ひつじ書房 言語行動論考 杉戸清樹著 ひつじ書房 言語行動論考 杉戸清樹著
2025年7月刊行

言語行動論考

杉戸清樹著

定価10,000円+税 A5判上製カバー装 594頁

ISBN978-4-8234-1275-2

装丁者 稲田のぞみ

Studies on Language Behaviour
Sugito Seiju

ひつじ書房



【内容】
言語行動を考察対象に据えた著者の既出論文約40件を集録。各論文の当初の内容を生かしつつ、部立て構成により一書として言語行動論を企図する。言語生活研究や社会言語学を考察の足場に位置付けて、言語行動の多様性を視野に入れる観点を具体的に示したのち、あいさつ・待遇表現・決まり文句・省略などの言語事象を改めて言語行動として考察することの意義や可能性について、手がかりとなるメタ言語行動表現を焦点にして論じ及ぶ。

【目次】
まえがき


第Ⅰ部 言語行動を見つめる足場〈その1〉 社会言語学という足場

第1章 社会言語学――入り口案内
はじめに
1 社会言語学の関心事
2 社会言語学の前提
3 社会言語学の分野――その1 「社会」のとらえ方
4 社会言語学の分野――その2 ことばへの観点
5 まとめ――今後の方向

第2章 社会言語学の視野
1 はじめに――社会言語学と雑誌『言語生活』
2 社会言語学研究の広場としての『言語生活』
3 ことばへの視点・関心
4 研究領域の広がり・重なり・ズレ
5 社会言語学の視点・態度
6 まとめとして――『言語生活』の視野の再検討を

第3章 日本の社会言語学におけるコミュニケーション研究
1 日本における社会言語学的研究
1.1 その流れ概観
1.2 日本の社会言語学における主たる関心事――コミュニケーション行動への視点の希薄性
1.3 日本の社会言語学的知見の特徴
1.4 日本の社会言語学の研究領域
2 日本の社会言語学について概観するための文献情報

第4章 社会を立ち現われさせることば――一つの言語観
1 対立するキャッチ・コピー
2 「ことば」か「社会」か
3 「ことば」も「社会」も
4 日本の社会言語学における「ことば」と「社会」
5 「ことば」と「社会」の相互関係
6 ことばの作り出す社会/社会を立ち現われさせることば


第Ⅱ部  言語行動を見つめる足場〈その2〉 言語生活研究という足場

第1章 言語生活――入り口案内
1 言語生活という視点
1.1 「言語生活」とは
1.2 言語への二つの視点
1.3 言語生活研究の流れ
2 日常の言語生活の概観
3 言語生活の諸側面
3.1 マス・コミュニケーションとパーソナル・コミュニケーション
3.2 言語生活の場所と言語行動
3.3 言語生活の定型性
3.4 言語行動と非言語行動
4 言語生活の広がり
4.1 外国人(日本語非母語話者)との接触場面の日常化
4.2 新しい形態の言語生活の増大
4.3 言語生活史研究の必要

第2章 言語生活研究の観点
1 はじめに
2 言語生活研究の観点
2.1 言語形式の観点
2.2 言語形式(Di どのように)以外の観点
2.2.1 Dg(どんな人が)の観点
3 その他の観点
3.1 I(いつ)の観点
3.2 Da(どのような)の観点
3.3 Dd(どこで),Dn(どんな人に)の観点
4 まとめ

第3章 職場での敬語
1 はじめに
2 敬語にまつわる悲しいトラブルも
3 ここで扱う調査の概要
4 回答者の構成・属性
5 敬語意識
6 敬語習得の機会
7 敬語使用とその意識
7.1 「お」の使用
7.2 「わかった」の表現
7.3 「行く」の表現
7.4 使い分けの段階と境界線
8 まとめ

