ひつじ書房 新漢語成立史の研究 張春陽著 新漢語成立史の研究 張春陽著
2023年12月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第201巻

新漢語成立史の研究

張春陽著

A5判上製函装 定価7600円+税

ISBN978-4-8234-1193-9

ブックデザイン:白井敬尚形成事務所

ひつじ書房

Studies on the Formation of Shin-kango(New Sino-Japanese Vocabulary)
ZHANG Chunyang




【内容】
近代における漢字文化圏の最も顕著な言語現象の1つとして、西洋文化を導入するための新漢語の成立があげられる。本書では、これまでの研究ではあまり触れられることのなかった具象概念を表す新漢語をとりあげ、成立過程を考察する。それにあたり、人的交流によって成り立った幕末·明治期の遣外使節団の西洋見聞録類、また、西洋から取り入れられた物の導入を記す公的記録資料の新漢語研究における資料的価値も明らかにする。


【目次】
緒言
凡例


I 序論

第1章 新漢語とは
1. はじめに
2. 新漢語の定義
2.1 先行研究における新漢語の定義
2.1.1 1980 年代前後における新漢語の定義
2.1.2 沈の研究における新漢語の定義
2.1.3 孫の研究における新漢語の定義
2.2 本書における新漢語の定義
3. 新漢語の時期
3.1 中国語における新漢語の時期
3.2 日本語における新漢語の時期
3.3 本書における新漢語の時期
4. 新漢語の分類
4.1 先行研究における新漢語の分類
4.2 本書における新漢語の分類
5. 「新漢語」か「和製漢語」か
6. まとめ

第2章 新漢語の研究史概観
1. はじめに
2. 訳語の訳語法・造語法についての研究
2.1 訳語法に関する研究
2.1.1 山田孝雄(1940)について
2.1.2 飛田良文(1992)について
2.2 新漢語の生産性について論じる研究
2.2.1 森岡健二(1969)について
2.2.2 鈴木英夫(1978)について
2.2.3 高野繁男(2004)について
3. 翻訳書における新漢語についての研究
3.1 佐藤喜代治(1971)について
3.2 松井利彦(1979)について
3.3 佐藤亨(1992)について
4. 日中における新漢語の影響関係についての研究
4.1 中国語から日本語へ与えた影響という視点の研究
4.1.1 松井利彦(1983)について
4.1.2 佐藤亨(1983)について
4.2 日本語から中国語への逆輸入の現象に関する研究
4.2.1 沈国威(1994)について
4.2.2 陳力衛(2001)について
5. 特定の分野についての研究
5.1 荒川清秀(1997)について
5.2 朱京偉(2003)について
5.3 孫建軍(2015)について
6. 個別語の語史(語誌)についての研究
7. まとめ
8. おわりに

第3章 新漢語研究における課題と本書の目的
1. 新漢語研究における課題
1.1 翻訳による文献資料に見られる訳語に注目する傾向が強い
1.2 調査資料の画一化
1.3 研究対象語の偏り
2. 本書の目的


II 具象概念を表す新漢語研究の資料

第4章 幕末・明治初期の遣外使節団員の手による西洋見聞録類
1. はじめに
2. 新漢語研究資料について
2.1 先行研究における資料に関する整理
2.1.1 飛田良文(1973)について
2.1.2 沈国威(1998)について
2.1.3 朱京偉(2003)について
2.2 これまでの新漢語研究において利用されている資料
2.2.1 ある特定の資料に限定する場合
2.2.2 ある特定の意味分野に限定する場合
2.2.3 個別語の語史研究の場合
2.3 本書における資料に関する整理
2.4 具象概念を表す新漢語研究の資料として想定できるもの
3. 新漢語研究における西洋見聞録類資料の使用状況
3.1 西洋見聞録類資料を直接の研究対象とする立場
3.2 西洋見聞録類資料を個別語の語史(語誌)研究の1資料として取扱う立場
4. 幕末・明治初期の遣外使節団員の手による西洋見聞録類資料の概要
4.1 幕末・明治初期の遣外使節団の概観
4.2 幕末の遣外使節団とその記録
4.2.1 万延元年遣米使節団とその構成員の手による記録
4.2.2 文久二年遣欧使節団とその構成員の手による記録
4.3 明治期の岩倉使節団とその記録『米欧回覧実記』
5. 遣外使節団員の手による西洋見聞録類資料に見られる新漢語
6. 具象概念を表す新漢語研究における遣外使節団員の手による西洋見聞録類資料の有用性
6.1 具象概念を表す新漢語の初期の使用例の確認ができる
6.2 具象概念を表す新漢語が定着するまでの様々な試みが確認できる
7. おわりに

