ひつじ書房 日本語複文構文の機能論的研究 田中寛著 ひつじ書房 日本語複文構文の機能論的研究 田中寛著
2021年2月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第177巻

日本語複文構文の機能論的研究

田中寛著

定価8800円+税 A5判上製 434頁

ISBN978-4-8234-1057-4

白井敬尚形成事務所(ブックデザイン)

ひつじ書房

A Functional Study of Japanese Complex Sentence Constructions
Hiroshi Tanaka


【内容】

日本語の複文を構文の複合体としてとらえ、その談話環境及び展開の諸相を機能論的角度から論じた。ナラを始めとする条件構文の体系的見直し、動詞の接続辞表現、トアッテとニアッテ、ダケニとダケアッテの意義づけを行うほか、ナカ時間節の事態誘導的機能に深く関与する点、形態的機能的に多岐にわたる比較・並列・対比表現の考察などを加える。『日本語複文表現の研究』、『複合辞からみた日本語文法の研究』に続く複文研究の集大成。

【目次】


まえがき

序章 複文構文とその内包する言語事象 機能論的研究の立場から
1. 本研究の関心と背景
2. 複文研究の諸領域
3. 構文の機能論的理解と主観性の諸問題
4. 言語理論と日本語教育の相互活性化 ―回顧と再論―
5. 本研究の構成と内容

I 動詞接続辞の展開的機能をめぐって
第1章 限定的評価判断表現の諸相
「-だけに」、「-だけあって」とその周辺
1. はじめに
2. 「-だけに」の意味機能
3. 「-だけあって」の意味機能
4. 「-だけに」、「-だけあって」の周辺
4.1 「-ばかりに」の意味と用法
4.2 「-てまえ」の意味と用法
4.3 「-とあって(は)」の意味と用法
5. その他の限定的な評価判断表現
5.1 「-ならでは」の意味と用法
5.2 「-こととて」の意味と用法
5.3 「-からこそ」「-てこそ」「-ばこそ」の意味と用法
5.4 「-あってのN」の意味と用法
5.5 「-ともなれば」「-ともなると」の意味と用法
6. 「-だけに」、「-だけあって」および周辺形式との比較
7. おわりに

第2章 「ある」の後置詞化と状況の指示的特性 「-とあって」と「-にあって」の意味と用法
1. はじめに ―存在、所有、出現の多義性―
2. 「-とあって」の指示的特性
3. 「-(という)こともあって」などの指示的特性
4. 「-にあって」の指示的特性
5. おわりに

第3章 形式化のすすんだ動詞テ形接続辞の類型的研究 「―をみすえて」などの用法を例に
1. はじめに
2. 動詞テ形接続辞の分類・再考
3. 心理的な葛藤、計略をあらわす類型
3.1 「―にかこつけて」
3.2 「―につけこんで」
3.3 「―をからめて」「―にからんで」
3.4 「―にちなんで」
4. 〈つきそい〉、〈対応〉をあらわす類型
4.1 「―にそって」
4.2 「―に即して」「―に則して」「―に則って」
4.3 「―にこたえて」
4.4 「―におうじて」
4.5 「―に照らして」「―に徴して」
5. 〈決意〉、〈準備〉、〈目的〉をあらわす類型
5.1 「―をにらんで」
5.2 「―をねらって」
5.3 「―をみすえて」「―をみこして」
5.4 「―をひかえて」
5.5 「―に向かって」「―に向けて」
6. 〈観察〉、〈準備〉をあらわす類型
6.1 「―をふまえて」
6.2 「―にそなえて」
6.3 「―にかんがみ、―にかんがみて」
7. 〈機会の影響〉、〈衝動の契機〉をあらわす類型
7.1 「―につられて」
7.2 「―にさそわれて」
7.3 「―をみはからって」
7.4 「―をさしおいて」
8. おわりに

II 条件構文における主観性をめぐって
第4章 条件性と状況・事態、観察、把握 ト条件構文の事象性、伝達性を中心に
1. はじめに ―〈因果〉〈連鎖〉と外的世界の認識―
2. トによる事態表示と伝達機能
3. 偶有的関係性の出現―トの機能的な意味の再考―
4. 〈ツナグ〉から〈モタラス〉へ ―〈所与〉・〈所識〉の関係性―
4.1 〈仕組み〉と〈予知〉をあらわすト
4.2 案内表示文に見られるト
4.3 生理的現象、性癖、習性を表すト
5. ト条件構文による事態措定
6. おわりに

