上(2004)の主語必要論
3.1 主語論の前提となる事実
3.2 主語の規定
3.3 主語の内実
3.4 主語項の絶対性
4. 川端善明の主語論
I 理論編―「場所の哲学」から「場所の言語学」へ―
第1章 場所の哲学
1. 「場所」とはなにか
2. 中村雄二郎の「述語的世界としての場所」
3. 城戸雪照の「場所の哲学」
3.1 場所の開示
3.2 主客構成関係論
3.3 場所的存在論
3.4 場所の論理学
第2章 言語学における「場所論」の受容
1. 日本語研究における「場の理論」の系譜
2. 語用論研究における「場所論」の系譜
2.1 メイナード(2000)の「場交渉論」
2.2 井出(2006)の「わきまえの語用論」
3. 言語学における「場所理論」の受容 池上(1981)
第3章 「主語不要論」と「主語必要論」
1. 言語類型論から見た主語について
2. 最近の主語不要論
3. 尾上(2004)の主語必要論
3.1 主語論の前提となる事実
3.2 主語の規定
3.3 主語の内実
3.4 主語項の絶対性
4. 川端善明の主語論
5. 「二重主語構文」の批判
5.1 存在文
5.2 情意文
5.3 出来文
5.4 第2 種二重「主語」文
6. 結論 場があるから主語は要らない
第4章 日本語の論理再考
1. 主体の論理と場所の論理
2. 日本語の論理は形式論理であるか?
2.1 日本語特殊説について
2.2 「論理は比喩の形式である」か
2.3 「日本語の論理の基本は容器の論理である」か
2.4 「日本語の論理の基本は命題論理である」か
2.5 「英語の論理の基本は、述語の部分の論理である」か
3. 結論
第5章 認知言語学の「場所論」による基礎づけ
1. 認知言語学の哲学的基盤
1.1 身体性と想像力
1.2 認知的無意識と概念メタファー
1.3 存在論と認知科学
1.4 カテゴリーと論理
2. 認知言語学と場所論
2.1 図と地
2.2 比喩
2.3 参照点構造
2.4 主観性と視点配列
II 事例研究
第6章 場所論に基づく「ハ」と「ガ」の規定
1. 概念的「場」としてのハ
1.1 先行研究
1.2 ハのスキーマと諸用法
2. ガのスキーマ
2.1 先行研究
2.2 ガのスキーマと諸用法
3. 「〜ハ…ガ」構文
第7章 場所論に基づく日本語格助詞の体系的研究
1. はじめに
2. 先行研究の検討
2.1 「場所の論理」と格助詞 浅利(2008)
2.2 「起点・経路・着点」のイメージ・スキーマ 菅井(2005)
2.3 「動力連鎖」的事態を基本とすることの問題性 森山(2008)
2.4 プロトタイプからの拡張論の問題点
3. コア理論を使った説明
第8章 ニ格のスキーマとネットワーク
1. ニ格の用法
2. 先行研究の検討
2.1 「密着性」について 国広(1986)
2.2 対峙性 森山(2008)
2.3 位置づけ操作 フランス+小林(2005)
3. 存在の場所用法と「存在のスキーマ」
4. 時間点用法
5. 移動の着点用法
6. 授受の相手と出所
7. 受身におけるニ格
7.1 受身のニ格の認知過程
7.2 受身のニとカラ、ニヨッテの違い
8. 原因のニ格
9. ニ格のスキーマとネットワーク
第9章 ヲ格のスキーマとネットワーク
1. ヲ格の用法
2. 先行研究の検討
3. 経路用法
4. 起点用法
4.1 経路の移動の含意 4.2 起点内の領域での移動の含意
4.3 移動の経由点
5. 対象用法
5.1 さまざまな対象
5.2 対象のヲ格のスキーマ
5.3 状態変化をおこす他動詞構文の対象
5.4 制作動詞のヲ格
6. 時間用法と状況用法
7. ヲ格のスキーマとネットワーク
第10章 デ格のスキーマとネットワーク
1. デ格の用法
2. 先行研究の検討
2.1 森田(1989)
2.2 中右(1998)
2.3 菅井(1997)
2.4 森山(2008)
3. 場所用法
4. 時間用法
5. 原因用法 出来事が起きる場面としてのデ
6. 様態、材料用法 状態次元のデ
7. 道具・手段用法 モノ次元のデ
8. デ格のスキーマとネットワーク
9. 格助詞の体系とネットワーク(まとめ)
第11章 場と文の相関の類型再考
1. はじめに
2. 三尾の「場と文の相関の類型」
2.1 「話の場」の概念と「場と文の相関の原理」
2.2 「場と文の相関の類型」とその問題点
3. 問題点に関する検討、考察
4. 新たな類型の提案
5. 結論
第12章 日本語諸構文の場所論的再構築に向けて
1. はじめに 2. 存在構文から名詞述語文、形容詞述語文の範疇化
2.1 存在構文 中心的存在構文と主題化構文
2.2 名詞述語文
2.3 形容詞述語文
3. 動詞述語文の複合的ネットワーク
3.1 生成のスキーマ
3.1.1 デキル文(Y ニハX ガできる)
3.1.2 知覚動詞構文
3.1.3 ナル文(X ハY ニナル)
3.1.4 ラレル文の認知過程
3.2 移動のスキーマ
3.3 他動詞構文のスキーマ
4. 結論
第13章 日本語と英語、中国語、朝鮮語の事態認知の対照
1. 日本語と英語の事態認知 スルとナルの言語学再考
2. 場所においてコトがナル コトが出来する場としての自己
3. アル言語としての日本語
4. 『雪国』の冒頭の文と中国語、朝鮮語翻訳との対照
5. 中国語、朝鮮語はスル型かナル型か
6. 中国語の認知的特徴 出現、消失、存在
7. 朝鮮語の事態認知
第14 章 今後の課題と展望
1. 類型論的位置づけ 能格言語の問題
2. 言語習得と心の理論
参考文献
あとがき
索引
【著者紹介】
岡智之(おか ともゆき)
1962年大阪市出身。大阪外国語大学大学院言語社会専攻博士後期課程修了。博士(言語文化学)。日本語学校専任講師、韓国・湖南大学日本語科専任講師を経て、現在、東京学芸大学留学生センター教授。同大学院国語教育専攻日本語教育コース及び同教育学部日本語教育選修兼任。
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