ひつじ書房 ノモスとしての言語 大宮勘一郎・田中愼編 ひつじ書房 ノモスとしての言語 大宮勘一郎・田中愼編
2022年5月刊行

シリーズ ドイツ語が拓く地平 3

ノモスとしての言語

大宮勘一郎・田中愼編

定価4400円+税 A5判並製カバー装 344頁

ISBN978-4-8234-1106-9

ブックデザイン 杉下城司

Perspectives of the German Language 3
Language as nomos
Edited by Ide Manshu, Kawashima Takashi

ひつじ書房


【内容】
ドイツ語という言語を切り口に、社会、歴史、文化の問題を論じるシリーズ第3巻。第1部 「近代ドイツにおける「国語」」では、言語の規範(ノモス)の形成と変容の社会的、物質的条件についてドイツ語を例に歴史的観点から考察する。第2部「現代におけるノモスの揺らぎ」では、現代の言語規範のありかたについて地理的、社会的、文体的な観点から検討する。
執筆者:井出万秀、遠藤浩介、大宮勘一郎、小川敦、川島隆、清野智昭、杉田優子、高田博行、高橋秀彰、武田利勝、田中愼、宮田眞治

【目次】
シリーズ ドイツ語が拓く地平刊行によせて

第1部 近代ドイツにおける「国語」
第1部 はじめに

第1章 「国語」形成の一断面
大宮勘一郎

1. 近代語における文法的「規範」化
2. 権威・規範・標準
3. 規範化・標準化の事例―英語、フランス語、イタリア語
4. 規範化・標準化のドイツ語における展開
5. 19世紀における変質(1)―フィヒテ
6. 19世紀における変質(2)―ヤーコプ・グリム
7. おわりに
コラム 「国語」の絆を解く

第2章 ドイツ語を「知的」にした官庁語の功罪
形式性、統一性、そして複合性
高田博行

1. 公文書の文体(13世紀~15世紀)
2. 簡明なルターのドイツ語と官庁語(16世紀)
3. 「ふつうの民衆」から隔絶した文章語(17世紀)
4. 「自然な文体」というオルタナティブ(18世紀~)

第3章 〈自然〉の諸相
近世・近代ドイツ言語論における〈自然〉〈起源〉〈超越者〉の関係をめぐって
宮田眞治

1. 〈存在論的有縁性〉の基盤としての〈自然〉
1.1 改革の基盤・卓越性の根拠としての〈自然〉―ショッテル
1.2 有縁性の極限としての〈自然–言語〉―ヤコブ・ベーメ
2. 〈自然〉から〈自然さ〉へ―啓蒙期記号論的言語観における〈起源〉と〈目標〉
2.1 二つの〈アダムの言語〉―ライプニッツ
2.2 〈自然さ〉・記号性の非前景化・記号の疑似的有縁化
3. 自然の〈エコノミー〉と言語―ヘルダーとハーマン
3.1 同時代の言語論へのコミット
3.2 〈自然の家政ないしエコノミー〉による〈諸力の再編成〉―『言語起源論』の核心
3.3 〈間(あいだ)〉の思考―ハーマンのヘルダー批判
コラム ノヴァーリスと近世・近代言語論

第4章 アウグスト・ヴィルヘルム・シュレーゲルにおける言語の美学
リズム起源論から芸術の自然史へ
武田利勝

1. はじめに―イェーナ・ロマン派と言語の美学
2. リズムの起源としての「人間の自然」
3. 「芸術の自然史」における言語の美学
4. 自然的原理と精神的原理のあいだ
5. 結び―汎ポイエーシスとしての世界

第5章 ボヘミアの「国語」とは?
ドイツ語とチェコ語の抗争の記録
川島隆

1. 「国語」?
2. ボヘミアの言語闘争
2.1 ボルツァーノのボヘミア主義―融和の試み
2.2 言語ナショナリズムと民族対立
2.3 マウトナーのドイツ語ナショナリズム
3. マウトナーの『ブラトナ最後のドイツ人』
3.1 ドイツ語とチェコ語の覇権争い
3.2 民族学校をめぐる確執

