ひつじ書房 環境を語る言葉 仲本康一郎著 ひつじ書房 環境を語る言葉 仲本康一郎著
2025年10月刊行

シリーズ認知と言語 1

環境を語る言葉

生態心理学から見た語彙意味論

仲本康一郎著

定価4200円+税 A5判並製カバー装 272頁

ISBN978-4-89476-622-8

装丁者 村上真里奈

ひつじ書房

New Approaches to Language and Cognition 1
Naming the World: An Ecological Approach to Lexical Semantics
Koichiro Nakamoto

【内容】

本書は、認知言語学の経験基盤主義に生態心理学の実在論を融合させ、環境が人間に対して有意味な構造を持つという視点を加えることで、言語が単なる人間の主観的な認知プロセスの反映ではなく、環境との相互作用に基づく活動を通じて形成されることを主張する。これまでの静的な言語観を超え、環境における実際の活動や経験に根ざすダイナミックな言語観を提示し、言語研究の新たな地平を切り拓く革新的なアプローチを展開する。


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【目次】


「シリーズ 認知と言語」刊行のことば
はじめに 

序章 本書の立場と目標
1 文化人類学
1.1 ソシュール言語論
1.2 サピア・ウォーフの仮説
2 認知言語学
2.1 経験基盤主義
2.2 主体性の言語学
3 生態心理学
3.1 生態学的実在論
3.2 生態学的言語論

第1章 生態心理学の意味研究
1 生態学的実在論
1.1 アフォーダンス
1.2 エコロジカル・セルフ
1.3 アフォーダンスについての覚書
N.B.  環境世界(環世界)
2 知覚の能動性
2.1 探索活動
2.2 ダイナミック・タッチ
2.3 知覚と行為のカップリング
N.B.  活動システム
3 相互作用的属性
3.1 形容詞の意味記述
3.2 科学的言明と日常的言語
3.3 「重い」の意味記述

第2章 言語発達と文化学習
1 子どもの語彙獲得
1.1 認知的制約
1.1.1 事物名詞の語彙獲得
1.1.2 動作動詞の語彙獲得
1.2 生態心理学から見た語彙獲得
1.2.1 アフォーダンスの語彙獲得
1.2.2 社会語用論と語彙獲得
2 社会文化的アプローチ
2.1 コミュニケーションと発達
2.2 指し言語から語り言語へ
3 文化学習と意図知覚
3.1 文化と活動の心理学
3.1.1 道具に媒介された行為
3.1.2 意図の知覚
3.1.3 心の理論
3.2 二重表象と文化の継承
3.2.1 二重表象説
3.2.2 盲目的学習

第3章 事物の操作と相互作用
1 環境と活動の意味論
1.1 生態学的環境
1.1.1 生態学的存在
1.1.2 相互作用の意味論
1.1.3 ひものアフォーダンス
1.2 事物の操作と相互行為
1.2.1 事物の操作
1.2.2 相互行為システム
2 事物の操作と変形可能性
2.1 操作動詞の意味論
2.1.1 変形動詞の意味論
2.1.2 構造的特徴
2.1.3 破損と修復
2.2 生産と利用の意味論
2.2.1 生産動詞の意味論
2.2.2 利用動詞の意味論
3 力学形容詞
3.1 力学形容詞
3.1.1 攻撃力の図式―「鋭い」の意味論
3.1.2 抵抗力の図式―「かたい」の意味論
3.2 力学形容詞の意味拡張
3.2.1 「きつい」の基本的用法
3.2.2 「きつい」の拡張的用法
4 相互行為の意味論
4.1 姿勢の維持と崩壊
4.1.1 姿勢動詞の意味論
4.1.2 崩壊と維持の意味論
4.2 動物の行動―逃走か闘争か
4.2.1 追跡と逃走
4.2.2 闘争のメタファー
5 相互行為と活動調整
5.1 交渉のダイナミズム
5.1.1 交渉フレーム
5.1.2 交渉プロセス
5.2 心の葛藤と力のダイナミクス
5.2.1 心の理論
5.2.2 心の葛藤と言語表現
5.2.3 心の葛藤とダイナミズム