第5章 ナラ条件構文の特殊用法について 〈前提〉と〈確認〉の意味の交渉
1. はじめに
2. ナラの表出性をめぐる再考 ―複合辞と特殊用法―
3. 引用的様相をおびる条件 ―ナラの特殊構文⑴―
3.1 「―というなら」の用法
3.2 「―というのなら」の用法
3.3 「―たいとおもう(の)なら」の用法
3.4 「―とする(の)なら」の用法
4. 譲歩的な見解をふくむ条件 ―ナラの特殊構文⑵―
4.1 「―ならともかく」の用法
4.2 「―ならまだしも」の用法
4.3 「―ならいざしらず」の用法
4.4 その他のナラの排他的用法
5. 必然性を強調する適合条件 ―ナラの特殊構文⑶―
5.1 「―ものなら」⑴の用法
5.2 「―ものなら」⑵の用法
5.3 その他の「―ものなら」の用法
5.4 「―ことなら」の用法
6. 形式名詞と程度条件 ―ナラの特殊構文⑷―
6.1 「―ぐらいなら」の絶対比較条件
6.2 「―だけなら」の限定条件
6.3 「―ためなら」の目的条件
6.4 「―ようなら」の様態条件
7. 意志にまつわる条件 ―ナラの特殊構文⑸―
7.1 「―つもりなら」の用法
7.2 「―気なら」の用法
7.3 「―たい(の)なら」の用法
7.4 「―ていい(の)なら」の用法
8. 断定的な評価条件 ―ナラの特殊構文⑹―
8.1 「AもAならBもBだ」の同類措定用法
8.2 「Xならでは」「XならではのN」の用法
9. ナラの副詞的成分と接続詞の用法
9.1 副詞的成分
9.2 接続詞の用法
10. おわりに

第6章 複合辞からみた条件構文の周辺 「―だけで」、「―しだい(で)」などを例に
1. はじめに
2. 「―(ない)かぎり(は)」の意味と用法
2.1 動詞「かぎる」構文の意味機能
2.2 「―(ない)かぎり」の意味特徴
3. 「―(ない)うちは」、「―(ない)以上(は)」の限定条件
3.1 「―(ない)うちは」の意味と用法
3.2 「―(ない)以上(は)」の意味と用法
4. 「―だけで」、「―だけでも」、「―だけでは」の限定条件
4.1 「―だけで」の意味と用法
4.2 「―だけでも」、「―だけでは」の意味と用法
5. 「―しだい」の継起的意味と条件化機能
6. 「―しだいで(は)」、「―によっては」の既定選択条件
6.1 「―しだいで(は)」の意味と用法
6.2 選択条件「―によっては」の意味と用法
7. 断絶と反復 ―「―たが最後」、「―そばから」の意味と用法―
7.1 「―たが最後」の意味と用法
7.2 「―そばから」の意味と用法
8. 談話的展開にかかわる語彙的な条件語句
9. おわりに

第7章 特殊否定条件構文とその発話意図 「―ないことには」などを例に
1. はじめに
2. 一般否定条件構文の概観
3. 特殊否定条件構文の諸相
3.1 「―ずには」「―ずしては」
3.2 「―なくても」と「―ないまでも」
4. 「―ないことには」の意味と用法
5. 「―なくして(は)」「―なしに(は)」などの意味と用法
5.1 「―なくして(は)」
5.2 「―(こと)なしに(は)」「―(こと)なしで(は)」
6. 否定条件接続句の態様
6.1 条件句と警告、提案
6.2 否定条件接続句
6.3 「さもないと」とその類型
6.4 「―抜きで」「―抜きに」の意味用法
7. おわりに

III 展開構文における発話意図をめぐって
第8章 状況・推移をあらわす「ナカ」の含意性 事態情報の導入的機能を中心に
1. はじめに
2. 機能的観点からみた時間節の態様
2.1 前後関係
2.2 瞬間、同時性をあらわす形式
2.3 焦点化した時点
2.4 状況、反復状態
2.5 序列、順序、時点
2.6 契機、起点
2.7 最終帰結・結末
2.8 選択依拠・目的条件
2.9 期間、到達・経緯
2.10 比例関係
2.11 大局的時点
3. 状況・背景をあらわす「ナカ」の諸相
4. ナカ節のあらわす意味の多面性
5. ナカ節に前接する動詞成分の特徴
6. ナカ節に前接する文法カテゴリ
7. 「そうしたなか(で)」などの文展開機能
8. 提示成分「―なかにあって」の意味機能
9. ナカ節を代行する「―今」「―現在」などの接続辞的機能
10. おわりに

