遊廓を生きる/遊廓を記憶する 遊廓研究・細見 加藤晴美著
2026年8月刊行

遊廓を生きる/遊廓を記憶する

遊廓研究・細見

加藤晴美著

A5判並製カバー装 定価2,800円+税 226頁

ISBN978-4-8234-1352-0

ブックデザイン 中垣デザイン事務所

ひつじ書房

Living the Yūkaku, Remembering the Yūkaku: A Research Guide to Licensed Quarters in Japan
KATO Harumi

【内容】

売春防止法施行から70年近くが経過し、遊廓に関連する遺構や史資料は消滅の危機に瀕している。性売買の場であった遊廓の「記憶」と「記録」を次世代に継承するためには今、何が必要だろうか。本書では、近年急速に発展する遊廓研究の論点を整理し、遊廓の成立と変容、遊女たちの暮らしを通史的に提示するとともに、遊廓調査の手順を示す。遊廓や遊女たちの歴史や実像に関心をもつ方々が、遊廓を「知る」ためのガイドブックである。

【目次】

はじめに
 遊廓の「記憶」をめぐって
 「記憶の場所」とヘリテージ化
 遊廓に投影されるロマン、揺らぐ遊廓の「語り」
 遊廓の「歴史を知る」ということに向かって

第1部 遊廓研究をはじめるまえに

序章 大衆買春社会と「買春ツアー」から

第1章 遊廓・遊女をみる視角―「売春社会」論と「遊廓社会」論、そしてこれから―
1 「売春社会」論とはなにか
2 「遊廓社会」論とはなにか
3 あらたな研究の潮流
①一次史料を用いた研究の進展
②遊廓で「生きること」を考える

第2章 近世における遊廓・遊所―非日常の世界―
1 性売買の閉ざされた空間/閉ざされない空間
2 遊所番付からみる遊廓・遊所
3 三都の遊廓―閉ざされた空間―
4 宿場町・湊町・門前町―閉ざされない空間―
①宿場町
②湊町
③門前町と湯治場

第3章 遊廓を支えるもの―資金と身売りのネットワーク―
1 遊廓を支える金融ネットワーク
2 遊女の移動ネットワークと斡旋システム
3 飯盛女と越後

第4章 近代移行期における遊廓の創出―「普及」する遊廓―
1 遊廓の再編と地域―居留地と開拓地―
①居留地付き遊廓
②開拓地遊廓
2 地域の「再興」と遊廓―城下町と宿場町―
3 「芸娼妓解放令」をめぐって

第5章 近代遊廓の誕生―性の管理・統制と空間―
1 遊廓分布の変化―非日常から日常へ―
2 遊廓はどこにあるのか
3 都市から排除される遊廓
4 近代遊廓と新吉原モデル

第6章 「大衆買春社会」の到来と遊廓―買春する男性たちと娼妓の労働―
1 大衆買春社会の到来
2 客の増加と娼妓の労働負担
3 安く、簡易な「遊興」を志向する人びと

第7章 拡大する私娼街と遊廓―新しい遊興とゆらぐ遊廓―
1 私娼街の発達―「十二階下」から玉ノ井・亀戸へ―
2 台の物と「わずらわしい」遊廓
3 「モダン化」する遊廓

[コラム1]畠野佳司 飛田遊廓「嘆きの壁」の言説

第8章 娼妓の日常生活世界―遊廓で「暮らす」こと、「生きる」こと―
1 遊廓で「食べる」ということ
①明治の吉原から
②新宿遊廓、和田芳子の日記から
2 烏山旭遊廓、チヱの「精算帳」
3 金光教と娼妓の祈願
①娼妓が病気をおそれるということ
②大阪飛田に残された「性病検査場」から

第9章 娼妓たちの闘い―より良い生存と生活を目指して―
1 遊廓の「ストライキ節」
2 共同炊事による「待遇改善」
3 遊廓で「生きる」

第2部 吉原遊廓とは何か

序章 ロマンの場所としての吉原

第1章 新吉原遊廓の形成―自然地理学・考古学からみる吉原とその「伝承」―
1 遊廓区域の建設
①新吉原への移転
②新吉原の地形
2 おはぐろどぶの形成とその意味

[コラム2]太田茜 『小悪魔ageha』にみる和装のバリエーションと夜の街における「花魁風着付け」

第2章 新吉原の基礎知識
1 江戸の周縁としての新吉原
2 新吉原の遊女と客―基本的な遊興システム―
3 「吉原細見」とは何か
4 デジタルアーカイブでみる「細見図」

第3章 「芳原細見図」からみた17世紀後半の新吉原
1 新吉原のプロトタイプ
2 遊女屋の分布
3 「高級な遊興」の景観

第4章 「吉原弘化四年図」からみた19世紀の吉原
1 新吉原の変化
2 遊女屋の分布
①揚屋町の変化
②長屋

[コラム3]加藤晴美 「花魁道中」という幻想

第3部 遊廓研究ことはじめ

序章 遊廓は「ディープ」なのか

第1章 アウトラインを描く
1 基礎文献を集める
2 基本データと統計データを集める

第2章 景観復原とさまざまな資料
1 地図を集める
2 さまざまな資料

第3章 現地調査の手順
1 景観を観察してみよう
2 銚子松岸遊廓のフィールドノートから

おわりに
 遊廓の「記憶」を紡ぐ島から
 「ここは遊廓ではない」と語ること
 郷土史が描く遊廓の「記憶」とヘリテージ化

あとがき
参考文献
索引






【著者紹介】

加藤晴美(かとう はるみ)
東京家政学院大学現代生活学部 准教授。
筑波大学大学院人文社会科学研究科単位取得退学、博士(文学)。専門は歴史地理学。
『遊廓と地域社会―貸座敷・娼妓・遊客の視点から―』清文堂出版、2021年。
中西僚太郎ほか編『歴史地理学―近現代の課題とその探究―』山川出版社、2026年(共著)。
小口千明・清水克志編『生活文化の地理学』古今書院、2019年(共著)。

コラム
太田茜(おおた あかね)
東京家政学院大学現代生活学部 助教。
日本女子大学大学院人間生活学研究科修了、博士(学術)。専門は服飾史。
国際服飾学会監修『世界の愛らしい子ども民族衣装』エクスナレッジ、2016年(共著)。

畠野佳司(はたの けいじ)
郷土史家(東海地方を中心とした郷土史、遊廓史を研究)。
畠野佳司・野崎晃佑『東海遊廓史要』各号、カストリ出版、2024~2025年。



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