第4章 移動の空間と接近可能性
1 移動と空間の意味論
1.1 生態学的空間
1.1.1 生態学的空間
1.1.2 地形のアフォーダンス
1.1.3 「穴」の意味論
N.B.  方向づけのメタファー
1.2 移動動詞の意味論
1.2.1 移動システム
1.2.2 移動の進退
1.2.3 人生は旅である
2 静的視点論と動的視点論
2.1 静的視点論
2.1.1 環境参照枠
2.1.2 相対参照枠
2.1.3 固有参照枠
2.2 探索活動と認知地図
2.2.1 認知地図
2.2.2 参照点構造
2.3 動的視点論
2.3.1 探索活動と空間認知
2.3.2 相対的移動
2.3.3 虚構的移動
3 活動の空間とアフォーダンス
3.1 作業の空間と運動可能性
3.2 移動の空間と接近可能性
4 知覚と行為のアフォーダンス
4.1 前置詞と接近可能性
4.2 知覚形容詞の意味構造
4.3 知覚と認知―見立てのモデル
5 出現と設置の意味論
5.1 出現動詞の意味論
5.1.1 出現動詞
5.1.2 出現と消滅のあわい
5.2 設置動詞の意味論
5.2.1 設置動詞
5.2.2 装飾と隠蔽
5.2.3 他者の視線を意識する

第5章 資源と欲求の意味論
1 欲求の意味論
1.1 欲求とアフォーダンス
1.1.1 欲求表現
1.1.2 「いい」の意味論―限界合理性
1.1.3 水のアフォーダンス
1.2 欲望と感情
1.2.1 嫉妬心―欲望の現象学
1.2.2 羞恥心―他者のまなざし
2 知覚と存在の意味論
2.1 存在と数量
2.1.1 存在の知覚
2.1.2 存在量とスケール
2.1.3 数量のオノマトペ
2.2 探索活動と活動の資源
2.2.1 探索フレーム
2.2.2 資源フレーム
3 探索活動と遭遇の機会
3.1 探索活動
3.1.1 探索活動と言語表現
3.1.2 探索動詞の意味論
3.2 空間的分布
3.2.1 遭遇の機会
3.2.2 分散と集中
4 資源の活用と分配
4.1 資源と負債の意味論
4.1.1 資源の備蓄
4.1.2 負債の除去
N.B.  時間は資源である
4.2 資源の活用と喪失
4.2.1 資源の有効活用
4.2.2 機会の有効利用
5 贈与と分配
5.1 分かち合い
5.2 所有と権利
N.B.  数量の概念と活動調整

第6章 事象の構造とアスペクト
1 事象と時間の意味論
1.1 生態学的事象
1.1.1 生態学的事象
1.1.2 時計仕掛けの環境
1.2 事象のアフォーダンス
1.2.1 徴候と予期
1.2.2 痕跡と遡及
1.2.3 「はかなさ」の象徴
2 事象の構造と局面
2.1 事象の構造
2.2 局面の知覚
2.3 植物の成長
3 事象の推移と変化モデル
3.1 直線モデル
3.2 循環モデル
3.3 変動モデル
N.B.  火のメタファー
4 事象から時間へ
4.1 局面副詞
4.1.1 未然相と既然相
4.1.2 近局面と遠局面
4.2 局面形容詞
4.2.1 始局面と終局面
4.2.2 新旧の形容詞
4.2.3 発達と年齢
5 危険回避と活動調整
5.1 危険の知覚
5.1.1 「危ない」の意味構造
5.1.2 危険の察知と対処
5.1.3 日本語のリスク表現
5.2 危険回避と活動調整
5.2.1 リスクの類型
5.2.2 危険の回避

第7章 評価と活動の意味論
1 文化的価値
1.1 生態学的価値
1.2 審美的価値
1.2.1 美を感じる心
1.2.2 美から道徳へ
1.3 道徳的価値
1.3.1 徳を感じる心
1.3.2 ステレオタイプ
2 アドホックな価値
2.1 価値の発見
2.1.1 評価と選択
2.1.2 評価の構造
2.2 記述と評価
2.2.1 記述と評価
2.2.2 評価の局面
2.2.3 相関的程度副詞
N.B.  配慮と調整
3 感情と道徳
3.1 感情的評価
3.1.1 感情システム
3.1.2 個人的感情
3.1.3 社会的感情
3.2 道徳的評価
3.2.1 規律と訓練
3.2.2 称賛と非難
4 相互行為言語学
4.1 相互行為と活動調整
4.1.1 行為の選択―評価的態度
4.1.2 信念の調整―認識的態度
4.2 危険回避と目標達成
4.2.1 目標の達成
4.2.2 危険の回避
4.2.3 テクスト抜粋
5 仕事の意味論
5.1 仕事の構造
5.2 仕事の進捗
5.3 完成と中断

おわりに 認知から活動へ
あとがき
参考文献
索引


【著者紹介】

仲本康一郎(なかもと こういちろう)
〈略歴〉1968年、広島県生まれ。京都大学人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学。博士(人間・環境学)。情報通信研究機構(NICT)専攻研究員を経て、現在、山梨大学全学共通教育センター教授。
〈著書〉『概念化と意味の世界』(研究社、共著、2008)、『メタファーで読み解く英語のイディオム』(開拓社、共著2022)、『インタラクションと対話―多角的な視点からの研究方法を探る』(開拓社、共編、2024)ほか。


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