文学と戦争 言説分析から考える昭和一〇年代の文学場 松本和也著 文学と戦争 言説分析から考える昭和一〇年代の文学場 松本和也著
2021年11月刊行

ひつじ研究叢書(文学編) 13

文学と戦争

言説分析から考える昭和一〇年代の文学場

松本和也著

定価7000円+税 A5判上製 592頁

ISBN978-4-8234-1103-8

ブックデザイン 坂野公一(welle design)

装画 会田誠 大皇乃敝尓許會死米(戦争画RETURNS)1996

ひつじ書房

The Literature and The War:The Field of Literature in the Early Showa Era (1935-1945) from the Perspective of Discourse Analysis
Matsumoto Katsuya





著者の松本和也先生にご著書についてお話ししていただきました。

【内容】

本書は、アジア・太平洋戦争期と重なる昭和10年代文学(史)に関する研究プロジェクトとして、多彩な文学活動を歴史的なアプローチによって多角的に検証した成果の集大成である。昭和10年代を通じて多くの文学者が関わった論争的なテーマの数々、話題となった文学作品の特徴や同時代受容、戦時下における文学者の生き方などをとりあげ、問題構成に応じてアレンジしたメディア調査、言説分析、テクスト読解をクロスさせた考察を集積した。

【目次】

序 昭和一〇年代文学を考え直すために―研究対象・問題領域・方法論
一 研究対象としての昭和一〇年代
二 問題領域としての昭和一〇年代文学
三 昭和一〇年代文学における抵抗
四 方法論としての言説分析―文学場

第Ⅰ部 昭和一〇年代をみわたす

第1章 現在進行形の文学場の実況放送―文芸時評という装置の消長
一 再発見される文芸時評
二 文芸時評の制度疲労/打開策
三 維持―継続されていく文芸時評
四 太平洋戦争開戦後の文芸時評

第2章 純文学作家にとっての新聞小説―通俗性・芸術性・社会性
一 純文学作家による新聞小説の再発見
二 新聞読者(層)の変容と純文学作家の思惑
三 新聞小説における社会性
四 戦時下における新聞の役割と新聞小説の隘路

第3章 繰り返される〈ヒューマニズム〉ブーム―転位する意味内容
一 文学史上の〈ヒューマニズム〉
二 昭和一一年の〈ヒューマニズム〉ブームと言説構造
三 日中戦争開戦後の〈ヒューマニズム〉と戦争文学
四 太平洋戦争開戦後の〈ヒューマニズム〉と新しい人間

第4章 戦争の時代における詩的精神のゆくえ―立原道造「鮎の歌」を手がかりとして
一 抒情詩人・立原道造の詩的精神
二 詩的精神をめぐる議論
三 立原道造「鮎の歌」の同時代受容
四 軍歌の時代の詩的精神

第5章 日中戦争期に魯迅はどう読まれたか―追悼特集・全集刊行・小田嶽夫
一 日本での魯迅紹介
二 魯迅の死と追悼言説
三 多様な魯迅評価
四 小田嶽夫による魯迅紹介

第6章 「国民文学」とは何かを問うこと―文学場のインターフェイス
一 曖昧な国民文学(論)
二 昭和一二年の国民文学論ブーム
三 昭和一〇年代半ばの国民文学論ブーム
四 太平洋戦争開戦後の国民文学論

第Ⅱ部 昭和一〇年代前半の諸局面

第7章 横光利一「純粋小説論」の読み方―社会性という論点
一 「純粋小説論」へのアプローチ
二 「純粋小説論」の波紋
三 拡散される「純粋小説論」理解
四 「純粋小説論」が提示する社会性
五 書物と化していく「純粋小説」

第8章 文化工作―建設戦としての文学―上田廣「黄塵」
一 戦争文学への期待と上田廣
二 上田廣が戦地で書いた小説「鮑慶郷」
三 上田廣が戦地で書いた報告「黄塵」
四 日中戦争開戦後の文化工作―建設戦

