ひつじ書房 村上春樹 〈物語〉の行方 サバルタン・イグザイル・トラウマ ひつじ書房 村上春樹 〈物語〉の行方 サバルタン・イグザイル・トラウマ
2022年5月刊行

村上春樹 〈物語〉の行方

サバルタン・イグザイル・トラウマ

山根由美恵著

定価6800円+税 A5判上製カバー装 426頁

ISBN978-4-8234-1123-6

ブックデザイン 坂野公一(welle design)

Haruki Murakami: the whereabouts of “story” —Subaltern, Exile, Trauma—
Yamane Yumie

ひつじ書房



【内容】
本書は、村上春樹が日本を離れ「イグザイル」(故郷離脱)を開始した時期から最新作までの村上文学の全体像および、変遷を捉えることを目的としている。現在村上は「世界文学」作家と評されることも多いが、自らを故郷離脱者と捉え模索した時期がある。この「イグザイル」意識からテクストを逆照射し、村上文学の新たな側面を提示した。また、本書では村上文学における「サバルタン」(下層・従属的・副次的存在)に着目し、村上文学の持つ批評性(とその限界)を捉えていることも特徴である。


【目次】


はじめに

第一部 「イグザイル」(故郷離脱)期の文学―一九八八~一九九六

第一章 停滞と復活―「イグザイル」の彷徨い
 第一節 「イグザイル」の彷徨い―「ダンス・ダンス・ダンス」
 第二節 作家としての復活―「TVピープル」
第二章 「拒む女」たち―「サバルタン」への眼差し
 第一節 「拒む女」の闇―「我らの時代のフォークロア―高度資本主義前史―」
 第二節 〈拒み〉〈破壊する〉女・イズミ―「国境の南、太陽の西」
第三章 マトロフォビア・トラウマからの回復―「サバルタン」への眼差し
 第一節 妻の〈自立〉を阻む「母」―「レーダーホーゼン」「眠り」
 第二節 久美子:マトロフォビアを超えて―「ねじまき鳥クロニクル」
 第三節 ナツメグ・シナモン:「二次トラウマ化」「世代横断的トラウマ」からの回復―「ねじまき鳥クロニクル」1
第四章 短編「集」という〈物語〉―『レキシントンの幽霊』と「喪の仕事」
 第一節 「曖昧さ」という方法―「レキシントンの幽霊」
  補 本心を知ってしまう悲劇―「緑色の獣」
 第二節 短編集の最底部―「沈黙」
 第三節 絶対的孤独の物語―「トニー滝谷」「氷男」
 第四節 「孤独からの回復」の過程―「七番目の男」「めくらやなぎと、眠る女」

第二部 Haruki Murakami形成期の〈物語〉―一九九七~二〇一九

第一章 〈地下鉄サリン事件〉というモチーフの可能性―「サバルタン」への眼差し1
 第一節 辺見庸「ゆで卵」―「遭遇者」から見る〈サリン事件〉
 第二節 村上春樹「アンダーグラウンド」―〈サリン被害者〉の発見と「喪の仕事」
 第三節 重松清「さつき断景」―間接的〈サリン被害者〉の物語
 第四節 馳星周「9・11倶楽部」―「第三次被害者化」(家族)の問題
 第五節 川上弘美「水声」―〈サリン被害者〉というモチーフの可能性
第二章 〈物語〉の行方―Haruki Murakamiの光と影と光
 第一節 生き直される「サバイバー」の生―「海辺のカフカ」
 第二節 オウム脱構築の可能性/教祖像と〈家族〉の復権―「1Q84」
 第三節 〈メタ・テクスト〉性と「震災後文学」―「騎士団長殺し」
 第四節 舞台が原作を凌駕するとき―舞台「海辺のカフカ」における「戦争」表象

あとがき
主要使用テキスト
初出一覧
索引


【著者紹介】
山根由美恵(やまね ゆみえ)
〈略歴〉島根県出身。広島大学大学院文学研究科博士課程後期修了。博士(文学)。広島大学、広島国際大学、広島女学院大学等の非常勤講師を経て、二〇二一年一〇月より、山口大学教育学部講師。 〈著書〉『村上春樹 〈物語〉の認識システム』(若草書房・二〇〇七)、〈共著〉『村上春樹スタディーズ2000―2000』(若草書房・二〇〇五)、『村上春樹におけるメディウム 20世紀篇』(淡江大學出版中心・二〇一五)、『村上春樹における秩序』(淡江大學出版中心・二〇一五)等。


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