第4章 コラム 定点経年調査(1)
鶴岡共通語化調査と岡崎敬語調査

第5章 コラム 定点経年調査(2)
動く社会の中で動く言葉を追いかける


第Ⅲ部 言語行動というコトの広がり

第1章 言語行動――入り口案内
1 言語行動のとらえ方
2 言語行動の種類や姿そのものへの視点
3 言語行動の構成要素への視点
3.1 場面と言語変種
3.2 人的要素と言語変種
3.3 その他の構成要素
4 具体的な言語行動の内的構造・動的構造への視点

第2章 言語行動というコトの研究
1 いま,眼前にあるいろいろ――日本の社会言語学の諸分野
1.1 属性論的言語変種運用論
1.2 言語生活研究
1.3 実体的社会内言語状況論
1.4 社会要素命名論
1.5 対人行動論的言語運用論
2 どんなことが多くわかってきていると考えるか?――知見の性格と制約
2.1 短い単位の言語形式(単音・音節・形態素・語)についての情報
2.2 〈実態〉と呼ばれる情報
2.3 実際に行われた言語生活・言語行動を〈あとたどり〉した情報
2.4 確率論的な数値のすがたでの情報
3 そうした情報を前にして――反省の発端
4 そこで――筆者なりの目標と研究例
4.1 待遇表現を言語行動としてとらえるための視点の考察
4.2 買い物場面での買い手と売り手の言語行動のやりとり
4.3 言語行動の生成に役立つような種類の情報とは
5 まとめとして

第3章 言語意識
1 言語意識の諸側面
2 評価・言語感覚としての意識
3 現状認識・志向としての意識
4 信念としての意識と規範への意識
5 複合的な言語意識――アイデンティティー

第4章 言語行動への視点
1 出来事としての「言語行動」
2 言語行動論の対象
3 言語行動の種類や姿への視点
4 言語行動の構成要素への視点
5 言語行動をとらえる際のさまざまな観点


第Ⅳ部 言語行動へのさまざまな視線

第1章 広がりへの視線――表現行動としての言語行動
1 表現行動の広がり
1.1 「表現行動」を成り立たせるもの
1.2 「表現行動」の多様性――構成要素から考える
2 言語行動と非言語行動
2.1 情報を伝えるものごと
2.2 話し言葉と書き言葉
2.3 副言語と非言語
3 敬語のこころとかたち
3.1 敬語のこころ
3.2 敬語のかたち
3.3 表現行動の構成要素への気配り
4 まとめ

第2章 地域性への視線(1)――地域社会と言語行動
1 言語についての意識と言語行動についての意識
2 言語行動の地域差についての意識
3 地域社会の都市化の程度と言語行動
4 〈言語行動〉の〈地域社会差〉を求めて

第3章 地域性への視線(2)――行動の中の方言
1 はじめに――谷崎潤一郎のみた関西人
2 言語行動研究の視点
3 言語行動についての情報源
4 言語行動についての意識調査
5 「行動」の中の方言――まとめにかえて

第4章 対照する視線(1)――言語行動の対照
1 言語行動という視点
2 言語行動への視点
3 言語表現の幅
4 相手の認知
5 発話内容
6 言語行動の有無・機会
7 まとめ

第5章 対照する視線(2)――ドイツ人と日本人の敬意行動
1 敬意表現への視点
2 言語行動様式の日・独対照研究から
3 言語形式による敬意表現
4 言語化するかどうかの敬意表現
5 何を言うかについての敬意表現
6 どんな調子で言うかについての敬意表現
7 まとめとして

第6章 日本語非母語話者への視線――もう一つの日本語教育を
1 一つの提案として
2 もう一つの日本語教育とは
3 たしかに間違った日本語だけれど
4 なぜ必要か
5 何が必要か
6 「おぞましき日本語」への積極策として


第Ⅴ部 言語行動の姿をとらえる

第1章 「あいさつ」への入り口――「無意味性」と「定型性」
1 あいさつへのとまどいから
2 あいさつの「無意味性」
3 あいさつの機能――人と人を結ぶ働き
4 あいさつの話題・内容の定型性

