ひつじ書房 アラビア語チュニス方言の文法研究 否定と非現実モダリティ 熊切拓著 ひつじ書房 アラビア語チュニス方言の文法研究 否定と非現実モダリティ 熊切拓著
2022年2月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第187巻

アラビア語チュニス方言の文法研究

否定と非現実モダリティ

熊切拓著

定価9000円+税 A5判上製 364頁

ISBN978-4-8234-1112-0

白井敬尚形成事務所(ブックデザイン)

ひつじ書房

Negation and Irrealis Modality: Studies on Grammar of Tunis Arabic.
KUMAKIRI, Taku

【内容】

アラビア語チュニス方言についての本邦初の文法研究書。否定辞maと接尾辞-ʃで動詞などを挟むのは、アラビア語方言に広く見られる否定文の作り方だが、本研究はチュニス方言の否定文の実証的な分析を通じて、maと-ʃの役割をはじめて解明。さらにチュニス方言独自の文法現象についても豊富に扱う。否定と非現実モダリティの関係、現実性の観点からの否定の類型、談話モダリティとしての否定など、他言語の研究にも応用可能な理論的考察も豊富。

【目次】


記号と略号
図表一覧

第1章 序論
1. 本研究の目的と意義
2. 本研究のための調査
3. 本研究の方法論と理論的枠組
4. 本書の成立過程
5. 本研究の概要

第2章 アラビア語チュニス方言の言語学的定義
1. 概念としてのアラビア語
2. アラビア語の系統
3. アラビア語の歴史
3.1 前イスラーム期アラビア語期
3.2 古典アラビア語期
3.3 後古典アラビア語期
3.4 現代標準アラビア語期
4. 現代アラビア語諸方言
4.1 現代アラビア語諸方言の環境
4.2 現代アラビア語諸方言の共通特徴
4.3 現代アラビア語諸方言の発生と形成
4.4 現代アラビア語諸方言の分類
5. アラビア語チュニス方言
5.1 マグレブ方言(西方言)
5.2 チュニジアの諸方言とその分布
5.3 チュニジア方言の歴史
5.4 チュニスの諸方言
5.5 方言コイネーとしてのチュニス方言
5.6 チュニス方言の社会言語学的環境
6. 研究史、方言調査、資料
6.1 チュニジア諸方言研究史
6.2 方言調査における問題
6.3 本研究で扱う資料について
7. まとめ:本研究で扱うチュニス方言の定義

第3章 チュニス方言の音韻と文法
1. チュニス方言の音韻概観
1.1 子音
1.2 母音
1.3 音節構造
1.4 強勢と母音の長さ
2. チュニス方言の文法概観
2.1 類型論的概観
2.2 形態論
2.2.1 人称詞
2.2.1.1 独立人称詞
2.2.1.2 人称接尾辞
2.2.2 名詞類
2.2.2.1 性
2.2.2.2 数
2.2.2.3 指小形
2.2.2.4 定・不定の表示
2.2.2.5 指示詞
2.2.2.6 名詞修飾
2.2.2.7 形容詞
2.2.2.8 数詞
2.2.3 動詞
2.2.3.1 基本形
2.2.3.2 派生形
2.2.3.3 完了形・未完了形・命令形
2.2.3.4 分詞
2.2.3.5 主な動詞の活用
2.2.4 不変化詞
2.2.4.1 疑問詞
2.2.4.2 前置詞
2.2.4.3 関係詞、接続詞、副詞
2.3 語順
2.4 否定:標準アラビア語との違い

第4章 チュニス方言の否定の全体像
1. 対象の設定
1.1 maː-と-ʃの定義
1.2 laː / laː-の定義
2. maː否定
2.1 maː-と-ʃによる否定
2.1.1 maː-と-ʃによる否定述語句が作る否定文
2.1.1.1 動詞・動詞句
2.1.1.2 前置詞句
2.1.1.3 複合前置詞句
2.1.1.4 名詞句
2.1.1.5 副詞(θammaː存在文)
2.1.1.6 形容詞比較形(形容詞比較形による存在否定文)
2.1.2 maː-と-ʃによる否定人称句が作る否定文
2.1.2.1 maː-と-ʃによる否定人称句の長形と短形
2.1.2.2 名詞文の否定
2.1.2.3 前置詞文の否定
2.1.2.4 形容詞文・分詞文の否定
2.1.2.5 副詞文の否定
2.1.2.6 未来接辞文の否定
2.1.2.7 進行・継続アスペクトをあらわす動詞文の否定
2.1.2.8 短形のみ現れる用法(1):要素否定と引用否定
2.1.2.9 短形のみ現れる用法(2):肯定的用法
2.1.2.10 名詞文から動詞文への転換
2.1.3 maː-と-ʃによる否定のまとめ
2.2 maːのみ否定
2.2.1 maː-が[ħattaː-《~も・さえ》不定名詞]、[(ħattaː-)ʃajj《もの》/ ħadd《ひと》]とともに現れる構文
2.2.1.1 maː-が[ħattaː-《~も・さえ》不定名詞]とともに現れる構文
2.2.1.2 maː-が[(ħattaː-)ʃajj《もの》]、ʃajjとともに現れる構文
2.2.1.3 maː-が[ħattaː-ħadd]、ħaddとともに現れる構文
2.2.1.4 不定性の関与について
2.2.2 否定辞maː-が反復する、もしくはmaː-の後に否定辞laːが反復する構文
2.2.3 人称辞を接尾したʕumrˤ-《年齢、人生》がmaː-がともに現れる構文
2.2.4 walˤlˤaːh《神かけて》とmaː-がともに現れる構文
2.2.5 単独のmaː-で全面的否定となる定型的表現
2.2.6 maː-とkaːn / illaː《~しかない》による排除否定文
2.2.7 願望や誓約をあらわす否定文
2.2.8 否定人称句とmaː-のみ否定
2.2.9 -ʃの出現を左右しない環境
2.2.10 あるべき-ʃの排除の影響
3. laː否定
3.1 反復的用法
3.1.1 反復的構文
3.1.2 人称接尾辞をともなう反復的構文
3.2 laːの単独用法
3.2.1 返答のlaː
3.2.2 対比の疑問文のlaː
3.2.3 対比のlaː
3.3 願望や誓約をあらわすlaː否定文
3.4 接続詞的用法
3.4.1 条件文構文
3.4.2 命令形に後続して《さもなければ》となるlaː
3.4.3 xaːf《恐れる》の補文に現れるlaː
3.4.4 ʃaʕra《髪の毛》と結合して《あやうく》を意味するlaː
3.4.5 その他の接続詞的laːの用法
3.5 前置詞b-との結合形
4. まとめと問題設定
4.1 チュニス方言の否定のまとめ
4.2 問題設定

