ひつじ書房 清末科学小説の想像力 段書暁著 ひつじ書房 清末科学小説の想像力
2026年2月刊行

清末科学小説の想像力

伝統と近代の狭間にある文学

段書暁著

A5判上製カバー装 定価9000円+税 420頁

ISBN978-4-8234-1323-0

装丁 三好誠(ジャンボスペシャル)

ひつじ書房

The Late Qing Scientific Imaginary: Literature between Tradition and Modernity
Duan Shuxiao

【内容】

太陽系を駆けめぐる霊魂、八卦をかたどった翼を持つ宇宙船……西洋近代の知に接し「三千年未曾有の大変局」に直面した清朝末期の中国人の想像力は、新しい世界を多層的なパノラマとして文学に描き出した。本書は「天」「夢」「鏡」などのキーワードを軸に、清末科学小説における文学と科学、伝統と近代の交錯を分析し、荒唐無稽にも見える物語に潜む思想的課題を掘り起こす。「中国はいかにして近代へと踏み出したか」という重大な問いに迫る。〈日本学術振興会助成刊行物〉

【目次】

凡例

序章 新しい想像力の誕生―科学・小説・科学小説
一 問題意識
二 研究対象―「科学小説」の範囲
1 「科学小説」とは何か
2 「科学小説」という角書き
3 「科学小説」と「SF小説」
三 「科学小説」の誕生その一―「科学」の文学への参入
1 「科学」の誕生―新しい想像力を孕む知識環境
2 清末中国における「科学」の受容
3 マスメディアの中の「科学」―『新民叢報』を例に
4 「小説」と「科学」―「劄記小説」に分類された科学記事
四 「科学小説」の誕生その二―「小説」の革新
1 「新小説」―「新」と「旧」の共存と衝突
2 海外小説の翻訳―ジュール・ヴェルヌを例に
五 先行研究
1 基礎的な研究
2 体系的な研究
3 多様な視点からの研究
4 関連作家の研究
5 未解決の問題―清末科学小説の想像力の発生メカニズム
六 研究方法
七 本書の構成


第一部 時空をめぐる想像力

第一章 「天」―異世界からフロンティアへ
はじめに
一 「天」をめぐる問題
二 清末科学小説に描かれた天上世界
1 『月球殖民地小説』における月世界
2 『新野叟曝言』における月と木星
三 天の崩壊―不連続から連続へ
1 異世界としての天、連続体としての宇宙
2 宇宙観の転換―合理化された奇想
四 フロンティアの発見―植民地主義との接続
1 フロンティアとしての天
2 強と弱の二項対立
3 二項対立の再生産
4 「関係性」に関する想像
おわりに

第二章 「夢」―「見る」夢から「持つ」夢へ
はじめに
一 「夢」をめぐる問題―新しいパターンの出現
二 海外ユートピア小説の影響
三 前近代夢物語の三つのパターン
四 予言から予測へ―予知夢と未来夢
1 前近代の予知夢―並行する二つの時間
2 清末科学小説の未来夢―一直線に流れる時間
3 予言から予測へ
五 悟りから目覚めへ―幻と希望
1 叶わぬ夢と叶えたい夢
2 希望としての未来
3 悟りから目覚めへ
六 異境から未来へ―断絶と連続
1 架け橋としての「夢」
2 異境から未来へ
七 「夢」の意味の変化
おわりに


第二部 事物をめぐる想像力

第三章 「鏡」―ミラーからレンズへ
はじめに
一 「鏡」をめぐる問題―二つの「鏡」
二 清末科学小説における「鏡」
三 「鏡」におけるイメージの融合
1 「ミラー」と「レンズ」―混乱の由来
2 古典の「鏡」からの継承
四 隠喩としての「鏡」―構築された連続性
五 「鏡」における認識論の転換
1 「風月宝鑑」と「験骨鏡」
2 表裏から透視へ:「鏡」における構造的な変化
3 自省から啓蒙へ:「骸骨」にみる被観察者の変化
4 「鏡」の由来にみる神通力の変化
おわりに

第四章 「兵器」―法宝からハイテクへ
はじめに
一 「兵器」をめぐる問題
二 新しい兵器の姿
三 新しい兵器と科学的な情報
四 新しい兵器と神魔的な伝統
五 科学と神魔の関係
六 法宝からハイテク兵器へ
1 神の法宝と人間のハイテク兵器
2 「古」の法宝と「新」のハイテク兵器
3 唯一の法宝と複製可能なハイテク兵器
4 相生相克の法宝と進化し続けるハイテク兵器
5 壊せない法宝と壊れるハイテク兵器
6 法宝、ハイテク兵器と戦闘メカニズム
七 技術観の構造変化
1 媒介としての法宝と中国前近代の技術観
2 二重の断絶―清末科学小説のハイテク兵器の技術観
八 清末科学小説と未来戦争小説
1 未来戦争小説の流行―欧米から日本へ
2 中国への流入
3 清末中国の技術に関する想像力の特殊性
おわりに


第三部 人間をめぐる想像力

第五章 「英雄」―生身の人間から理念の化身へ
はじめに
一 「英雄」をめぐる問題
二 清末科学小説の英雄像
三 『電世界』「電学大王」と前近代の英雄
1 前近代の英雄の姿―文・武と官・野
2 超級英雄の登場
四 「力」としての科学
1 英雄となった科学者
2 電気の力
3 「進歩」の人格化としての英雄
4 「進歩」に対する疑念
五 「価値」としての国家
1 「国家」の人格化としての英雄
2 「国家」に対する疑念
3 「大同国」の構造―「含万公園」を例に
4 「天下大同」の限界
六 新しい英雄像と新しい歴史観
おわりに

第六章 「野人」―異界の怪物から未開の野蛮人へ
はじめに
一 清末科学小説に描かれた野人像
二 前近代の野人像
三 清末の「野人」と前近代の「野人」
1 差異の背後にある変化
2 同質化された空間―異界の島から未開の島へ
3 分断された時間―異界の怪物から遅れた人間へ
4 変化が意味するもの
四 「野蛮」の表象
1 専制政体と奴隷根性
2 背景としての文明論
3 野蛮の印としての専制政体
4 野蛮の印としての奴隷根性
五 中国人の投影としての「野人」
六 文明論の両面性
1 野人との戦いが意味するもの
2 文明の相対性と一時性
おわりに


終章

あとがき
主要参考文献
索引




【著者紹介】

段 書暁
略歴
1988年生まれ。中国河南省出身。華東師範大学中文系卒業。復旦大学新聞学院広告学修士課程修了、同研究科コミュニケーション学博士課程修了。早稲田大学文学研究科中国語中国文学コース博士後期課程修了。中国と日本でそれぞれ博士(文学)学位を取得。現在、立教大学外国語教育研究センター教育講師。

主な論文
「野蛮と文明の狭間で―清末科学小説における「野人」の表象」(『野草』112号、2024年)、「「鏡」の名のもとに―清末科学小説から見る近代中国の想像力」(『野草』106・107合併号、2021年)、「異世界からフロンティアへ―清末科学小説における天上世界」(『現代中国』第94号、2020年)ほか。


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