ひつじ書房 日英語の可能表現の本質 本多啓著 ひつじ書房 日英語の可能表現の本質 本多啓著
2025年10月刊行予定

シリーズ認知と言語 2

日英語の可能表現の本質

アフォーダンスと原因帰属から見た英語中間構文と日本語無標識可能表現

本多啓著

定価4600円+税 A5判並製カバー装 370頁

ISBN978-4-89476-623-5

装丁者 村上真里奈

ひつじ書房

New Approaches to Language and Cognition 2
The Nature of Expressions of Enablement in English and Japanese: A View of the English Middle Construction and the Japanese Enablement Expression without Overt Marking in Terms of Affordance and Causal Attribution
Akira Honda

【内容】

本書は、従来主としてヴォイス現象として議論されてきた英語中間構文を可能表現の観点から見直し、あわせて対応する日本語可能表現について論じた、認知言語学の研究書である。理論的な枠組みとしては、生態心理学のアフォーダンスと社会心理学の原因帰属を採用している。本書の緻密にして壮大な議論は、英語中間構文と周辺構文についての見方を根本的に刷新することを促すものとなっている。

【目次】



「シリーズ 認知と言語」刊行のことば
まえがき

第 1 章 はじめに
1 本書が目指すもの
2 本書の構成
3 本書の約束事

第 2 章 能力可能・状況可能の区別と英語の助動詞can
1 はじめに
2 問題その 1:英語法助動詞 can の多義性
3 問題その 2:依頼用法等の起源
4 能力可能と状況可能と can
5 問題その 1 について:認識用法と状況可能
6 もうひとつの用法:言語行為用法
7 問題その 2 について:can の発話の力と状況可能
8 知覚理論的な基盤:環境と知覚・行為者の相補性
9 発話の力はどこから来るのか:コミュニケーションと共同注意と環境の意味の共有
10 本章のまとめ

第 3 章 可能表現と原因帰属
1 はじめに
2 可能表現への生態心理学からのアプローチ
2.1 日本語の方言研究における可能表現の分類
2.2 英文法研究および文法化研究における能力可能・状況可能の扱い 30
2.3 生態心理学の観点から見た可能表現
3 可能表現に対する認知意味論のアプローチと原因帰属
4 能力可能と状況可能の原理的な連続性
5 社会心理学の知見
5.1 CAN 概念と原因帰属(Heider(1958))
5.2 自発的原因帰属と原因帰属を引き起こす先行条件
5.3 可能表現と原因帰属の関係についての Heider らの見解のまとめ 46
5.4 具体的な言語事実の一端
5.5 これまでの可能表現研究と原因帰属
6 原因帰属と言語表現
6.1 原因帰属に明示的に言及した先行研究
6.2 英語の cause という語について
6.3 メキシコ・スペイン語における “energetic reflexives”
7 原因帰属と可能表現との対応
7.1 概要
7.2 人と環境との安定した関係と潜在可能・属性表現
7.3 内的帰属・外的帰属と能力可能・状況可能
7.4 否定的な価値と否定主導
8 「予想外」などの成立が当たり前でない事態の表現
8.1 英語の can
8.2 could と疑問文
8.3 英語と日本語の可能表現における「一回限りの可能」ないし「実現可能」
に対する制約
9 本章のまとめ

第 4 章 英語の中間構文の基本的な意味構造
1 はじめに
2 プロトタイプカテゴリーとしての英語中間構文:典型例と周辺事例
3 英語中間構文の起源と展開についてのひとつの仮説
4 ゼロ形の動作主の読み込みと原因帰属
5 英語中間構文発生の契機と、可能表現としての中間構文の意味構造
6 構文化の観点からの見直し
7 英語の中間構文の二面性:〈ヴォイス現象〉〈可能表現〉
8 能力可能などを表すように見える英語中間構文について 102
9 道具主語構文と(擬似)中間構文
10 英語中間構文と原因帰属
10.1 英語の中間構文の成立条件
10.2 英語中間構文に現れる副詞句
10.3 「一回限りの可能」を表す英語中間構文
10.4 「否定的」かつ「予想外」の事態
10.5 注意の向け方としての原因帰属と比較・対照表現などにおける英語中間構文の容認性
11 理論的な意味合い:非プロトタイプからプロトタイプへ
11.1 能格構文から典型的な中間構文へ
11.2 実現可能(一回限りの可能)から潜在可能へ?
12 本章のまとめ