第5章 否定と文構造
1. 問題設定
2. 主題と述語
2.1 主題人称表示述語と名詞述語
2.2 チュニス方言の主題
2.3 主題化と否定述語句・否定人称句
2.4 否定述語句による否定文と否定人称句による否定文の構造的違い
2.5 例外の存在
3. 否定述語句による否定の例外:存在文
4. 否定人称句による否定の例外
4.1 未来接辞文
4.2 進行・継続アスペクトをあらわす動詞文
4.3 従属節における名詞文補文標識
5. 否定のし方と文の対応
6. 擬似動詞と述語化
6.1 非動詞述語文と動詞化説 6.2 非動詞述語文の諸特徴
6.2.1 非動詞述語文と時制の助動詞
6.2.2 非動詞述語要素の特殊化
6.3 動詞化説の検証
6.3.1 ①否定のし方の同一性
6.3.2 ②統語的主語
6.3.3 ③論理的主語
6.4 述語化説
7. まとめ

第6章 否定とモダリティ
1. maː-と-ʃの否定と主題人称表示
2. 主題人称の特徴
3. 主題人称接尾辞の用法
4. 3つのモダリティ辞とmaː-と-ʃによる否定人称句
4.1 haː-, rˤaː-, mˤaː-の形態的・統語的特徴
4.2 haː-, rˤaː-, mˤaː-の意味
4.3 モダリティ辞としてのhaː-, rˤaː-, mˤaː-
5. モダリティの定義と分類
5.1 アスペクト、テンスとモダリティ
5.2 モダリティの定義と分類
5.3 チュニス方言における命題モダリティと事象モダリティ
5.4 haː-, rˤaː-, mˤaː-とモダリティ
6. maː-と-ʃによる否定人称句と3つのモダリティ辞
7. チュニス方言のモダリティ表現と人称
8. 命題提示モダリティとしてのmaː-と-ʃによる否定
9. 否定のかかわる命題提示モダリティ表現
9.1 maː-ʕaːd -ʃ《もう~しない》
9.2 maː-zaːl《まだ(~である)》
9.3 否定人称句短形の肯定的用法
10. まとめと課題

第7章 否定と非現実モダリティ
1. チュニス方言の否定文とその解釈上の問題
1.1 チュニス方言の否定文
1.2 その解釈上の問題
2. -ʃについての諸説の検討とその問題点
2.1 -ʃの形態論的位置づけ
2.2 -ʃの意味機能についての諸説の検討
2.3 本研究の観点
3. 否定環境以外での-ʃの用法の概観
3.1 疑問詞の一部としての-ʃ
3.2 疑問・想像・不確実な目的などをあらわす標識としての-ʃの用法
3.2.1 疑問標識としての-ʃ
3.2.2 主文述語に接尾される-ʃ
3.2.3 不確実な目的をあらわす-ʃ
3.2.4 想像をあらわすkuːn-ʃ、不確実な目的をあらわすkaːn-ʃ、比喩をあらわすtquːl-ʃ
3.3 -ʃの非現実モダリティ表示機能
4. maː-と-ʃによる否定における-ʃと非現実モダリティ
4.1 現実的否定と非現実的否定
4.2 -ʃに関連する現象の説明
5. -ʃの機能と否定のまとめ
6. チュニス方言における非現実モダリティと未完了形
6.1 チュニス方言の動詞形態論
6.2 未完了形に関する先行研究
6.3 チュニス方言の未完了形の非現実用法
6.4 チュニス方言の動詞における現実・非現実の対立
7. 否定と非現実性
7.1 否定と非現実モダリティについての先行研究と問題点
7.2 チュニス方言における否定と非現実性の関係
7.3 否定と非現実性の関係の第3の類型としてのチュニス方言
7.4 談話モダリティとしての否定と非現実性
8. 本研究の結論

参照文献
あとがき
索引


【著者紹介】

熊切拓(くまきり たく)
 略歴
東京大学大学院人文社会系研究科研究員。東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻(言語学)博士課程修了。博士(言語学)。開智国際大学非常勤講師。

 主な論文
「アラビア語チュニス方言における否定と非現実モダリテイ」(『言語研究』156. 2019)、「アラビア語チュニス方言のVS構文による語りの構造化」(『言語研究』160. 2021)。


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