第6章 書体の「ノモス」
「ラテン文字」と「ドイツ文字」
遠藤浩介

1. はじめに
2. 二書体体制の成立
3. 二書体体制の揺らぎ
4. 「ドイツ文字」と「ラテン文字」をめぐる論争
5. 二書体体制の終焉
6. おわりに

第2部 現代におけるノモスの揺らぎ
第2部 はじめに

第7章ドイツ語圏の言語政策と実際
複雑化する標準変種の記述とノモスの揺らぎ
高橋秀彰

1. はじめに
2. 言語規範の成り立ち
2.1 規範の構造
2.2 言語政策と標準変種
3. 複数中心地言語としてのドイツ語
4. オーストリア標準変種の成り立ち
5. スイス標準変種の成り立ち
6. 『ドイツ語変異形辞典』
7. 記述主義の拡大と多様な標準変種―あるいはノモスの揺らぎと脱標準化
コラム オーストリア標準変種の特徴
コラム スイス標準変種の特徴

第8章 ルクセンブルクの言語政策
多言語社会とドイツ語
小川敦

1. はじめに
2. ルクセンブルクの言語と歴史
2.1 近代国家成立前の公的な言語
2.2 国民意識と母語意識、ルクセンブルク語の成立
2.3 第二次世界大戦と正書法改革
2.4 1984年の言語法と公用語
3. 三言語併存
3.1 三言語の使われ方
3.2 三言語併存のモデル
4. 複数言語教育と移民の増大による影響
4.1 二言語教育体制の確立とルクセンブルク語
4.2 現在の言語教育体制
4.3 移民の増加と社会への影響
5. ルクセンブルク語の役割の変化とドイツ語
6. さいごに
コラム ルクセンブルクからの移民

第9章 EUの多言語政策と欧州の複言語主義
清野智昭

1. はじめに
2. ヨーロッパの複言語・複文化教育政策
2.1 欧州評議会という国際機関
2.2 CEFRへの道―Thresholdの策定(1975)
2.3 ヨーロッパの複言語教育政策の理念
2.4 EUの言語教育
3. CEFRと言語ポートフォリオ
4. EU域内の言語教育政策の理念と実践
5. EUの言語政策と新しい「ノモス」
6. まとめとCEFRの日本での扱い
コラム 二言語併用地域アルザスへの遠足

第10章 「逸脱」から「使用標準」へ
話しことばの規則性の体系化をめぐって>
杉田優子

1. はじめに
2. 社会的相互行為のリソースとしての言語の研究へ
3. 話しことばの文法構造
3.1 話しことばは乱れているか?
3.2 「参照テーマ–述定(Referenz-Aussage)構造」
3.3 「脱規範」の規則性と言語変化―obwohlの使用バリエーション
3.4 相互行為における柔軟なシンタクスとしての「拡張」現象
4. 「使用標準(Gebrauchsstandard)」構想の背景
5. 展望
コラム デジタルメディアのドイツ語使用と規範

第11章 ピュシスとノモスの間の「うつし」
井出万秀

1. はじめに
2. 音を文字にすることの難しさ
2.1 文字の特性と限界
2.2 音の長短表記
2.3 かぶせ要素
3. 音の「うつし」としての文字?
4. ノモス(規範)の必要性とその帰結
5. 正書法
6. 規範・標準との齟齬
7. テキストの写しとしての手書き写本、完璧複製としての活版印刷
8. おわりに

第12章 逸脱のピュシス
文法規則の逸脱に見られる自然性
田中愼

1. はじめに
2. 言語の規範性と自然性
3. さまざまなドイツ文法からの「逸脱」現象―„Der Dativ ist dem Genitiv sein Tod“から
4. „weil das ist ein Nebensatz“―weil文における定形二位現象(weil-V2文)
4.1 ドイツ語副文における判断の表出―中核的/周辺的副文
4.2 日本語副文における判断の表出
5. 「過去形消失」の原理
5.1 Das Ultra-Perfekt(二重完了形)
5.2 過去形消失現象
5.3 完了助動詞の選択―habenとsein
6. まとめ
コラム 普遍文法の系譜

執筆者紹介


【編者紹介】
大宮勘一郎(おおみや かんいちろう)
東京大学大学院人文社会系研究科教授
主な著書―『ベンヤミンの通行路』(未來社、2007)、『ハインリッヒ・フォン・クライスト─「政治的なるもの」をめぐる文学』[共著](インスクリプト、2020)など。

田中愼(たなか しん)
慶應義塾大学文学部教授
主な著書・論文― Deixis und Anaphorik: Referenzstrategien in Text, Satz und Wort(Linguistik–Impulse und Tendenzen 42, Walter de Gruyter, 2011)、Grammatische Funktionen aus Sicht der japanischen und deutschen Germanistik[共編著](Linguistische Berichte, Sonderheft 24, Buske, 2017)など。

シリーズ ドイツ語が拓く地平 責任編集
高田博行 山下仁 田中愼 大宮勘一郎 井出万秀 川島隆


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