村上春樹 世界文学とアダプテーション 山根由美恵著
2026年9月刊行

ひつじ研究叢書(文学編) 20

村上春樹 世界文学とアダプテーション

山根由美恵著

A5判上製カバー装 定価7,400円+税 418頁

ISBN978-4-8234-1315-5

ブックデザイン 坂野公一(welle design)

ひつじ書房

Haruki Murakami: the whereabouts of “story” —Subaltern, Exile, Trauma—
Yamane Yumie

【内容】

村上春樹文学を「世界文学」として捉え、その翻訳・翻案がいかにグローバルな読者と結びついているかを探る一冊。本書は、『螢・納屋を焼く・その他の短編』を中心に、村上文学の異文化間の影響や、映画・舞台・漫画などのアダプテーションの創造性を分析。世界各国での受容と再解釈のプロセスを明らかにし、村上春樹の作品が持つ越境性を浮き彫りにする。翻訳研究や文学研究の新たな視点を提供する必読の書。

【目次】

序 章 「世界文学」とアダプテーション

第一部 「世界文学」の試み

第一章 『螢・納屋を焼く・その他の短編』の世界

第一節 村上春樹の対漱石意識―「螢」にみる三角関係の構図
はじめに/1 「螢」に見る三角関係の構図―「新しい認識システム」としての重層構造/2 村上春樹の物語観・文学観/おわりに―〈日本回帰〉する村上 

第二節 二つの「納屋を焼く」―同時存在の世界から「物語」へ
はじめに/1 二つの解釈/2 同時存在の世界/3 改稿という視点から/おわりに―改稿の意味 

第三節 ボルヘスの影―「踊る小人」
はじめに/1 村上春樹とラテンアメリカ文学との繋がり/2 ボルヘスの影/3 二重の世界の行方/おわりに

第四節 滅びに向かうものたちと一九八〇年代―「めくらやなぎと眠る女」1
はじめに/1 病んだ「耳」―閉じられた世界/2 「めくらやなぎと眠る女」―「体内の蛇」との関係から/3 滅びに向かうものたち/おわりに―「滅び」から「救い」へ 

第五節 リチャード・ブローティガンとスティーヴン・キング―「めくらやなぎと眠る女」2
はじめに/1 村上春樹とブローティガンとの関係/2 村上春樹文学とブローティガンの関係/3 「めくらやなぎと眠る女」とブローティガン/4 「めくらやなぎと眠る女」と「蠅」/スティーヴン・キング/おわりに 

第六節 「幻想」(ためらい)を生み出す現実―『BRUTUS』から見る「三つのドイツ幻想」
はじめに/1 「幻想」の定義および先行研究について/2 第一話:冬の博物館としてのポルノグラフィー/3 第二話:ヘルマン・ゲーリング要塞1983/4 第三話 ヘルWの空中庭園/おわりに 「幻想」を創り上げる方法 

第二部 アダプテーションの世界
1 問題の所在/2 村上翻案の見取り図/おわりに 

第一章 初期短編・長編とアダプテーション

第一節 「鼠」/小指の女/新宿・渋谷―映画「風の歌を聴け」
はじめに/1 大森の分身としての「鼠」/2 父殺し―「1973年のピンボール」と神戸まつり/2 小指の女/三番目の女/3 新宿と渋谷/おわりに 

第二節 重なり合うドラマ/響き合う「森」―野村惠一「森の向う側」(日本映画:原作「土の中の彼女の小さな犬」)
はじめに/1 映画の構成/2 Jと彼女の物語/3 Jとガールフレンド(女)の物語/4 心の傷を抱えた宿泊客たち―境界領域の人々/5 Jと友人の物語―「森」の意味/おわりに 

第三節 「神隠し」と対大江意識―「図書館奇譚」1
はじめに/1 「神隠し」譚としての「図書館奇譚」/2 対大江意識としての「図書館奇譚」/3 「自立の物語」の再検討―母との関係/おわりに 

第四節 オスマン帝国/図書館/ボルヘス―「図書館奇譚」2
はじめに/1 オスマン・トルコ―歴史との関係/2 図書館という「場」/おわりに 

第五節 イラストからみる「翻案」のダイバーシティ―村上春樹「ふしぎな図書館」(十七カ国版)の比較を通して
はじめに/1 日本版(佐々木マキ)の特徴―明るさと忠実性/2 ドイツ版(Kat Menschik)の特徴―シュール・ダークファンタジー/3 アメリカ版(Chip Kidd)の特徴―ポップ・オリエンタリズム/4 イギリス版(Suzanne Dean)の特徴―自国への近接化/図書館・博物館的世界/5 イタリア版(Lorenzo Ceccotti)の特徴―三色(白・黒・赤)の世界・ファンタジー性の強調/6 デンマーク版(Kamila Slocinska)の特徴―児童向けの闇表象/おわりに 

第二章 『螢・納屋を焼く・その他の短編』とアダプテーション

第一節 〈削除〉という戦略―森泉岳土「螢」(漫画)
はじめに/1 森泉版「螢」の特徴/2 回想の物語・語らない「僕」・螢の「光」/おわりに 

第二節 原作を超えて「世界文学」へ―イ・チャンドン「バーニング」(韓国映画:原作「納屋を焼く」)
はじめに/1 ドラマ版と劇場版の構成/2 フォークナー“Barn Burning”の影響―格差・暴力・怒り/3 ヘミの人物像―グレートハンガー/パジュ・北朝鮮/4 二つの「納屋を焼く」―『개똥벌레』版と『반딧불이』版/おわりに―解釈の行方 

第三節 フォークナー/村上春樹/イ・チャンドン―「バーニング」2
はじめに/1 村上春樹とフォークナー/2 父の存在/不在/3 火と怒り/おわりに 

第四節 ジェンダー変更というアダプテーションの可能性―Dansa med dvärgar(「小人と踊る」スウェーデン映画)
はじめに/1 「妻」としてのWay of Life/2 「妻」からダンサーへ―「個」としてのWay of Life/3 スウェーデンの地形(森と湖)・民話との関わり/おわりに 

第五節 ウクライナ映画「音の日記」論(原作:村上春樹「めくらやなぎと、眠る女」)―「コミットメント」と「幻想」要素の効果
はじめに―「音の日記」について/1 僕といとこの関係―「コミットメント」の物語/2 村上文学の世界観の付加―〈夢〉と「幻想」要素の効果/おわりに 

おわりに
あとがき
初出一覧



【著者紹介】

山根由美恵(やまね ゆみえ)
〈略歴〉島根県出身。広島大学大学院文学研究科博士課程後期修了。博士(文学)。広島大学、広島国際大学、広島女学院大学等の非常勤講師を経て、二〇二一年一〇月より、山口大学教育学部講師。
〈著書〉『村上春樹 〈物語〉の認識システム』(若草書房・二〇〇七)、〈共著〉『村上春樹スタディーズ2000―2000』(若草書房・二〇〇五)、『村上春樹におけるメディウム 20世紀篇』(淡江大學出版中心・二〇一五)、『村上春樹における秩序』(淡江大學出版中心・二〇一五)等。



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