第 5 章 英語中間構文と動詞の種類:プロトタイプカテゴリーとしての英語中間構文再考(1)
1 はじめに
2 英語の中間構文の発生(再掲)とそこからの可能表現としての広がりの見通し
3 無対非対格自動詞の無標識可能表現(中間構文)
3.1 移動・変化を表す自動詞表現
3.2 事象の出現・発生を表す自動詞表現
4 無対非能格自動詞の無標識可能表現(中間構文)
5 他動詞の場合
5.1 他動詞の場合(1):能動受動構文としての中間構文
5.2 他動詞の場合(2):純粋な無標識可能表現(中間構文)
6 ここまでのまとめ
7 能格自動詞・非対格自動詞 happen の意味をどう考えるか 157
7.1 (all)by itself と能格自動詞:通説とその経験的・論理的な問題点 157
7.2 本書の見方
8 (all)by itself をどう考えるか
8.1 データ
8.2 本書の立場:基本的な考え方
8.3 非対格自動詞の場合
8.4 能格自動詞の場合
8.5 中間構文の場合
8.6 by itself は隠在的な動作主の有無の判定基準になるか
9 理論的な意味合い:英語中間構文研究を「ヴォイス」の枠組みから解放する
10 本章のまとめ

第 6 章 英語中間構文と動作主:プロトタイプカテゴリーとしての英語中間構文再考(2)
1 はじめに
2 プロタイプカテゴリーとしての動作主(西村(1998))
3 多様な動作主に対応する多様な中間構文はあるか ?
3.1 典型的な動作主(意図した結果の発生)
3.2 過失・不作為
4 tough 構文
5 本章のまとめ
6 第 5 章と第 6 章からの帰結:結局「中間構文」とは何か?

第 7 章 日本語の無標識可能表現
1 はじめに
2 英語の中間構文に対応する日本語表現についての先行諸見解
2.1 畠山・本田・田中(2015):テアル構文
2.2 影山(1998), Kageyama(2002):自動詞文
2.3 松瀬・今泉(2001):影山説+可能文
3 英語の中間構文に対応する日本語表現についての本書の見解
3.1 日英対照についての本書の基本的な立場
3.2 対応の起点:直訳から始める
3.3 無対他動詞への拡張の有無
3.4 英語と日本語の対応についての、ここまでのまとめ
3.5 多様な動詞から構成される無標識可能表現:第 5 章からの見通し
3.6 多様な動作主:第 6 章からの見通し
4 無標識可能表現としての日本語自動詞表現
4.1 先行研究
4.2 構文的な環境
4.3 動詞の種類に対する制約(?)
5 デキルの可能標識化と happen と無標識可能表現
6 動作主について
7 本章のまとめ

第 8 章 特殊仕様を表す英語中間構文
1 はじめに
2 先行研究における扱い
3 特殊仕様の中間構文の例
4 発見されるアフォーダンス、設計されるアフォーダンス
5 仕様か、機能不全・逸脱使用などか:否定文の場合
6 その他の中間構文:規範などを表す中間構文
7 本章のまとめ

第 9 章 英語における他動詞由来の主体移動表現について
1 はじめに
2 「読む」行為の移動としての概念化
3 移動動詞としての read
4 中間構文としての用法
5 英語における中間構文と主体移動表現の重なり
6 他動詞由来の主体移動表現としての read 中間構文
7 本章のまとめ

第 10 章 おわりに
1 本書のまとめ
2 可能表現研究および中間構文研究における、本書の位置づけ
3 認知についての研究における、本書の立場の位置づけ
3.1 認知言語学・認知意味論とは何(でない)か
3.2 生態心理学との関連における本書の立場の位置づけ
3.3 言語現象の説明原理としての原因帰属の位置づけ
4 本書でやり残したこと

あとがき
参考文献



【著者紹介】

本多啓(ほんだ あきら)
〈略歴〉1965 年、埼玉県生まれ。東京大学文学部英語英米文学専修課程卒業、同大学人文科学研究科英語英文学専攻博士課程修了。博士(文学)。現在、神戸市外国語大学外国語学部英米学科教授。
〈著書、論文〉『アフォーダンスの認知意味論—生態心理学から見た文法現象』(東京大学出版会、2005、第39回市河賞受賞)、『知覚と行為の認知言語学—「私」は自分の外にある』(開拓社、2013)、および論文多数。


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