第9章 "道"を目指す武蔵/兵士/国民―吉川英治「宮本武蔵」
一道精神を体現する宮本武蔵
二 意味づけられていく「宮本武蔵」
三 「宮本武蔵」の同時代受容分析

第10章 転向作家が書く満洲移民―徳永直「先遣隊」
一 転向作家・徳永直とモチーフとしての満洲
二 満洲文学への期待
三 「先遣隊」の同時代受容分析
四 文化工作としての満洲移民―「先遣隊」

第11章 日中戦争期における中国現代文学の翻訳―林語堂Moment in Peking
一 日中戦争期における中国への関心
二 林語堂の重要性
三 三種類のMoment in Peking翻訳
四 中国理解のための概説書としてのMoment in Peking

第12章 可視化された文化統制―文芸雑誌『新風』をめぐる軌跡/言説
一 出版統制と文芸雑誌『新風』
二 『新風』創刊まで
三 『新風』創刊即廃刊の衝撃
四 文化統制のバロメーターとしての『新風』廃刊

第Ⅲ部 昭和一〇年代後半の諸局面

第13章 戦時下に文学の「非力」を語ること―高見順「文学非力説」
一 高見順の蘭印体験と「文学非力説」
二 「文学非力説」論議の展開と同時代受容
三 多重化される言表/受容の回路
四 「文学非力説」論議の余波

第14章 太平洋戦争の感動を書く新しい私小説―太宰治「新郎」・丹羽文雄「海戦」
一 太宰治「新郎」への批判
二 太平洋戦争開戦後の新しい私小説
三 新しい私小説の隆盛
四 丹羽文雄「海戦」への評価

第15章 太平洋戦争開戦を振り返る新聞小説―岩田豊雄「海軍」
一 モチーフとしての九軍神
二 「海軍」の語り手と新聞記事との連携
三 「海軍」の同時代受容分析

第16章 帰還した南方徴用作家はどう読まれたか―尾崎士郎「朝暮兵」・火野葦平「敵将軍」
一 南方徴用作家(研究)の重要性
二 帰還作家の発言・作品とその受容
三 尾崎士郎「朝暮兵」・火野葦平「敵将軍」の同時代受容分析
四 文学者による文化工作

第17章 移動演劇の作劇術―岸田國士「かへらじと」
一 移動演劇(作品)への評価
二 「かへらじと」の同時代受容分析
三 「かへらじと」における立派な死
四 空所を活かした作劇術

第18章 文学者はアッツ島玉砕をどう言語化したか―韻文・散文・太宰治「散華」
一 モチーフとしてのアッツ島玉砕
二 韻文としてのアッツ島玉砕表象
三 散文(ノンフィクション)としてのアッツ島玉砕表象
四 散文(フィクション)としてのアッツ島玉砕表象
五 アッツ島玉砕表象としての太宰治「散華」

結 課題と展望

初出一覧

【著者紹介】

◉著者紹介
松本和也(まつもと・かつや)
〈略歴〉一九七四年茨城県生まれ。立教大学大学院文学研究科修了。博士(文学)。神奈川大学国際日本学部教授。
〈主な著作〉著書『昭和十年前後の太宰治 〈青年〉・メディア・テクスト』(ひつじ書房、二〇〇九)、『現代女性作家の方法』(水声社、二〇一八)ほか。論文「吉川英治作『宮本武蔵』における石井鶴三挿絵の基礎的研究」(『人文学研究所報』二〇一九・九)、「川端康成『雪国』同時代受容分析」(『国語国文』二〇二一・六)ほか。


ご注文は、最寄りの書店さんでお願いします。
お店に在庫が無くても、お取り寄せができます。 書店が最寄りにない場合は、オンライン書店でご注文ください。

 

 



お急ぎの場合は、小社あてにご注文いただくこともできます。
郵便番号、ご住所、お名前、お電話番号をメールか、FAXでお知らせください。
新刊案内へ
ひつじ書房ホームページトップへ