ひつじ書房 「打ちことば」の研究 落合哉人著 ひつじ書房 「打ちことば」の研究 落合哉人著
2025年7月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第216巻

「打ちことば」の研究

モバイルメディアコミュニケーションから再考する日本語

落合哉人著

定価7800円+税 A5判上製 360頁

ISBN978-4-8234-1303-2

白井敬尚形成事務所(ブックデザイン)

ひつじ書房

A Study of “Uchi-kotoba”: Rethinking Japanese through Mobile Media Communication
OCHIAI Kanato

【内容】

近年、日本語研究では、インターネットを介して伝えられることばを話しことばでも書きことばでもない「打ちことば」と呼ぶ動きがある。しかし、いまだ体系的な研究は乏しく、特性の違う複数のメディアをどのように比較できるかという点からして内実は曖昧な部分が多い。本書は「打ちことば」の典型である2000年代の携帯メールと2010年代のLINEの比較を端緒として、言語使用の本格的な実態把握を行う初の試みである。

【目次】


第1章 本書の社会的背景と学術的背景
1. はじめに
2. 日本国内における通信技術の普及過程:携帯メールとLINEを中心に
2.1 I.携帯メール普及以前(〜1999年)
2.2 II.携帯メール普及期(1999年〜2012年)
2.3 III.LINE普及期(2012年〜)
3. 「打ちことば」とCMDA
3.1 「打ちことば」概念の出現
3.2 CMDAの周辺における批判と本書の研究の位置付け
4. 本章のまとめ

第2章 先行研究概観
1. はじめに
2. 言語使用に関する先行研究
2.1 携帯メールとその周辺に関する記述
2.2 LINEに関する記述
2.3 日本国外のモードに関する記述
2.3.1 SMSに関する記述
2.3.2 IRCに関する記述
2.3.3 IMに関する記述
3. メディア・モードの特性に関する先行研究
4. 本章のまとめ

第3章 対象とするデータ
1. はじめに
2. メディア・モードの特性
3. データの収集方法と取り扱い
3.1 対象とするデータとその収集方法
3.2 音声会話におけるデータの取り扱いとターンの認定
4. 本章のまとめ

第4章 「打ちことば」の基礎的観察と言語量仮説
1. はじめに
2. 質的観察に基づく分析単位の規定
2.1 表現上の特徴の確認と「発話の分割」の観察
2.2 分析単位の規定
3. 量的観察に基づく言語使用とメディア・モードの特性の関係の分析
3.1 調査の内容
3.2 調査の結果と分析
3.3 考察とタイムスタンプに基づく検証
4. 言語量仮説
5. 本章のまとめ

第5章 文・節から独立して現れる要素の観察
1. はじめに
2. 接続詞・感動詞の出現傾向に関する既存の報告
2.1 話しことば・書きことばにおける接続詞の出現傾向に関する報告
2.2 話しことばにおける感動詞の出現傾向に関する報告
3. 調査の対象と観点
4. 接続詞・感動詞の全体的な出現傾向と分析
4.1 接続詞の出現傾向
4.1.1 全体的な出現傾向
4.1.2 位置ごとの出現傾向
4.1.3 書きことばとの比較
4.2感動詞の出現傾向
4.2.1 全体的な出現傾向
4.2.2 位置ごとの出現傾向
4.3 状況的側面の影響
5. 個別の語の使用実態の分析
5.1 「打ちことば」において顕著に出現が少ない要素の分析
5.1.1 「で」
5.1.2 「だから」
5.2 「打ちことば」において顕著に出現が多い要素の分析
5.2.1 「というか」
5.2.2 「あと」
5.3 「打ちことば」・話しことばの内部で特異な出現傾向が見られる要素の分析
6. 本章のまとめ

第6章 文・節の末尾に現れる要素の観察
1. はじめに
2. 終助詞の出現傾向に関する既存の報告
3. 調査の対象と観点
4. 接続助詞・終助詞の全体的な出現傾向と分析
4.1 接続助詞の出現傾向
4.1.1 全体的な出現傾向
4.1.2 位置ごとの出現傾向
4.1.3 書きことばとの比較
4.2 終助詞の出現傾向
4.2.1 全体的な出現傾向
4.2.2 主節または引用節末尾の活用語終止形に後接するものの出現傾向
4.3状況的側面の影響
5. 個別の語の使用実態の分析
5.1 「打ちことば」において顕著に出現が少ない要素の分析
5.1.1 「けど」
5.1.2 「よね」
5.2 「打ちことば」において顕著に出現が多い要素の分析
5.3 「打ちことば」の内部で特異な出現傾向が見られる要素の分析
6. 本章のまとめ

第7章 文・節の内部に現れる要素の観察
1. はじめに
2. 指示詞の出現傾向に関する既存の報告
3. 調査の対象と観点
3.1 調査対象の選定理由
3.2 用法分類の基準
4. 指示代名詞「これ」「それ」「あれ」の出現傾向と分析
4.1 「これ」「それ」「あれ」の出現傾向
4.1.1 全体的な出現傾向
4.1.2 書きことばとの比較
4.1.3 用法ごとの出現傾向
4.2 状況的側面の影響
5. 個別の語の使用実態の分析
5.1 「打ちことば」において顕著に出現が少ない要素の分析
5.2 「打ちことば」において顕著に出現が多い要素の分析
5.3 「打ちことば」・話しことばの内部で特異な出現傾向が見られる要素の分析
5.3.1 「ソ系文脈指示」の「それ」
5.3.2 「状況指示」の「これ」
6. 本章のまとめ

第8章 「打ちことば」の基盤的特徴に対する考察
1. はじめに
2. 言語量仮説と「打ちことば」の位置付け
2.1 言語量仮説の検証
2.2 「打ちことば」の位置付けと多様性
3. 話しことば・書きことばとの類似性から捉えた「打ちことば」
4. 個別の表現・表記に関する特徴との対応
5. 本書の検討から捉えられる話しことばの性質
6. 本章のまとめ

第9章 おわりに
1. はじめに
2. 各章の概要
3. 本書の学術的貢献
4. 今後の展望


参考文献
あとがき
索引

【著者紹介】


落合哉人(おちあい かなと)
1993年生まれ。東京都出身。筑波大学大学院人文社会科学研究科一貫制博士課程文芸・言語専攻修了。博士(言語学)。専門は日本語学、談話分析。東京福祉大学助教を経て、現在、国立国語研究所助教。
主な業績
「指点字会話における『揺さぶり』―盲ろう者はいかにして自らの感情的態度を示すか―」『社会言語科学』24巻1号(2021年)、「現代日本語の発話末に現れる感動詞『え』」『日本語文法』23巻1号(2023年)、「『話すように打つ』ことばは簡潔なことばか?―携帯メール・LINE・対面会話・ネット通話における1発話の長さを比較して―」『日本語習熟論研究』1号(2023年)など。


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