第9章 ヴォイスの中核とその周辺 文展開にかかわる情意性の観点から
1. はじめに
2. 「自粛を余儀なくされる」 ―〈受身〉の拘束的視点―
3. 「(世間を)お騒がせしてすみません」―〈使役〉の内包する諸問題―
4. 「野菜はじっくり煮込んでやります」―〈やりもらい〉の内包する諸問題―
5. 「前のめり感はいなめない」―〈可能〉・〈自発〉の内包する諸問題―
6. おわりに

第10章 名詞述語文の発話意図をめぐって 時の“特化”をあらわす類型を中心に
1. はじめに ―名詞述語文の多層性―
2. 時の“特化”、“焦点”をあらわす用法
2.1 「―時だ」、「―時間だ」の用法
2.2 「―一日だ」、「―日だ」、「―季節だ」などの用法
2.3 「―時期だ」、「―機会だ」などの用法
3. 直近の“予想”や“感慨”を表す用法
3.1 「―頃だ」、「―頃合いだ」、「―時分だ」などの用法
3.2 「―日々だ」、「―毎日だ」などの用法
3.3 「―時代だ」、「―昨今だ」、「―現代だ」などの用法
4. 時間の接近や緊迫した状況をあらわす用法
4.1 「―最中だ」、「―途中だ」などの用法
4.2 「―直後だ」、「―瞬間だ」などの用法
4.3 「―後だ」、「―矢先だ」、「―段階だ」などの用法
5. 名詞述語文と文末名詞文の再考
6. おわりに ―残された課題―

IV 比較、並列構文における意味的な拡張
第11章 比較、対比をあらわす副詞・副詞節と発話意図 「まして」、「―どころか」などを例に
1. はじめに ―比較・対比表現の概観―
2. 「まして(や)」の意味と用法
3. 「いわんや」の意味と用法
4. 副詞的接続語による比較・対比表現
4.1 「かえって」の意味と用法
4.2 「(これとは)反対に」、「(これに)反して」、「(これとは)逆に」などの意味と用法
4.3 「むしろ」の意味と用法
5. 複合辞による比較・対比表現
5.1 「―{に/と}比して/比べて」、「―と比較して」の意味と用法
5.2 「―とは裏腹に」、「―とは対照的に」の意味と用法
5.3 「―とは反対に」、「―に反して」、「―とは逆に」の意味と用法
5.4 「―(の)ならともかく、―とは/なんて」の意味と用法
5.5 「―わりには」、「―以上に」の意味と用法
6. 「いう」による比較・対比表現
6.1 「―というより(も/は)(むしろ)」の意味と用法
6.2 「―かといって」、「(そう)かといって」の意味と用法
6.3 「XというかY」、「X。というかY」の意味と用法
7. 形式語による比較・対比表現の発話意図
7.1 「―どころか」、「それどころか」の意味と用法
7.2 否定程度比較「~ほど~ない」の意味と用法
7.3 「―くらいなら」の意味と用法
8. 同等・対等と異同の表現
9. おわりに

第12章 事態の対比と併存の表現をめぐって 〈比較〉と〈特立〉を中心に
1. はじめに
2. 〈比較〉から〈特立〉への視点転移
2.1 「―にひきかえ」の意味と用法
2.2 「―はともかく」の意味と用法
2.3 「―はともあれ」の意味と用法
2.4 「―ならともかく(も)」「―ならまだしも」などの意味と用法
3. 「さえ」による〈特立〉と〈対比〉の構造
3.1 「さえ~れば」の展開構文
3.2 「さえ~(の)だから」の展開構文
3.3 「さえ~のに」の展開構文
4. 〈排除〉と〈対比〉の意味構造
4.1 「―はさておき」の意味と用法
4.2 「―は別として(も)」などの意味と用法
5. 〈対比〉と〈併存〉の意味構造
5.1 「―反面」、「―半面」の意味と用法
5.2 「―一方(で)」、「他方」などの意味と用法
6. おわりに