第5章 西洋近代文明の導入に関わる公的記録類
1. はじめに
2. 新漢語研究における公的記録類資料の使用状況
3. 西洋近代文明の導入及び公的記録類資料の利用
3.1 幕府による西洋近代文明の導入
3.2 明治政府による西洋近代文明の導入
3.3 政府による公的記録類資料とその利用について
4. 西洋近代文明の受容に関わる公的記録類資料の概要
4.1 幕末の外交文書類
4.1.1 『通信全覧』について
4.1.2 『続通信全覧』について
4.1.3 『大日本古文書幕末外国関係文書』について
4.2 政令・法令記録類
4.2.1 『幕末御触書集成』について
4.2.2 『太政官日誌』について
4.2.3 『官報』について
4.3 データベース類
4.3.1 国立公文書館デジタルアーカイブについて
4.3.2 国立公文書館アジア歴史資料センターについて
5. 公的記録類資料に見られる具象概念を表す新漢語
6. 具象概念を表す新漢語研究における公的記録類資料の有用性
6.1 政府の主導によって導入された西洋の新文物(具象物)を表す新漢語の使用を確認できる
6.2 近代の言語資料から具象概念を表す新漢語の成立に関わるものを絞り込むことができる
7. おわりに


III 西洋文明利器の受容と具象概念を表す新漢語の成立

第6章 新漢語「蒸気機関」の成立
1. はじめに
2. 先行研究
3. 「蒸気」と「機関」
3.1 「蒸気」について
3.2 「機関」について
4. 近代中国語におけるsteam engine を表す用語
5. 近代日本語におけるsteam engine を表す新漢語「蒸気機関」の成立
5.1 薩摩藩・佐賀藩関係文書におけるsteam engine を表す用語
5.2 長崎海軍伝習所関係文書における「蒸気機関」という語の発生
5.3 万延元年遣米使節団における「蒸気機関」
5.4 文久二年遣欧使節団における「蒸気機関」
5.5 幕末から明治初期の翻訳資料における「蒸気機関」
5.6 新漢語「蒸気機関」の定着
6. まとめ
7. おわりに

第7章 新漢語「電信機」の成立
1. はじめに
2. 先行研究
3. 中国語における(electrical)telegraph を表す用語
4. 幕末(1850 年代)の電信機の伝来とそれを表す用語
4.1 アメリカから伝来した(electrical)telegraph とそれを表す用語
4.2 日本人による(electrical)telegraph の伝習とそれを表す用語
5. 幕末の遣外使節団と「電信機」
5.1 万延元年遣米使節団における「電信機」の発生
5.2 文久二年遣欧使節団における「電信機」の使用
6. 日本の電信事業の発展に伴う「電信機」の広がり
6.1 1860 年代後半の幕府の電信架設計画と「電信機」
6.2 明治新政府の電信事業の整備と「電信機」の広がり
7. 新漢語「電信機」の定着
8. まとめ
9. おわりに


IV 近代都市建設と具象概念を表す新漢語の成立

第8章 新漢語「煉瓦」の成立
1. はじめに
2. 先行研究
3. 中国語におけるbrick を表す用語
4. 幕末(1850 年代)の反射炉建設の関係資料におけるfire brick を表す用語
5. 近代日本語におけるbrick を表す新漢語「煉瓦」の成立
5.1 幕末(1860 年代)の遣外使節団におけるbrick を表す「煉瓦」の発生
5.2 明治期における日本の近代都市建設に伴うbrick を表す「煉瓦」の広がり
5.3 新漢語「煉瓦」の定着
6. まとめ
7. おわりに

第9章 新漢語「灯台」の成立
1. はじめに
2. 先行研究
3. 古典漢籍・漢訳仏典における「灯台」
4. 近世以前の日本語における「灯台」
5. 近代日本語における西洋式灯台(lighthouse)を表す新漢語「灯台」の成立
5.1 近代の西洋式灯台が受容される以前の日本における航路標識とそれを表す用語
5.2 西洋式灯台の受容と「灯台」
5.2.1 遣外使節団と「灯台」
5.2.2 近代日本における西洋式灯台の整備と「灯台」
5.3 新漢語「灯台」の定着
6. まとめ
7. おわりに

第10章 新漢語「水道」の成立
1. はじめに
2. 古典漢籍・漢訳仏典における「水道」
3. 近世以前の日本語における「水道」
4. 幕末・明治初期における「水道」
4.1 遣外使節団と「水道」
4.2 翻訳文献と対訳辞書における「水道」
5. 1880 年代における「水道」
5.1 日本最初の近代水道(the water supply system)の敷設開始と「水道」
5.2 横浜近代水道の竣工と「水道」
6. 新漢語「水道」の定着
7. まとめ
8. おわりに