第2章 あいさつの言葉と身ぶり
1 はじめに
2 あいさつの定型性
3 あいさつをする場面
4 あいさつの言葉
5 あいさつの身振り
6 おわりに

第3章 「お礼」への入り口――お礼を言うか言わないか
1 「ありがとう」の意味・機能・定型性――観点の復習
2 お礼を言うか言わないか (1)韓国との違いの事例報告から
3 お礼を言うか言わないか (2)日独の対照研究のデータから

第4章 お礼に何を申しましょう?――お礼の言語行動についての定型表現
1 はじめに
2 視点としてのメタ言語行動表現
3 何について言及しているのか?
4 何を気にしてお礼をしているのか?
5 まとめにかえて――お礼について言及することがお礼を構成する

第5章 「同じ」店,「同じ」味,「同じ」ことば――郊外レストランのきまり文句
1 「同じ」店
2 「同じ」ことば
3 一回分の録音
4 三回分の録音を比べて
5 「同じ」ことばの周辺
6 「同じ」ことばの背景
7 「同じ」ことばの運用

第6章 ことばのあいづちと身ぶりのあいづち
1 はじめに
2 扱う資料
3 言語形式としてのあいづちの特微
4 身ぶりとしてのあいづちの現れ
4.1 記録した頭部の動きの頻度
4.2 身ぶりとしてのあいづちの頻度
4.3 あいづち的な行動の比率
4.4 話題を示す語の初出する発話とあいづちの関係
5 まとめ

第7章 言語行動における省略
1 手がかりとしてのメタ言語行動表現
2 「本来行動」と「選択行動」
3 言語行動の諸側面における省略
4 まとめにかえて


第Ⅵ部 言語行動としての待遇表現・敬意表現

第1章 何が敬語か?
1 はじめに
2 「何が敬語か」という視点
3 言語行動という視点
4 メタ言語行動表現という視点

第2章 待遇表現の広がり――事典項目の記述として
定義
待遇表現という術語の範囲
待遇表現の範囲
付節:待遇表現選択の過程

第3章 気配りの言語行動
1 待遇表現の範囲
2 待遇表現のしくみ――周囲への気配りということ
3 待遇表現の現れるところ

第4章 待遇表現としての言語行動――「注釈」という視点
1 はじめに
2 言語行動の成立要素
3 「言語行動についての注釈」という言語行動
4 人への配慮の表現としての「注釈」
5 「注釈」と待遇表現形式の類比性
6 「注釈」は待遇表現の現れるところを示す
7 言語行動の成立要素にまつわる待遇表現
8 おわりに

第5章 敬意表現の広がり――「悪いけど」と「言っていいかなあ」を手がかりに
1 はじめに
2 国語審議会答申の記述について
3 考える手がかり――答申の中の実例「悪いけど」から
4 「悪いけど」から「言っていいかなあ」へ――手がかりの展開
5 「言っていいかなあ」の構造と広がり
6 提案する敬意表現の広がり――その枠組みと内容
7 まとめに代えて

第6章 配慮の言語行動をどうとらえるか
1 はじめに
2 言語行動についての配慮――その広がりをとらえる観点
2.1 配慮をとらえる枠組み
2.2 〈留意事項〉 何を気にするか?
2.3 〈価値・目標〉 どのような言語行動に仕上げようとするか?
2.4 〈判断基準〉 何をよりどころにして配慮するか?
2.5 図式化すると
3 まとめ――配慮の言語行動の「見取り図」
3.1 配慮の言語行動の中の「敬語」「待遇表現」「敬意表現」
3.2 本報告書で扱われた言語行動の位置

第7章 敬意行動の中の敬語を――敬語教育の課題
1 敬語調査から
2 言語形式としての敬語
3 言語行動としての敬意表現
4 学校教育での敬意表現の位置付け
5 高校生の意識に支えられて
6 メカニズムの共通性を通じて