第13章 列挙、例示、無条件の意味構造 「―であれ」、「―といい」などを例に
1. はじめに
2. 並列・列挙形式の概観
3. 「―であれ」類の並列・列挙形式
3.1 「―であれ」とその並列・列挙形式
3.2 「―であろうと(も)」とその並列・列挙形式
3.3 「―であろうが」とその並列・列挙形式
3.4 「―だろうと」「―だろうが」とその並列・列挙形式
4. 「―ようと」「―ようが」とその並列・列挙形式
4.1 「―ようと」とその並列・列挙形式
4.2 「―ようが」とその並列・列挙形式
5. 「いう」を用いた並列・列挙形式
5.1 「―といい」の並列・列挙形式
5.2 「―からいっても」などの並列・列挙形式
5.3 「―といわず」の並列・列挙形式
5.4 「―というか」の並列・列挙形式
5.5 「―といおうか」の並列・列挙形式
6. その他の並列・列挙形式
6.1 「―にしても」「―としても」の並列・列挙形式
6.2 「―にしろ」「―にせよ」の並列・列挙形式
6.3 「―につけ」の並列・列挙形式
7. おわりに

第14章 文展開における付加・累加表現の諸相 「―はもとより」、「―はおろか」などを例に
1. はじめに ―付加・累加という発話意図―
2. 基本累加構文の概観
3. 「―のみならず」の意味と用法
4. 「―もさることながら」、「―はもちろん」などの意味と用法
5. 「―はもとより」、「―はおろか」の意味と用法
5.1 「―はもとより」の意味と用法
5.2 「―は(いうも)おろか」の意味と用法
6. 「XとY(と)があいまって」の意味と用法
7. おわりに

補論⑴ 文の通念と含意について 文の認識と認定をめぐる覚書
1. はじめに ―再び文の主観性と客観性について―
2. 文の生起と連繋 ―事態・現象と共起成分―
3. 〈通念〉と〈含意〉 ―伝達・発話の意図―
4. 文の〈認識〉と〈認定〉のはざまで
5. 小説の〈語り〉と文脈の整合性
6. 実用文の表現・伝達意図
7. おわりに

補論⑵ 日本語の反復・並列形式と強調の類型 語彙的反復と構文的反復の観点から
1. はじめに ―反復の現象と並列の形式―
2. 〈文単位〉の反復事象
2.1 反復のタイプ ―恣意的な反復―
2.2 文中の引用成分・造語成分としての出現
3. 動詞の畳語構造と意味機能
3.1 終止形の畳語構造と意味機能
4. 動詞複合語にみる反復の諸相
4.1 連用形の反復並列
4.2 反復並列「~たり~たり」、「~つ~つ」
4.3 「~て~て」の反復
4.4 「~ても~ても」の反復
4.5 「~ても~(きれ)ない」
4.6 非反復的並列「~ず~ず」「~も~」など
4.7 トートロジー(tautology)の文法と修辞
4.8 条件形非反復「~といえば~」「~といったら~」などの用法
4.9 その他の語形による並列反復構造
5. 動詞句にみる反復の諸相
5.1 「~は~」、「~も~」、「~が~」の反復用法
5.2 「~ことは~」、「~には~」の反復形式
5.3 「~に~ない」、「~たくても~ない」、「~よう{にも/としても}~ない」
5.4 「~ものは~ない」
5.5 「~なら~」「~も~なら~も」
5.6 「~ともなく~」、「~ともなしに~」
5.7 「~だけ~」、「~うちに~」
5.8 「~そうで~ない」
5.9 連用形の反復形式
5.10 肯定・否定の反復形式
5.11 理由・根拠の強調
5.12 当為「はず」、「べき」の合意
5.13 条件形式をともなう反復の諸相
5.14 非反復の並列構文
6. おわりに

参考文献
あとがき
索引

   

【著者紹介】

田中寛(たなか ひろし)
 略歴
東京外国語大学大学院外国語学研究科日本語学専攻(修士課程)修了。博士(文学)。中国・湖南大学外国籍教員、文教大学教員を経て1998年より大東文化大学外国語学部教授。英国ロンドン大学学術訪問研究員。北京外国語大学特別研究員。湖南大学客員教授などを歴任。

 主な著書
『日本語複文表現の研究 接続と叙述の構造』(白帝社、 2004)、『統語構造を中心とした日本語とタイ語の対照研究』(ひつじ書房、2004)、『複合辞からみた日本語文法の研究』(ひつじ書房、2010)、『戦時期における日本語論・日本語教育論の諸相 日本言語文化政策論序説』(ひつじ書房、2015)


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