V  新漢語の成立における西洋見聞録類及び公的記録類の位置づけ

第11章 新漢語の成立における西洋見聞録類の位置づけ
1. はじめに
2. 西洋見聞録類資料の中の森田清行『亜行日記』について
2.1 森田清行『亜行日記』の概略とそれを選択する理由
2.2 森田清行『亜行日記』における具象概念を表す新漢語の語彙量
3. 森田清行『亜行日記』における具象概念を表す新漢語
3.1 交通に関わる用語について
3.1.1 軽気球を表す用語
3.1.2 西洋式灯台を表す用語
3.2 金融商業に関わる用語について
3.3 建築住居に関わる用語について
3.4 教育学術に関わる用語について
4. 森田清行『亜行日記』から見る西洋見聞録類資料の具象概念を表す新漢語の成立における位置づけ
4.1 『亜行日記』に見られる具象概念を表す新漢語の語数と分野から見るその位置づけ
4.2 具象概念を表す新漢語の語史から見る『亜行日記』の位置づけ
4.3 『亜行日記』から見る西洋見聞録類資料の具象概念を表す新漢語の成立における位置づけ
5. おわりに

第12章 新漢語の成立における公的記録類の位置づけ
1. はじめに
2. 本章で取り上げる研究対象について
3. 新漢語「水道」の成立における公的記録類資料の有用性
3.1 新漢語「水道」の成立
3.2 新漢語「水道」の成立から見る公的記録類資料の有用性
4. 新漢語「銀行」の成立における公的記録類資料の有用性
4.1 新漢語「銀行」の成立
4.2 新漢語「銀行」の成立から見る公的記録類資料の有用性
5. 新漢語「灯台」の成立における公的記録類資料の有用性
5.1 新漢語「灯台」の成立
5.2 新漢語「灯台」の成立から見る公的記録類資料の有用性
6. 具象概念を表す新漢語の成立における公的記録類資料の有用性と位置づけ
6.1 政府の主導によって導入された特定の分野に関わる具象概念を表す新漢語の成立を確認できる
6.2 新漢語の展開の時期が確認できる
6.3 新漢語の定訳に決定的な役割がある
7. おわりに


VI 結論

第13章 具象概念を表す新漢語の研究 本書のまとめと今後の課題
1. はじめに
2. 本書のまとめ
2.1 具象概念を表す新漢語研究の資料
2.1.1 本書における新漢語研究資料に関する整理
2.1.2 幕末・明治初期の遣外使節団員の手による西洋見聞録類
2.1.3 西洋近代文明の導入に関わる公的記録類
2.2 具象概念を表す新漢語の語史
2.2.1 西洋文明利器の受容と具象概念を表す新漢語の成立
2.2.1.1 新漢語「蒸気機関」の成立
2.2.1.2 新漢語「電信機」の成立
2.2.2 近代都市建設と具象概念を表す新漢語の成立
2.2.2.1 新漢語「煉瓦」の成立
2.2.2.2 新漢語「灯台」の成立
2.2.2.3 新漢語「水道」の成立
2.3 具象概念を表す新漢語の成立における西洋見聞録類資料及び公的記録類資料の位置づけ
2.3.1 具象概念を表す新漢語の成立における西洋見聞録類資料の位置づけ
2.3.2 具象概念を表す新漢語の成立における公的記録類資料の位置づけ
3. 新漢語研究における本書の位置づけ
3.1 近代日本における新漢語研究のための新たな資料を提示
3.2 新漢語成立のルートとしての直接の物の導入の重要性を提示
3.3 学際的研究視点から新漢語の成立問題を明らかにする
4. 新漢語研究の展望
4.1 新漢語の成立における遣外使節団というグループの存在
4.2 新漢語の成立における幕府と明治政府の役割
4.3 新漢語の成立史から西洋文明の受容史へ
5. 今後の課題


参考文献
調査資料・用例出典
既発表論文との関係
後記
索引



著者紹介
張春陽(ちょう しゅんよう)
〈略歴〉1990年生まれ。中国黒龍江省出身。東北大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、中国広西師範大学講師、立教大学日本学研究所研究員。
〈主な論文〉「新漢語「蒸気機関」の成立」『訓点語と訓点資料』第141輯(2018年)、「新漢語「水道」の成立」『文芸研究―文芸・言語・思想―』第186集(2018年)、「新漢語研究資料についての整理」『国語学研究』第61集(2022年)。


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