第Ⅶ部 言語行動についての言語行動 「メタ言語行動表現」という手がかり

第1章 インタビュー 「なぜメタ言語行動表現を?」

第2章 連載コラム メタ言語行動表現への視線
1 「言っちゃ悪いけど」の言語学を
2 「いつ話したらよいのか」の言語学を
3 「こんな所でなんですが」の言語学を
4 「なぜ言うのか」の言語学を
5 「手書きですみません」の言語学を
6 「ぶしつけながら前置き無しで」の言語学を

第3章 言語行動についてのきまりことば
1 はじめに
2 待遇表現上の気配りを表現する言語表現
3 待遇表現的な配慮以外、、の気配りを明示する言語表現
4 表現・伝達の過程とその内容の調整に配慮したメタ表現
4.1 表現・伝達の内容への配慮に由来するもの
4.2 表現・伝達の行為過程についての配慮に由来するもの
5 言語生活上の規範に配慮したメタ表現
6 まとめにかえて

第4章 メタ言語行動の視野――言語行動の「構え」を探る視点
1 言語調査の現場で
2 メタ言語行動の広がり
3 メタ言語行動は言語行動の「構え」を明示する
4 メタ言語行動探しの課題領域

第5章 メタ言語行動表現のメカニズム
1 小論の目標
2 「メタ言語行動表現」とは
2.1 定義
2.2 「メタ言語行動表現」の多様性
2.3 「メタ言語行動表現」への注目――先行研究から
3 「メタ言語行動表現」の働きをめぐって――これまでの筆者の検討
3.1 言語行動研究の手がかりとしての有効性
3.2 言語行動の対人的側面をめぐって
3.3 言語行動の内容・伝達的側面をめぐって
3.4 メタ言語行動表現それ自体の対人配慮性
4 メタ言語行動表現のメカニズム
4.1 メタ言語行動表現生成のメカニズム
4.2 そもそも言語行動の生成メカニズムを
どのようなモデルでとらえるか?
4.3 〈留意事項〉のとりたて,及びその明示の有無
4.4 〈留意〉の対象領域
4.5 実現すべき〈価値・基準〉についての主体の〈顧慮〉
5 〈留意事項〉〈価値・基準〉〈顧慮〉などの観察可能性について
6 今後の課題

第6章 言語行動を説明する言語表現と丁寧さ
1 対象とする言語表現類型
2 問題の所在
3 考察対象とする言語資料と考察の手順
4 メタ言語行動表現の出現状況
5 メタ言語行動表現の有無による表現全体の丁寧さの違い
6 まとめにかえて


附章 言語行動への視座――四つの研究領域に身を置いて
1 言語使用の学
2 研究活動の広がりとしての関連業務
3 付記:研究を広げて関連業務に当たる際の意識
採録した論文について
採録した論文の初出情報一覧
あとがき
参考文献一覧
索引


【著者紹介】
杉戸清樹(すぎと せいじゅ)
昭和24(1949)年生。愛知県名古屋市出身。名古屋大学文学部卒。名古屋大学大学院文学研究科言語学専攻修士課程修了。1975年に国立国語研究所研究員となり、言語行動研究部長、日本語教育センター長を経て、2005年に国立国語研究所長。2009年9月に退任して現在は国立国語研究所名誉所員。この間に、東京大学・大阪大学・名古屋大学・筑波大学・東京都立大学・早稲田大学・津田塾大学・名古屋外国語大学・北京日本学研究中心等で非常勤講師を、また、文化審議会国語分科会会長、日本語教育学会会長、NHK放送用語委員等を務めた。
[主な編集著作物]
『社会言語学』(共著、1992年、おうふう)、『ケーススタディ 日本語の文章・談話』(共編著、1990年、おうふう)、『日本語表現』(共編著、2003年、明治書院)、『デイリーコンサイス漢字辞典』(共編、1995年、三省堂 )、『現代語』(高校国語科用検定教科書 共同編修委員、1994年、三省堂)




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